第一條 奏任文官ノ任用資格試驗、外交官及領事官ノ任用資格試驗竝ニ裁判所構成法第五十八條ノ試驗ハ高等試驗ト稱シ本令ニ依リ之ヲ行フ但シ特別ノ規程アルモノハ此ノ限ニ在ラズ
第二條 高等試驗ハ每年一囘東京ニ於テ之ヲ行フ其ノ期日及場所ハ豫メ官報ヲ以テ之ヲ公告ス
第三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ高等試驗ヲ受クルコトヲ得ズ
豫備試驗ニ合格シタル者ニ非ザレバ本試驗ヲ受クルコトヲ得ズ
第五條 豫備試驗ハ受驗者ガ本試驗ヲ受クルニ相當ナル學識ヲ有スルヤ否ヤヲ考試スルヲ以テ目的トス
外國語試驗ハ英語、佛語及獨語ノ中ニ就キ受驗者ヲシテ豫メ一種ヲ選擇セシメ之ヲ行フ但シ受驗者ノ願ニ依リ他ノ外國語ヲ以テ之ニ代フルコトアルベシ
第七條 豫備試驗ヲ受ケントスル者ハ中學校ヲ卒業シタル者、文部大臣ニ於テ普通敎育ニ關シ之ト同等以上ノ學力ヲ有スト定メタル者及高等試驗委員ニ於テ普通敎育ニ關シ中學校ト同等以上ト認ムル外國ノ學校ヲ卒業シタル者ヲ除クノ外文部大臣ノ定ムル所ニ依リ國語及漢文、歷史、地理、數學竝ニ物理及化學ニ付中學校卒業程度ニ於テ行フ試驗ニ合格シタル者ナルコトヲ要ス
第八條 高等學校高等科ヲ卒リ若ハ大學豫科ヲ修了シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ學力ヲ有スト認ムル者ハ豫備試驗ヲ免ズ
第九條 本試驗ハ受驗者ガ必要ナル學識及其ノ應用能力ヲ有スルヤ否ヤヲ考試スルヲ以テ目的トス
第十條 本試驗ヲ分チテ行政科、外交科及司法科ノ三科トス
第十一條 本試驗ハ筆記及口述トス筆記試驗ニ合格シタル者ニ非ザレバ口述試驗ヲ受クルコトヲ得ズ
第十二條 民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、破產法其ノ他高等試驗委員ニ於テ必要ト認ムル科目ノ筆記試驗及口述試驗ハ受驗者ニ法文ヲ示シテ之ヲ行フ
第十三條 行政科試驗ノ筆記試驗ハ左ノ必須科目及選擇科目ニ付之ヲ行フ
行政科試驗ノ口述試驗ハ行政法及受驗者ノ受驗シタル筆記試驗ノ科目中其ノ志望ニ係ル其ノ他ノ二科目ニ付之ヲ行フ
第十四條 外交科試驗ノ筆記試驗ハ左ノ必須科目及選擇科目ニ付之ヲ行フ
外國語ハ英語、佛語、獨語、支那語及露語ノ中ニ就キ受驗者ヲシテ豫メ其ノ一種ヲ選擇セシム
受驗者ノ願ニ依リ其ノ選擇シタル外國語ノ外他ノ外國語ヲ併セ試驗スルコトアルベシ
外交科試驗ノ口述試驗ハ外國語(筆記試驗ニ於テ受驗シタルモノ)、國際公法及受驗者ノ受驗シタル筆記試驗ノ科目中其ノ志望ニ係ル其ノ他ノ二科目ニ付之ヲ行フ
第十五條 司法科試驗ノ筆記試驗ハ左ノ必須科目及選擇科目ニ付之ヲ行フ
必須科目
五 民事訴訟法又ハ刑事訴訟法(受驗者ヲシテ豫メ一種ヲ選擇セシム)
選擇科目
十一 民事訴訟法又ハ刑事訴訟法(必須科目ニ於テ受驗者ノ選擇セザリシモノ)
司法科試驗ノ口述試驗ハ受驗者ノ受驗シタル筆記試驗ノ科目中其ノ志望ニ係ル三科目ニ付之ヲ行フ但シ其ノ中一科目ハ民法又ハ刑法ナルコトヲ要ス
第十六條 前三條ニ揭グル選擇科目中心理學、社會學、政治史、經濟史其ノ他必要ト認ムル科目ニ付テハ閣令ヲ以テ其ノ範圍ヲ定ムルコトヲ得
第十七條 一ノ科ノ筆記試驗ニ合格シタル者ニ付テハ受驗者ノ願ニ依リ翌年ニ限リ其ノ科ノ筆記試驗ヲ免ズ
第十八條 一ノ科ノ本試驗ニ合格シタル者ニシテ他ノ科ノ本試驗ヲ受ケントスル者ニ付テハ受驗者ノ願ニ依リ其ノ旣ニ受驗シタル科目ノ試驗ヲ免ズ但シ行政科本試驗ヲ受ケントスル者ニ在リテハ行政法、外交科本試驗ヲ受ケントスル者ニ在リテハ國際公法、司法科本試驗ヲ受ケントスル者ニ在リテハ民法又ハ刑法(受驗者ヲシテ其ノ一ヲ志望セシム)ノ試驗ハ之ヲ免ゼズ
第十九條 高等試驗ノ合格者ヲ定ムル方法ハ高等試驗委員ノ議定スル所ニ依ル
第二十一條 不正ノ方法ニ依リ高等試驗ヲ受ケントシタル者又ハ高等試驗ニ關スル規程ニ違反シタル者ニ對シテハ其ノ試驗ヲ停止シ其ノ合格ヲ無效トス
前項ノ規定ニ該當スル者ニ對シテハ三年以內ニ於テ期間ヲ定メ高等試驗ヲ受ケシメザルコトヲ得
第二十二條 高等試驗ヲ受ケントスル者ハ手數料トシテ本試驗ノ一科ニ付十五圓ヲ納ムベシ
第二十三條 高等試驗ニ關スル細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム