保税工場法
法令番号: 法律第四十五號
公布年月日: 昭和2年4月1日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル保稅工場法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月三十一日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
大藏大臣 片岡直溫
法律第四十五號
保稅工場法
第一條 保稅工場ハ外國貨物ニ加工シ若ハ之ヲ原料トシテ製造ヲ爲シ又ハ外國貨物ノ改裝、仕分其ノ他ノ手入ヲ爲ス工場トス貨物ノ混合ハ之ヲ貨物ノ製造ト看做ス
第二條 保稅工場ニ於テハ稅關長ノ許可シタル範圍內ニ於テ內國貨物ニ加工シ又ハ之ヲ原料トシテ製造ヲ爲スコトヲ得
第三條 保稅工場ニ於ケル作業ノ原料ニハ內國貨物ト外國貨物トヲ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ內國貨物ト外國貨物トヲ使用シタル貨物ハ之ヲ外國貨物トス
第四條 保稅工場ニ於ケル作業及貨物ノ種類ハ稅關長之ヲ定ム
第五條 保稅工場ノ外國貨物ノ輸入稅ハ輸入ノ時ノ性質及數量ニ依リ之ヲ徵收ス但シ命令ヲ以テ指定シタル外國貨物ニシテ作業ノ際其ノ原料ニ付稅關ノ檢査ヲ受ケタルモノノ輸入稅ハ命令ノ定ムル所ニ依リ檢查ノ時ノ原料ノ性質及數量ニ依リ之ヲ徵收ス
前項但書ノ場合ニ於テハ徵收スベキ輸入稅ノ外命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ利子ニ相當スル金額ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ徵收スル金額ハ之ヲ輸入稅ト看做ス
第六條 保稅工場ノ貨物藏置期間ハ移入許可ノ日ヨリ一年トス但シ稅關長ハ特別ノ事由アリト認ムル場合ニ於テハ更ニ一年ヲ超エザル期間內ニ於テ之ヲ延長スルコトヲ得
前項ノ期間ハ他ノ保稅工場ヨリ移入シタル貨物ニ付テハ最初ノ移入許可ノ日ヨリ之ヲ計算ス
第七條 稅關官吏ハ取締上必要アリト認ムルトキハ保稅工場ニ出入スル者ノ身邊搜索ヲ爲スコトヲ得
第八條 私設保稅工場ヲ設置セントスル者ハ稅關長ノ特許ヲ受クベシ
第九條 私設保稅工場ノ使用規則及使用料ハ稅關長ノ認可ヲ受ケ之ヲ定ムベシ
第十條 保稅倉庫法第五條ノ二、第九條ノ二、第九條ノ三、第十九條、第二十條及第二十五條乃至第三十條ノ規定ハ保稅工場ニ之ヲ準用ス
第十一條 關稅法第三條中收容ニ關スル規定竝同法第四十七條、第四十八條及第五十條乃至第五十二條ノ規定ハ本法ニ依リ收容シタル貨物ニ之ヲ準用ス
第十二條 第二條又ハ第四條ノ規定ニ違反シテ作業ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 許可ヲ受ケズシテ保稅工場ニ貨物ヲ移入シ又ハ保稅工場ヨリ貨物ヲ移出シタル者
二 第七條ノ搜索又ハ第十條ニ於テ準用スル保稅倉庫法第二十五條ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
三 認可ヲ受ケタル使用規則ニ依ラズシテ保稅工場ヲ使用セシメ又ハ認可ヲ受ケザル使用料ヲ徵シタル者
第十四條 私設保稅工場設置ノ特許ヲ受ケタル者又ハ輸出若ハ輸入ノ業ヲ營ム者ノ代理人又ハ使用人ガ其ノ業務ニ關シ第十二條又ハ前條ノ規定ニ依リ處罰セラルベキトキハ其ノ特許ヲ受ケタル者又ハ營業者ヲ處罰ス但シ特許ヲ受ケタル者又ハ營業者ガ其ノ代理人又ハ使用人ノ監督ニ付相當ノ注意ヲ爲シタルコトヲ證明スル場合及稅關貨物取扱人ガ貨物ノ取扱ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
稅關貨物取扱人ノ代理人、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第十二條又ハ前條ノ規定ニ依リ處罰セラルベキトキハ稅關貨物取扱人ヲ處罰ス
第十五條 前條ノ場合ニ於テ特許ヲ受ケタル者、營業者又ハ稅關貨物取扱人ガ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ヲ處罰ス但シ業務ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第六十三條及第六十六條ノ例ヲ用ヒズ但シ第十三條第二號ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十七條 犯則事件ノ調査及處分ニ關シテハ關稅法ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之テ定ム
假置場法ハ之ヲ廢止ス
舊法ニ依リテ特許セラレタル私設假置場ハ之ヲ本法ニ依リテ特許セラレタル私設保稅工場ト看做シ舊法ニ依リテ認可セラレタル貨物藏置規則及庫敷料ハ之ヲ本法ニ依リテ認可セラレタル使用規則及使用料ト看做ス
舊法ニ依リテ爲シタル處分及手續ハ本法中之ニ相當スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス
舊法ニ依リテ假置場ニ藏置シタル貨物ニシテ引續キ保稅工場ニ在ル貨物ノ藏置期間ハ最初ノ移入免許ノ日ヨリ一年トス但シ之ヨリ長キ期間ヲ認メラレタル貨物ニ付テハ其ノ期間ニ依ル
前項ノ貨物ノ輸入稅ハ仍從前ノ例ニ依リ之ヲ徵收ス
他ノ法令中稅關假置場又ハ假置場トアルハ保稅工場トス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル保税工場法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月三十一日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
大蔵大臣 片岡直温
法律第四十五号
保税工場法
第一条 保税工場ハ外国貨物ニ加工シ若ハ之ヲ原料トシテ製造ヲ為シ又ハ外国貨物ノ改装、仕分其ノ他ノ手入ヲ為ス工場トス貨物ノ混合ハ之ヲ貨物ノ製造ト看做ス
第二条 保税工場ニ於テハ税関長ノ許可シタル範囲内ニ於テ内国貨物ニ加工シ又ハ之ヲ原料トシテ製造ヲ為スコトヲ得
第三条 保税工場ニ於ケル作業ノ原料ニハ内国貨物ト外国貨物トヲ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ内国貨物ト外国貨物トヲ使用シタル貨物ハ之ヲ外国貨物トス
第四条 保税工場ニ於ケル作業及貨物ノ種類ハ税関長之ヲ定ム
第五条 保税工場ノ外国貨物ノ輸入税ハ輸入ノ時ノ性質及数量ニ依リ之ヲ徴収ス但シ命令ヲ以テ指定シタル外国貨物ニシテ作業ノ際其ノ原料ニ付税関ノ検査ヲ受ケタルモノノ輸入税ハ命令ノ定ムル所ニ依リ検査ノ時ノ原料ノ性質及数量ニ依リ之ヲ徴収ス
前項但書ノ場合ニ於テハ徴収スベキ輸入税ノ外命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ利子ニ相当スル金額ヲ徴収スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ徴収スル金額ハ之ヲ輸入税ト看做ス
第六条 保税工場ノ貨物蔵置期間ハ移入許可ノ日ヨリ一年トス但シ税関長ハ特別ノ事由アリト認ムル場合ニ於テハ更ニ一年ヲ超エザル期間内ニ於テ之ヲ延長スルコトヲ得
前項ノ期間ハ他ノ保税工場ヨリ移入シタル貨物ニ付テハ最初ノ移入許可ノ日ヨリ之ヲ計算ス
第七条 税関官吏ハ取締上必要アリト認ムルトキハ保税工場ニ出入スル者ノ身辺捜索ヲ為スコトヲ得
第八条 私設保税工場ヲ設置セントスル者ハ税関長ノ特許ヲ受クベシ
第九条 私設保税工場ノ使用規則及使用料ハ税関長ノ認可ヲ受ケ之ヲ定ムベシ
第十条 保税倉庫法第五条ノ二、第九条ノ二、第九条ノ三、第十九条、第二十条及第二十五条乃至第三十条ノ規定ハ保税工場ニ之ヲ準用ス
第十一条 関税法第三条中収容ニ関スル規定並同法第四十七条、第四十八条及第五十条乃至第五十二条ノ規定ハ本法ニ依リ収容シタル貨物ニ之ヲ準用ス
第十二条 第二条又ハ第四条ノ規定ニ違反シテ作業ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 許可ヲ受ケズシテ保税工場ニ貨物ヲ移入シ又ハ保税工場ヨリ貨物ヲ移出シタル者
二 第七条ノ捜索又ハ第十条ニ於テ準用スル保税倉庫法第二十五条ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
三 認可ヲ受ケタル使用規則ニ依ラズシテ保税工場ヲ使用セシメ又ハ認可ヲ受ケザル使用料ヲ徴シタル者
第十四条 私設保税工場設置ノ特許ヲ受ケタル者又ハ輸出若ハ輸入ノ業ヲ営ム者ノ代理人又ハ使用人ガ其ノ業務ニ関シ第十二条又ハ前条ノ規定ニ依リ処罰セラルベキトキハ其ノ特許ヲ受ケタル者又ハ営業者ヲ処罰ス但シ特許ヲ受ケタル者又ハ営業者ガ其ノ代理人又ハ使用人ノ監督ニ付相当ノ注意ヲ為シタルコトヲ証明スル場合及税関貨物取扱人ガ貨物ノ取扱ヲ為シタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
税関貨物取扱人ノ代理人、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ第十二条又ハ前条ノ規定ニ依リ処罰セラルベキトキハ税関貨物取扱人ヲ処罰ス
第十五条 前条ノ場合ニ於テ特許ヲ受ケタル者、営業者又ハ税関貨物取扱人ガ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ヲ処罰ス但シ業務ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十六条 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第六十三条及第六十六条ノ例ヲ用ヒズ但シ第十三条第二号ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十七条 犯則事件ノ調査及処分ニ関シテハ関税法ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之テ定ム
仮置場法ハ之ヲ廃止ス
旧法ニ依リテ特許セラレタル私設仮置場ハ之ヲ本法ニ依リテ特許セラレタル私設保税工場ト看做シ旧法ニ依リテ認可セラレタル貨物蔵置規則及庫敷料ハ之ヲ本法ニ依リテ認可セラレタル使用規則及使用料ト看做ス
旧法ニ依リテ為シタル処分及手続ハ本法中之ニ相当スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ為シタルモノト看做ス
旧法ニ依リテ仮置場ニ蔵置シタル貨物ニシテ引続キ保税工場ニ在ル貨物ノ蔵置期間ハ最初ノ移入免許ノ日ヨリ一年トス但シ之ヨリ長キ期間ヲ認メラレタル貨物ニ付テハ其ノ期間ニ依ル
前項ノ貨物ノ輸入税ハ仍従前ノ例ニ依リ之ヲ徴収ス
他ノ法令中税関仮置場又ハ仮置場トアルハ保税工場トス