特許登録令
法令番号: 勅令第四百六十一號
公布年月日: 大正10年12月16日
法令の形式: 勅令
朕特許登錄令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十年十二月十五日
內閣總理大臣 子爵 高橋是淸
農商務大臣 男爵 山本達雄
勅令第四百六十一號
特許登錄令
第一章 總則
第一條 特許ニ關スル登錄ハ左ニ揭クル事項ニ付之ヲ爲ス
一 特許權及實施權竝之ヲ目的トスル質權ノ設定、保存、移轉、變更、消滅、處分ノ制限又ハ特許法第四十條ノ制限
二 特許ノ效力、特許法第五十三條ノ許可ノ效力又ハ特許權ノ範圍ニ關スル確定審決又ハ判決
三 特許法第十六條第三項ニ規定スル代理人ノ選任若ハ變更又ハ代理權若ハ其ノ變更消滅
第二條 假登錄ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス
一 登錄ノ申請ニ必要ナル手續上ノ條件カ具備セサルトキ
二 前條第一號ニ揭クル權利ノ設定、移轉、變更又ハ消滅ノ請求權ヲ保全セムトスルトキ但シ其ノ請求權ハ始期附又ハ停止條件附ナルコト其ノ他將來ニ於テ確定スヘキモノナルコトヲ妨ケス
第三條 豫吿登錄ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス
一 登錄原因ノ無效又ハ取消ニ依ル登錄ノ抹消又ハ囘復ノ訴ノ提起アリタルトキ但シ登錄原因ノ取消ニ依ル訴ニ付テハ其ノ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ヘキ場合ニ限ル
二 特許ノ效力、特許法第五十三條ノ許可ノ效力、特許權ノ範圍若ハ實施權ノ取得ニ關スル審判若ハ再審ノ請求アリタルトキ、實施權許與ノ請求アリタルトキ又ハ特許若ハ實施權許與ノ取消ノ請求アリタルトキ
第四條 左ニ揭クル事項ノ登錄ハ附記ニ依リテ之ヲ爲ス
一 登錄名義人ノ表示ノ變更又ハ更正
二 質權ノ移轉
三 一部抹消登錄ノ囘復
第五條 左ニ揭クル事項ノ登錄ハ登錄上利害關係ヲ有スル第三者ナキトキ又ハ登錄ノ申請書ニ登錄上利害關係ヲ有スル第三者ノ承諾書若ハ其ノ者ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキニ限リ附記ニ依リテ之ヲ爲ス
一 特許法第四十四條ノ制限ノ變更
二 特許權以外ノ權利ノ變更
三 登錄ノ更正
第六條 特許權又ハ之ニ關スル權利ニ關シ登錄シタル權利ノ順位ハ登錄ノ前後ニ依ル
登錄ノ前後ハ登錄用紙中同區ニ爲シタル登錄ニ付テハ順位番號ニ依リ別區ニ爲シタル登錄ニシテ受付番號アルモノニ付テハ受付番號ニ依ル
第七條 附記登錄ノ順位ハ主登錄ノ順位ニ依リ附記登錄間ノ順位ハ其ノ前後ニ依ル
第八條 假登錄ヲ爲シタルモノニ付本登錄ヲ爲シタル場合ニ於テハ其ノ順位ハ假登錄ノ順位ニ依ル
第九條 詐欺又ハ强迫ニ依リテ登錄ノ申請ヲ妨ケタル第三者ハ登錄ノ欠缺ヲ主張スルコトヲ得ス
第十條 他人ノ爲登錄ヲ申請スル義務アル者ハ其ノ登錄ノ欠缺ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ登錄ノ原因カ自己ノ登錄ノ原因ノ後ニ發生シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 特許發明ノ明細書及圖面ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
審決ノ原本又ハ判決ノ謄本ニ依リ第一條第二號ニ揭クル事項ノ登錄ヲ爲シタルトキハ其ノ原本又ハ謄本ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
第十二條 特許原簿及受付簿ノ樣式竝其ノ記載ニ關スル手續ハ農商務大臣之ヲ定ム
第十三條 特許原簿ノ全部又ハ一部カ滅失シタル場合ニ於テ其ノ囘復ニ關スル手續ハ農商務大臣之ヲ定ム
第二章 登錄手續
第一節 通則
第十四條 登錄ハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請又ハ囑託ニ依ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
囑託ニ依ル登錄ノ手續ニ付テハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請ニ依ル登錄ニ關スル規定ヲ準用ス
第十五條 左ニ揭クル事項ノ登錄ハ職權ヲ以テ之ヲ爲ス
一 特許權ノ設定、特許ノ無效、抛棄ニ依ラサル特許權ノ消滅又ハ訴願ノ裁決若ハ再審ノ確定審決若ハ判決ニ依ル特許權ノ囘復
二 特許權ノ存續期間ノ延長、特許法第四十條ノ制限又ハ特許法第六十條ノ規定ニ依ル特許權ノ變更
三 特許法第五十三條ノ許可又ハ其ノ許可ノ無效若ハ囘復
四 特許ノ效力、特許法第五十三條ノ許可ノ效力又ハ特許權ノ範圍ニ關スル確定審決又ハ判決
五 特許法第四十一條ノ規定ニ依ル實施權許與、其ノ許與ノ取消、訴願ノ裁決ニ依ル實施權ノ囘復又ハ確定審決若ハ判決ニ依ル實施權ノ設定若ハ消滅
第十六條 登錄ノ申請ハ登錄權利者及登錄義務者之ヲ爲スヘシ但シ申請書ニ登錄義務者ノ承諾書ヲ添附シタルトキハ登錄權利者ノミニテ之ヲ爲スコトヲ得
第十七條 判決又ハ相續其ノ他ノ一般承繼ニ依ル登錄ノ申請ハ登錄權利者ノミニテ之ヲ爲スコトヲ得
第十八條 登錄名義人ノ表示ノ變更又ハ更正ノ登錄ノ申請ハ登錄名義人ノミニテ之ヲ爲スコトヲ得
第十九條 特許法第十六條第三項ニ規定スル登錄ノ申請ハ本人又ハ受任者ノミニテ之ヲ爲スコトヲ得代理人ノ表示ノ變更又ハ代理人ノ表示若ハ代理權ノ更正ノ登錄ノ申請ニ付亦同シ
第二十條 假登錄ハ第十六條ノ場合ヲ除クノ外假登錄權利者ノ申請ニ依リ假登錄義務者ノ住所若ハ居所又ハ特許法第二十二條ノ規定ニ依ル財產所在地ヲ管轄スル區裁判所ヨリ遲滯ナク囑託書ニ假處分命令ノ正本ヲ添附シテ特許局ニ之ヲ囑託スヘシ
前項ノ假處分命令ハ假登錄權利者カ假登錄原因ヲ疏明シタルトキハ區裁判所之ヲ發スヘシ
第一項ノ申請ヲ却下シタル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
前項ノ卽時抗吿ニ付テハ非訟事件手續法ノ規定ヲ準用ス
第二十一條 處分ノ制限ノ登錄又ハ其ノ抹消登錄ハ當該官廳又ハ公署ヨリ遲滯ナク特許局ニ之ヲ囑託スヘシ公賣其ノ他法令ノ規定ニ依ル處分ニ基ク權利移轉ノ登錄ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テ必要アルトキハ當該官廳又ハ公署ハ登錄名義人ノ表示ノ變更若ハ更正又ハ相續其ノ他ノ一般承繼ニ依ル權利移轉ノ登錄ヲ特許局ニ囑託スヘシ
第二十二條 特許法第四十條ノ規定ニ依リ政府ニ於テ特許權ヲ收用シ又ハ特許發明ヲ實施スル場合ニ於テハ主務官廳ハ特許權移轉ノ登錄又ハ實施權設定ノ登錄ヲ特許局ニ囑託スヘシ
前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條 第三條第一號ニ揭クル訴ヲ受理シタル裁判所ハ遲滯ナク囑託書ニ訴狀ノ謄本又ハ抄本ヲ添附シテ其ノ豫吿登錄ヲ特許局ニ囑託スヘシ
第三條第二號ニ揭クル請求アリタルトキハ職權ヲ以テ其ノ豫吿登錄ヲ爲ス
第二十四條 登錄ノ申請書ハ一件每ニ一通ヲ作リ之ニ左ニ揭クル事項ヲ記載シ申請人記名捺印スヘシ
一 特許番號及發明ノ名稱竝登錄ノ目的カ特許權以外ノ權利ニ關スル場合ニ於テハ尙其ノ權利ノ表示
二 申請人ノ氏名名稱及住所又ハ居所竝代理人ニ依リテ申請スル場合ニ於テハ尙其ノ氏名名稱及住所又ハ居所
三 申請人カ外國人ナル場合ニ在リテハ其ノ國籍及萬國工業所有權保護同盟條約國又ハ帝國ト特許ニ關シ相互保護ヲ約セシ國以外ノ國ノ臣民又ハ人民ナル場合ニ在リテハ尙同盟國中ノ一國ノ版圖內ニ於ケル住所又ハ現實且眞誠ナル工業的若ハ商業的營業所
四 登錄原因及其ノ日附
五 登錄ノ目的
六 年月日
第二十五條 數箇ノ特許權、實用新案權若ハ意匠權又ハ之ニ關スル權利ヲ目的トスル質權ノ設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ登錄原因カ同一ナルトキハ同一ノ申請書ヲ以テ登錄ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ規定ハ處分ノ制限ノ登錄ヲ囑託スル場合ニ之ヲ準用ス
第二十六條 登錄ノ申請書ニハ左ノ書面ヲ添附スヘシ
一 登錄原因ヲ證スル書面
二 特許證又ハ登錄義務者ノ權利ニ關スル登錄濟證
三 登錄原因ニ付第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ要スルトキハ之ヲ證スル書面
四 申請人カ外國人ナル場合ニ在リテハ其ノ國籍ヲ證スル書面及萬國工業所有權保護同盟條約國又ハ帝國ト特許ニ關シ相互保護ヲ約セシ國以外ノ國ノ臣民又ハ人民ナル場合ニ在リテハ尙同盟國中ノ一國ノ版圖內ニ住所又ハ現實且眞誠ナル工業的若ハ商業的營業所ヲ有スルコトヲ證スル書面
五 申請人カ外國法人ナル場合ニ在リテハ其ノ法人タルコトヲ證スル書面
六 代理人又ハ代表者ニ依リテ登錄ヲ申請スルトキハ其ノ權限ヲ證スル書面
第十九條ノ規定ニ依リ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ前項第二號ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
特許法第十六條第三項ノ規定ニ依リ登錄ヲ受ケタル代理人又ハ同法第十七條若ハ第二十一條第一項但書ノ規定ニ依リ屆出テタル代理人若ハ代表者カ其ノ權限內ニ於テ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ第一項第六號ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
登錄原因ヲ證スル書面カ執行力アル判決ナルトキハ第一項第二號乃至第五號ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第二十七條 債權者カ民法第四百二十三條ノ規定ニ依リ債務者ニ代位シテ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ第二十四條ニ揭クル事項ノ外債權者ノ氏名名稱及住所又ハ居所竝代位原因ヲ記載シ債權者之ニ記名捺印シ且前條第一項各號ニ揭クル書面ノ外代位原因ヲ證スル書面ヲ之ニ添附スヘシ但シ登錄上代位原因明ナル場合ニ於テハ之ヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第二十八條 登錄原因ニ登錄ノ目的タル權利ノ消滅ニ關スル事項ノ定アルトキハ申請書ニ之ヲ記載スヘシ
第二十九條 登錄權利者カ多數ナル場合ニ於テ登錄原因ニ持分ノ定アルトキハ申請書ニ之ヲ記載スヘシ特許權又ハ之ニ關スル權利ノ一部移轉ノ登錄ヲ申請スル場合亦同シ
前項ノ場合ニ於テ特許法第四十四條第二項ノ同意、同法第四十七條ノ契約又ハ民法第二百五十六條第一項但書ノ契約アルトキハ申請書ニ之ヲ記載スヘシ
