朕內國旅費規則改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年六月十七日
內閣總理大臣兼大藏大臣 侯爵 桂太郞
勅令第二百七十四號
內國旅費規則
第一條 官吏公務ニ依リ本邦內ヲ旅行スルトキハ本令ニ依リ旅費ヲ支給ス
第二條 旅費ハ鐵道賃、船賃、車馬賃、日當、宿泊料、食卓料、赴任手當及移轉料ノ八種トシ別表ニ定ムル所ニ從ヒ順路ニ依リテ之ヲ支給ス但シ公務ノ都合ニ依リ順路ニ依リテ旅行シ難キ場合ニ於テハ其ノ現ニ經過シタル通路ニ依ル
第三條 鐵道旅行ニハ鐵道賃、水路旅行ニハ船賃、陸路旅行ニハ車馬賃ヲ支給ス
鐵道又ハ水路ニ依ラサル旅行ハ之ヲ陸路旅行トス
第四條 宿泊料ハ夜數ニ應シ日當ハ日數ニ應シテ之ヲ支給ス
水路旅行ニハ宿泊料ヲ支給セス但シ官用ノ船舶ニ依リテ旅行スル場合ニ於テ官ヨリ賄ヲ爲ササルトキハ食卓料ヲ支給ス
第五條 旅費ノ支給ニ關シテハ旅行日數ハ出張地ニ於ケル滯在日數及途中已ムヲ得サル事由ノ爲要シタル日數ヲ除クノ外鐵道旅行ハ二百哩、水路旅行ハ百海里、陸路旅行ハ十二里ニ付一日ノ割合ヲ以テ通算シタル日數ヲ超過スルコトヲ得ス但シ一日未滿ノ端數ハ之ヲ一日トス
第六條 赴任ノ場合ニ於テハ別ニ移轉料及舊任地又ハ居住地ヨリ新任地ニ至ル鐵道賃、船賃及車馬賃ノ額ニ相當スル赴任手當ヲ支給ス
第七條 官用ノ船、車、馬等ニ依リテ旅行スルトキハ鐵道賃、船賃、車馬賃ヲ支給セス
第八條 陸路六里未滿、鐵道四十八哩未滿、水路三十海里未滿ノ旅行ニ在リテハ公務ノ都合ニ依リ宿泊シタル場合ヲ除クノ外其ノ支給スヘキ日當ハ定額ノ半額トス
一旅行ニシテ陸路、鐵道又ハ水路ニ亙ルトキハ鐵道ハ八哩、水路ハ五海里ヲ以テ陸路一里ト看做シ前項ノ規定ヲ準用ス
第九條 在勤廳所在地ノ市區町村內ノ出張ニシテ遠距離ニ涉ルトキハ定額半額以內ノ日當ヲ支給スルコトヲ得
第十條 私事ノ爲任地又ハ居住地以外ニ滯在スル者轉任ヲ命セラレ又ハ新ニ任用セラレ滯在地ヨリ赴任スル場合ニ於テハ滯在地ヨリ新任地ニ至ル旅費額カ舊任地又ハ居住地ヨリ新任地ニ至ル旅費額ヨリ多キトキハ舊任地又ハ居住地ヨリ新任地ニ至ル旅費ヲ支給ス
前項ノ規定ハ私事ノ爲任地以外ニ滯在スル者滯在地ヨリ旅行スル場合ニ之ヲ準用ス
第十一條 新ニ任用スル爲召喚セラレタル者ニハ官吏赴任ノ例ニ準シ新官相當ノ旅費ヲ支給ス
第十二條 特別ノ事情ニ依リ定額ノ鐵道賃、船賃又ハ車馬賃ヲ以テ其ノ實費ヲ支辨シ難キ場合ニ於テハ實費額ヲ支給スルコトヲ得
第十三條 鐵道賃、船賃又ハ車馬賃ハ各其ノ路程ヲ合算シテ之ヲ支給ス但シ定額ヲ異ニスルモノニ付テハ各別ニ之ヲ通算ス
通算上一哩、一海里又ハ一里未滿ノ端數ヲ生シタルトキハ切捨トス
第十四條 年度又ハ日ニ依リテ旅費ヲ區分計算スルノ必要アル場合ニ於テ其ノ區分判明ナラサルトキハ最近ノ到達地ニ著シタル日ヲ以テ其ノ路程ヲ區別シ計算ス
第十五條 旅行中退官、退職、休職又ハ非職ト爲リタル者ニハ舊任地ニ至ル前官又ハ本官相當ノ旅費ヲ支給ス但シ刑事裁判又ハ懲戒處分ニ依リテ失官シ又ハ免官セラレタル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テハ第五條ニ定メタル旅程ノ割合ヲ以テ計算シタル日數ニ依リ旅費ヲ支給ス
旅行中死亡シタル場合ニ於テハ前二項ノ規定ニ準シ旅費ニ相當スル金額ヲ遺族ニ支給ス
第十六條 事務引繼殘務調理等ノ爲退官者ニ旅行ヲ命スルトキハ前官相當ノ旅費ヲ支給ス
第十七條 所管大臣ハ測量土木工事等ノ爲現場ヲ巡迴スル官吏又ハ常時旅行ヲ要スル官吏ニ關シ特ニ其ノ旅費額ヲ定メ月額又ハ日額ヲ以テ之ヲ支給スルコトヲ得
所管大臣ハ旅費ノ定額ヲ減シ又ハ旅費ノ全部若ハ一部ヲ支給セサルコトヲ得
第十八條 武官、陸海軍文官、鐵道事務ニ從事スル官吏及警察官ノ旅費ニ關シテハ所管大臣大藏大臣ト協議シテ別ニ之ヲ定ム
第十九條 雇員其ノ他本令ニ規定ナキ者ノ旅費ニ關シテハ所管大臣大藏大臣ト協議シ本令ニ準シテ之ヲ定ム
第二十條 當分ノ內臺灣又ハ樺太內ノ旅行ニ限リ所管大臣大藏大臣ト協議シテ旅費ノ定額ヲ增加スルコトヲ得
第二十一條 當分ノ內臺灣又ハ樺太在勤二年以上ニシテ退官、退職、休職又ハ非職ト爲リ三十日以內ニ同地出發歸鄕スル者ニハ前官又ハ本官相當ノ旅費ヲ支給スルコトヲ得但シ刑事裁判若ハ懲戒處分ニ依リ失官シ若ハ免官セラレ又ハ自己ノ便宜ニ依リ退官若ハ退職シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ旅費ニ關シテハ所管大臣大藏大臣ト協議シテ之ヲ定ム
在職中死亡シタルトキハ第一項ノ例ニ準シ旅費ニ相當スル金額ヲ遺族ニ支給スルコトヲ得
第二十二條 樺太ニ赴任スル者及十一月ヨリ翌年二月ニ至ル期間內ニ樺太ニ出張スル者ニハ當分ノ內支度料ヲ支給スルコトヲ得其ノ額ハ所管大臣大藏大臣ト協議シテ之ヲ定ム
附 則
本令ハ明治四十三年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行前轉任ヲ命セラレ、新ニ任用セラレ若ハ新ニ任用スル爲召喚セラレタル場合又ハ退官、退職、休職、非職ト爲リ若ハ死亡シタル場合ニ關シテハ舊令ニ依ル
(別表)
旅費額
等級
鐵道賃一哩ニ付
船賃一海里ニ付
車馬賃一里ニ付
宿泊料一夜ニ付
日當一日ニ付
食卓料一夜ニ付
移轉料
一等
親任官
六錢
七錢
五十錢
六圓
四圓
二圓
百圓以內
二等
勅任官
五錢
六錢
四十錢
三圓五十錢
二圓五十錢
一圓七十錢
七十圓以內
三等
奏任官
五等以上
四錢
五錢
三十錢
二圓五十錢
二圓
一圓三十錢
五十圓以內
六等以下
四錢
五錢
三十錢
二圓
一圓五十錢
一圓三十錢
五十圓以內
四等
判任官
五級俸以上
三錢
四錢
二十五錢
一圓五十錢
一圓
九十錢
三十圓以內
六級俸以下
三錢
四錢
二十五錢
一圓二十錢
八十錢
九十錢
三十圓以內
朕内国旅費規則改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年六月十七日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 侯爵 桂太郎
勅令第二百七十四号
内国旅費規則
第一条 官吏公務ニ依リ本邦内ヲ旅行スルトキハ本令ニ依リ旅費ヲ支給ス
第二条 旅費ハ鉄道賃、船賃、車馬賃、日当、宿泊料、食卓料、赴任手当及移転料ノ八種トシ別表ニ定ムル所ニ従ヒ順路ニ依リテ之ヲ支給ス但シ公務ノ都合ニ依リ順路ニ依リテ旅行シ難キ場合ニ於テハ其ノ現ニ経過シタル通路ニ依ル
第三条 鉄道旅行ニハ鉄道賃、水路旅行ニハ船賃、陸路旅行ニハ車馬賃ヲ支給ス
鉄道又ハ水路ニ依ラサル旅行ハ之ヲ陸路旅行トス
第四条 宿泊料ハ夜数ニ応シ日当ハ日数ニ応シテ之ヲ支給ス
水路旅行ニハ宿泊料ヲ支給セス但シ官用ノ船舶ニ依リテ旅行スル場合ニ於テ官ヨリ賄ヲ為ササルトキハ食卓料ヲ支給ス
第五条 旅費ノ支給ニ関シテハ旅行日数ハ出張地ニ於ケル滞在日数及途中已ムヲ得サル事由ノ為要シタル日数ヲ除クノ外鉄道旅行ハ二百哩、水路旅行ハ百海里、陸路旅行ハ十二里ニ付一日ノ割合ヲ以テ通算シタル日数ヲ超過スルコトヲ得ス但シ一日未満ノ端数ハ之ヲ一日トス
第六条 赴任ノ場合ニ於テハ別ニ移転料及旧任地又ハ居住地ヨリ新任地ニ至ル鉄道賃、船賃及車馬賃ノ額ニ相当スル赴任手当ヲ支給ス
第七条 官用ノ船、車、馬等ニ依リテ旅行スルトキハ鉄道賃、船賃、車馬賃ヲ支給セス
第八条 陸路六里未満、鉄道四十八哩未満、水路三十海里未満ノ旅行ニ在リテハ公務ノ都合ニ依リ宿泊シタル場合ヲ除クノ外其ノ支給スヘキ日当ハ定額ノ半額トス
一旅行ニシテ陸路、鉄道又ハ水路ニ亘ルトキハ鉄道ハ八哩、水路ハ五海里ヲ以テ陸路一里ト看做シ前項ノ規定ヲ準用ス
第九条 在勤庁所在地ノ市区町村内ノ出張ニシテ遠距離ニ渉ルトキハ定額半額以内ノ日当ヲ支給スルコトヲ得
第十条 私事ノ為任地又ハ居住地以外ニ滞在スル者転任ヲ命セラレ又ハ新ニ任用セラレ滞在地ヨリ赴任スル場合ニ於テハ滞在地ヨリ新任地ニ至ル旅費額カ旧任地又ハ居住地ヨリ新任地ニ至ル旅費額ヨリ多キトキハ旧任地又ハ居住地ヨリ新任地ニ至ル旅費ヲ支給ス
前項ノ規定ハ私事ノ為任地以外ニ滞在スル者滞在地ヨリ旅行スル場合ニ之ヲ準用ス
第十一条 新ニ任用スル為召喚セラレタル者ニハ官吏赴任ノ例ニ準シ新官相当ノ旅費ヲ支給ス
第十二条 特別ノ事情ニ依リ定額ノ鉄道賃、船賃又ハ車馬賃ヲ以テ其ノ実費ヲ支弁シ難キ場合ニ於テハ実費額ヲ支給スルコトヲ得
第十三条 鉄道賃、船賃又ハ車馬賃ハ各其ノ路程ヲ合算シテ之ヲ支給ス但シ定額ヲ異ニスルモノニ付テハ各別ニ之ヲ通算ス
通算上一哩、一海里又ハ一里未満ノ端数ヲ生シタルトキハ切捨トス
第十四条 年度又ハ日ニ依リテ旅費ヲ区分計算スルノ必要アル場合ニ於テ其ノ区分判明ナラサルトキハ最近ノ到達地ニ著シタル日ヲ以テ其ノ路程ヲ区別シ計算ス
第十五条 旅行中退官、退職、休職又ハ非職ト為リタル者ニハ旧任地ニ至ル前官又ハ本官相当ノ旅費ヲ支給ス但シ刑事裁判又ハ懲戒処分ニ依リテ失官シ又ハ免官セラレタル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テハ第五条ニ定メタル旅程ノ割合ヲ以テ計算シタル日数ニ依リ旅費ヲ支給ス
