第一條 本法ニ於テ少年ト稱スルハ十四歲ニ滿タザル者ニシテ不良行爲ヲ爲シ又ハ不良行爲ヲ爲ス虞アル者ヲ謂フ
國立敎護院ニハ敎護事務ニ從事スル職員養成所ヲ附設スルコトヲ得
第三條 少年敎護院ニ於ケル敎護ノ本旨、敎科、設備及職員ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 少年敎護院內ニ少年鑑別機關ヲ設クルコトヲ得
第五條 道府縣ノ設置スル少年敎護院及少年鑑別機關ハ地方長官、國立少年敎護院ハ內務大臣之ヲ管理ス
第六條 道府縣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ少年敎護ノ爲少年敎護委員ヲ置クベシ
第七條 國道府縣ニ非ザル者本法ニ依ル敎護ヲ目的トスル少年敎護院ヲ設置セントスルトキハ內務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第八條 地方長官ハ左記各號ノ一ニ該當スル者アルトキハ之ヲ少年敎護院ニ入院セシムベシ
二 少年ニシテ親權者又ハ後見人ヨリ入院ノ出願アリタル者
地方長官ハ前項第一號及第二號ニ該當スル者ニ對シ前項ノ處分ヲ爲スノ外之ヲ少年敎護委員ノ觀察ニ付スルコトヲ得
第九條 內務大臣ハ前條第一項第一號又ハ第二號ニ揭グル者左記各號ノ一ニ該當スルトキハ之ヲ國立敎護院ニ入院セシムルコトヲ得
一 性狀特ニ不良ニシテ地方長官ヨリ入院ノ申請アリタル者
二 前號ニ該當セズト雖特ニ入院ノ必要アリト認メタル者
第十條 地方長官ハ第八條第一項第一號又ハ第二號ニ該當スル在院者ヲ何時ニテモ條件ヲ指定シテ假ニ退院セシムルコトヲ得
前項ノ假退院者ハ之ヲ家庭其ノ他適當ナル施設ニ委託シ又ハ少年敎護委員ノ觀察ニ付スルコトヲ得
假退院者ニシテ指定ノ條件ニ違背シタルトキハ地方長官ハ之ヲ復院セシムルコトヲ得
第十一條 少年ノ在院期間及觀察期間ハ少年ノ滿二十歲ニ至ル迄トス但シ第八條第三號又ハ第四號ニ該當スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二條 內務大臣又ハ地方長官ハ在院者ニ對シ敎護ノ目的ヲ達シタリト認ムルトキハ之ヲ退院セシムルコトヲ得
第十三條 學校長、市町村長、少年敎護委員又ハ警察署長第八條第一項第一號ニ該當スル者アリト認ムルトキハ之ヲ地方長官ニ具申スベシ
第十四條 地方長官、警察署長又ハ市町村長必要アリト認ムルトキハ第八條第一項第一號ニ該當スル者ノ處分決定ニ至ル迄一時保護ノ爲適當ナル施設若ハ家庭ニ委託スルコトヲ得仍警察署長ニ於テ特ニ必要アリト認ムルトキハ五日ヲ超エザル期間假ニ留置ヲ爲スコトヲ得
前項ニ依リ警察署長ニ於テ行フ留置ハ他ノ收容者ト分離スベシ
第十五條 少年敎護院長ハ在院者ニ對シ親權ヲ行フ但シ親權者又ハ後見人アル者ノ財產管理ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條 內務大臣又ハ地方長官ハ本人又ハ扶養義務者ヨリ在院委託及一時保護ニ要シタル費用ノ全部又ハ一部ヲ徵收スルコトヲ得
前項費用ノ徵收ハ必要ニ應ジ納付義務者ノ居住地又ハ財產所在地ノ地方長官又ハ市町村長ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第一項ノ費用ヲ指定ノ期限內ニ納付セザル者アルトキハ國稅徵收法ノ例ニ依リ處分スルコトヲ得
第十七條 第八條乃至第十條ノ處分ヲ受ケタル者ノ親族又ハ後見人ハ入院後六箇月ヲ經過シタル場合其ノ處分ノ解除又ハ變更ヲ內務大臣又ハ地方長官ニ出願スルコトヲ得
第十八條 第八條第九條第十條又ハ第十六條第一項及第三項ノ處分ニ不服アル者及前條ノ出願ヲ許可セラレザル者ハ訴願ヲ提起スルコトヲ得
第十九條 道府縣ノ設置スル少年敎護院及少年鑑別機關、少年敎護委員、一時保護及地方長官ノ爲シタル委託ニ關スル費用ハ道府縣ノ負擔トス
市町村長第十四條ノ一時保護ヲ爲シタルトキハ其ノ費用ハ市町村費ヲ以テ一時之ヲ立替フベシ
第二十條 國庫ハ前條第一項ノ規定ニ依ル道府縣ノ支出ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ六分ノ一乃至二分ノ一ヲ補助ス
第七條ノ規定ニ依リ認可セラレタル少年敎護院ノ支出ニ付亦前項ヲ適用ス
第二十一條 第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年敎護院ノ用ニ供スル土地建物ニ對シテハ地方稅ヲ課セズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシメタル者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラズ
第二十二條 內務大臣及地方長官ハ第七條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタル少年敎護院ヲ監督シ之ガ爲必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十三條 第七條ノ規定ニ依リ認可セラレタル少年敎護院本法若ハ本法ニ基キ發スル命令又ハ認可ノ條件ニ違反シタルトキハ內務大臣ハ認可ヲ取消スコトヲ得
第二十四條 少年敎護院長ハ在院中所定ノ敎科ヲ履修シ性行改善シタル者ニ對シテハ其ノ退院後ニ於テ尋常小學校ノ敎科ヲ修了シタル者ト認定スルコトヲ得但シ少年敎護院ノ敎科ハ小學校令ニ遵據シ文部大臣ノ承認ヲ經ルコトヲ要ス
前項ノ認定ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ノ適用ニ關シテハ尋常小學校ヲ卒業シタル者ト看做ス
第二十五條 本法中町村又ハ町村費トアルハ町村制ヲ施行セザル地ニ在テハ之ニ準ズベキモノトス
第二十六條 少年ノ敎護處分ニ付セラレタル事項ハ之ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ揭載スルコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ編輯人及發行人、其ノ他ノ出版物ニ在リテハ著作者及發行者ヲ三月以下ノ禁錮又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス