朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル北支事件特別稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年八月十一日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
大藏大臣 賀屋興宣
拓務大臣 大谷尊由
法律第六十六號
北支事件特別稅法
第一條 北支事件特別稅ハ之ヲ左ノ五種トス
一 所得特別稅
二 臨時利得特別稅
三 利益配當特別稅
四 公債及社債利子特別稅
五 物品特別稅
第二條 所得特別稅ハ所得稅ヲ納ムル者ニ之ヲ課ス
第三條 第一種所得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅ハ法人ノ本法施行後一年內ニ終了スル各事業年度ノ所得(淸算所得ヲ除ク)ニ付之ヲ賦課シ其ノ所得ニ對スル第一種所得稅額(臨時租稅增徵法ニ依ル增徵稅額ヲ含ム)ノ百分ノ十ニ相當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第四條 第二種所得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅ハ本法施行後一年內ニ支拂ヲ受クル第二種所得(國債ノ利子ヲ除ク)ニ付之ヲ賦課シ其ノ所得ニ對スル第二種所得稅額ノ百分ノ五ニ相當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第五條 第三種所得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅ハ昭和十二年分第三種所得ニ付之ヲ賦課シ其ノ所得ニ對スル第三種所得稅額(臨時租稅增徵法ニ依ル增徵稅額ヲ含ム)ノ百分ノ七・五ニ相當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第六條 第一種所得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅ハ事業年度每ニ之ヲ徵收ス
第二種所得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅ハ第二種所得金額支拂ノ際支拂者ニ於テ徵收シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第三種所得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅ハ其ノ稅額ヲ三分シ左ノ三期ニ於テ之ヲ徵收ス
第一期 昭和十二年十月一日ヨリ三十一日限
第二期 昭和十三年一月一日ヨリ三十一日限
第三期 昭和十三年三月一日ヨリ三十一日限
第七條 臨時利得特別稅ハ臨時利得稅ヲ納ムル者ニ之ヲ課ス
第八條 法人ノ臨時利得特別稅ハ本法施行後一年內ニ終了スル各事業年度ノ利得ニ付之ヲ賦課シ其ノ利得ニ對スル臨時利得稅額(臨時租稅增徵法ニ依ル增徵稅額ヲ含ム)ノ百分ノ十五ニ相當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第九條 個人ノ臨時利得特別稅ハ昭和十二年分利得ニ付之ヲ賦課シ其ノ利得ニ對スル臨時利得稅額(臨時租稅增徵法ニ依ル增徵稅額ヲ含ム)ノ百分ノ十五ニ相當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第十條 法人ノ臨時利得特別稅ハ事業年度每ニ之ヲ徵收ス
個人ノ臨時利得特別稅ハ其ノ稅額ヲ三分シ左ノ三期ニ於テ之ヲ徵收ス
第一期 昭和十二年十月一日ヨリ三十一日限
第二期 昭和十三年一月一日ヨリ三十一日限
第三期 昭和十三年三月一日ヨリ三十一日限
第十一條 利益配當特別稅ハ本法施行地ニ本店ヲ有スル法人ヨリ利益ノ配當ヲ受クル者ニ之ヲ課ス
所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ第二種所得稅ヲ課セラレザル者ニハ利益配當特別稅ヲ課セズ
第十二條 利益配當特別稅ハ本法施行後一年內ニ前條ノ法人ヨリ支拂ヲ受クル利益ノ配當ニ付之ヲ賦課シ配當金中配當率年七分ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額ノ百分ノ十ニ相當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第十三條 利益配當特別稅ハ配當金支拂ノ際支拂者ニ於テ徵收シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第十四條 公債及社債利子特別稅ハ本法施行地ニ於テ公債又ハ社債ノ利子ノ支拂ヲ受クル者ニ之ヲ課ス
