高等試験令
法令番号: 勅令第十五號
公布年月日: 昭和4年3月28日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ高等試驗令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和四年三月二十七日
內閣總理大臣兼外務大臣 男爵 田中義一
司法大臣 原嘉道
文部大臣 勝田主計
勅令第十五號
高等試驗令
第一條 奏任文官ノ任用資格試驗、外交官及領事官ノ任用資格試驗竝ニ裁判所構成法第五十八條ノ試驗ハ高等試驗ト稱シ本令ニ依リ之ヲ行フ但シ特別ノ規程アルモノハ此ノ限ニ在ラズ
第二條 高等試驗ハ每年一囘東京ニ於テ之ヲ行フ其ノ期日及場所ハ豫メ官報ヲ以テ之ヲ公告ス
本試驗各科ノ試驗ハ各別ノ期日ニ之ヲ行フ
第三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ高等試驗ヲ受クルコトヲ得ズ
一 禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二 破產者ニシテ復權ヲ得ザル者
第四條 高等試驗ヲ分チテ豫備試驗及本試驗トス
豫備試驗ニ合格シタル者ニ非ザレバ本試驗ヲ受クルコトヲ得ズ
第五條 豫備試驗ハ受驗者ガ本試驗ヲ受クルニ相當ナル學識ヲ有スルヤ否ヤヲ考試スルヲ以テ目的トス
第六條 豫備試驗ハ論文及外國語ニ付之ヲ行フ
外國語試驗ハ英語、佛語及獨語ノ中ニ就キ受驗者ヲシテ豫メ一種ヲ選擇セシメ之ヲ行フ但シ受驗者ノ願ニ依リ他ノ外國語ヲ以テ之ニ代フルコトアルベシ
第七條 豫備試驗ヲ受ケントスル者ハ中學校ヲ卒業シタル者、文部大臣ニ於テ普通敎育ニ關シ之ト同等以上ノ學力ヲ有スト定メタル者及高等試驗委員ニ於テ普通敎育ニ關シ中學校ト同等以上ト認ムル外國ノ學校ヲ卒業シタル者ヲ除クノ外文部大臣ノ定ムル所ニ依リ國語及漢文、歷史、地理、數學竝ニ物理及化學ニ付中學校卒業程度ニ於テ行フ試驗ニ合格シタル者ナルコトヲ要ス
第八條 高等學校高等科ヲ卒リ若ハ大學豫科ヲ修了シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ學力ヲ有スト認ムル者ハ豫備試驗ヲ免ズ
豫備試驗ニ合格シタル者ハ爾後豫備試驗ヲ免ズ
第九條 本試驗ハ受驗者ガ必要ナル學識及其ノ應用能力ヲ有スルヤ否ヤヲ考試スルヲ以テ目的トス
第十條 本試驗ヲ分チテ行政科、外交科及司法科ノ三科トス
受驗者ハ二科以上ノ試驗ヲ併セ受クルコトヲ得
第十一條 本試驗ハ筆記及口述トス筆記試驗ニ合格シタル者ニ非ザレバ口述試驗ヲ受クルコトヲ得ズ
第十二條 民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、破產法其ノ他高等試驗委員ニ於テ必要ト認ムル科目ノ筆記試驗及口述試驗ハ受驗者ニ法文ヲ示シテ之ヲ行フ
第十三條 行政科試驗ノ筆記試驗ハ左ノ必須科目及選擇科目ニ付之ヲ行フ
必須科目
一 憲法
二 行政法
三 民法
四 經濟學
選擇科目
一 哲學槪論
二 倫理學
三 論理學
四 心理學
五 社會學
六 政治學
七 國史
八 政治史
九 經濟史
十 國文及漢文
十一 商法
十二 刑法
十三 國際公法
十四 民事訴訟法
十五 刑事訴訟法
十六 財政學
十七 農業政策
十八 商業政策
十九 工業政策
二十 社會政策
選擇科目ハ受驗者ヲシテ豫メ三科目ヲ選擇セシム
