特許登録令
法令番号: 勅令第二百九十四號
公布年月日: 明治42年10月25日
法令の形式: 勅令
朕特許登錄令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年十月二十三日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 大浦兼武
勅令第二百九十四號
特許登錄令
第一章 總則
第一條 特許ニ關スル登錄ハ左ニ揭ケタル事項ニ付之ヲ爲ス
一 特許權、實施權、使用權及此等ノ權利ヲ目的トスル質權ノ設定、保存、移轉、變更、消滅、處分ノ制限又ハ特許法第四十四條ノ制限
二 特許ノ效力又ハ特許權ノ範圍ニ關スル確定審決又ハ判決
三 特許法第十三條第一項ノ規定ニ依ル代理人ノ選任若ハ變更又ハ其ノ代理權ノ變更若ハ消滅
第二條 假登錄ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス
一 登錄ノ申請ニ必要ナル手續上ノ條件カ具備セサルトキ
二 前條第一號ニ揭ケタル權利ノ設定、移轉、變更又ハ消滅ノ請求權ヲ保全セムトスルトキ、其ノ請求權カ始期附又ハ停止條件附ナルトキ其ノ他將來ニ於テ確定スヘキモノナルトキ亦同シ
第三條 豫吿登錄ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ爲ス
一 登錄原因ノ無效又ハ取消ニ依ル登錄ノ抹消又ハ囘復ノ訴ノ提起アリタルトキ但シ登錄原因ノ取消ニ依ル訴ニ付テハ其ノ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ル場合ニ限ル
二 特許又ハ特許權ノ改訂若ハ分割許可ノ無效審判ノ請求アリタルトキ、特許權ノ範圍確認ノ審判ノ請求アリタルトキ、使用權設定ノ請求ノ審判ノ請求アリタルトキ又ハ發明牴觸ノ査定確定シ若ハ審決アリタルトキ
第四條 詐欺又ハ强迫ニ依リテ登錄ノ申請ヲ妨ケタル第三者ハ登錄ノ欠缺ヲ主張スルコトヲ得ス
第五條 他人ノ爲登錄ヲ申請スル義務アル者ハ其ノ登錄ノ欠缺ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ登錄ノ原因カ自己ノ登錄ノ原因ノ後ニ發生シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第六條 左ニ揭ケタル事項ノ登錄ハ附記ニ依リテ之ヲ爲ス
一 登錄名義人ノ表示ノ變更
二 質權ノ移轉
第七條 左ノ各號ノ一ニ該當スル登錄ヲ申請スル場合ニ於テ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者ナキトキ又ハ申請書ニ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者ノ承諾書若ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキニ限リ附記ニ依リテ其ノ登錄ヲ爲ス
一 特許法第三十二條ノ制限附特許權ノ變更
二 特許權以外ノ權利ノ變更
三 登錄ノ更正
四 一部抹消登錄ノ囘復
第八條 特許權又ハ之ニ關スル權利ニ關シ登錄シタル權利ノ順位ハ登錄ノ前後ニ依ル
第九條 附記登錄ノ順位ハ主登錄ノ順位ニ依リ附記登錄間ノ順位ハ其ノ前後ニ依ル
第十條 假登錄ヲ爲シタルモノニ付本登錄ヲ爲シタル場合ニ於テハ其ノ順位ハ假登錄ノ順位ニ依ル
第十一條 特許發明ノ明細書及圖面ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
原本又ハ謄本ニ依リ特許ノ效力又ハ特許權ノ範圍ニ關スル確定審決又ハ判決アリタル旨ノ登錄アリタルトキハ其ノ原本又ハ謄本ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
第十二條 特許權又ハ之ニ關スル權利ノ登錄アリタルトキハ其ノ登錄權利者又ハ登錄義務者ノ共同人名簿ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
第十三條 特許原簿、共同人名簿、受付簿其ノ他登錄ニ付必要ナル帳簿ノ種類、樣式及其ノ記載ニ關スル手續ハ主務大臣之ヲ定ム
第十四條 特許原簿ノ全部又ハ一部カ滅失シタル場合ニ於テ其ノ囘復ニ關スル手續ハ主務大臣之ヲ定ム
第二章 登錄手續
第一節 通則
第十五條 登錄ハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請又ハ囑託アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
囑託ニ依ル登錄ノ手續ニ付テハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請ニ依ル登錄ニ關スル規定ヲ準用ス
第十六條 登錄ノ申請ハ登錄權利者及登錄義務者ヨリ之ヲ爲スヘシ
第十七條 審決、判決又ハ相續ニ依ル登錄ノ申請ハ登錄權利者ノミニテ之ヲ爲スコトヲ得
特許法第三十六條第二項及第五十二條第三項ノ登錄ノ申請ニ付亦前項ニ同シ
第十八條 登錄名義人ノ表示ノ變更ノ登錄ノ申請ハ登錄名義人ノミニテ之ヲ爲スコトヲ得
第十九條 特許法第十三條第一項ノ規定ニ依ル登錄ノ申請ハ本人又ハ受任者ヨリ之ヲ爲スコトヲ得
第二十條 假登錄ハ次條ノ場合ヲ除クノ外假登錄權利者ノ申請ニ依リ假登錄義務者ノ住所又ハ特許法第十八條ノ規定ニ依ル財產所在地ヲ管轄スル區裁判所ヨリ遲滯ナク囑託書ニ假處分命令ノ正本ヲ添附シテ之ヲ特許局ニ囑託スヘシ
前項ノ假處分命令ハ假登錄權利者カ假登錄原因ヲ疏明シタルトキハ區裁判所之ヲ發スヘシ
申請ヲ却下シタル決定ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
前項ノ卽時抗吿ニ付テハ非訟事件手續法ノ規定ヲ準用ス
第二十一條 假登錄ハ假登錄義務者ノ承諾アルトキハ其ノ承諾書ヲ添附シテ假登錄權利者ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
第二十二條 處分ノ制限ニ關スル登錄ハ當該官廳又ハ公署ヨリ遲滯ナク囑託書ニ登錄原因ヲ證スル書面ヲ添附シテ之ヲ特許局ニ囑託スヘシ公賣處分ニ依ル權利移轉ノ登錄ニ付登錄權利者ノ請求アリタル場合亦同シ
第二十三條 特許法第四十四條ノ規定ニ依リ政府ニ於テ特許權ヲ收用シ又ハ特許發明ヲ實施スル場合ニ於テハ主務官廳ハ特許權ノ移轉ノ登錄又ハ實施權設定ノ登錄ヲ特許局ニ囑託スヘシ
第二十四條 第三條第一號ニ揭ケタル訴ヲ受理シタル裁判所ハ職權ヲ以テ遲滯ナク囑託書ニ訴狀ノ謄本又ハ抄本ヲ添附シテ其ノ豫吿登錄ヲ特許局ニ囑託スヘシ
第三條第二號ニ揭ケタル審判ノ請求アリタルトキ又ハ査定確定シ若ハ審決アリタルトキハ特許局長ハ特許原簿ニ其ノ豫吿登錄ヲ爲スヘシ
第二十五條 登錄ノ申請書ニハ左ノ書面ヲ添附スヘシ
一 登錄原因ヲ證スル書面
二 特許證又ハ登錄義務者ノ權利ニ關スル登錄濟證
三 登錄原因ニ付第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ要スルトキハ之ヲ證スル書面
四 外國人ニ在リテハ其ノ國籍ヲ證スル書面但シ萬國工業所有權保護同盟條約國又ハ帝國ト特許ニ關シ相互保護ヲ約セシ國以外ノ國ノ臣民又ハ人民ニ在リテハ尙同盟國中ノ一國ノ版圖內ニ住所又ハ現實且眞誠ナル工業的若ハ商業的營業所ヲ有スルコトヲ證スル書面
五 外國法人ニ在リテハ其ノ法人タルコトヲ證スル書面
六 代理人ニ依リテ登錄ヲ申請スルトキハ其ノ權限ヲ證スル書面
特許法第十三條第一項ノ規定ニ依ル登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ前項第二號ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第一項第三號ノ書面ニ依リ證明スヘキ事項カ旣ニ登錄ヲ受ケタルモノナルトキハ同號ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
他ノ事件ニ付特許局ニ對シ旣ニ第一項第四號又ハ第五號ノ證明書ヲ差出シタル者ニシテ其ノ事項ニ變更ナキトキハ更ニ其ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス但シ特許局長ニ於テ其ノ提出ヲ必要ト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラス
特許法第十三條第一項ノ規定ニ依リ登錄ヲ受ケタル代理人又ハ同法第十七條第一項但書ノ規定ニ依リ屆出タル代表者カ其ノ權限內ニ於テ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ第一項第六號ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
登錄原因ヲ證スル書面カ執行力アル判決又ハ確定審決ナルトキハ第一項第二號、第三號、第五號ノ書面及國籍ヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要セス
數箇ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ登錄原因ヲ證スル書面カ一箇ナルトキハ其ノ一ノ申請書ニ之ヲ添附シ他ノ申請書ニハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
第二十六條 申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人署名捺印スヘシ
一 特許番號
二 發明ノ名稱
三 申請人ノ氏名又ハ名稱及住所、代理人若ハ代表者ニ依リテ申請スル場合ニ於テハ尙其ノ氏名又ハ名稱及住所
四 外國人ニ在リテハ其ノ國籍但シ萬國工業所有權保護同盟條約國又ハ帝國ト特許ニ關シ相互保護ヲ約セシ國以外ノ國ノ臣民又ハ人民ニ在リテハ尙同盟國中ノ一國ノ版圖內ニ於ケル住所又ハ現實且眞誠ナル工業的若ハ商業的營業所
五 登錄原因及其ノ日附
六 登錄ノ目的
七 年月日
第二十七條 債權者カ民法第四百二十三條ノ規定ニ依リ債務者ニ代位シテ登錄ヲ申請スルニハ第二十五條第一項ニ揭ケタル書面ノ外代位原因ヲ證スル書面ヲ添附シ且申請書ニ前條ニ記載シタル事項ノ外債權者ノ氏名又ハ名稱及住所竝代位原因ヲ記載シ之ニ署名捺印スヘシ