第三十條 抹消シタル登錄ノ囘復ヲ申請スル場合ニ於テ登錄上利害關係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ其ノ者ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第三十一條 左ノ場合ニ於テハ其ノ事實ヲ證スル戶籍若ハ登記簿ノ謄本若ハ抄本又ハ之ニ準スヘキ書面ヲ申請書ニ添附スヘシ
一 登錄原因カ相續其ノ他ノ一般承繼ナルトキ
二 申請人カ登錄權利者又ハ登錄義務者ノ相續人其ノ他ノ一般承繼人ナルトキ
三 登錄名義人ノ表示ノ變更又ハ更正ノ登錄ヲ申請スルトキ
第三十二條 數箇ノ申請書ニ依リ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ第二十六條第一項第一號乃至第五號又ハ前條ノ書面カ一通ナルトキハ一ノ申請書ニ之ヲ添附シ他ノ申請書ニハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
他ノ事件ニ付特許局ニ對シ既ニ第二十六條第一項第三號乃至第五號又ハ前條ノ書面ヲ差出シタル者ハ其ノ事項ニ變更ナキトキハ申請書ニ其ノ旨ヲ記載シ更ニ其ノ書面ヲ申請書ニ添附セサルコトヲ得但シ特許局長官必要ト認ムルトキハ其ノ提出ヲ命スルコトヲ得
第三十三條 申請書ニ第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ證スル書面ヲ添附スヘキ場合ニ於テハ其ノ第三者ヲシテ申請書ニ記名捺印セシメ其ノ書面ノ添附ニ代フルコトヲ得
第三十四條 登錄原因ヲ證スル書面カ初ヨリ存在セス又ハ之ヲ添附スルコト能ハサルトキハ申請書ノ副本ヲ添附スヘシ
第三十五條 申請書ニ登錄義務者ノ權利ニ關スル登錄濟證ヲ添附スヘキ場合ニ於テ其ノ登錄濟證カ滅失シタルトキハ其ノ登錄義務者ノ本人ナルコトヲ證スル市町村長又ハ之ニ準スヘキ者ノ證明書ヲ添附スヘシ
第三十六條 左ノ場合ニ於テハ登錄ノ申請ハ之ヲ却下ス
一 事件カ登錄スヘキモノニ非サルトキ
二 申請書カ方式ニ適合セサルトキ
三 第二十四條第一號ノ事項カ特許原簿ト符合セサルトキ
四 第三十一條第二號ニ規定スル書面ヲ添附スル場合ヲ除クノ外申請書ニ揭クル登錄義務者ノ表示カ特許原簿ト符合セサルトキ
五 申請人カ登錄名義人ナル場合ニ於テ其ノ表示カ特許原簿ト符合セサルトキ
六 代理人又ハ代表者ノ表示カ特許原簿又ハ屆出ト符合セサルトキ
七 申請書ニ揭クル事項カ登錄原因ヲ證スル書面ト符合セサルトキ
八 申請書ニ必要ナル書面ヲ添附セサルトキ
九 登錄稅ヲ納付セサルトキ
前項ノ規定ニ依ル却下ニハ理由ヲ附スヘシ
第三十七條 行政區劃又ハ其ノ名稱ニ變更アリタルトキハ特許原簿ニ記載シタル行政區劃又ハ其ノ名稱ハ之ヲ變更シタルモノト看做ス大字若ハ字又ハ其ノ名稱ニ變更アリタルトキ亦同シ
第三十八條 登錄ヲ完了シタル後其ノ登錄ニ付錯誤又ハ遺漏アルコトヲ發見シタルトキハ遲滯ナク其ノ旨ヲ登錄權利者及登錄義務者ニ通知スヘシ
前項ノ通知ハ第二十七條ノ場合ニ於テハ債權者ニ對シテモ亦之ヲ爲スヘシ
前二項ノ規定ニ依ル通知ハ登錄權利者、登錄義務者又ハ債權者カ多數ナル場合ニ於テ其ノ代表者ナキトキハ其ノ一人ニ對スル通知ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第三十九條 前條ノ場合ニ於テ登錄ノ錯誤又ハ遺漏カ特許局ノミノ過誤ニ出テタルトキハ登錄上利害關係ヲ有スル第三者アル場合ヲ除クノ外遲滯ナク其ノ登錄ノ更正ヲ爲シ其ノ旨ヲ登錄權利者及登錄義務者ニ通知スヘシ
前條第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十條 特許權又ハ之ニ關スル權利ニシテ工場財團又ハ之ニ準スヘキモノニ屬スルコトノ登錄アルモノニ付變更、制限又ハ消滅アリタルトキハ特許局ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ管轄登記所又ハ之ニ準スヘキモノニ通知スヘシ
第二節 特許權及實施權ニ關スル登錄手續
第四十一條 特許權移轉ノ登錄又ハ特許權ノ登錄名義人ノ表示ノ變更若ハ更正ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ追加ノ特許權又ハ特許法第四十九條ノ規定ニ依ル實施權アルトキハ同時ニ其ノ追加ノ特許權又ハ實施權ニ付テモ同一事項ノ登錄ヲ申請スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ同一ノ申請書ヲ以テ登錄ヲ申請スルコトヲ得
第四十二條 特許權ノ制限附移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ制限ヲ記載シ尙登錄原因ニ報酬又ハ其ノ支拂時期ノ定アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
第四十三條 實施權ノ設定、保存又ハ移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ範圍ヲ記載シ尙登錄原因ニ報酬若ハ其ノ支拂時期ノ定アルトキ又ハ特許法第五十一條第二項ノ承諾アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
實施權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ特許發明實施ノ事業ト共ニ移轉スルトキハ申請書ニ之ヲ證スル書面ヲ添附スヘシ
第三節 質權ニ關スル登錄手續
第四十四條 質權設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ質權ノ目的タル權利及債權額ヲ記載シ尙登錄原因ニ存續期間、辨濟期、利息、違約金若ハ賠償額ニ關スル定若ハ民法第三百四十六條但書ノ規定ニ依ル定アルトキ又ハ債權ニ條件ヲ附シタルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
前項ノ場合ニ於テ質權設定者カ債務者ニ非サルトキハ申請書ニ尙債務者ヲ表示スヘシ
質權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ質權カ債權ト共ニ移轉スルヤ否ヤヲ記載スヘシ
第四十五條 一定ノ金額ヲ目的トセサル債權ノ擔保タル質權ノ設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債權ノ價額ヲ記載スヘシ
第四十六條 債權ノ一部讓渡又ハ代位辨濟ニ依ル質權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ讓渡又ハ代位辨濟ノ目的タル債權額ヲ記載スヘシ
第四十七條 未登錄ノ制限附移轉ノ特許權若ハ未登錄ノ實施權又ハ之ヲ目的トスル質權ニ關スル登錄ハ之ヲ命スル裁判ニ依リテ自己ノ權利ヲ證スル者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第二十一條又ハ第二十二條ノ規定ニ依リ官廳又ハ公署カ未登錄ノ權利ニ關スル登錄ヲ特許局ニ囑託スル場合ニ於テハ裁判ニ依リテ其ノ權利ヲ證スルコトヲ要セス
第四節 抹消ニ關スル登錄手續
第四十八條 特許權又ハ之ニ關スル權利ノ抛棄ニ依ル登錄ノ抹消ハ登錄名義人ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第四十九條 登錄シタル權利カ或人ノ死亡ニ依リテ消滅シタル場合ニ於テ申請書ニ其ノ死亡ヲ證スル戶籍ノ謄本若ハ抄本又ハ之ニ準スヘキ書面ヲ添附シタルトキハ登錄權利者ノミニテ登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十條 登錄權利者カ登錄義務者ノ行方ノ知レサルニ依リ登錄ノ抹消ヲ申請スルコト能ハサルトキハ民事訴訟法ノ規定ニ從ヒ公示催吿ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ除權判決アリタルトキハ申請書ニ其ノ謄本ヲ添附シ登錄權利者ノミニテ登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テ申請書ニ債權證書又ハ元本ノ受取證書及登錄セラレタル債務ノ辨濟證書ヲ添附シタルトキハ登錄權利者ノミニテ質權ニ關スル登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十一條 假登錄ノ抹消ハ假登錄名義人ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
申請書ニ假登錄名義人ノ承諾書又ハ其ノ者ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキハ登錄上利害關係ヲ有スル者ノミニテ假登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十二條 登錄ノ抹消ヲ申請スル場合ニ於テ登錄上利害關係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ其ノ者ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第五十三條 第三條第一號ノ豫吿登錄アリタル場合ニ於テ訴ヲ却下シタル裁判若ハ之ヲ提起シタル者ニ對シテ敗訴ヲ言渡シタル裁判カ確定シタルトキ、訴ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ又ハ請求ノ目的ニ付和解アリタルトキハ第一審裁判所ハ遲滯ナク囑託書ニ裁判ノ謄本若ハ抄本又ハ訴ノ取下、請求ノ抛棄若ハ和解ヲ證スル裁判所書記ノ書面ヲ添附シテ豫吿登錄ノ抹消ヲ特許局ニ囑託スヘシ
第三條第二號ノ豫吿登錄アリタル場合ニ於テ審判若ハ再審ノ請求ヲ却下シタル決定確定シタルトキ、請求ヲ否認シタル審決確定シ若ハ判決アリタルトキ、請求ノ取下アリタルトキ又ハ請求ノ抛棄アリタルトキハ職權ヲ以テ豫吿登錄ヲ抹消ス實施權許與ノ請求若ハ特許若ハ實施權許與ノ取消ノ請求ヲ却下シタルトキ又ハ請求ノ取下アリタルトキ亦同シ
第三章 異議及訴願
第五十四條 登錄ニ關スル處分ヲ不當トスル者ハ其ノ處分ノ了リタル日ヨリ三十日以內ニ特許局長官ニ對シ異議ヲ申立ツルコトヲ得
異議ノ決定ハ理由ヲ附シテ之ヲ爲スヘシ
第五十五條 異議ノ決定ニ不服アル者ハ農商務大臣ニ訴願ヲ提起スルコトヲ得
附 則
第五十六條 本令ハ大正十一年一月十一日ヨリ之ヲ施行ス
第五十七條 舊特許原簿ハ之ヲ本令ニ依ル特許原簿ト看做ス
第五十八條 舊令ニ依リ爲シタル登錄ニ關スル處分及手續ハ本令ニ依リ爲シタルモノト看做ス
第五十九條 特許法第百三十八條第一項ノ規定ニ依ル處理ニ關スル登錄ニ付テハ仍舊令ニ依ル
第六十條 本令施行ノ際現ニ繫屬スル登錄ニ關スル處分及手續ニ付テハ仍舊令ニ依ル
第六十一條 舊特許法第三十五條ノ規定ニ依ル實施權ノ保存ノ登錄ニ付テハ仍舊令ニ依ル
朕特許登録令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十年十二月十五日
内閣総理大臣 子爵 高橋是清
農商務大臣 男爵 山本達雄
勅令第四百六十一号
特許登録令
第一章 総則
第一条 特許ニ関スル登録ハ左ニ掲クル事項ニ付之ヲ為ス
一 特許権及実施権並之ヲ目的トスル質権ノ設定、保存、移転、変更、消滅、処分ノ制限又ハ特許法第四十条ノ制限
二 特許ノ効力、特許法第五十三条ノ許可ノ効力又ハ特許権ノ範囲ニ関スル確定審決又ハ判決
三 特許法第十六条第三項ニ規定スル代理人ノ選任若ハ変更又ハ代理権若ハ其ノ変更消滅
第二条 仮登録ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス
一 登録ノ申請ニ必要ナル手続上ノ条件カ具備セサルトキ
二 前条第一号ニ掲クル権利ノ設定、移転、変更又ハ消滅ノ請求権ヲ保全セムトスルトキ但シ其ノ請求権ハ始期附又ハ停止条件附ナルコト其ノ他将来ニ於テ確定スヘキモノナルコトヲ妨ケス
第三条 予告登録ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス
一 登録原因ノ無効又ハ取消ニ依ル登録ノ抹消又ハ回復ノ訴ノ提起アリタルトキ但シ登録原因ノ取消ニ依ル訴ニ付テハ其ノ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ヘキ場合ニ限ル
二 特許ノ効力、特許法第五十三条ノ許可ノ効力、特許権ノ範囲若ハ実施権ノ取得ニ関スル審判若ハ再審ノ請求アリタルトキ、実施権許与ノ請求アリタルトキ又ハ特許若ハ実施権許与ノ取消ノ請求アリタルトキ
第四条 左ニ掲クル事項ノ登録ハ附記ニ依リテ之ヲ為ス
一 登録名義人ノ表示ノ変更又ハ更正
二 質権ノ移転
三 一部抹消登録ノ回復
第五条 左ニ掲クル事項ノ登録ハ登録上利害関係ヲ有スル第三者ナキトキ又ハ登録ノ申請書ニ登録上利害関係ヲ有スル第三者ノ承諾書若ハ其ノ者ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキニ限リ附記ニ依リテ之ヲ為ス
一 特許法第四十四条ノ制限ノ変更
二 特許権以外ノ権利ノ変更
三 登録ノ更正
第六条 特許権又ハ之ニ関スル権利ニ関シ登録シタル権利ノ順位ハ登録ノ前後ニ依ル
登録ノ前後ハ登録用紙中同区ニ為シタル登録ニ付テハ順位番号ニ依リ別区ニ為シタル登録ニシテ受付番号アルモノニ付テハ受付番号ニ依ル
第七条 附記登録ノ順位ハ主登録ノ順位ニ依リ附記登録間ノ順位ハ其ノ前後ニ依ル
第八条 仮登録ヲ為シタルモノニ付本登録ヲ為シタル場合ニ於テハ其ノ順位ハ仮登録ノ順位ニ依ル
第九条 詐欺又ハ強迫ニ依リテ登録ノ申請ヲ妨ケタル第三者ハ登録ノ欠欠ヲ主張スルコトヲ得ス
第十条 他人ノ為登録ヲ申請スル義務アル者ハ其ノ登録ノ欠欠ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ登録ノ原因カ自己ノ登録ノ原因ノ後ニ発生シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 特許発明ノ明細書及図面ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
審決ノ原本又ハ判決ノ謄本ニ依リ第一条第二号ニ掲クル事項ノ登録ヲ為シタルトキハ其ノ原本又ハ謄本ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
第十二条 特許原簿及受付簿ノ様式並其ノ記載ニ関スル手続ハ農商務大臣之ヲ定ム
第十三条 特許原簿ノ全部又ハ一部カ滅失シタル場合ニ於テ其ノ回復ニ関スル手続ハ農商務大臣之ヲ定ム
第二章 登録手続
第一節 通則
第十四条 登録ハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請又ハ嘱託ニ依ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
嘱託ニ依ル登録ノ手続ニ付テハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請ニ依ル登録ニ関スル規定ヲ準用ス
第十五条 左ニ掲クル事項ノ登録ハ職権ヲ以テ之ヲ為ス
一 特許権ノ設定、特許ノ無効、抛棄ニ依ラサル特許権ノ消滅又ハ訴願ノ裁決若ハ再審ノ確定審決若ハ判決ニ依ル特許権ノ回復
二 特許権ノ存続期間ノ延長、特許法第四十条ノ制限又ハ特許法第六十条ノ規定ニ依ル特許権ノ変更
三 特許法第五十三条ノ許可又ハ其ノ許可ノ無効若ハ回復
四 特許ノ効力、特許法第五十三条ノ許可ノ効力又ハ特許権ノ範囲ニ関スル確定審決又ハ判決
五 特許法第四十一条ノ規定ニ依ル実施権許与、其ノ許与ノ取消、訴願ノ裁決ニ依ル実施権ノ回復又ハ確定審決若ハ判決ニ依ル実施権ノ設定若ハ消滅
第十六条 登録ノ申請ハ登録権利者及登録義務者之ヲ為スヘシ但シ申請書ニ登録義務者ノ承諾書ヲ添附シタルトキハ登録権利者ノミニテ之ヲ為スコトヲ得
第十七条 判決又ハ相続其ノ他ノ一般承継ニ依ル登録ノ申請ハ登録権利者ノミニテ之ヲ為スコトヲ得
第十八条 登録名義人ノ表示ノ変更又ハ更正ノ登録ノ申請ハ登録名義人ノミニテ之ヲ為スコトヲ得
第十九条 特許法第十六条第三項ニ規定スル登録ノ申請ハ本人又ハ受任者ノミニテ之ヲ為スコトヲ得代理人ノ表示ノ変更又ハ代理人ノ表示若ハ代理権ノ更正ノ登録ノ申請ニ付亦同シ