所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ第二種所得稅ヲ課セラレザル者ニハ公債及社債利子特別稅ヲ課セズ
第十五條 公債及社債利子特別稅ハ本法施行後一年內ニ支拂ヲ受クル公債又ハ社債(外貨債特別稅法第一條第二項ニ規定スル外貨債ヲ除ク)ノ利子ニ付之ヲ賦課シ利子金額中國債ニ在リテハ利率年四分、國債以外ノ公債及社債ニ在リテハ利率年四分五厘ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額ノ百分ノ十ニ相當スル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第十六條 公債及社債利子特別稅ハ利子金額支拂ノ際支拂者ニ於テ徵收シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第十七條 第六條第二項、第十三條又ハ前條ノ規定ニ依リ徵收スベキ稅金ヲ徵收セザルトキ又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セザルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ支拂者ヨリ徵收ス
第十八條 所得稅法第十二條及大正九年法律第十二號第三條ノ規定ハ第一種所得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅及法人ノ臨時利得特別稅ニ付之ヲ準用ス
所得稅法第七十二條及第七十三條ノ規定ハ第三種所得稅ヲ納ムル者ノ所得特別稅及個人ノ臨時利得特別稅ニ付之ヲ準用ス
第十九條 利益配當特別稅ヲ課セラルル利益ノ配當又ハ公債及社債利子特別稅ヲ課セラルル公債又ハ社債ノ利子ニ付所得稅(第一種所得稅ヲ除ク)又ハ資本利子稅ヲ課スル場合ニ於テハ其ノ利益配當金額又ハ利子金額ヨリ利益配當特別稅又ハ公債及社債利子特別稅相當額ヲ控除シタル殘額ヲ以テ其ノ配當金額又ハ利子金額ト看做ス
第二十條 物品特別稅ハ左ニ揭グル物品ニシテ命令ノ定ムルモノニ之ヲ課ス
第一種
一 貴石若ハ半貴石又ハ之ヲ用ヒタル製品
二 眞珠又ハ眞珠ヲ用ヒタル製品
三 貴金屬製品又ハ貴金屬ヲ用ヒタル製品
四 鼈甲製品
五 珊瑚製品
第二種
一 寫眞機、寫眞引伸機、映寫機、同部分品及附屬品
二 寫眞用乾板、フィルム及感光紙
三 蓄音器及同部分品
四 蓄音器用レコード
五 樂器及同部分品
第二十一條 物品特別稅ノ稅率ハ價格百分ノ二十トス
前項ノ價格ハ第一種ノ物品ニ付テハ小賣業者ノ販賣價格、第二種ノ物品ニ付テハ製造場ヨリ移出スル時ノ價格トス但シ保稅地域ヨリ引取ラルル物品ニシテ引取人ヨリ稅金ヲ徵收スルモノニ付テハ引取ノ際ニ於ケル價格トス
第二十二條 物品特別稅ハ第一種ノ物品ニ付テハ小賣業者ヨリ、第二種ノ物品ニ付テハ製造者ヨリ之ヲ徵收ス但シ保稅地域ヨリ引取ラルル物品ニ付テハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外引取人ヨリ之ヲ徵收ス
第二十三條 第一種ノ物品ノ小賣業者ハ每月其ノ販賣シタル物品ニ付、第二種ノ物品ノ製造者ハ每月其ノ製造場ヨリ移出シタル物品ニ付其ノ品名每ニ數量及價格ヲ記載シタル申吿書ヲ翌月十日迄ニ政府ニ提出スベシ
第一種又ハ第二種ノ物品ヲ保稅地域ヨリ引取ル者ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外引取ノ際其ノ物品ニ付前項ニ準ズル申吿書ヲ政府ニ提出スベシ
申吿書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申吿ヲ不相當ト認メタルトキハ政府ハ其ノ課稅標準額ヲ決定ス
第二十四條 物品特別稅ハ每月分ヲ翌月末日迄ニ納付スベシ但シ第二十二條但書ノ場合ニ於テハ引取ノ際之ヲ納付スベシ
第二十五條 左ニ揭グル物品ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ物品特別稅ヲ免除ス
一 輸出スルモノ
二 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造ノ用ニ供スルモノ
三 其ノ他命令ヲ以テ定ムル用途ニ供スルモノ
第二十六條 第一種ノ物品ノ小賣業ヲ營マントスル者又ハ第二種ノ物品ヲ製造セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ニ申吿スベシ其ノ小賣業又ハ製造ヲ廢止セントスルトキ亦同ジ
第二十七條 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造者又ハ販賣者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製造、貯藏又ハ販賣ニ關スル事實ヲ帳簿ニ記載スベシ
第一種ノ物品ノ小賣業者又ハ第二種ノ物品ノ製造者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製造又ハ販賣ニ關シ必要ナル事項ヲ政府ニ申吿スベシ
第二十八條 收稅官吏ハ第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造者又ハ販賣者ニ對シ質問ヲ爲シ又ハ左ニ揭グル物件ニ付檢査ヲ爲シ若ハ監督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 第一種又ハ第二種ノ物品ニシテ製造者又ハ販賣者ノ所持スルモノ
二 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造、貯藏又ハ販賣ニ關スル一切ノ帳簿書類
三 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造、貯藏又ハ販賣上必要ナル建築物、機械、器具、材料其ノ他ノ物件
第二十九條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ所得特別稅、臨時利得特別稅、利益配當特別稅又ハ公債及社債利子特別稅ヲ逋脫シタル者ハ其ノ逋脫シタル稅金ノ三倍ニ相當スル罰金又ハ科料ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ自首シタル者又ハ稅務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
第三十條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ物品特別稅ヲ逋脫シ又ハ逋脫セントシタル者ハ其ノ逋脫シ又ハ逋脫セントシタル稅金ノ五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ罰金額ガ二十圓ニ滿タザルトキハ之ヲ二十圓トス
第三十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第二十三條ノ規定ニ依ル申吿ヲ怠リ又ハ詐リタル者
二 政府ニ申吿セズシテ第一種ノ物品ノ小賣業ヲ營ミ又ハ第二種ノ物品ヲ製造シタル者
第三十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第二十七條第一項ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ詐リ又ハ帳簿ヲ隱匿シタル者
二 第二十七條第二項ノ規定ニ依ル申吿ヲ怠リ又ハ詐リタル者
三 第二十八條ノ規定ニ依ル收稅官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第三十三條 第二十九條又ハ第三十條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セズ
第三十四條 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造者又ハ販賣者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法中物品特別稅ニ關スル規定ニ違反シタルトキハ其ノ製造者又ハ販賣者ヲ處罰ス
第三十五條 北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ北支事件特別稅ニ付附加稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第三十六條 本法ニ於テ保稅地域ト稱スルハ關稅法ノ定ムル所ニ依ル
附 則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
物品特別稅ニ關スル規定ハ昭和十三年三月三十一日以前ニ於テ物品特別稅ヲ課セラルベキ販賣、製造場ヨリノ移出又ハ保稅地域ヨリノ引取ヲ爲シタル第一種又ハ第二種ノ物品ニ付之ヲ適用ス
本法施行前ヨリ引續キ第一種ノ物品ノ小賣業ヲ營ム者又ハ第二種ノ物品ノ製造ヲ爲ス者本法施行後一月內ニ其ノ旨ヲ政府ニ申吿スルトキハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申吿シタルモノト看做ス
明治四十年法律第二十一號第一條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
十一 北支事件特別稅
明治四十四年法律第四十五號第二條中「又ハ骨牌稅法」ヲ「、骨牌稅法又ハ北支事件特別稅法」ニ改メ同法第三條中「又ハ骨牌稅法」ヲ「、骨牌稅法又ハ北支事件特別稅法」ニ、「又ハ骨牌」ヲ「、骨牌又ハ北支事件特別稅法第二十條ニ揭クル物品」ニ改ム
大正九年法律第五十一號中「骨牌」ノ下ニ「、北支事件特別稅法第二十條ニ揭クル第二種ノ物品」ヲ加フ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル北支事件特別税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年八月十一日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
大蔵大臣 賀屋興宣
拓務大臣 大谷尊由
法律第六十六号
北支事件特別税法
第一条 北支事件特別税ハ之ヲ左ノ五種トス
一 所得特別税
二 臨時利得特別税
三 利益配当特別税
四 公債及社債利子特別税
五 物品特別税
第二条 所得特別税ハ所得税ヲ納ムル者ニ之ヲ課ス
第三条 第一種所得税ヲ納ムル者ノ所得特別税ハ法人ノ本法施行後一年内ニ終了スル各事業年度ノ所得(清算所得ヲ除ク)ニ付之ヲ賦課シ其ノ所得ニ対スル第一種所得税額(臨時租税増徴法ニ依ル増徴税額ヲ含ム)ノ百分ノ十ニ相当スル金額ヲ以テ其ノ税額トス
第四条 第二種所得税ヲ納ムル者ノ所得特別税ハ本法施行後一年内ニ支払ヲ受クル第二種所得(国債ノ利子ヲ除ク)ニ付之ヲ賦課シ其ノ所得ニ対スル第二種所得税額ノ百分ノ五ニ相当スル金額ヲ以テ其ノ税額トス
第五条 第三種所得税ヲ納ムル者ノ所得特別税ハ昭和十二年分第三種所得ニ付之ヲ賦課シ其ノ所得ニ対スル第三種所得税額(臨時租税増徴法ニ依ル増徴税額ヲ含ム)ノ百分ノ七・五ニ相当スル金額ヲ以テ其ノ税額トス
第六条 第一種所得税ヲ納ムル者ノ所得特別税ハ事業年度毎ニ之ヲ徴収ス
第二種所得税ヲ納ムル者ノ所得特別税ハ第二種所得金額支払ノ際支払者ニ於テ徴収シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第三種所得税ヲ納ムル者ノ所得特別税ハ其ノ税額ヲ三分シ左ノ三期ニ於テ之ヲ徴収ス
第一期 昭和十二年十月一日ヨリ三十一日限
第二期 昭和十三年一月一日ヨリ三十一日限
第三期 昭和十三年三月一日ヨリ三十一日限
第七条 臨時利得特別税ハ臨時利得税ヲ納ムル者ニ之ヲ課ス
第八条 法人ノ臨時利得特別税ハ本法施行後一年内ニ終了スル各事業年度ノ利得ニ付之ヲ賦課シ其ノ利得ニ対スル臨時利得税額(臨時租税増徴法ニ依ル増徴税額ヲ含ム)ノ百分ノ十五ニ相当スル金額ヲ以テ其ノ税額トス
第九条 個人ノ臨時利得特別税ハ昭和十二年分利得ニ付之ヲ賦課シ其ノ利得ニ対スル臨時利得税額(臨時租税増徴法ニ依ル増徴税額ヲ含ム)ノ百分ノ十五ニ相当スル金額ヲ以テ其ノ税額トス
第十条 法人ノ臨時利得特別税ハ事業年度毎ニ之ヲ徴収ス
個人ノ臨時利得特別税ハ其ノ税額ヲ三分シ左ノ三期ニ於テ之ヲ徴収ス
第一期 昭和十二年十月一日ヨリ三十一日限
第二期 昭和十三年一月一日ヨリ三十一日限
第三期 昭和十三年三月一日ヨリ三十一日限
第十一条 利益配当特別税ハ本法施行地ニ本店ヲ有スル法人ヨリ利益ノ配当ヲ受クル者ニ之ヲ課ス
所得税法其ノ他ノ法律ニ依リ第二種所得税ヲ課セラレザル者ニハ利益配当特別税ヲ課セズ
第十二条 利益配当特別税ハ本法施行後一年内ニ前条ノ法人ヨリ支払ヲ受クル利益ノ配当ニ付之ヲ賦課シ配当金中配当率年七分ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額ノ百分ノ十ニ相当スル金額ヲ以テ其ノ税額トス
第十三条 利益配当特別税ハ配当金支払ノ際支払者ニ於テ徴収シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第十四条 公債及社債利子特別税ハ本法施行地ニ於テ公債又ハ社債ノ利子ノ支払ヲ受クル者ニ之ヲ課ス
所得税法其ノ他ノ法律ニ依リ第二種所得税ヲ課セラレザル者ニハ公債及社債利子特別税ヲ課セズ
第十五条 公債及社債利子特別税ハ本法施行後一年内ニ支払ヲ受クル公債又ハ社債(外貨債特別税法第一条第二項ニ規定スル外貨債ヲ除ク)ノ利子ニ付之ヲ賦課シ利子金額中国債ニ在リテハ利率年四分、国債以外ノ公債及社債ニ在リテハ利率年四分五厘ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額ノ百分ノ十ニ相当スル金額ヲ以テ其ノ税額トス
第十六条 公債及社債利子特別税ハ利子金額支払ノ際支払者ニ於テ徴収シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ
第十七条 第六条第二項、第十三条又ハ前条ノ規定ニ依リ徴収スベキ税金ヲ徴収セザルトキ又ハ其ノ徴収シタル税金ヲ納付セザルトキハ国税徴収ノ例ニ依リ之ヲ支払者ヨリ徴収ス
第十八条 所得税法第十二条及大正九年法律第十二号第三条ノ規定ハ第一種所得税ヲ納ムル者ノ所得特別税及法人ノ臨時利得特別税ニ付之ヲ準用ス
所得税法第七十二条及第七十三条ノ規定ハ第三種所得税ヲ納ムル者ノ所得特別税及個人ノ臨時利得特別税ニ付之ヲ準用ス
第十九条 利益配当特別税ヲ課セラルル利益ノ配当又ハ公債及社債利子特別税ヲ課セラルル公債又ハ社債ノ利子ニ付所得税(第一種所得税ヲ除ク)又ハ資本利子税ヲ課スル場合ニ於テハ其ノ利益配当金額又ハ利子金額ヨリ利益配当特別税又ハ公債及社債利子特別税相当額ヲ控除シタル残額ヲ以テ其ノ配当金額又ハ利子金額ト看做ス
第二十条 物品特別税ハ左ニ掲グル物品ニシテ命令ノ定ムルモノニ之ヲ課ス
第一種
一 貴石若ハ半貴石又ハ之ヲ用ヒタル製品
二 真珠又ハ真珠ヲ用ヒタル製品
三 貴金属製品又ハ貴金属ヲ用ヒタル製品
四 鼈甲製品
五 珊瑚製品
第二種
一 写真機、写真引伸機、映写機、同部分品及附属品
二 写真用乾板、フィルム及感光紙
三 蓄音器及同部分品
四 蓄音器用レコード
五 楽器及同部分品
第二十一条 物品特別税ノ税率ハ価格百分ノ二十トス
前項ノ価格ハ第一種ノ物品ニ付テハ小売業者ノ販売価格、第二種ノ物品ニ付テハ製造場ヨリ移出スル時ノ価格トス但シ保税地域ヨリ引取ラルル物品ニシテ引取人ヨリ税金ヲ徴収スルモノニ付テハ引取ノ際ニ於ケル価格トス
第二十二条 物品特別税ハ第一種ノ物品ニ付テハ小売業者ヨリ、第二種ノ物品ニ付テハ製造者ヨリ之ヲ徴収ス但シ保税地域ヨリ引取ラルル物品ニ付テハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外引取人ヨリ之ヲ徴収ス
第二十三条 第一種ノ物品ノ小売業者ハ毎月其ノ販売シタル物品ニ付、第二種ノ物品ノ製造者ハ毎月其ノ製造場ヨリ移出シタル物品ニ付其ノ品名毎ニ数量及価格ヲ記載シタル申告書ヲ翌月十日迄ニ政府ニ提出スベシ
第一種又ハ第二種ノ物品ヲ保税地域ヨリ引取ル者ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外引取ノ際其ノ物品ニ付前項ニ準ズル申告書ヲ政府ニ提出スベシ
申告書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申告ヲ不相当ト認メタルトキハ政府ハ其ノ課税標準額ヲ決定ス
第二十四条 物品特別税ハ毎月分ヲ翌月末日迄ニ納付スベシ但シ第二十二条但書ノ場合ニ於テハ引取ノ際之ヲ納付スベシ
第二十五条 左ニ掲グル物品ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ物品特別税ヲ免除ス
一 輸出スルモノ
二 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造ノ用ニ供スルモノ
三 其ノ他命令ヲ以テ定ムル用途ニ供スルモノ
第二十六条 第一種ノ物品ノ小売業ヲ営マントスル者又ハ第二種ノ物品ヲ製造セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ニ申告スベシ其ノ小売業又ハ製造ヲ廃止セントスルトキ亦同ジ
第二十七条 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造者又ハ販売者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製造、貯蔵又ハ販売ニ関スル事実ヲ帳簿ニ記載スベシ
第一種ノ物品ノ小売業者又ハ第二種ノ物品ノ製造者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ製造又ハ販売ニ関シ必要ナル事項ヲ政府ニ申告スベシ
第二十八条 収税官吏ハ第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造者又ハ販売者ニ対シ質問ヲ為シ又ハ左ニ掲グル物件ニ付検査ヲ為シ若ハ監督上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 第一種又ハ第二種ノ物品ニシテ製造者又ハ販売者ノ所持スルモノ
二 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造、貯蔵又ハ販売ニ関スル一切ノ帳簿書類
三 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造、貯蔵又ハ販売上必要ナル建築物、機械、器具、材料其ノ他ノ物件
第二十九条 詐偽其ノ他不正ノ行為ニ依リ所得特別税、臨時利得特別税、利益配当特別税又ハ公債及社債利子特別税ヲ逋脱シタル者ハ其ノ逋脱シタル税金ノ三倍ニ相当スル罰金又ハ科料ニ処シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス但シ自首シタル者又ハ税務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
第三十条 詐偽其ノ他不正ノ行為ニ依リ物品特別税ヲ逋脱シ又ハ逋脱セントシタル者ハ其ノ逋脱シ又ハ逋脱セントシタル税金ノ五倍ニ相当スル罰金ニ処シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス但シ罰金額ガ二十円ニ満タザルトキハ之ヲ二十円トス
第三十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 第二十三条ノ規定ニ依ル申告ヲ怠リ又ハ詐リタル者
二 政府ニ申告セズシテ第一種ノ物品ノ小売業ヲ営ミ又ハ第二種ノ物品ヲ製造シタル者
第三十二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 第二十七条第一項ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ詐リ又ハ帳簿ヲ隠匿シタル者
二 第二十七条第二項ノ規定ニ依ル申告ヲ怠リ又ハ詐リタル者
三 第二十八条ノ規定ニ依ル収税官吏ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第三十三条 第二十九条又ハ第三十条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ規定ヲ適用セズ
第三十四条 第一種又ハ第二種ノ物品ノ製造者又ハ販売者ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法中物品特別税ニ関スル規定ニ違反シタルトキハ其ノ製造者又ハ販売者ヲ処罰ス
第三十五条 北海道、府県、市町村其ノ他ノ公共団体ハ北支事件特別税ニ付附加税ヲ課スルコトヲ得ズ
第三十六条 本法ニ於テ保税地域ト称スルハ関税法ノ定ムル所ニ依ル
附 則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
物品特別税ニ関スル規定ハ昭和十三年三月三十一日以前ニ於テ物品特別税ヲ課セラルベキ販売、製造場ヨリノ移出又ハ保税地域ヨリノ引取ヲ為シタル第一種又ハ第二種ノ物品ニ付之ヲ適用ス
本法施行前ヨリ引続キ第一種ノ物品ノ小売業ヲ営ム者又ハ第二種ノ物品ノ製造ヲ為ス者本法施行後一月内ニ其ノ旨ヲ政府ニ申告スルトキハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申告シタルモノト看做ス
明治四十年法律第二十一号第一条第一項ニ左ノ一号ヲ加フ
十一 北支事件特別税
明治四十四年法律第四十五号第二条中「又ハ骨牌税法」ヲ「、骨牌税法又ハ北支事件特別税法」ニ改メ同法第三条中「又ハ骨牌税法」ヲ「、骨牌税法又ハ北支事件特別税法」ニ、「又ハ骨牌」ヲ「、骨牌又ハ北支事件特別税法第二十条ニ掲クル物品」ニ改ム
大正九年法律第五十一号中「骨牌」ノ下ニ「、北支事件特別税法第二十条ニ掲クル第二種ノ物品」ヲ加フ