第二十八條 登錄原因ニ登錄ノ目的タル權利ノ消滅ニ關スル事項ノ定アルトキハ申請書ニ其ノ事項ヲ記載スヘシ
第二十九條 登錄權利者カ多數ナル場合ニ於テ登錄原因ニ持分ノ定アルトキハ申請書ニ其ノ持分ヲ記載スヘシ
特許權又ハ之ニ關スル權利ノ一部移轉ノ登錄ヲ申請スル場合亦前項ニ同シ
前二項ノ場合ニ於テ民法第二百五十六條第一項但書ノ規定ニ依ル定アルトキハ之ヲ記載スヘシ
第三十條 左ノ場合ニ於テハ其ノ事實ヲ證スル戶籍吏ノ書面又ハ之ヲ證スルニ足ルヘキ書面ヲ以テ登錄原因ヲ證スル書面ト看做ス
一 登錄原因カ相續ナルトキ
二 申請人カ登錄權利者又ハ登錄義務者ノ相續人ナルトキ
三 登錄名義人ノ表示ノ變更ノ登錄ヲ申請スルトキ
第三十一條 申請書ニ第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ證スル書面ヲ添附スヘキ場合ニ於テハ其ノ第三者ヲシテ申請書ニ署名捺印セシメテ其ノ書面ニ代ユルコトヲ得
第三十二條 登錄原因ヲ證スル書面カ初メヨリ存在セス又ハ之ヲ添附スルコト能ハサルトキハ申請書ノ副本ヲ添附スヘシ
第三十三條 登錄義務者ノ權利ニ關スル登錄濟證カ滅失シタルトキハ申請書ニ其ノ登錄義務者ノ本人ナルコトヲ證スル市町村長又ハ之ニ準スヘキ者ノ證明書ヲ添附スヘシ
第三十四條 左ノ場合ニ於テハ登錄ノ申請ハ之ヲ却下ス
一 事件カ登錄スヘキモノニ非サルトキ
二 申請書カ方式ニ適合セサルトキ
三 申請書ニ揭ケタル特許權又ハ之ニ關スル權利ノ表示カ特許原簿ト牴觸スルトキ
四 第三十條第二號ニ揭ケタル書面ヲ添附シタル場合ヲ除クノ外申請書ニ揭ケタル登錄義務者ノ表示カ特許原簿ト符合セサルトキ
五 申請人タル者カ登錄名義人タル場合ニ於テ其ノ表示カ特許原簿ト符合セサルトキ
六 代理人又ハ代表者ノ表示カ特許原簿又ハ屆出ト符合セサルトキ
七 申請書ニ揭ケタル事項カ登錄原因ヲ證スル書面ト符合セサルトキ
八 申請書ニ必要ナル書面ヲ添附セサルトキ
九 登錄稅ヲ納付セサルトキ
第三十五條 行政區劃又ハ其ノ名稱ノ變更アリタルトキハ特許原簿ニ記載シタル行政區劃又ハ其ノ名稱ハ當然之ヲ變更シタルモノト看做ス大字若ハ字又ハ其ノ名稱ニ變更アリタルトキ亦同シ
第三十六條 登錄ヲ完了シタル後其ノ登錄ニ付錯誤又ハ遺漏アルコトヲ發見シタルトキハ遲滯ナク其ノ旨ヲ登錄權利者及登錄義務者ニ通知スヘシ
前項ノ通知ハ第二十七條ノ場合ニ於テハ債權者ニ對シテ亦之ヲ爲スヘシ
前二項ノ場合ニ於テ通知ヲ受クヘキモノ多數ナル場合ニ於テ其ノ代表者ナキトキハ其ノ一人ニ通知スルヲ以テ足ル
第三十七條 抹消シタル登錄ノ囘復ヲ申請スル場合ニ於テ登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第三十八條 特許權又ハ之ニ關スル權利ニシテ工場財團ニ屬スルコトノ登錄アルモノニ付變更、制限又ハ消滅アリタルトキハ特許局長ハ遲滯ナク其ノ旨ヲ管轄登記所ニ通知スヘシ
第二節 特許權、實施權及使用權ニ關スル登錄手續
第三十九條 特許權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ追加特許權アルトキハ同時ニ其ノ移轉ノ登錄ヲ申請スヘシ
第四十條 特許權ノ制限附移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ制限ヲ記載シ尙登錄原因ニ報酬又ハ其ノ支拂時期ノ定アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
第四十一條 實施權ノ設定又ハ移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ範圍ヲ記載シ尙登錄原因ニ存續期間、報酬又ハ其ノ支拂時期ノ定アルトキ又ハ實施權ノ移轉ヲ許シタルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
實施權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テ發明實施ノ事業ト共ニ移轉スルトキハ之ヲ證スル書面ヲ申請書ニ添附スヘシ
第四十二條 使用權設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ範圍及使用ヲ要スル特許發明ノ特許番號及名稱ヲ記載シ尙登錄原因ニ存續期間、報酬又ハ其ノ支拂時期ノ定アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ使用ヲ要スル特許發明ノ特許證ヲ添附スヘシ
第四十三條 特許法第三十六條第二項ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ無效トナリタル特許ノ番號ヲ記載シ且善意ナリシコトヲ證スルニ足ル書面ヲ添附スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ第二十五條第一項第二號ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第四十四條 特許法第五十二條第三項ノ規定ニ依ル變更ノ登錄ハ登錄上利害ノ關係ヲ有スル者之ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ前條第二項ノ規定ヲ準用ス