行政科試驗ノ口述試驗ハ行政法及受驗者ノ受驗シタル筆記試驗ノ科目中其ノ志望ニ係ル其ノ他ノ二科目ニ付之ヲ行フ
第十四條 外交科試驗ノ筆記試驗ハ左ノ必須科目及選擇科目ニ付之ヲ行フ
必須科目
一 憲法
二 國際公法
三 經濟學
四 外國語
外國語ハ英語、佛語、獨語、支那語及露語ノ中ニ就キ受驗者ヲシテ豫メ其ノ一種ヲ選擇セシム
受驗者ノ願ニ依リ其ノ選擇シタル外國語ノ外他ノ外國語ヲ併セ試驗スルコトアルベシ
選擇科目
一 哲學槪論
二 倫理學
三 論理學
四 心理學
五 社會學
六 政治學
七 國史
八 政治史
九 經濟史
十 外交史
十一 國文及漢文
十二 民法
十三 商法
十四 刑法
十五 行政法
十六 國際私法
十七 財政學
十八 商業政策
十九 商業學
選擇科目ハ受驗者ヲシテ豫メ三科目ヲ選擇セシム
外交科試驗ノ口述試驗ハ外國語(筆記試驗ニ於テ受驗シタルモノ)、國際公法及受驗者ノ受驗シタル筆記試驗ノ科目中其ノ志望ニ係ル其ノ他ノ二科目ニ付之ヲ行フ
第十五條 司法科試驗ノ筆記試驗ハ左ノ必須科目及選擇科目ニ付之ヲ行フ
必須科目
一 憲法
二 民法
三 商法
四 刑法
五 民事訴訟法又ハ刑事訴訟法(受驗者ヲシテ豫メ一種ヲ選擇セシム)
選擇科目
一 哲學槪論
二 倫理學
三 論理學
四 心理學
五 社會學
六 國史
七 國文及漢文
八 行政法
九 破產法
十 國際公法
十一 民事訴訟法又ハ刑事訴訟法(必須科目ニ於テ受驗者ノ選擇セザリシモノ)
十二 國際私法
十三 經濟學
十四 社會政策
十五 刑事政策
選擇科目ハ受驗者ヲシテ豫メ二科目ヲ選擇セシム
司法科試驗ノ口述試驗ハ受驗者ノ受驗シタル筆記試驗ノ科目中其ノ志望ニ係ル三科目ニ付之ヲ行フ但シ其ノ中一科目ハ民法又ハ刑法ナルコトヲ要ス
第十六條 前三條ニ揭グル選擇科目中心理學、社會學、政治史、經濟史其ノ他必要ト認ムル科目ニ付テハ閣令ヲ以テ其ノ範圍ヲ定ムルコトヲ得
第十七條 一ノ科ノ筆記試驗ニ合格シタル者ニ付テハ受驗者ノ願ニ依リ翌年ニ限リ其ノ科ノ筆記試驗ヲ免ズ
第十八條 一ノ科ノ本試驗ニ合格シタル者ニシテ他ノ科ノ本試驗ヲ受ケントスル者ニ付テハ受驗者ノ願ニ依リ其ノ旣ニ受驗シタル科目ノ試驗ヲ免ズ但シ行政科本試驗ヲ受ケントスル者ニ在リテハ行政法、外交科本試驗ヲ受ケントスル者ニ在リテハ國際公法、司法科本試驗ヲ受ケントスル者ニ在リテハ民法又ハ刑法(受驗者ヲシテ其ノ一ヲ志望セシム)ノ試驗ハ之ヲ免ゼズ
第十九條 高等試驗ノ合格者ヲ定ムル方法ハ高等試驗委員ノ議定スル所ニ依ル
第二十條 高等試驗ノ合格者ニハ合格證書ヲ付與ス
第二十一條 不正ノ方法ニ依リ高等試驗ヲ受ケントシタル者又ハ高等試驗ニ關スル規程ニ違反シタル者ニ對シテハ其ノ試驗ヲ停止シ其ノ合格ヲ無效トス
前項ノ規定ニ該當スル者ニ對シテハ三年以內ニ於テ期間ヲ定メ高等試驗ヲ受ケシメザルコトヲ得
第二十二條 高等試驗ヲ受ケントスル者ハ手數料トシテ本試驗ノ一科ニ付十五圓ヲ納ムベシ
第二十三條 高等試驗ニ關スル細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本令ハ昭和四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
從前ノ規定ニ依リ一ノ科ノ筆記試驗ニ合格シタル者ニ對シ第十七條ノ規定ヲ適用シテ其ノ科ノ口述試驗ヲ行フ場合ニ於テ其ノ筆記試驗ニ於テ受驗シタル科目中商業史アルトキハ之ヲ本令ニ依ル筆記試驗ノ科目ト看做ス
