少年教護法
法令番号: 法律第五十五號
公布年月日: 昭和8年5月5日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル少年敎護法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年五月四日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
內務大臣 男爵 山本達雄
文部大臣 鳩山一郞
司法大臣 小山松吉
法律第五十五號
少年敎護法
第一條 本法ニ於テ少年ト稱スルハ十四歲ニ滿タザル者ニシテ不良行爲ヲ爲シ又ハ不良行爲ヲ爲ス虞アル者ヲ謂フ
第二條 北海道及府縣ハ少年敎護院ヲ設置スベシ
前項少年敎護院ノ數及收容定員ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
國ハ必要ノ場所ニ少年敎護院ヲ設置ス
國立敎護院ニハ敎護事務ニ從事スル職員養成所ヲ附設スルコトヲ得
第三條 少年敎護院ニ於ケル敎護ノ本旨、敎科、設備及職員ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 少年敎護院內ニ少年鑑別機關ヲ設クルコトヲ得
第五條 道府縣ノ設置スル少年敎護院及少年鑑別機關ハ地方長官、國立少年敎護院ハ內務大臣之ヲ管理ス
第六條 道府縣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ少年敎護ノ爲少年敎護委員ヲ置クベシ
第七條 國道府縣ニ非ザル者本法ニ依ル敎護ヲ目的トスル少年敎護院ヲ設置セントスルトキハ內務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第八條 地方長官ハ左記各號ノ一ニ該當スル者アルトキハ之ヲ少年敎護院ニ入院セシムベシ
一 少年ニシテ親權又ハ後見ヲ行フモノナキ者
二 少年ニシテ親權者又ハ後見人ヨリ入院ノ出願アリタル者
三 少年審判所ヨリ送致セラレタル者
四 裁判所ノ許可ヲ得テ懲戒場ニ入ルベキ者
地方長官ハ前項第一號及第二號ニ該當スル者ニ對シ前項ノ處分ヲ爲スノ外之ヲ少年敎護委員ノ觀察ニ付スルコトヲ得
第九條 內務大臣ハ前條第一項第一號又ハ第二號ニ揭グル者左記各號ノ一ニ該當スルトキハ之ヲ國立敎護院ニ入院セシムルコトヲ得
一 性狀特ニ不良ニシテ地方長官ヨリ入院ノ申請アリタル者
二 前號ニ該當セズト雖特ニ入院ノ必要アリト認メタル者
第十條 地方長官ハ第八條第一項第一號又ハ第二號ニ該當スル在院者ヲ何時ニテモ條件ヲ指定シテ假ニ退院セシムルコトヲ得
前項ノ假退院者ハ之ヲ家庭其ノ他適當ナル施設ニ委託シ又ハ少年敎護委員ノ觀察ニ付スルコトヲ得
假退院者ハ之ヲ在院者ト看做ス
假退院者ニシテ指定ノ條件ニ違背シタルトキハ地方長官ハ之ヲ復院セシムルコトヲ得
第十一條 少年ノ在院期間及觀察期間ハ少年ノ滿二十歲ニ至ル迄トス但シ第八條第三號又ハ第四號ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二條 內務大臣又ハ地方長官ハ在院者ニ對シ敎護ノ目的ヲ達シタリト認ムルトキハ之ヲ退院セシムルコトヲ得
第十三條 學校長、市町村長、少年敎護委員又ハ警察署長第八條第一項第一號ニ該當スル者アリト認ムルトキハ之ヲ地方長官ニ具申スベシ
第十四條 地方長官、警察署長又ハ市町村長必要アリト認ムルトキハ第八條第一項第一號ニ該當スル者ノ處分決定ニ至ル迄一時保護ノ爲適當ナル施設若ハ家庭ニ委託スルコトヲ得仍警察署長ニ於テ特ニ必要アリト認ムルトキハ五日ヲ超エザル期間假ニ留置ヲ爲スコトヲ得
前項ニ依リ警察署長ニ於テ行フ留置ハ他ノ收容者ト分離スベシ
第十五條 少年敎護院長ハ在院者ニ對シ親權ヲ行フ但シ親權者又ハ後見人アル者ノ財產管理ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條 內務大臣又ハ地方長官ハ本人又ハ扶養義務者ヨリ在院委託及一時保護ニ要シタル費用ノ全部又ハ一部ヲ徵收スルコトヲ得
前項費用ノ徵收ハ必要ニ應ジ納付義務者ノ居住地又ハ財產所在地ノ地方長官又ハ市町村長ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第一項ノ費用ヲ指定ノ期限內ニ納付セザル者アルトキハ國稅徵收法ノ例ニ依リ處分スルコトヲ得
第十七條 第八條乃至第十條ノ處分ヲ受ケタル者ノ親族又ハ後見人ハ入院後六箇月ヲ經過シタル場合其ノ處分ノ解除又ハ變更ヲ內務大臣又ハ地方長官ニ出願スルコトヲ得
第十八條 第八條第九條第十條又ハ第十六條第一項及第三項ノ處分ニ不服アル者及前條ノ出願ヲ許可セラレザル者ハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第十九條 道府縣ノ設置スル少年敎護院及少年鑑別機關、少年敎護委員、一時保護及地方長官ノ爲シタル委託ニ關スル費用ハ道府縣ノ負擔トス
市町村長第十四條ノ一時保護ヲ爲シタルトキハ其ノ費用ハ市町村費ヲ以テ一時之ヲ立替フベシ
第二十條 國庫ハ前條第一項ノ規定ニ依ル道府縣ノ支出ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ六分ノ一乃至二分ノ一ヲ補助ス
第七條ノ規定ニ依リ認可セラレタル少年敎護院ノ支出ニ付亦前項ヲ適用ス
第二十一條 第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年敎護院ノ用ニ供スル土地建物ニ對シテハ地方稅ヲ課セズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシメタル者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラズ
第二十二條 內務大臣及地方長官ハ第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年敎護院ヲ監督シ之ガ爲必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十三條 第七條ノ規定ニ依リ認可セラレタル少年敎護院本法若ハ本法ニ基キ發スル命令又ハ認可ノ條件ニ違反シタルトキハ內務大臣ハ認可ヲ取消スコトヲ得
第二十四條 少年敎護院長ハ在院中所定ノ敎科ヲ履修シ性行改善シタル者ニ對シテハ其ノ退院後ニ於テ尋常小學校ノ敎科ヲ修了シタル者ト認定スルコトヲ得但シ少年敎護院ノ敎科ハ小學校令ニ遵據シ文部大臣ノ承認ヲ經ルコトヲ要ス
前項ノ認定ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ノ適用ニ關シテハ尋常小學校ヲ卒業シタル者ト看做ス
第二十五條 本法中町村又ハ町村費トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在テハ之ニ準ズベキモノトス
第二十六條 少年ノ敎護處分ニ付セラレタル事項ハ之ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ揭載スルコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ編輯人及發行人、其ノ他ノ出版物ニ在リテハ著作者及發行者ヲ三月以下ノ禁錮又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
感化法ハ之ヲ廢止ス
少年法ニ依ル保護處分ノ實施セラレザル地區ニ限リ第一條ノ年齡ハ之ヲ十八歲未滿トス
本法施行ノ際現ニ存スル國立感化院及道府縣立感化院ハ之ヲ本法ニ依リ設置シタル少年敎護院ト看做シ其ノ在院者ハ之ヲ本法ニ依リ入院セシメラレタルモノト看做ス
本法施行ノ際現ニ存スル代用感化院ハ之ヲ第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年敎護院ト看做シ其ノ在院者ニシテ感化法第五條ノ規定ニ依リ入院セシメラレタルモノハ之ヲ本法ニ依リ入院セシメラレタルモノト看做ス
本法施行ノ際道府縣立感化院ノ設置ナキ道府縣ハ本法施行ノ日ヨリ五年以內ニ少年敎護院ヲ設置スルコトヲ要ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル少年教護法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年五月四日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
内務大臣 男爵 山本達雄
文部大臣 鳩山一郎
司法大臣 小山松吉
法律第五十五号
少年教護法
第一条 本法ニ於テ少年ト称スルハ十四歳ニ満タザル者ニシテ不良行為ヲ為シ又ハ不良行為ヲ為ス虞アル者ヲ謂フ
第二条 北海道及府県ハ少年教護院ヲ設置スベシ
前項少年教護院ノ数及収容定員ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
国ハ必要ノ場所ニ少年教護院ヲ設置ス
国立教護院ニハ教護事務ニ従事スル職員養成所ヲ附設スルコトヲ得
第三条 少年教護院ニ於ケル教護ノ本旨、教科、設備及職員ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四条 少年教護院内ニ少年鑑別機関ヲ設クルコトヲ得
第五条 道府県ノ設置スル少年教護院及少年鑑別機関ハ地方長官、国立少年教護院ハ内務大臣之ヲ管理ス
第六条 道府県ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ少年教護ノ為少年教護委員ヲ置クベシ
第七条 国道府県ニ非ザル者本法ニ依ル教護ヲ目的トスル少年教護院ヲ設置セントスルトキハ内務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第八条 地方長官ハ左記各号ノ一ニ該当スル者アルトキハ之ヲ少年教護院ニ入院セシムベシ
一 少年ニシテ親権又ハ後見ヲ行フモノナキ者
二 少年ニシテ親権者又ハ後見人ヨリ入院ノ出願アリタル者
三 少年審判所ヨリ送致セラレタル者
四 裁判所ノ許可ヲ得テ懲戒場ニ入ルベキ者
地方長官ハ前項第一号及第二号ニ該当スル者ニ対シ前項ノ処分ヲ為スノ外之ヲ少年教護委員ノ観察ニ付スルコトヲ得
第九条 内務大臣ハ前条第一項第一号又ハ第二号ニ掲グル者左記各号ノ一ニ該当スルトキハ之ヲ国立教護院ニ入院セシムルコトヲ得
一 性状特ニ不良ニシテ地方長官ヨリ入院ノ申請アリタル者
二 前号ニ該当セズト雖特ニ入院ノ必要アリト認メタル者
第十条 地方長官ハ第八条第一項第一号又ハ第二号ニ該当スル在院者ヲ何時ニテモ条件ヲ指定シテ仮ニ退院セシムルコトヲ得
前項ノ仮退院者ハ之ヲ家庭其ノ他適当ナル施設ニ委託シ又ハ少年教護委員ノ観察ニ付スルコトヲ得
仮退院者ハ之ヲ在院者ト看做ス
仮退院者ニシテ指定ノ条件ニ違背シタルトキハ地方長官ハ之ヲ復院セシムルコトヲ得
第十一条 少年ノ在院期間及観察期間ハ少年ノ満二十歳ニ至ル迄トス但シ第八条第三号又ハ第四号ニ該当スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二条 内務大臣又ハ地方長官ハ在院者ニ対シ教護ノ目的ヲ達シタリト認ムルトキハ之ヲ退院セシムルコトヲ得
第十三条 学校長、市町村長、少年教護委員又ハ警察署長第八条第一項第一号ニ該当スル者アリト認ムルトキハ之ヲ地方長官ニ具申スベシ
第十四条 地方長官、警察署長又ハ市町村長必要アリト認ムルトキハ第八条第一項第一号ニ該当スル者ノ処分決定ニ至ル迄一時保護ノ為適当ナル施設若ハ家庭ニ委託スルコトヲ得仍警察署長ニ於テ特ニ必要アリト認ムルトキハ五日ヲ超エザル期間仮ニ留置ヲ為スコトヲ得
前項ニ依リ警察署長ニ於テ行フ留置ハ他ノ収容者ト分離スベシ
第十五条 少年教護院長ハ在院者ニ対シ親権ヲ行フ但シ親権者又ハ後見人アル者ノ財産管理ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六条 内務大臣又ハ地方長官ハ本人又ハ扶養義務者ヨリ在院委託及一時保護ニ要シタル費用ノ全部又ハ一部ヲ徴収スルコトヲ得
