借地借家調停法
法令番号: 法律第四十一號
公布年月日: 大正11年4月12日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル借地借家調停法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年四月十一日
內閣總理大臣 子爵 高橋是淸
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第四十一號
借地借家調停法
第一條 土地又ハ建物ノ貸借、地代、家賃其ノ他借地借家關係ニ付爭議ヲ生シタルトキハ當事者ハ爭議ノ目的タル土地又ハ建物ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
當事者ハ合意ヲ以テ前項ノ區裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第一項ニ於テ借地借家ト稱スルハ借地法及借家法ニ於ケル借地借家ヲ謂フ
第二條 調停ノ申立ハ爭議ノ實情ヲ明ニシテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三條 當事者義務ノ囘避其ノ他不當ノ目的ヲ以テ濫ニ調停ノ申立ヲ爲シタリト認ムルトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第四條 爭議ノ目的タル土地又ハ建物カ數個ノ裁判所ノ管轄區域內ニ存スル場合ニ於テ調停ノ申立ヲ受ケタル地方裁判所又ハ區裁判所相當ト認ムルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ他ノ管轄地方裁判所又ハ管轄區裁判所ニ移送スルコトヲ得管轄權ナキ裁判所カ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同シ
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五條 調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ付訴訟カ繫屬スルトキハ調停ノ終了ニ至ル迄訴訟手續ヲ中止ス
第六條 裁判所ハ期日ヲ定メ調停申立人及相手方ヲ呼出スヘシ此ノ場合ニ於テハ調停ノ結果ニ付利害關係ヲ有スル者ノ參加ヲ求ムルコトヲ得
第七條 當事者及利害關係人ハ自身出頭スルコトヲ要ス但シ已ムコトヲ得サル事由アル場合ニ於テハ裁判所ノ許可ヲ受ケ代理人ヲシテ出頭セシムルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第八條 調停手續ハ之ヲ公開セス但シ裁判所ハ相當ト認ムル者ノ傍聽ヲ許スコトヲ得
第九條 費用ヲ要スル行爲ニ付テハ當事者ノ一方又ハ雙方ヲシテ其ノ費用ヲ豫納セシムルコトヲ得
第十條 申立其ノ他ノ申述ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ爲ス場合ニ於テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第十一條 調停ニ付テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第十二條 調停ハ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス
第十三條 裁判所ハ調停前調停ノ爲必要ト認ムル處分ヲ命スルコトヲ得
第十四條 裁判所調停ノ申立ヲ受理シタルトキハ調停委員會ヲ開クコトヲ得
當事者雙方ノ申立アルトキハ裁判所ハ調停委員會ヲ開クコトヲ要ス
第十五條 調停委員會ハ調停主任一人及調停委員二人以上ヲ以テ之ヲ組織ス
第十六條 調停主任ハ判事ノ中ヨリ每年豫メ地方裁判所長之ヲ指定ス
調停委員ハ特別ノ知識經驗アル者ニ就キ每年豫メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ當事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス
第十七條 調停委員會ハ當事者ノ意見ヲ聽キ適當ト認ムル者ヲシテ調停ノ補助ヲ爲サシムルコトヲ得
第十八條 調停委員及前條ノ規定ニ依リ調停ノ補助ヲ爲シタル者ニハ旅費、日當及止宿料ヲ給ス
第十九條 調停委員會ニ於ケル調停手續ハ調停主任之ヲ指揮ス
第二十條 調停委員會ノ決議ハ調停委員ノ過半數ノ意見ニ依ル可否同數ナルトキハ調停主任ノ決スル所ニ依ル
第二十一條 調停委員會ノ評議ハ之ヲ祕密トス