文官高等試驗ニ合格シタル者ハ之ヲ本令ニ依リ行政科試驗ニ合格シタルモノト看做ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ高等試験令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和四年三月二十七日
内閣総理大臣兼外務大臣 男爵 田中義一
司法大臣 原嘉道
文部大臣 勝田主計
勅令第十五号
高等試験令
第一条 奏任文官ノ任用資格試験、外交官及領事官ノ任用資格試験並ニ裁判所構成法第五十八条ノ試験ハ高等試験ト称シ本令ニ依リ之ヲ行フ但シ特別ノ規程アルモノハ此ノ限ニ在ラズ
第二条 高等試験ハ毎年一回東京ニ於テ之ヲ行フ其ノ期日及場所ハ予メ官報ヲ以テ之ヲ公告ス
本試験各科ノ試験ハ各別ノ期日ニ之ヲ行フ
第三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ高等試験ヲ受クルコトヲ得ズ
一 禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者
二 破産者ニシテ復権ヲ得ザル者
第四条 高等試験ヲ分チテ予備試験及本試験トス
予備試験ニ合格シタル者ニ非ザレバ本試験ヲ受クルコトヲ得ズ
第五条 予備試験ハ受験者ガ本試験ヲ受クルニ相当ナル学識ヲ有スルヤ否ヤヲ考試スルヲ以テ目的トス
第六条 予備試験ハ論文及外国語ニ付之ヲ行フ
外国語試験ハ英語、仏語及独語ノ中ニ就キ受験者ヲシテ予メ一種ヲ選択セシメ之ヲ行フ但シ受験者ノ願ニ依リ他ノ外国語ヲ以テ之ニ代フルコトアルベシ
第七条 予備試験ヲ受ケントスル者ハ中学校ヲ卒業シタル者、文部大臣ニ於テ普通教育ニ関シ之ト同等以上ノ学力ヲ有スト定メタル者及高等試験委員ニ於テ普通教育ニ関シ中学校ト同等以上ト認ムル外国ノ学校ヲ卒業シタル者ヲ除クノ外文部大臣ノ定ムル所ニ依リ国語及漢文、歴史、地理、数学並ニ物理及化学ニ付中学校卒業程度ニ於テ行フ試験ニ合格シタル者ナルコトヲ要ス
第八条 高等学校高等科ヲ卒リ若ハ大学予科ヲ修了シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ学力ヲ有スト認ムル者ハ予備試験ヲ免ズ
予備試験ニ合格シタル者ハ爾後予備試験ヲ免ズ
第九条 本試験ハ受験者ガ必要ナル学識及其ノ応用能力ヲ有スルヤ否ヤヲ考試スルヲ以テ目的トス
第十条 本試験ヲ分チテ行政科、外交科及司法科ノ三科トス
受験者ハ二科以上ノ試験ヲ併セ受クルコトヲ得
第十一条 本試験ハ筆記及口述トス筆記試験ニ合格シタル者ニ非ザレバ口述試験ヲ受クルコトヲ得ズ
第十二条 民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、破産法其ノ他高等試験委員ニ於テ必要ト認ムル科目ノ筆記試験及口述試験ハ受験者ニ法文ヲ示シテ之ヲ行フ
第十三条 行政科試験ノ筆記試験ハ左ノ必須科目及選択科目ニ付之ヲ行フ
必須科目
一 憲法
二 行政法
三 民法
四 経済学
選択科目
一 哲学概論
二 倫理学
三 論理学
四 心理学
五 社会学
六 政治学
七 国史
八 政治史
九 経済史
十 国文及漢文
十一 商法
十二 刑法
十三 国際公法
十四 民事訴訟法
十五 刑事訴訟法
十六 財政学
十七 農業政策
十八 商業政策
十九 工業政策
二十 社会政策
選択科目ハ受験者ヲシテ予メ三科目ヲ選択セシム
行政科試験ノ口述試験ハ行政法及受験者ノ受験シタル筆記試験ノ科目中其ノ志望ニ係ル其ノ他ノ二科目ニ付之ヲ行フ
第十四条 外交科試験ノ筆記試験ハ左ノ必須科目及選択科目ニ付之ヲ行フ
必須科目
一 憲法
二 国際公法
三 経済学
四 外国語
外国語ハ英語、仏語、独語、支那語及露語ノ中ニ就キ受験者ヲシテ予メ其ノ一種ヲ選択セシム
受験者ノ願ニ依リ其ノ選択シタル外国語ノ外他ノ外国語ヲ併セ試験スルコトアルベシ
選択科目
一 哲学概論
二 倫理学
三 論理学
四 心理学
五 社会学
六 政治学
七 国史
八 政治史
九 経済史
十 外交史
十一 国文及漢文
十二 民法
十三 商法
十四 刑法
十五 行政法
十六 国際私法
十七 財政学
十八 商業政策
十九 商業学
選択科目ハ受験者ヲシテ予メ三科目ヲ選択セシム
外交科試験ノ口述試験ハ外国語(筆記試験ニ於テ受験シタルモノ)、国際公法及受験者ノ受験シタル筆記試験ノ科目中其ノ志望ニ係ル其ノ他ノ二科目ニ付之ヲ行フ
第十五条 司法科試験ノ筆記試験ハ左ノ必須科目及選択科目ニ付之ヲ行フ
必須科目
一 憲法
二 民法
三 商法
四 刑法
五 民事訴訟法又ハ刑事訴訟法(受験者ヲシテ予メ一種ヲ選択セシム)
選択科目
一 哲学概論
二 倫理学
三 論理学
四 心理学
五 社会学
六 国史
七 国文及漢文
八 行政法
九 破産法
十 国際公法
十一 民事訴訟法又ハ刑事訴訟法(必須科目ニ於テ受験者ノ選択セザリシモノ)
十二 国際私法
十三 経済学
十四 社会政策
十五 刑事政策
選択科目ハ受験者ヲシテ予メ二科目ヲ選択セシム
司法科試験ノ口述試験ハ受験者ノ受験シタル筆記試験ノ科目中其ノ志望ニ係ル三科目ニ付之ヲ行フ但シ其ノ中一科目ハ民法又ハ刑法ナルコトヲ要ス
第十六条 前三条ニ掲グル選択科目中心理学、社会学、政治史、経済史其ノ他必要ト認ムル科目ニ付テハ閣令ヲ以テ其ノ範囲ヲ定ムルコトヲ得
第十七条 一ノ科ノ筆記試験ニ合格シタル者ニ付テハ受験者ノ願ニ依リ翌年ニ限リ其ノ科ノ筆記試験ヲ免ズ
第十八条 一ノ科ノ本試験ニ合格シタル者ニシテ他ノ科ノ本試験ヲ受ケントスル者ニ付テハ受験者ノ願ニ依リ其ノ既ニ受験シタル科目ノ試験ヲ免ズ但シ行政科本試験ヲ受ケントスル者ニ在リテハ行政法、外交科本試験ヲ受ケントスル者ニ在リテハ国際公法、司法科本試験ヲ受ケントスル者ニ在リテハ民法又ハ刑法(受験者ヲシテ其ノ一ヲ志望セシム)ノ試験ハ之ヲ免ゼズ
第十九条 高等試験ノ合格者ヲ定ムル方法ハ高等試験委員ノ議定スル所ニ依ル
第二十条 高等試験ノ合格者ニハ合格証書ヲ付与ス
第二十一条 不正ノ方法ニ依リ高等試験ヲ受ケントシタル者又ハ高等試験ニ関スル規程ニ違反シタル者ニ対シテハ其ノ試験ヲ停止シ其ノ合格ヲ無効トス
前項ノ規定ニ該当スル者ニ対シテハ三年以内ニ於テ期間ヲ定メ高等試験ヲ受ケシメザルコトヲ得
第二十二条 高等試験ヲ受ケントスル者ハ手数料トシテ本試験ノ一科ニ付十五円ヲ納ムベシ
第二十三条 高等試験ニ関スル細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本令ハ昭和四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
従前ノ規定ニ依リ一ノ科ノ筆記試験ニ合格シタル者ニ対シ第十七条ノ規定ヲ適用シテ其ノ科ノ口述試験ヲ行フ場合ニ於テ其ノ筆記試験ニ於テ受験シタル科目中商業史アルトキハ之ヲ本令ニ依ル筆記試験ノ科目ト看做ス
文官高等試験ニ合格シタル者ハ之ヲ本令ニ依リ行政科試験ニ合格シタルモノト看做ス