第三節 質權ニ關スル登錄手續
第四十五條 質權設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ質權ノ目的タル權利及債權額ヲ記載シ尙登錄原因ニ存續期間、辨濟期、利息、違約金若ハ賠償額ニ關スル定アルトキ、債權ニ條件ヲ附シタルトキ又ハ民法第三百四十六條但書ノ規定ニ依ル定アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
前項ノ場合ニ於テ質權設定者カ債務者ニ非サルトキハ申請書ニ債務者ヲ表示スヘシ
質權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ質權カ債權ト共ニ移轉スルヤ否ヤヲ記載スヘシ
第四十六條 一定ノ金額ヲ目的トセサル債權ノ擔保タル質權ノ設定ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債權ノ價格ヲ記載スヘシ
第四十七條 債權ノ一部讓渡又ハ代位辨濟ニ依ル質權移轉ノ登錄ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ讓渡又ハ代位辨濟ノ目的タル債權額ヲ記載スヘシ
第四十八條 未登錄ノ制限附特許權又ハ未登錄ノ特許權以外ノ權利ヲ目的トスル質權ニ關スル登錄ハ之ヲ命スル裁判ニ依リテ自己ノ權利ヲ證スル者ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
第四十九條 前條ノ規定ハ未登錄ノ制限附特許權又ハ未登錄ノ特許權以外ノ權利及之ヲ目的トスル質權ノ變更又ハ處分ノ制限ノ登錄ニ之ヲ準用ス
第五十條 第二十二條又ハ第二十三條ノ規定ニ依リ官廳又ハ公署カ未登錄ノ權利ニ關スル登錄ヲ囑託スル場合ニ於テハ裁判ニ依リテ其ノ權利ヲ證スルコトヲ要セス
第四節 抹消ニ關スル登錄手續
第五十一條 特許權又ハ之ニ關スル權利ノ抛棄ニ依ル登錄ノ抹消ハ登錄名義人ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第五十二條 登錄シタル權利カ或人ノ死亡ニ依リテ消滅シタル場合ニ於テ申請書ニ其ノ死亡ヲ證スル戶籍吏ノ書面其ノ他之ニ相當スル書面ヲ添附スルトキハ登錄權利者ノミニテ登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十三條 登錄權利者カ登錄義務者ノ行方ノ知レサルニ依リ之ト共ニ登錄ノ抹消ヲ申請スルコト能ハサルトキハ民事訴訟法ノ規定ニ從ヒ公示催吿ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ除權判決アリタルトキハ申請書ニ其ノ謄本ヲ添附シ登錄權利者ノミニテ登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テ申請書ニ債權證書又ハ元本ノ受取證書及登錄セラレタル債務辨濟ノ證書ヲ添附シタルトキハ登錄權利者ノミニテ質權ニ關スル登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十四條 登錄ノ抹消ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ抹消ニ付登錄上利害ノ關係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第五十五條 假登錄ノ抹消ハ假登錄名義人ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
申請書ニ假登錄名義人ノ承諾書又ハ之ニ對抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキハ登錄上利害ノ關係ヲ有スル者ヨリ假登錄ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十六條 第三條第一號ノ場合ニ於テ訴ヲ却下シタル裁判若ハ之ヲ提起シタル者ニ對シテ敗訴ヲ言渡シタル裁判カ確定シタルトキ、訴ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ又ハ請求ノ目的ニ付和解アリタルトキハ第一審裁判所ハ遲滯ナク囑託書ニ裁判ノ謄本若ハ抄本又ハ訴ノ取下、請求ノ抛棄若ハ和解ヲ證スル裁判所書記ノ書面ヲ添附シテ豫吿登錄ノ抹消ヲ特許局ニ囑託スヘシ
第三條第二號ノ場合ニ於テ審判ノ請求ヲ却下シタル審決又ハ請求ヲ否認シタル審決確定シタルトキ、審判請求ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ、請求ヲ否認スル判決アリタルトキ又ハ權利確認ノ査定若ハ之ニ對スル審決確定シ又ハ判決アリタル爲出願カ特許又ハ許可スヘカラサルモノト決定シタルトキハ特許局長ハ特許原簿ノ豫吿登錄ヲ抹消スヘシ
第三章 異議及訴願
第五十七條 登錄ニ關スル處分ヲ不當トスル者ハ處分ノ了リタル日ヨリ三十日以內ニ特許局長ニ對シ異議ヲ申立ツルコトヲ得
第五十八條 異議ノ決定ハ理由ヲ附シテ之ヲ爲スヘシ
決定ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願ヲ提起スルコトヲ得
附 則
本令ハ特許法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
舊特許原簿ハ之ヲ特許原簿ト看做ス
本令施行前ノ特許發明ノ明細書及圖面ハ之ヲ舊特許原簿ノ一部ト看做ス
本令施行前登錄セラレタル權利ニ關シ登錄ノ申請アリタル場合ニ於テ抹消ヲ除クノ外新特許原簿ニ舊特許原簿中抹消ニ係ラサル登錄ヲ移シ舊特許原簿中新特許原簿ニ移シタル登錄ヲ抹消スヘシ
朕特許登録令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年十月二十三日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 大浦兼武
勅令第二百九十四号
特許登録令
第一章 総則
第一条 特許ニ関スル登録ハ左ニ掲ケタル事項ニ付之ヲ為ス
一 特許権、実施権、使用権及此等ノ権利ヲ目的トスル質権ノ設定、保存、移転、変更、消滅、処分ノ制限又ハ特許法第四十四条ノ制限
二 特許ノ効力又ハ特許権ノ範囲ニ関スル確定審決又ハ判決
三 特許法第十三条第一項ノ規定ニ依ル代理人ノ選任若ハ変更又ハ其ノ代理権ノ変更若ハ消滅
第二条 仮登録ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス
一 登録ノ申請ニ必要ナル手続上ノ条件カ具備セサルトキ
二 前条第一号ニ掲ケタル権利ノ設定、移転、変更又ハ消滅ノ請求権ヲ保全セムトスルトキ、其ノ請求権カ始期附又ハ停止条件附ナルトキ其ノ他将来ニ於テ確定スヘキモノナルトキ亦同シ
第三条 予告登録ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス
一 登録原因ノ無効又ハ取消ニ依ル登録ノ抹消又ハ回復ノ訴ノ提起アリタルトキ但シ登録原因ノ取消ニ依ル訴ニ付テハ其ノ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ル場合ニ限ル
二 特許又ハ特許権ノ改訂若ハ分割許可ノ無効審判ノ請求アリタルトキ、特許権ノ範囲確認ノ審判ノ請求アリタルトキ、使用権設定ノ請求ノ審判ノ請求アリタルトキ又ハ発明牴触ノ査定確定シ若ハ審決アリタルトキ
第四条 詐欺又ハ強迫ニ依リテ登録ノ申請ヲ妨ケタル第三者ハ登録ノ欠欠ヲ主張スルコトヲ得ス
第五条 他人ノ為登録ヲ申請スル義務アル者ハ其ノ登録ノ欠欠ヲ主張スルコトヲ得ス但シ其ノ登録ノ原因カ自己ノ登録ノ原因ノ後ニ発生シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第六条 左ニ掲ケタル事項ノ登録ハ附記ニ依リテ之ヲ為ス
一 登録名義人ノ表示ノ変更
二 質権ノ移転
第七条 左ノ各号ノ一ニ該当スル登録ヲ申請スル場合ニ於テ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者ナキトキ又ハ申請書ニ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者ノ承諾書若ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキニ限リ附記ニ依リテ其ノ登録ヲ為ス
一 特許法第三十二条ノ制限附特許権ノ変更
二 特許権以外ノ権利ノ変更
三 登録ノ更正
四 一部抹消登録ノ回復
第八条 特許権又ハ之ニ関スル権利ニ関シ登録シタル権利ノ順位ハ登録ノ前後ニ依ル
第九条 附記登録ノ順位ハ主登録ノ順位ニ依リ附記登録間ノ順位ハ其ノ前後ニ依ル
第十条 仮登録ヲ為シタルモノニ付本登録ヲ為シタル場合ニ於テハ其ノ順位ハ仮登録ノ順位ニ依ル
第十一条 特許発明ノ明細書及図面ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
原本又ハ謄本ニ依リ特許ノ効力又ハ特許権ノ範囲ニ関スル確定審決又ハ判決アリタル旨ノ登録アリタルトキハ其ノ原本又ハ謄本ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
第十二条 特許権又ハ之ニ関スル権利ノ登録アリタルトキハ其ノ登録権利者又ハ登録義務者ノ共同人名簿ハ之ヲ特許原簿ノ一部ト看做ス
第十三条 特許原簿、共同人名簿、受付簿其ノ他登録ニ付必要ナル帳簿ノ種類、様式及其ノ記載ニ関スル手続ハ主務大臣之ヲ定ム
第十四条 特許原簿ノ全部又ハ一部カ滅失シタル場合ニ於テ其ノ回復ニ関スル手続ハ主務大臣之ヲ定ム
第二章 登録手続
第一節 通則
第十五条 登録ハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請又ハ嘱託アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
嘱託ニ依ル登録ノ手続ニ付テハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外申請ニ依ル登録ニ関スル規定ヲ準用ス
第十六条 登録ノ申請ハ登録権利者及登録義務者ヨリ之ヲ為スヘシ
第十七条 審決、判決又ハ相続ニ依ル登録ノ申請ハ登録権利者ノミニテ之ヲ為スコトヲ得
特許法第三十六条第二項及第五十二条第三項ノ登録ノ申請ニ付亦前項ニ同シ
第十八条 登録名義人ノ表示ノ変更ノ登録ノ申請ハ登録名義人ノミニテ之ヲ為スコトヲ得
第十九条 特許法第十三条第一項ノ規定ニ依ル登録ノ申請ハ本人又ハ受任者ヨリ之ヲ為スコトヲ得
第二十条 仮登録ハ次条ノ場合ヲ除クノ外仮登録権利者ノ申請ニ依リ仮登録義務者ノ住所又ハ特許法第十八条ノ規定ニ依ル財産所在地ヲ管轄スル区裁判所ヨリ遅滞ナク嘱託書ニ仮処分命令ノ正本ヲ添附シテ之ヲ特許局ニ嘱託スヘシ
前項ノ仮処分命令ハ仮登録権利者カ仮登録原因ヲ疏明シタルトキハ区裁判所之ヲ発スヘシ
申請ヲ却下シタル決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
前項ノ即時抗告ニ付テハ非訟事件手続法ノ規定ヲ準用ス
第二十一条 仮登録ハ仮登録義務者ノ承諾アルトキハ其ノ承諾書ヲ添附シテ仮登録権利者ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
第二十二条 処分ノ制限ニ関スル登録ハ当該官庁又ハ公署ヨリ遅滞ナク嘱託書ニ登録原因ヲ証スル書面ヲ添附シテ之ヲ特許局ニ嘱託スヘシ公売処分ニ依ル権利移転ノ登録ニ付登録権利者ノ請求アリタル場合亦同シ
第二十三条 特許法第四十四条ノ規定ニ依リ政府ニ於テ特許権ヲ収用シ又ハ特許発明ヲ実施スル場合ニ於テハ主務官庁ハ特許権ノ移転ノ登録又ハ実施権設定ノ登録ヲ特許局ニ嘱託スヘシ
第二十四条 第三条第一号ニ掲ケタル訴ヲ受理シタル裁判所ハ職権ヲ以テ遅滞ナク嘱託書ニ訴状ノ謄本又ハ抄本ヲ添附シテ其ノ予告登録ヲ特許局ニ嘱託スヘシ
第三条第二号ニ掲ケタル審判ノ請求アリタルトキ又ハ査定確定シ若ハ審決アリタルトキハ特許局長ハ特許原簿ニ其ノ予告登録ヲ為スヘシ
第二十五条 登録ノ申請書ニハ左ノ書面ヲ添附スヘシ
一 登録原因ヲ証スル書面
二 特許証又ハ登録義務者ノ権利ニ関スル登録済証
三 登録原因ニ付第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ要スルトキハ之ヲ証スル書面
四 外国人ニ在リテハ其ノ国籍ヲ証スル書面但シ万国工業所有権保護同盟条約国又ハ帝国ト特許ニ関シ相互保護ヲ約セシ国以外ノ国ノ臣民又ハ人民ニ在リテハ尚同盟国中ノ一国ノ版図内ニ住所又ハ現実且真誠ナル工業的若ハ商業的営業所ヲ有スルコトヲ証スル書面
五 外国法人ニ在リテハ其ノ法人タルコトヲ証スル書面
六 代理人ニ依リテ登録ヲ申請スルトキハ其ノ権限ヲ証スル書面
特許法第十三条第一項ノ規定ニ依ル登録ヲ申請スル場合ニ於テハ前項第二号ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第一項第三号ノ書面ニ依リ証明スヘキ事項カ既ニ登録ヲ受ケタルモノナルトキハ同号ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
他ノ事件ニ付特許局ニ対シ既ニ第一項第四号又ハ第五号ノ証明書ヲ差出シタル者ニシテ其ノ事項ニ変更ナキトキハ更ニ其ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス但シ特許局長ニ於テ其ノ提出ヲ必要ト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラス
特許法第十三条第一項ノ規定ニ依リ登録ヲ受ケタル代理人又ハ同法第十七条第一項但書ノ規定ニ依リ届出タル代表者カ其ノ権限内ニ於テ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ第一項第六号ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
登録原因ヲ証スル書面カ執行力アル判決又ハ確定審決ナルトキハ第一項第二号、第三号、第五号ノ書面及国籍ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要セス
数箇ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ登録原因ヲ証スル書面カ一箇ナルトキハ其ノ一ノ申請書ニ之ヲ添附シ他ノ申請書ニハ其ノ旨ヲ記載スヘシ
第二十六条 申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人署名捺印スヘシ
一 特許番号
二 発明ノ名称
三 申請人ノ氏名又ハ名称及住所、代理人若ハ代表者ニ依リテ申請スル場合ニ於テハ尚其ノ氏名又ハ名称及住所
四 外国人ニ在リテハ其ノ国籍但シ万国工業所有権保護同盟条約国又ハ帝国ト特許ニ関シ相互保護ヲ約セシ国以外ノ国ノ臣民又ハ人民ニ在リテハ尚同盟国中ノ一国ノ版図内ニ於ケル住所又ハ現実且真誠ナル工業的若ハ商業的営業所
五 登録原因及其ノ日附
六 登録ノ目的
七 年月日
第二十七条 債権者カ民法第四百二十三条ノ規定ニ依リ債務者ニ代位シテ登録ヲ申請スルニハ第二十五条第一項ニ掲ケタル書面ノ外代位原因ヲ証スル書面ヲ添附シ且申請書ニ前条ニ記載シタル事項ノ外債権者ノ氏名又ハ名称及住所並代位原因ヲ記載シ之ニ署名捺印スヘシ
第二十八条 登録原因ニ登録ノ目的タル権利ノ消滅ニ関スル事項ノ定アルトキハ申請書ニ其ノ事項ヲ記載スヘシ
第二十九条 登録権利者カ多数ナル場合ニ於テ登録原因ニ持分ノ定アルトキハ申請書ニ其ノ持分ヲ記載スヘシ
特許権又ハ之ニ関スル権利ノ一部移転ノ登録ヲ申請スル場合亦前項ニ同シ
前二項ノ場合ニ於テ民法第二百五十六条第一項但書ノ規定ニ依ル定アルトキハ之ヲ記載スヘシ
第三十条 左ノ場合ニ於テハ其ノ事実ヲ証スル戸籍吏ノ書面又ハ之ヲ証スルニ足ルヘキ書面ヲ以テ登録原因ヲ証スル書面ト看做ス
一 登録原因カ相続ナルトキ
二 申請人カ登録権利者又ハ登録義務者ノ相続人ナルトキ
三 登録名義人ノ表示ノ変更ノ登録ヲ申請スルトキ
第三十一条 申請書ニ第三者ノ許可、同意又ハ承諾ヲ証スル書面ヲ添附スヘキ場合ニ於テハ其ノ第三者ヲシテ申請書ニ署名捺印セシメテ其ノ書面ニ代ユルコトヲ得
第三十二条 登録原因ヲ証スル書面カ初メヨリ存在セス又ハ之ヲ添附スルコト能ハサルトキハ申請書ノ副本ヲ添附スヘシ
第三十三条 登録義務者ノ権利ニ関スル登録済証カ滅失シタルトキハ申請書ニ其ノ登録義務者ノ本人ナルコトヲ証スル市町村長又ハ之ニ準スヘキ者ノ証明書ヲ添附スヘシ
第三十四条 左ノ場合ニ於テハ登録ノ申請ハ之ヲ却下ス
一 事件カ登録スヘキモノニ非サルトキ
二 申請書カ方式ニ適合セサルトキ
三 申請書ニ掲ケタル特許権又ハ之ニ関スル権利ノ表示カ特許原簿ト牴触スルトキ
四 第三十条第二号ニ掲ケタル書面ヲ添附シタル場合ヲ除クノ外申請書ニ掲ケタル登録義務者ノ表示カ特許原簿ト符合セサルトキ
五 申請人タル者カ登録名義人タル場合ニ於テ其ノ表示カ特許原簿ト符合セサルトキ
六 代理人又ハ代表者ノ表示カ特許原簿又ハ届出ト符合セサルトキ
七 申請書ニ掲ケタル事項カ登録原因ヲ証スル書面ト符合セサルトキ
八 申請書ニ必要ナル書面ヲ添附セサルトキ
九 登録税ヲ納付セサルトキ
第三十五条 行政区画又ハ其ノ名称ノ変更アリタルトキハ特許原簿ニ記載シタル行政区画又ハ其ノ名称ハ当然之ヲ変更シタルモノト看做ス大字若ハ字又ハ其ノ名称ニ変更アリタルトキ亦同シ
第三十六条 登録ヲ完了シタル後其ノ登録ニ付錯誤又ハ遺漏アルコトヲ発見シタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ登録権利者及登録義務者ニ通知スヘシ
前項ノ通知ハ第二十七条ノ場合ニ於テハ債権者ニ対シテ亦之ヲ為スヘシ
前二項ノ場合ニ於テ通知ヲ受クヘキモノ多数ナル場合ニ於テ其ノ代表者ナキトキハ其ノ一人ニ通知スルヲ以テ足ル
第三十七条 抹消シタル登録ノ回復ヲ申請スル場合ニ於テ登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第三十八条 特許権又ハ之ニ関スル権利ニシテ工場財団ニ属スルコトノ登録アルモノニ付変更、制限又ハ消滅アリタルトキハ特許局長ハ遅滞ナク其ノ旨ヲ管轄登記所ニ通知スヘシ
第二節 特許権、実施権及使用権ニ関スル登録手続
第三十九条 特許権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ追加特許権アルトキハ同時ニ其ノ移転ノ登録ヲ申請スヘシ
第四十条 特許権ノ制限附移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ制限ヲ記載シ尚登録原因ニ報酬又ハ其ノ支払時期ノ定アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
第四十一条 実施権ノ設定又ハ移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ範囲ヲ記載シ尚登録原因ニ存続期間、報酬又ハ其ノ支払時期ノ定アルトキ又ハ実施権ノ移転ヲ許シタルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
実施権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テ発明実施ノ事業ト共ニ移転スルトキハ之ヲ証スル書面ヲ申請書ニ添附スヘシ
第四十二条 使用権設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ範囲及使用ヲ要スル特許発明ノ特許番号及名称ヲ記載シ尚登録原因ニ存続期間、報酬又ハ其ノ支払時期ノ定アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ使用ヲ要スル特許発明ノ特許証ヲ添附スヘシ
第四十三条 特許法第三十六条第二項ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ無効トナリタル特許ノ番号ヲ記載シ且善意ナリシコトヲ証スルニ足ル書面ヲ添附スヘシ
前項ノ場合ニ於テハ第二十五条第一項第二号ノ書面ヲ添附スルコトヲ要セス
第四十四条 特許法第五十二条第三項ノ規定ニ依ル変更ノ登録ハ登録上利害ノ関係ヲ有スル者之ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ前条第二項ノ規定ヲ準用ス
