朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル大學特別會計法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年三月二十九日
內閣總理大臣 原敬
大藏大臣 子爵 高橋是淸
文部大臣 中橋德五郞
法律第十一號
大學特別會計法
第一條 帝國大學ハ各別ニ、其ノ他ノ官立大學ハ之ヲ通シテ一ノ特別會計ヲ立テ資金ヲ所有シ政府ノ支出金、資金ヨリ生スル收入、授業料、寄附金其ノ他ノ收入ヲ以テ其ノ一切ノ歲出ニ充テシム
第二條 前條ノ政府支出金ハ東京帝國大學ニ在リテハ每年度二百九十五萬三千三百五圓、京都帝國大學ニ在リテハ每年度百七十一萬五千四百二十八圓トシ其ノ他ノ帝國大學及官立大學ニ在リテハ每年度豫算ノ定ムル所ニ依リ一般會計ヨリ之ヲ繰入ルヘシ
東京帝國大學ニ在リテハ前項ノ金額ノ外航空ニ關スル硏究ノ費用ニ充ツル爲必要ナル金額ヲ每年度豫算ノ定ムル所ニ依リ一般會計ヨリ繰入ルルコトヲ得
第三條 各帝國大學及官立大學ノ資金ハ政府ヨリ交付シ又ハ他ヨリ寄附シタル動產及不動產竝歲入殘餘ヨリ成ル但シ官立大學ニ在リテハ第七條ノ施行豫算ノ歲入殘餘ニシテ資金ニ編入シタルモノハ官立大學每ニ區分シ之ヲ整理スヘシ
第四條 大學ノ歲出ニ充ツル爲必要アルトキハ其ノ資金ヲ支消スルコトヲ得但シ用途指定ニ係ル資金ニ付テハ用途指定者ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第五條 政府ハ每年各帝國大學及官立大學ノ特別會計ノ歲入歲出豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
第六條 大學特別會計ノ豫算中ニハ豫備費ヲ設クヘシ但シ東北帝國大學、九州帝國大學、北海道帝國大學及官立大學ノ特別會計豫算ニ在リテハ此ノ限ニ在ラス
第七條 文部大臣ハ歲入歲出豫算決定ノ後豫備費ヲ除クノ外各大學每ニ歲入歲出ノ施行豫算ヲ調製シ當該大學ノ總長又ハ學長ヲシテ之ヲ施行セシムヘシ
文部大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項以外ノ者ヲシテ歲入歲出豫算ノ一部ヲ施行セシムルコトヲ得
第八條 大學ニ於テ外國ヨリ直接ニ圖書、機械、標本又ハ實驗用材料ノ買入ヲ爲ス場合ニハ前金拂ヲ爲スコトヲ得
第九條 寄附金ニシテ特ニ用途ヲ指定シタルモノハ其ノ條件ニ從ヒ之ヲ使用スヘシ
第十條 奬學ヲ目的トスル寄附金ハ之ヲ當該大學ニ交付シ總長又ハ學長ニ經理ヲ委任スルコトヲ得
第十一條 委任經理ニ係ル會計ノ檢查ハ會計檢查院法第十六條ノ規定ニ依ル
第十二條 官立大學ニ屬スル收入ヲ以テ其ノ歲出ヲ支辨シ別ニ政府支出金ヲ要セサルニ至リタルトキハ當該大學ノ爲ニ特別會計ヲ設クルモノトス
第十三條 大學特別會計ノ收入支出ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 官立大學ノ創設費ハ第一條ノ規定ニ拘ラス一般會計ノ所屬トス
第十五條 官立大學特別會計ノ設置及官立大學ノ創設ニ付一般會計及學校及圖書館特別會計ニ關涉シ必要ナル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法ハ大正十年度ヨリ之ヲ施行ス
帝國大學特別會計法及大正七年法律第四號ハ之ヲ廢止ス但シ大正九年度分ニ付テハ仍其ノ效力ヲ有ス
他ノ法律ニ於テ帝國大學特別會計法トアルハ大學特別會計法トス
仙臺高等工業學校ノ設置ニ付東北帝國大學特別會計及學校及圖書館特別會計ニ關涉シ必要ナル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル大学特別会計法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年三月二十九日
内閣総理大臣 原敬
大蔵大臣 子爵 高橋是清
文部大臣 中橋徳五郎
法律第十一号
大学特別会計法
第一条 帝国大学ハ各別ニ、其ノ他ノ官立大学ハ之ヲ通シテ一ノ特別会計ヲ立テ資金ヲ所有シ政府ノ支出金、資金ヨリ生スル収入、授業料、寄附金其ノ他ノ収入ヲ以テ其ノ一切ノ歳出ニ充テシム
第二条 前条ノ政府支出金ハ東京帝国大学ニ在リテハ毎年度二百九十五万三千三百五円、京都帝国大学ニ在リテハ毎年度百七十一万五千四百二十八円トシ其ノ他ノ帝国大学及官立大学ニ在リテハ毎年度予算ノ定ムル所ニ依リ一般会計ヨリ之ヲ繰入ルヘシ
東京帝国大学ニ在リテハ前項ノ金額ノ外航空ニ関スル研究ノ費用ニ充ツル為必要ナル金額ヲ毎年度予算ノ定ムル所ニ依リ一般会計ヨリ繰入ルルコトヲ得
第三条 各帝国大学及官立大学ノ資金ハ政府ヨリ交付シ又ハ他ヨリ寄附シタル動産及不動産並歳入残余ヨリ成ル但シ官立大学ニ在リテハ第七条ノ施行予算ノ歳入残余ニシテ資金ニ編入シタルモノハ官立大学毎ニ区分シ之ヲ整理スヘシ
第四条 大学ノ歳出ニ充ツル為必要アルトキハ其ノ資金ヲ支消スルコトヲ得但シ用途指定ニ係ル資金ニ付テハ用途指定者ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第五条 政府ハ毎年各帝国大学及官立大学ノ特別会計ノ歳入歳出予算ヲ調製シ歳入歳出ノ総予算ト共ニ之ヲ帝国議会ニ提出スヘシ
第六条 大学特別会計ノ予算中ニハ予備費ヲ設クヘシ但シ東北帝国大学、九州帝国大学、北海道帝国大学及官立大学ノ特別会計予算ニ在リテハ此ノ限ニ在ラス
第七条 文部大臣ハ歳入歳出予算決定ノ後予備費ヲ除クノ外各大学毎ニ歳入歳出ノ施行予算ヲ調製シ当該大学ノ総長又ハ学長ヲシテ之ヲ施行セシムヘシ
文部大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項以外ノ者ヲシテ歳入歳出予算ノ一部ヲ施行セシムルコトヲ得
第八条 大学ニ於テ外国ヨリ直接ニ図書、機械、標本又ハ実験用材料ノ買入ヲ為ス場合ニハ前金払ヲ為スコトヲ得
第九条 寄附金ニシテ特ニ用途ヲ指定シタルモノハ其ノ条件ニ従ヒ之ヲ使用スヘシ
第十条 奨学ヲ目的トスル寄附金ハ之ヲ当該大学ニ交付シ総長又ハ学長ニ経理ヲ委任スルコトヲ得
第十一条 委任経理ニ係ル会計ノ検査ハ会計検査院法第十六条ノ規定ニ依ル
第十二条 官立大学ニ属スル収入ヲ以テ其ノ歳出ヲ支弁シ別ニ政府支出金ヲ要セサルニ至リタルトキハ当該大学ノ為ニ特別会計ヲ設クルモノトス
第十三条 大学特別会計ノ収入支出ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四条 官立大学ノ創設費ハ第一条ノ規定ニ拘ラス一般会計ノ所属トス
第十五条 官立大学特別会計ノ設置及官立大学ノ創設ニ付一般会計及学校及図書館特別会計ニ関渉シ必要ナル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
本法ハ大正十年度ヨリ之ヲ施行ス
帝国大学特別会計法及大正七年法律第四号ハ之ヲ廃止ス但シ大正九年度分ニ付テハ仍其ノ効力ヲ有ス
他ノ法律ニ於テ帝国大学特別会計法トアルハ大学特別会計法トス
仙台高等工業学校ノ設置ニ付東北帝国大学特別会計及学校及図書館特別会計ニ関渉シ必要ナル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム