少年教護法施行令
法令番号: 勅令第二百八十號
公布年月日: 昭和9年9月29日
法令の形式: 勅令
朕少年敎護法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和九年九月二十八日
內閣總理大臣 岡田啓介
內務大臣 後藤文夫
司法大臣 小原直
大藏大臣 藤井真信
文部大臣 松田源治
勅令第二百八十號
少年敎護法施行令
第一條 少年敎護院ニ於ケル敎護ハ在院者ニ對シ監護養育ヲ加ヘ道德敎育及國民敎育ノ基礎竝ニ獨立自ニ必要ナル知識技能ヲ授ケ其ノ資質ノ改善向上ヲ圖ルヲ以テ本旨トシ特ニ在院者ノ性能ニ應ジ其ノ日常生活ノ訓練指導ニ留意スベキモノトス
第二條 
少年敎護院ノ敎科目ハ修身、國語、算術、國史、地理、理科、圖畫、作業科、唱歌、體操及實業(農業、工業、商業ノ一科目又ハ數科目)トシ女子ノ爲ニハ家事及裁縫ヲ加フ
前項ノ實業ノ科目ハ少年敎護院長之ヲ定ム
第一項ノ敎科目ノ外少年敎護院長ハ國立少年敎護院ニ在リテハ內務大臣、其ノ他ノ少年敎護院ニ在リテハ地方長官ノ認可ヲ受ケ公民科其ノ他必要ナル敎科目ヲ加フルコトヲ得
第三條 少年敎護院長ハ在院者ノ性能ニ應ジ之ニ課スベキ敎科目ヲ斟酌スルコトヲ得
第四條 少年敎護院ノ敎科ニシテ尋常小學校ノ敎科ニ相當スルモノニ用フル圖書ハ文部省ニ於テ著作權ヲ有シ又ハ文部大臣ノ檢定シタル尋常小學校ノ敎科用圖書タルベシ
在院者ノ性能其ノ他ノ事由ニ因リ前項ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ少年敎護院長ハ國立少年敎護院ニ在リテハ內務大臣、其ノ他ノ少年敎護院ニ在リテハ地方長官ノ認可ヲ受ケ特別ノ敎科用圖書ヲ用フルコトヲ得
第五條 少年敎護院ノ每週敎授時數ハ三十時ヲ超エ又十八時ヲ下ルコトヲ得ズ但シ少年敎護院長ハ在院者ノ性能ニ應ジ又ハ夏期若ハ冬期ニ於テ必要アリト認ムルトキハ每週敎授時數ヲ十二時迄ニ減ズルコトヲ得
實習ノ敎授時數ハ在院者ノ性能等ニ依リ少年敎護院長ニ於テ適宜之ヲ定ム
實習ハ第一項ノ敎授時數外ニ涉リテ尙之ヲ課スルコトヲ得
第六條 前四條ニ定ムルモノヲ除クノ外少年敎護院ノ敎則、編制、休業日其ノ他敎科ニ關シ必要ナル事項ハ少年敎護院長ニ於テ之ヲ定ムベシ
第七條 少年敎護院ニ於テハ其ノ規模ニ相當スル院舍、院地、實習場、體操場及器具ヲ備フベシ
院舍、院地、實習場、體操場及器具ハ敎護ノ目的以外ニ之ヲ使用スルコトヲ得ズ
第八條 少年敎護法第七條ノ規定ニ依ル少年敎護院ニ於テ敎護ヲ掌ル職員ハ道府縣立少年敎護院ノ敎諭又ハ保姆ト爲ル資格ヲ有スル者ノ中ヨリ之ヲ採用スベシ但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ敎護ヲ掌ルニ適當ト認メラルル者ニ付地方長官ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第九條 少年敎護委員ハ地方長官之ヲ選任シ又ハ解任ス
少年敎護委員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ四年トス但シ特別ノ事由アルトキハ任期中ト雖モ之ヲ解任スルコトヲ妨ゲズ
少年敎護委員ハ市町村(町村ニ準ズルモノヲ含ム)ノ區域ニ依リ其ノ職務ヲ行フヲ例トス
第十條 少年敎護法第十九條ノ規定ニ依リ道府縣ノ負擔シタル費用ニ對スル國庫補助ハ道府縣ガ同條ノ規定ニ依リ負擔スベキ費用ノ各年度ニ於ケル支出額ヨリ其ノ年度ニ於テ同法第十六條ノ規定ニ依リ徵收シタル金額及其ノ支出ニ充ツベキ寄附金其ノ他ノ收入ヲ控除シタル精算額ニ對シ左ノ區分ニ從ヒ之ヲ爲ス
一 少年敎護院又ハ少年鑑別機關ノ創設費、擴張費及之ニ伴フ初度調辨費 二分ノ一
二 其ノ他ノ諸費 六分ノ一
前項ノ規定ニ依リ控除スベキ金額ガ道府縣ガ少年敎護法第十九條ノ規定ニ依リ負擔スベキ費用ノ其ノ年度ニ於ケル支出額ヲ超過シタル場合ニ於テハ其ノ超過額ハ後年度ニ於ケル支出額ヨリ之ヲ控除ス
第十一條 少年敎護法第七條ノ規定ニ依ル少年敎護院ヲ設置シタル者ノ支出シタル費用ニ對スル國庫補助ハ各年度ニ於テ支出シタル左ニ揭グル費用ニ付其ノ支出額ヨリ其ノ年度ニ於テ之ニ充ツベキ寄附金其ノ他ノ收入ヲ控除シタル精算額ニ對シ左ノ區分ニ從ヒ之ヲ爲ス
一 少年敎護院又ハ少年鑑別機關ノ創設費、擴張費及之ニ伴フ初度調辨費 少年敎護法第八條ノ規定ニ依リ入院セシムベキ者ノ爲利用セラルベキ程度ヲ標準トシテ算出シタル額ノ二分ノ一
二 少年敎護院又ハ少年鑑別機關ノ職員ノ俸給其ノ他ノ事務費、建物ノ維持修繕費及其ノ他ノ管理費 少年敎護法第八條ノ規定ニ依リ入院セシメタル者ノ爲利用セラルベキ程度ヲ標準トシテ算出シタル額ノ六分ノ一
前項第二號ノ諸費ハ少年敎護院ノ經費中少年敎護法第八條ノ規定ニ依リ入院セシメタル者ノ爲利用セラルベキ程度ヲ標準トシテ算出シタル額ヨリ其ノ者ノ委託ニ關スル費用トシテ道府縣ノ支出シタル額ヲ控除シタル殘額ヲ超過スルコトヲ得ズ
前條第二項ノ規定ハ本條ノ國庫補助ニ之ヲ準用ス
第十二條 前二條ノ規定ニ依リ少年敎護院又ハ少年鑑別機關ノ創設費、擴張費又ハ之ニ伴フ初度調辨費ニ對シ國庫補助ヲ受ケントスル者ハ豫メ其ノ設備ニ關スル計畫ニ付內務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第十三條 第十條又ハ第十一條ノ規定ニ依リ國庫補助ヲ受ケタル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ補助金ノ全部又ハ一部ヲ返還セシムルコトヲ得
一 少年敎護法若ハ同法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ
二 少年敎護院若ハ少年鑑別機關ノ事業ノ全部若ハ一部ヲ廢止シ又ハ其ノ設備ヲ當初豫定シタル目的以外ノ用途ニ利用スルニ至リタルトキ
三 補助金交付ノ條件ニ違反シタルトキ
四 詐僞ノ手段ヲ以テ補助金ノ交付ヲ受ケタルトキ
第十四條 第二條第二項、第五條第二項及第六條ノ規定ニ依リ少年敎護院長ニ於テ定ムベキ事項ハ少年敎護法第七條ノ規定ニ依ル少年敎護院ニ在リテハ地方長官ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
附 則
本令ハ少年敎護法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ代用感化院ニ於テ敎護ヲ掌ル職員ニシテ第八條ニ定ムル資格ヲ有セザルモノニ付テハ少年敎護法附則第四項ノ少年敎護院ニ於テ同條但書ノ規定ニ依リ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ採用シタルモノト看做ス
朕少年教護法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和九年九月二十八日
内閣総理大臣 岡田啓介
内務大臣 後藤文夫
司法大臣 小原直
大蔵大臣 藤井真信
文部大臣 松田源治
勅令第二百八十号
少年教護法施行令
第一条 少年教護院ニ於ケル教護ハ在院者ニ対シ監護養育ヲ加ヘ道徳教育及国民教育ノ基礎並ニ独立自ニ必要ナル知識技能ヲ授ケ其ノ資質ノ改善向上ヲ図ルヲ以テ本旨トシ特ニ在院者ノ性能ニ応ジ其ノ日常生活ノ訓練指導ニ留意スベキモノトス
第二条 
少年教護院ノ教科目ハ修身、国語、算術、国史、地理、理科、図画、作業科、唱歌、体操及実業(農業、工業、商業ノ一科目又ハ数科目)トシ女子ノ為ニハ家事及裁縫ヲ加フ
前項ノ実業ノ科目ハ少年教護院長之ヲ定ム
第一項ノ教科目ノ外少年教護院長ハ国立少年教護院ニ在リテハ内務大臣、其ノ他ノ少年教護院ニ在リテハ地方長官ノ認可ヲ受ケ公民科其ノ他必要ナル教科目ヲ加フルコトヲ得
第三条 少年教護院長ハ在院者ノ性能ニ応ジ之ニ課スベキ教科目ヲ斟酌スルコトヲ得
第四条 少年教護院ノ教科ニシテ尋常小学校ノ教科ニ相当スルモノニ用フル図書ハ文部省ニ於テ著作権ヲ有シ又ハ文部大臣ノ検定シタル尋常小学校ノ教科用図書タルベシ
在院者ノ性能其ノ他ノ事由ニ因リ前項ノ規定ニ依リ難キ場合ニ於テハ少年教護院長ハ国立少年教護院ニ在リテハ内務大臣、其ノ他ノ少年教護院ニ在リテハ地方長官ノ認可ヲ受ケ特別ノ教科用図書ヲ用フルコトヲ得
第五条 少年教護院ノ毎週教授時数ハ三十時ヲ超エ又十八時ヲ下ルコトヲ得ズ但シ少年教護院長ハ在院者ノ性能ニ応ジ又ハ夏期若ハ冬期ニ於テ必要アリト認ムルトキハ毎週教授時数ヲ十二時迄ニ減ズルコトヲ得
実習ノ教授時数ハ在院者ノ性能等ニ依リ少年教護院長ニ於テ適宜之ヲ定ム
実習ハ第一項ノ教授時数外ニ渉リテ尚之ヲ課スルコトヲ得
第六条 前四条ニ定ムルモノヲ除クノ外少年教護院ノ教則、編制、休業日其ノ他教科ニ関シ必要ナル事項ハ少年教護院長ニ於テ之ヲ定ムベシ
第七条 少年教護院ニ於テハ其ノ規模ニ相当スル院舎、院地、実習場、体操場及器具ヲ備フベシ
院舎、院地、実習場、体操場及器具ハ教護ノ目的以外ニ之ヲ使用スルコトヲ得ズ
第八条 少年教護法第七条ノ規定ニ依ル少年教護院ニ於テ教護ヲ掌ル職員ハ道府県立少年教護院ノ教諭又ハ保姆ト為ル資格ヲ有スル者ノ中ヨリ之ヲ採用スベシ但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ教護ヲ掌ルニ適当ト認メラルル者ニ付地方長官ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第九条 少年教護委員ハ地方長官之ヲ選任シ又ハ解任ス
少年教護委員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ四年トス但シ特別ノ事由アルトキハ任期中ト雖モ之ヲ解任スルコトヲ妨ゲズ
少年教護委員ハ市町村(町村ニ準ズルモノヲ含ム)ノ区域ニ依リ其ノ職務ヲ行フヲ例トス