第三節 質権ニ関スル登録手続
第四十五条 質権設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ質権ノ目的タル権利及債権額ヲ記載シ尚登録原因ニ存続期間、弁済期、利息、違約金若ハ賠償額ニ関スル定アルトキ、債権ニ条件ヲ附シタルトキ又ハ民法第三百四十六条但書ノ規定ニ依ル定アルトキハ亦之ヲ記載スヘシ
前項ノ場合ニ於テ質権設定者カ債務者ニ非サルトキハ申請書ニ債務者ヲ表示スヘシ
質権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ質権カ債権ト共ニ移転スルヤ否ヤヲ記載スヘシ
第四十六条 一定ノ金額ヲ目的トセサル債権ノ担保タル質権ノ設定ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ其ノ債権ノ価格ヲ記載スヘシ
第四十七条 債権ノ一部譲渡又ハ代位弁済ニ依ル質権移転ノ登録ヲ申請スル場合ニ於テハ申請書ニ譲渡又ハ代位弁済ノ目的タル債権額ヲ記載スヘシ
第四十八条 未登録ノ制限附特許権又ハ未登録ノ特許権以外ノ権利ヲ目的トスル質権ニ関スル登録ハ之ヲ命スル裁判ニ依リテ自己ノ権利ヲ証スル者ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
第四十九条 前条ノ規定ハ未登録ノ制限附特許権又ハ未登録ノ特許権以外ノ権利及之ヲ目的トスル質権ノ変更又ハ処分ノ制限ノ登録ニ之ヲ準用ス
第五十条 第二十二条又ハ第二十三条ノ規定ニ依リ官庁又ハ公署カ未登録ノ権利ニ関スル登録ヲ嘱託スル場合ニ於テハ裁判ニ依リテ其ノ権利ヲ証スルコトヲ要セス
第四節 抹消ニ関スル登録手続
第五十一条 特許権又ハ之ニ関スル権利ノ抛棄ニ依ル登録ノ抹消ハ登録名義人ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得
第五十二条 登録シタル権利カ或人ノ死亡ニ依リテ消滅シタル場合ニ於テ申請書ニ其ノ死亡ヲ証スル戸籍吏ノ書面其ノ他之ニ相当スル書面ヲ添附スルトキハ登録権利者ノミニテ登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十三条 登録権利者カ登録義務者ノ行方ノ知レサルニ依リ之ト共ニ登録ノ抹消ヲ申請スルコト能ハサルトキハ民事訴訟法ノ規定ニ従ヒ公示催告ノ申立ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ除権判決アリタルトキハ申請書ニ其ノ謄本ヲ添附シ登録権利者ノミニテ登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第一項ノ場合ニ於テ申請書ニ債権証書又ハ元本ノ受取証書及登録セラレタル債務弁済ノ証書ヲ添附シタルトキハ登録権利者ノミニテ質権ニ関スル登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十四条 登録ノ抹消ヲ申請スル場合ニ於テ其ノ抹消ニ付登録上利害ノ関係ヲ有スル第三者アルトキハ申請書ニ其ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附スヘシ
第五十五条 仮登録ノ抹消ハ仮登録名義人ヨリ之ヲ申請スルコトヲ得
申請書ニ仮登録名義人ノ承諾書又ハ之ニ対抗スルコトヲ得ヘキ裁判ノ謄本ヲ添附シタルトキハ登録上利害ノ関係ヲ有スル者ヨリ仮登録ノ抹消ヲ申請スルコトヲ得
第五十六条 第三条第一号ノ場合ニ於テ訴ヲ却下シタル裁判若ハ之ヲ提起シタル者ニ対シテ敗訴ヲ言渡シタル裁判カ確定シタルトキ、訴ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ又ハ請求ノ目的ニ付和解アリタルトキハ第一審裁判所ハ遅滞ナク嘱託書ニ裁判ノ謄本若ハ抄本又ハ訴ノ取下、請求ノ抛棄若ハ和解ヲ証スル裁判所書記ノ書面ヲ添附シテ予告登録ノ抹消ヲ特許局ニ嘱託スヘシ
第三条第二号ノ場合ニ於テ審判ノ請求ヲ却下シタル審決又ハ請求ヲ否認シタル審決確定シタルトキ、審判請求ノ取下アリタルトキ、請求ノ抛棄アリタルトキ、請求ヲ否認スル判決アリタルトキ又ハ権利確認ノ査定若ハ之ニ対スル審決確定シ又ハ判決アリタル為出願カ特許又ハ許可スヘカラサルモノト決定シタルトキハ特許局長ハ特許原簿ノ予告登録ヲ抹消スヘシ
第三章 異議及訴願
第五十七条 登録ニ関スル処分ヲ不当トスル者ハ処分ノ了リタル日ヨリ三十日以内ニ特許局長ニ対シ異議ヲ申立ツルコトヲ得
第五十八条 異議ノ決定ハ理由ヲ附シテ之ヲ為スヘシ
決定ニ不服アル者ハ主務大臣ニ訴願ヲ提起スルコトヲ得
附 則
本令ハ特許法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
旧特許原簿ハ之ヲ特許原簿ト看做ス
本令施行前ノ特許発明ノ明細書及図面ハ之ヲ旧特許原簿ノ一部ト看做ス
本令施行前登録セラレタル権利ニ関シ登録ノ申請アリタル場合ニ於テ抹消ヲ除クノ外新特許原簿ニ旧特許原簿中抹消ニ係ラサル登録ヲ移シ旧特許原簿中新特許原簿ニ移シタル登録ヲ抹消スヘシ