旅行中死亡シタル場合ニ於テハ前二項ノ規定ニ準シ旅費ニ相当スル金額ヲ遺族ニ支給ス
第十六条 事務引継残務調理等ノ為退官者ニ旅行ヲ命スルトキハ前官相当ノ旅費ヲ支給ス
第十七条 所管大臣ハ測量土木工事等ノ為現場ヲ巡迴スル官吏又ハ常時旅行ヲ要スル官吏ニ関シ特ニ其ノ旅費額ヲ定メ月額又ハ日額ヲ以テ之ヲ支給スルコトヲ得
所管大臣ハ旅費ノ定額ヲ減シ又ハ旅費ノ全部若ハ一部ヲ支給セサルコトヲ得
第十八条 武官、陸海軍文官、鉄道事務ニ従事スル官吏及警察官ノ旅費ニ関シテハ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ別ニ之ヲ定ム
第十九条 雇員其ノ他本令ニ規定ナキ者ノ旅費ニ関シテハ所管大臣大蔵大臣ト協議シ本令ニ準シテ之ヲ定ム
第二十条 当分ノ内台湾又ハ樺太内ノ旅行ニ限リ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ旅費ノ定額ヲ増加スルコトヲ得
第二十一条 当分ノ内台湾又ハ樺太在勤二年以上ニシテ退官、退職、休職又ハ非職ト為リ三十日以内ニ同地出発帰郷スル者ニハ前官又ハ本官相当ノ旅費ヲ支給スルコトヲ得但シ刑事裁判若ハ懲戒処分ニ依リ失官シ若ハ免官セラレ又ハ自己ノ便宜ニ依リ退官若ハ退職シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ旅費ニ関シテハ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ之ヲ定ム
在職中死亡シタルトキハ第一項ノ例ニ準シ旅費ニ相当スル金額ヲ遺族ニ支給スルコトヲ得
第二十二条 樺太ニ赴任スル者及十一月ヨリ翌年二月ニ至ル期間内ニ樺太ニ出張スル者ニハ当分ノ内支度料ヲ支給スルコトヲ得其ノ額ハ所管大臣大蔵大臣ト協議シテ之ヲ定ム
附 則
本令ハ明治四十三年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行前転任ヲ命セラレ、新ニ任用セラレ若ハ新ニ任用スル為召喚セラレタル場合又ハ退官、退職、休職、非職ト為リ若ハ死亡シタル場合ニ関シテハ旧令ニ依ル
(別表)
旅費額
等級
鉄道賃一哩ニ付
船賃一海里ニ付
車馬賃一里ニ付
宿泊料一夜ニ付
日当一日ニ付
食卓料一夜ニ付
移転料
一等
親任官
六銭
七銭
五十銭
六円
四円
二円
百円以内
二等
勅任官
五銭
六銭
四十銭
三円五十銭
二円五十銭
一円七十銭
七十円以内
三等
奏任官
五等以上
四銭
五銭
三十銭
二円五十銭
二円
一円三十銭
五十円以内
六等以下
四銭
五銭
三十銭
二円
一円五十銭
一円三十銭
五十円以内
四等
判任官
五級俸以上
三銭
四銭
二十五銭
一円五十銭
一円
九十銭
三十円以内
六級俸以下
三銭
四銭
二十五銭
一円二十銭
八十銭
九十銭
三十円以内