前項費用ノ徴収ハ必要ニ応ジ納付義務者ノ居住地又ハ財産所在地ノ地方長官又ハ市町村長ニ之ヲ嘱託スルコトヲ得
第一項ノ費用ヲ指定ノ期限内ニ納付セザル者アルトキハ国税徴収法ノ例ニ依リ処分スルコトヲ得
第十七条 第八条乃至第十条ノ処分ヲ受ケタル者ノ親族又ハ後見人ハ入院後六箇月ヲ経過シタル場合其ノ処分ノ解除又ハ変更ヲ内務大臣又ハ地方長官ニ出願スルコトヲ得
第十八条 第八条第九条第十条又ハ第十六条第一項及第三項ノ処分ニ不服アル者及前条ノ出願ヲ許可セラレザル者ハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第十九条 道府県ノ設置スル少年教護院及少年鑑別機関、少年教護委員、一時保護及地方長官ノ為シタル委託ニ関スル費用ハ道府県ノ負担トス
市町村長第十四条ノ一時保護ヲ為シタルトキハ其ノ費用ハ市町村費ヲ以テ一時之ヲ立替フベシ
第二十条 国庫ハ前条第一項ノ規定ニ依ル道府県ノ支出ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ六分ノ一乃至二分ノ一ヲ補助ス
第七条ノ規定ニ依リ認可セラレタル少年教護院ノ支出ニ付亦前項ヲ適用ス
第二十一条 第七条ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年教護院ノ用ニ供スル土地建物ニ対シテハ地方税ヲ課セズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシメタル者ニ対シテハ此ノ限ニ在ラズ
第二十二条 内務大臣及地方長官ハ第七条ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年教護院ヲ監督シ之ガ為必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第二十三条 第七条ノ規定ニ依リ認可セラレタル少年教護院本法若ハ本法ニ基キ発スル命令又ハ認可ノ条件ニ違反シタルトキハ内務大臣ハ認可ヲ取消スコトヲ得
第二十四条 少年教護院長ハ在院中所定ノ教科ヲ履修シ性行改善シタル者ニ対シテハ其ノ退院後ニ於テ尋常小学校ノ教科ヲ修了シタル者ト認定スルコトヲ得但シ少年教護院ノ教科ハ小学校令ニ遵拠シ文部大臣ノ承認ヲ経ルコトヲ要ス
前項ノ認定ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ノ適用ニ関シテハ尋常小学校ヲ卒業シタル者ト看做ス
第二十五条 本法中町村又ハ町村費トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在テハ之ニ準ズベキモノトス
第二十六条 少年ノ教護処分ニ付セラレタル事項ハ之ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ掲載スルコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ編輯人及発行人、其ノ他ノ出版物ニ在リテハ著作者及発行者ヲ三月以下ノ禁錮又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
感化法ハ之ヲ廃止ス
少年法ニ依ル保護処分ノ実施セラレザル地区ニ限リ第一条ノ年齢ハ之ヲ十八歳未満トス
本法施行ノ際現ニ存スル国立感化院及道府県立感化院ハ之ヲ本法ニ依リ設置シタル少年教護院ト看做シ其ノ在院者ハ之ヲ本法ニ依リ入院セシメラレタルモノト看做ス
本法施行ノ際現ニ存スル代用感化院ハ之ヲ第七条ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年教護院ト看做シ其ノ在院者ニシテ感化法第五条ノ規定ニ依リ入院セシメラレタルモノハ之ヲ本法ニ依リ入院セシメラレタルモノト看做ス
本法施行ノ際道府県立感化院ノ設置ナキ道府県ハ本法施行ノ日ヨリ五年以内ニ少年教護院ヲ設置スルコトヲ要ス