第二十二條 調停委員會ヲ開キタル場合ニ於テハ第六條、第七條第一項但書第二項、第八條但書及第十三條ニ規定スル裁判所ノ權限ハ調停委員會ニ屬ス
第二十三條 調停委員會ハ當事者又ハ利害關係人ノ陳述ヲ聽キ且必要ト認ムルトキハ證據調ヲ爲スコトヲ得
調停委員會ハ調停主任ヲシテ證據調ヲ爲サシメ又ハ之ヲ區裁判所ニ囑託スルコトヲ得
證據調ニ付テハ民事訴訟法ヲ準用ス
證人及鑑定人ノ受クヘキ旅費、日當及止宿料ニ付テハ民事訴訟費用法ヲ準用ス
第二十四條 期日ニ於テ調停成ラサルトキハ調停委員會ハ爭議ノ目的タル事項及手續ノ費用ニ付適當ト認ムル調停條項ヲ定メ其ノ調書ノ正本ヲ當事者ニ送付スルコトヲ要ス
當事者カ前項ノ正本ノ送付ヲ受ケタル後一月內ニ調停委員會ニ異議ヲ述ヘサルトキハ調停ニ服シタルモノト看做ス
調停委員會ハ申立ニ因リ前項ノ期間ヲ伸長スルコトヲ得
當事者カ異議ヲ述ヘタルトキハ調停委員會ハ其ノ旨ヲ相手方ニ通知スルコトヲ要ス
第二十五條 調停委員會第三條ニ規定スル事由アリト認ムルトキハ調停ヲ爲ササルコトヲ得
第二十六條 調停成リタルトキ又ハ第二十四條第二項ノ規定ニ依リ當事者カ調停ニ服シタルモノト看做サレタルトキハ裁判所ハ調停主任ノ報告ヲ聽キ調停ノ認否ニ付決定ヲ爲スコトヲ要ス
調停認可ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
調停不認可ノ決定ニ對シテハ民事訴訟法ニ從ヒ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第二十七條 裁判所ハ調停カ著ク公正ナラスト認ムル場合ニ非サレハ調停不認可ノ決定ヲ爲スコトヲ得ス
第二十八條 調停委員會ヲ開キタル場合ニ於テハ調停ハ認可決定アリタルトキニ限リ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス
第二十九條 調停ノ申立ヲ爲スニハ手數料ヲ納付スルコトヲ要ス
第三十條 當事者又ハ利害關係人ハ手數料ヲ納付シテ記錄ノ閱覽若ハ謄寫又ハ其ノ正本、謄本、抄本若ハ事件ニ關スル證明書ノ付與ヲ裁判所書記ニ求ムルコトヲ得但シ當事者カ事件ノ繫屬中記錄ノ閱覽又ハ謄寫ヲ爲ス場合ニ於テハ手數料ヲ納付スルコトヲ要セス
第三十一條 第十八條ノ旅費、日當及止宿料竝前二條ノ手數料ノ額ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ地區ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル借地借家調停法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年四月十一日
内閣総理大臣 子爵 高橋是清
司法大臣 伯爵 大木遠吉
法律第四十一号
借地借家調停法
第一条 土地又ハ建物ノ貸借、地代、家賃其ノ他借地借家関係ニ付争議ヲ生シタルトキハ当事者ハ争議ノ目的タル土地又ハ建物ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ニ調停ノ申立ヲ為スコトヲ得
当事者ハ合意ヲ以テ前項ノ区裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ調停ノ申立ヲ為スコトヲ得
第一項ニ於テ借地借家ト称スルハ借地法及借家法ニ於ケル借地借家ヲ謂フ
第二条 調停ノ申立ハ争議ノ実情ヲ明ニシテ之ヲ為スコトヲ要ス
第三条 当事者義務ノ回避其ノ他不当ノ目的ヲ以テ濫ニ調停ノ申立ヲ為シタリト認ムルトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第四条 争議ノ目的タル土地又ハ建物カ数個ノ裁判所ノ管轄区域内ニ存スル場合ニ於テ調停ノ申立ヲ受ケタル地方裁判所又ハ区裁判所相当ト認ムルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ他ノ管轄地方裁判所又ハ管轄区裁判所ニ移送スルコトヲ得管轄権ナキ裁判所カ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同シ
前項ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第五条 調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ付訴訟カ繋属スルトキハ調停ノ終了ニ至ル迄訴訟手続ヲ中止ス
第六条 裁判所ハ期日ヲ定メ調停申立人及相手方ヲ呼出スヘシ此ノ場合ニ於テハ調停ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル者ノ参加ヲ求ムルコトヲ得