第十条 少年教護法第十九条ノ規定ニ依リ道府県ノ負担シタル費用ニ対スル国庫補助ハ道府県ガ同条ノ規定ニ依リ負担スベキ費用ノ各年度ニ於ケル支出額ヨリ其ノ年度ニ於テ同法第十六条ノ規定ニ依リ徴収シタル金額及其ノ支出ニ充ツベキ寄附金其ノ他ノ収入ヲ控除シタル精算額ニ対シ左ノ区分ニ従ヒ之ヲ為ス
一 少年教護院又ハ少年鑑別機関ノ創設費、拡張費及之ニ伴フ初度調弁費 二分ノ一
二 其ノ他ノ諸費 六分ノ一
前項ノ規定ニ依リ控除スベキ金額ガ道府県ガ少年教護法第十九条ノ規定ニ依リ負担スベキ費用ノ其ノ年度ニ於ケル支出額ヲ超過シタル場合ニ於テハ其ノ超過額ハ後年度ニ於ケル支出額ヨリ之ヲ控除ス
第十一条 少年教護法第七条ノ規定ニ依ル少年教護院ヲ設置シタル者ノ支出シタル費用ニ対スル国庫補助ハ各年度ニ於テ支出シタル左ニ掲グル費用ニ付其ノ支出額ヨリ其ノ年度ニ於テ之ニ充ツベキ寄附金其ノ他ノ収入ヲ控除シタル精算額ニ対シ左ノ区分ニ従ヒ之ヲ為ス
一 少年教護院又ハ少年鑑別機関ノ創設費、拡張費及之ニ伴フ初度調弁費 少年教護法第八条ノ規定ニ依リ入院セシムベキ者ノ為利用セラルベキ程度ヲ標準トシテ算出シタル額ノ二分ノ一
二 少年教護院又ハ少年鑑別機関ノ職員ノ俸給其ノ他ノ事務費、建物ノ維持修繕費及其ノ他ノ管理費 少年教護法第八条ノ規定ニ依リ入院セシメタル者ノ為利用セラルベキ程度ヲ標準トシテ算出シタル額ノ六分ノ一
前項第二号ノ諸費ハ少年教護院ノ経費中少年教護法第八条ノ規定ニ依リ入院セシメタル者ノ為利用セラルベキ程度ヲ標準トシテ算出シタル額ヨリ其ノ者ノ委託ニ関スル費用トシテ道府県ノ支出シタル額ヲ控除シタル残額ヲ超過スルコトヲ得ズ
前条第二項ノ規定ハ本条ノ国庫補助ニ之ヲ準用ス
第十二条 前二条ノ規定ニ依リ少年教護院又ハ少年鑑別機関ノ創設費、拡張費又ハ之ニ伴フ初度調弁費ニ対シ国庫補助ヲ受ケントスル者ハ予メ其ノ設備ニ関スル計画ニ付内務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第十三条 第十条又ハ第十一条ノ規定ニ依リ国庫補助ヲ受ケタル者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ補助金ノ全部又ハ一部ヲ返還セシムルコトヲ得
一 少年教護法若ハ同法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキ
二 少年教護院若ハ少年鑑別機関ノ事業ノ全部若ハ一部ヲ廃止シ又ハ其ノ設備ヲ当初予定シタル目的以外ノ用途ニ利用スルニ至リタルトキ
三 補助金交付ノ条件ニ違反シタルトキ
四 詐偽ノ手段ヲ以テ補助金ノ交付ヲ受ケタルトキ
第十四条 第二条第二項、第五条第二項及第六条ノ規定ニ依リ少年教護院長ニ於テ定ムベキ事項ハ少年教護法第七条ノ規定ニ依ル少年教護院ニ在リテハ地方長官ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
附 則
本令ハ少年教護法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ代用感化院ニ於テ教護ヲ掌ル職員ニシテ第八条ニ定ムル資格ヲ有セザルモノニ付テハ少年教護法附則第四項ノ少年教護院ニ於テ同条但書ノ規定ニ依リ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ採用シタルモノト看做ス