第二十条 仮登録ハ第十六条ノ場合ヲ除クノ外仮登録権利者ノ申請ニ依リ仮登録義務者ノ住所若ハ居所又ハ特許法第二十二条ノ規定ニ依ル財産所在地ヲ管轄スル区裁判所ヨリ遅滞ナク嘱託書ニ仮処分命令ノ正本ヲ添附シテ特許局ニ之ヲ嘱託スヘシ
前項ノ仮処分命令ハ仮登録権利者カ仮登録原因ヲ疏明シタルトキハ区裁判所之ヲ発スヘシ
第一項ノ申請ヲ却下シタル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
前項ノ即時抗告ニ付テハ非訟事件手続法ノ規定ヲ準用ス
第二十一条 処分ノ制限ノ登録又ハ其ノ抹消登録ハ当該官庁又ハ公署ヨリ遅滞ナク特許局ニ之ヲ嘱託スヘシ公売其ノ他法令ノ規定ニ依ル処分ニ基ク権利移転ノ登録ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テ必要アルトキハ当該官庁又ハ公署ハ登録名義人ノ表示ノ変更若ハ更正又ハ相続其ノ他ノ一般承継ニ依ル権利移転ノ登録ヲ特許局ニ嘱託スヘシ
第二十二条 特許法第四十条ノ規定ニ依リ政府ニ於テ特許権ヲ収用シ又ハ特許発明ヲ実施スル場合ニ於テハ主務官庁ハ特許権移転ノ登録又ハ実施権設定ノ登録ヲ特許局ニ嘱託スヘシ
前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三条 第三条第一号ニ掲クル訴ヲ受理シタル裁判所ハ遅滞ナク嘱託書ニ訴状ノ謄本又ハ抄本ヲ添附シテ其ノ予告登録ヲ特許局ニ嘱託スヘシ
第三条第二号ニ掲クル請求アリタルトキハ職権ヲ以テ其ノ予告登録ヲ為ス
第二十四条 登録ノ申請書ハ一件毎ニ一通ヲ作リ之ニ左ニ掲クル事項ヲ記載シ申請人記名捺印スヘシ
一 特許番号及発明ノ名称並登録ノ目的カ特許権以外ノ権利ニ関スル場合ニ於テハ尚其ノ権利ノ表示
二 申請人ノ氏名名称及住所又ハ居所並代理人ニ依リテ申請スル場合ニ於テハ尚其ノ氏名名称及住所又ハ居所
三 申請人カ外国人ナル場合ニ在リテハ其ノ国籍及万国工業所有権保護同盟条約国又ハ帝国ト特許ニ関シ相互保護ヲ約セシ国以外ノ国ノ臣民又ハ人民ナル場合ニ在リテハ尚同盟国中ノ一国ノ版図内ニ於ケル住所又ハ現実且真誠ナル工業的若ハ商業的営業所
四 登録原因及其ノ日附
五 登録ノ目的
六 年月日
第二十五条 数箇ノ特許権、実用新案権若ハ意匠権又ハ之ニ関スル権利ヲ目的トスル質権ノ設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ登録原因カ同一ナルトキハ同一ノ申請書ヲ以テ登録ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ規定ハ処分ノ制限ノ登録ヲ嘱託スル場合ニ之ヲ準用ス
第二十六条 登録ノ申請書ニハ左ノ書面ヲ添附スヘシ
一 登録原因ヲ証スル書面
二 特許証又ハ登録義務者ノ権利ニ関スル登録済証
三 登録原因ニ付第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ要スルトキハ之ヲ証スル書面
四 申請人カ外国人ナル場合ニ在リテハ其ノ国籍ヲ証スル書面及万国工業所有権保護同盟条約国又ハ帝国ト特許ニ関シ相互保護ヲ約セシ国以外ノ国ノ臣民又ハ人民ナル場合ニ在リテハ尚同盟国中ノ一国ノ版図内ニ住所又ハ現実且真誠ナル工業的若ハ商業的営業所ヲ有スルコトヲ証スル書面
五 申請人カ外国法人ナル場合ニ在リテハ其ノ法人タルコトヲ証スル書面
六 代理人又ハ代表者ニ依リテ登録ヲ申請スルトキハ其ノ権限ヲ証スル書面
第十九条ノ規定ニ依リ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ前項第二号ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
特許法第十六条第三項ノ規定ニ依リ登録ヲ受ケタル代理人又ハ同法第十七条若ハ第二十一条第一項但書ノ規定ニ依リ届出テタル代理人若ハ代表者カ其ノ権限内ニ於テ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ第一項第六号ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
登録原因ヲ証スル書面カ執行力アル判決ナルトキハ第一項第二号乃至第五号ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第二十七条 債権者カ民法第四百二十三条ノ規定ニ依リ債務者ニ代位シテ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ第二十四条ニ掲クル事項ノ外債権者ノ氏名名称及住所又ハ居所並代位原因ヲ記載シ債権者之ニ記名捺印シ且前条第一項各号ニ掲クル書面ノ外代位原因ヲ証スル書面ヲ之ニ添附スヘシ但シ登録上代位原因明ナル場合ニ於テハ之ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第二十八条 登録原因ニ登録ノ目的タル権利ノ消滅ニ関スル事項ノ定アルトキハ申請書ニ之ヲ記載スヘシ
第二十九条 登録権利者カ多数ナル場合ニ於テ登録原因ニ持分ノ定アルトキハ申請書ニ之ヲ記載スヘシ特許権又ハ之ニ関スル権利ノ一部移転ノ登録ヲ申請スル場合亦同シ
前項ノ場合ニ於テ特許法第四十四条第二項ノ同意、同法第四十七条ノ契約又ハ民法第二百五十六条第一項但書ノ契約アルトキハ申請書ニ之ヲ記載スヘシ
第三十条 抹消シタル登録ノ回復ヲ申請スル場合ニ於テ登録上利害関係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ其ノ者ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第三十一条 左ノ場合ニ於テハ其ノ事実ヲ証スル戸籍若ハ登記簿ノ謄本若ハ抄本又ハ之ニ準スヘキ書面ヲ申請書ニ添附スヘシ
一 登録原因カ相続其ノ他ノ一般承継ナルトキ
二 申請人カ登録権利者又ハ登録義務者ノ相続人其ノ他ノ一般承継人ナルトキ
三 登録名義人ノ表示ノ変更又ハ更正ノ登録ヲ申請スルトキ
第三十二条 数箇ノ申請書ニ依リ登録ヲ申請スル場合ニ於テ第二十六条第一項第一号乃至第五号又ハ前条ノ書面カ一通ナルトキハ一ノ申請書ニ之ヲ添附シ他ノ申請書ニハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
他ノ事件ニ付特許局ニ対シ既ニ第二十六条第一項第三号乃至第五号又ハ前条ノ書面ヲ差出シタル者ハ其ノ事項ニ変更ナキトキハ申請書ニ其ノ旨ヲ記載シ更ニ其ノ書面ヲ申請書ニ添附セサルコトヲ得但シ特許局長官必要ト認ムルトキハ其ノ提出ヲ命スルコトヲ得
第三十三条 申請書ニ第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ証スル書面ヲ添附スヘキ場合ニ於テハ其ノ第三者ヲシテ申請書ニ記名捺印セシメ其ノ書面ノ添附ニ代フルコトヲ得
第三十四条 登録原因ヲ証スル書面カ初ヨリ存在セス又ハ之ヲ添附スルコト能ハサルトキハ申請書ノ副本ヲ添附スヘシ
第三十五条 申請書ニ登録義務者ノ権利ニ関スル登録済証ヲ添附スヘキ場合ニ於テ其ノ登録済証カ滅失シタルトキハ其ノ登録義務者ノ本人ナルコトヲ証スル市町村長又ハ之ニ準スヘキ者ノ証明書ヲ添附スヘシ
第三十六条 左ノ場合ニ於テハ登録ノ申請ハ之ヲ却下ス
一 事件カ登録スヘキモノニ非サルトキ
二 申請書カ方式ニ適合セサルトキ
三 第二十四条第一号ノ事項カ特許原簿ト符合セサルトキ
四 第三十一条第二号ニ規定スル書面ヲ添附スル場合ヲ除クノ外申請書ニ掲クル登録義務者ノ表示カ特許原簿ト符合セサルトキ
五 申請人カ登録名義人ナル場合ニ於テ其ノ表示カ特許原簿ト符合セサルトキ
六 代理人又ハ代表者ノ表示カ特許原簿又ハ届出ト符合セサルトキ
七 申請書ニ掲クル事項カ登録原因ヲ証スル書面ト符合セサルトキ
八 申請書ニ必要ナル書面ヲ添附セサルトキ
九 登録税ヲ納付セサルトキ
前項ノ規定ニ依ル却下ニハ理由ヲ附スヘシ
第三十七条 行政区画又ハ其ノ名称ニ変更アリタルトキハ特許原簿ニ記載シタル行政区画又ハ其ノ名称ハ之ヲ変更シタルモノト看做ス大字若ハ字又ハ其ノ名称ニ変更アリタルトキ亦同シ
第三十八条 登録ヲ完了シタル後其ノ登録ニ付錯誤又ハ遺漏アルコトヲ発見シタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ登録権利者及登録義務者ニ通知スヘシ
前項ノ通知ハ第二十七条ノ場合ニ於テハ債権者ニ対シテモ亦之ヲ為スヘシ
前二項ノ規定ニ依ル通知ハ登録権利者、登録義務者又ハ債権者カ多数ナル場合ニ於テ其ノ代表者ナキトキハ其ノ一人ニ対スル通知ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第三十九条 前条ノ場合ニ於テ登録ノ錯誤又ハ遺漏カ特許局ノミノ過誤ニ出テタルトキハ登録上利害関係ヲ有スル第三者アル場合ヲ除クノ外遅滞ナク其ノ登録ノ更正ヲ為シ其ノ旨ヲ登録権利者及登録義務者ニ通知スヘシ
前条第二項及第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十条 特許権又ハ之ニ関スル権利ニシテ工場財団又ハ之ニ準スヘキモノニ属スルコトノ登録アルモノニ付変更、制限又ハ消滅アリタルトキハ特許局ハ遅滞ナク其ノ旨ヲ管轄登記所又ハ之ニ準スヘキモノニ通知スヘシ
第二節 特許権及実施権ニ関スル登録手続
第四十一条 特許権移転ノ登録又ハ特許権ノ登録名義人ノ表示ノ変更若ハ更正ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ追加ノ特許権又ハ特許法第四十九条ノ規定ニ依ル実施権アルトキハ同時ニ其ノ追加ノ特許権又ハ実施権ニ付テモ同一事項ノ登録ヲ申請スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ同一ノ申請書ヲ以テ登録ヲ申請スルコトヲ得
第四十二条 特許権ノ制限附移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ制限ヲ記載シ尚登録原因ニ報酬又ハ其ノ支払時期ノ定アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
第四十三条 実施権ノ設定、保存又ハ移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ範囲ヲ記載シ尚登録原因ニ報酬若ハ其ノ支払時期ノ定アルトキ又ハ特許法第五十一条第二項ノ承諾アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
実施権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ特許発明実施ノ事業ト共ニ移転スルトキハ申請書ニ之ヲ証スル書面ヲ添附スヘシ
第三節 質権ニ関スル登録手続
第四十四条 質権設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ質権ノ目的タル権利及債権額ヲ記載シ尚登録原因ニ存続期間、弁済期、利息、違約金若ハ賠償額ニ関スル定若ハ民法第三百四十六条但書ノ規定ニ依ル定アルトキ又ハ債権ニ条件ヲ附シタルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
前項ノ場合ニ於テ質権設定者カ債務者ニ非サルトキハ申請書ニ尚債務者ヲ表示スヘシ
質権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ質権カ債権ト共ニ移転スルヤ否ヤヲ記載スヘシ
第四十五条 一定ノ金額ヲ目的トセサル債権ノ担保タル質権ノ設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債権ノ価額ヲ記載スヘシ
第四十六条 債権ノ一部譲渡又ハ代位弁済ニ依ル質権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ譲渡又ハ代位弁済ノ目的タル債権額ヲ記載スヘシ
第四十七条 未登録ノ制限附移転ノ特許権若ハ未登録ノ実施権又ハ之ヲ目的トスル質権ニ関スル登録ハ之ヲ命スル裁判ニ依リテ自己ノ権利ヲ証スル者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第二十一条又ハ第二十二条ノ規定ニ依リ官庁又ハ公署カ未登録ノ権利ニ関スル登録ヲ特許局ニ嘱託スル場合ニ於テハ裁判ニ依リテ其ノ権利ヲ証スルコトヲ要セス
第四節 抹消ニ関スル登録手続
第四十八条 特許権又ハ之ニ関スル権利ノ抛棄ニ依ル登録ノ抹消ハ登録名義人ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第四十九条 登録シタル権利カ或人ノ死亡ニ依リテ消滅シタル場合ニ於テ申請書ニ其ノ死亡ヲ証スル戸籍ノ謄本若ハ抄本又ハ之ニ準スヘキ書面ヲ添附シタルトキハ登録権利者ノミニテ登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十条 登録権利者カ登録義務者ノ行方ノ知レサルニ依リ登録ノ抹消ヲ申請スルコト能ハサルトキハ民事訴訟法ノ規定ニ従ヒ公示催告ノ申立ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ除権判決アリタルトキハ申請書ニ其ノ謄本ヲ添附シ登録権利者ノミニテ登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テ申請書ニ債権証書又ハ元本ノ受取証書及登録セラレタル債務ノ弁済証書ヲ添附シタルトキハ登録権利者ノミニテ質権ニ関スル登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十一条 仮登録ノ抹消ハ仮登録名義人ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
申請書ニ仮登録名義人ノ承諾書又ハ其ノ者ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキハ登録上利害関係ヲ有スル者ノミニテ仮登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十二条 登録ノ抹消ヲ申請スル場合ニ於テ登録上利害関係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ其ノ者ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第五十三条 第三条第一号ノ予告登録アリタル場合ニ於テ訴ヲ却下シタル裁判若ハ之ヲ提起シタル者ニ対シテ敗訴ヲ言渡シタル裁判カ確定シタルトキ、訴ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ又ハ請求ノ目的ニ付和解アリタルトキハ第一審裁判所ハ遅滞ナク嘱託書ニ裁判ノ謄本若ハ抄本又ハ訴ノ取下、請求ノ抛棄若ハ和解ヲ証スル裁判所書記ノ書面ヲ添附シテ予告登録ノ抹消ヲ特許局ニ嘱託スヘシ
第三条第二号ノ予告登録アリタル場合ニ於テ審判若ハ再審ノ請求ヲ却下シタル決定確定シタルトキ、請求ヲ否認シタル審決確定シ若ハ判決アリタルトキ、請求ノ取下アリタルトキ又ハ請求ノ抛棄アリタルトキハ職権ヲ以テ予告登録ヲ抹消ス実施権許与ノ請求若ハ特許若ハ実施権許与ノ取消ノ請求ヲ却下シタルトキ又ハ請求ノ取下アリタルトキ亦同シ
第三章 異議及訴願
第五十四条 登録ニ関スル処分ヲ不当トスル者ハ其ノ処分ノ了リタル日ヨリ三十日以内ニ特許局長官ニ対シ異議ヲ申立ツルコトヲ得
異議ノ決定ハ理由ヲ附シテ之ヲ為スヘシ
第五十五条 異議ノ決定ニ不服アル者ハ農商務大臣ニ訴願ヲ提起スルコトヲ得
附 則
第五十六条 本令ハ大正十一年一月十一日ヨリ之ヲ施行ス
第五十七条 旧特許原簿ハ之ヲ本令ニ依ル特許原簿ト看做ス
第五十八条 旧令ニ依リ為シタル登録ニ関スル処分及手続ハ本令ニ依リ為シタルモノト看做ス
第五十九条 特許法第百三十八条第一項ノ規定ニ依ル処理ニ関スル登録ニ付テハ仍旧令ニ依ル
第六十条 本令施行ノ際現ニ繋属スル登録ニ関スル処分及手続ニ付テハ仍旧令ニ依ル
第六十一条 旧特許法第三十五条ノ規定ニ依ル実施権ノ保存ノ登録ニ付テハ仍旧令ニ依ル