第七条 当事者及利害関係人ハ自身出頭スルコトヲ要ス但シ已ムコトヲ得サル事由アル場合ニ於テハ裁判所ノ許可ヲ受ケ代理人ヲシテ出頭セシムルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第八条 調停手続ハ之ヲ公開セス但シ裁判所ハ相当ト認ムル者ノ傍聴ヲ許スコトヲ得
第九条 費用ヲ要スル行為ニ付テハ当事者ノ一方又ハ双方ヲシテ其ノ費用ヲ予納セシムルコトヲ得
第十条 申立其ノ他ノ申述ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ為ス場合ニ於テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第十一条 調停ニ付テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第十二条 調停ハ裁判上ノ和解ト同一ノ効力ヲ有ス
第十三条 裁判所ハ調停前調停ノ為必要ト認ムル処分ヲ命スルコトヲ得
第十四条 裁判所調停ノ申立ヲ受理シタルトキハ調停委員会ヲ開クコトヲ得
当事者双方ノ申立アルトキハ裁判所ハ調停委員会ヲ開クコトヲ要ス
第十五条 調停委員会ハ調停主任一人及調停委員二人以上ヲ以テ之ヲ組織ス
第十六条 調停主任ハ判事ノ中ヨリ毎年予メ地方裁判所長之ヲ指定ス
調停委員ハ特別ノ知識経験アル者ニ就キ毎年予メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ当事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス
第十七条 調停委員会ハ当事者ノ意見ヲ聴キ適当ト認ムル者ヲシテ調停ノ補助ヲ為サシムルコトヲ得
第十八条 調停委員及前条ノ規定ニ依リ調停ノ補助ヲ為シタル者ニハ旅費、日当及止宿料ヲ給ス
第十九条 調停委員会ニ於ケル調停手続ハ調停主任之ヲ指揮ス
第二十条 調停委員会ノ決議ハ調停委員ノ過半数ノ意見ニ依ル可否同数ナルトキハ調停主任ノ決スル所ニ依ル
第二十一条 調停委員会ノ評議ハ之ヲ秘密トス
第二十二条 調停委員会ヲ開キタル場合ニ於テハ第六条、第七条第一項但書第二項、第八条但書及第十三条ニ規定スル裁判所ノ権限ハ調停委員会ニ属ス
第二十三条 調停委員会ハ当事者又ハ利害関係人ノ陳述ヲ聴キ且必要ト認ムルトキハ証拠調ヲ為スコトヲ得
調停委員会ハ調停主任ヲシテ証拠調ヲ為サシメ又ハ之ヲ区裁判所ニ嘱託スルコトヲ得
証拠調ニ付テハ民事訴訟法ヲ準用ス
証人及鑑定人ノ受クヘキ旅費、日当及止宿料ニ付テハ民事訴訟費用法ヲ準用ス
第二十四条 期日ニ於テ調停成ラサルトキハ調停委員会ハ争議ノ目的タル事項及手続ノ費用ニ付適当ト認ムル調停条項ヲ定メ其ノ調書ノ正本ヲ当事者ニ送付スルコトヲ要ス
当事者カ前項ノ正本ノ送付ヲ受ケタル後一月内ニ調停委員会ニ異議ヲ述ヘサルトキハ調停ニ服シタルモノト看做ス
調停委員会ハ申立ニ因リ前項ノ期間ヲ伸長スルコトヲ得
当事者カ異議ヲ述ヘタルトキハ調停委員会ハ其ノ旨ヲ相手方ニ通知スルコトヲ要ス
第二十五条 調停委員会第三条ニ規定スル事由アリト認ムルトキハ調停ヲ為ササルコトヲ得
第二十六条 調停成リタルトキ又ハ第二十四条第二項ノ規定ニ依リ当事者カ調停ニ服シタルモノト看做サレタルトキハ裁判所ハ調停主任ノ報告ヲ聴キ調停ノ認否ニ付決定ヲ為スコトヲ要ス
調停認可ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
調停不認可ノ決定ニ対シテハ民事訴訟法ニ従ヒ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第二十七条 裁判所ハ調停カ著ク公正ナラスト認ムル場合ニ非サレハ調停不認可ノ決定ヲ為スコトヲ得ス
第二十八条 調停委員会ヲ開キタル場合ニ於テハ調停ハ認可決定アリタルトキニ限リ裁判上ノ和解ト同一ノ効力ヲ有ス
第二十九条 調停ノ申立ヲ為スニハ手数料ヲ納付スルコトヲ要ス
第三十条 当事者又ハ利害関係人ハ手数料ヲ納付シテ記録ノ閲覧若ハ謄写又ハ其ノ正本、謄本、抄本若ハ事件ニ関スル証明書ノ付与ヲ裁判所書記ニ求ムルコトヲ得但シ当事者カ事件ノ繋属中記録ノ閲覧又ハ謄写ヲ為ス場合ニ於テハ手数料ヲ納付スルコトヲ要セス
第三十一条 第十八条ノ旅費、日当及止宿料並前二条ノ手数料ノ額ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ地区ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム