朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル家畜市場法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年三月十七日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 大浦兼武
法律第一號
家畜市場法
第一條 本法ニ於テ家畜ト稱スルハ牛馬羊豚ヲ謂フ
第二條 家畜市場ヲ開設セムトスル者ハ市場業務規程ヲ定メ地方長官ノ許可ヲ受クヘシ
前項ノ市場業務規程ヲ變更セムトスルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第三條 家畜市場ノ開設許可ノ期間ハ二十年以內ニ於テ地方長官之ヲ定ム但シ期間更新ノ出願ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノ又ハ產牛馬組合法ニ依リ設置シタル組合ノ市場ニ付テハ之ヲ適用セス
第四條 市町村其ノ他之ニ準スヘキモノニ於テ常設家畜市場ヲ開設スルトキハ地方長官ハ其ノ申請ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ經テ必要ト認ムル地區內ニ於ケル私設家畜市場ノ廢止ヲ命スルコトヲ得但シ產牛馬組合法ニ依リ設置シタル組合ノ市場ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第五條 前條ノ場合ニ於テハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノハ廢場ヲ命セラレタル私設家畜市場ノ開設者ニ對シ損失ヲ補償スヘシ
前項ノ規定ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ地方長官ノ決定ヲ求ムヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ決定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ九十日以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第六條 家畜市場ニ於テハ其ノ場內又ハ其ノ附屬ノ場所ニ在ル家畜ニ非サレハ之ヲ賣買交換スルコトヲ得ス
第七條 家畜ノ賣買交換ヲ業トスル者ハ家畜市場附近ノ區域內ニ於テハ市場開催日及其ノ開催日前後ノ期間中其ノ市場ノ取扱フ家畜ヲ賣買交換スルコトヲ得ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ區域及期間ハ地方長官之ヲ指定ス
第八條 常設家畜市場ニ付主務大臣ノ認可ヲ得テ地方長官ノ指定シタル區域內ニ於テハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外其ノ市場ノ取扱フ家畜ニ付市場ヲ開設スルコトヲ得ス
第九條 地方長官必要アリト認ムルトキハ常設家畜市場ニ付其ノ市場ノ取扱フ家畜ニ關シ指定シタル區域內ノ牛馬宿ニ於ケル賣買交換ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第十條 前三條ノ區域及期間ノ指定、變更又ハ取消ハ地方長官之ヲ吿示スヘシ
第十一條 家畜市場開設者ハ正當ノ事由ナクシテ其ノ市場ノ取扱フ家畜ノ賣買交換ヲ拒ムコトヲ得ス
第十二條 家畜市場ニ於テ家畜ノ賣買交換ニ關スル行爲ヲ爲ス者ハ其ノ市場ノ業務規程ヲ知ラサルノ故ヲ以テ其ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス
市町村其ノ他之ニ準スヘキモノハ其ノ市場業務規程中ニ五十圓以下ノ過怠金ニ關スル規定ヲ設クルコトヲ得
第十三條 家畜市場及其ノ附屬建設物ノ構造、設備、市場ノ取引方法、仲立業者ノ資格其ノ他市場ノ監督及衞生上必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ官吏又ハ吏員ヲシテ家畜市場若ハ其ノ附屬ノ場所ニ臨檢シ市場開設者若ハ仲立業者ノ帳簿、書類其ノ他ノ物品ヲ檢査シ又ハ市場若ハ其ノ附屬ノ場所ニ在ル家畜ヲ診斷シ又ハ其ノ移動ヲ停止セシムルコトヲ得
第十五條 家畜市場ノ休場又ハ廢止ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
家畜市場開設許可ノ際指定シタル期間內ニ開場セサルトキハ之ヲ休場ト看做ス
第十六條 家畜市場開設者カ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキ又ハ主務大臣若ハ地方長官公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ家畜市場ノ開設許可ヲ取消シ又ハ業務ヲ停止シ若ハ制限スルコトヲ得
主務大臣又ハ地方長官公益上必要アリト認ムルトキハ家畜市場及其ノ附屬建設物ノ位置、構造、設備又ハ市場業務規程ノ變更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ處分ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ權利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十七條 許可ヲ受ケスシテ家畜市場ヲ開設シ又ハ第十六條第一項ノ規定ニ依ル停止若ハ制限ニ違反シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條 第六條、第七條第一項、第十一條、第十五條第一項ノ規定ニ違反シタル者、第九條ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反シタル者又ハ第十四條ノ規定ニ依ル停止ノ處分ニ違反シタル者ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十九條 第十四條ノ規定ニ依ル職務ノ執行ヲ拒ミ若ハ妨ケタル者又ハ臨檢檢査ノ際當該官吏吏員ノ訊問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第二十條 家畜市場開設者又ハ家畜ニ關スル營業者未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十一條 家畜市場開設者又ハ家畜ニ關スル營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第二十二條 明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
第二十三條 本法ハ帝室、政府、北海道地方費又ハ府縣ノ行フ家畜ノ賣買交換ニ之ヲ適用セス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前地方長官ノ許可又ハ認可ヲ得タル家畜市場ハ本法施行後三年ヲ限リ本法ニ依リ許可セラレタルモノト看做ス但シ本法施行ノ日ヨリ起算シ許可又ハ認可ノ期間三年以內ナルトキハ其ノ期間ニ依ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル家畜市場法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年三月十七日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 大浦兼武
法律第一号
家畜市場法
第一条 本法ニ於テ家畜ト称スルハ牛馬羊豚ヲ謂フ
第二条 家畜市場ヲ開設セムトスル者ハ市場業務規程ヲ定メ地方長官ノ許可ヲ受クヘシ
前項ノ市場業務規程ヲ変更セムトスルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第三条 家畜市場ノ開設許可ノ期間ハ二十年以内ニ於テ地方長官之ヲ定ム但シ期間更新ノ出願ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノ又ハ産牛馬組合法ニ依リ設置シタル組合ノ市場ニ付テハ之ヲ適用セス
第四条 市町村其ノ他之ニ準スヘキモノニ於テ常設家畜市場ヲ開設スルトキハ地方長官ハ其ノ申請ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ経テ必要ト認ムル地区内ニ於ケル私設家畜市場ノ廃止ヲ命スルコトヲ得但シ産牛馬組合法ニ依リ設置シタル組合ノ市場ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第五条 前条ノ場合ニ於テハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノハ廃場ヲ命セラレタル私設家畜市場ノ開設者ニ対シ損失ヲ補償スヘシ
前項ノ規定ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ地方長官ノ決定ヲ求ムヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ決定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ九十日以内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第六条 家畜市場ニ於テハ其ノ場内又ハ其ノ附属ノ場所ニ在ル家畜ニ非サレハ之ヲ売買交換スルコトヲ得ス
第七条 家畜ノ売買交換ヲ業トスル者ハ家畜市場附近ノ区域内ニ於テハ市場開催日及其ノ開催日前後ノ期間中其ノ市場ノ取扱フ家畜ヲ売買交換スルコトヲ得ス但シ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ区域及期間ハ地方長官之ヲ指定ス
第八条 常設家畜市場ニ付主務大臣ノ認可ヲ得テ地方長官ノ指定シタル区域内ニ於テハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外其ノ市場ノ取扱フ家畜ニ付市場ヲ開設スルコトヲ得ス
第九条 地方長官必要アリト認ムルトキハ常設家畜市場ニ付其ノ市場ノ取扱フ家畜ニ関シ指定シタル区域内ノ牛馬宿ニ於ケル売買交換ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第十条 前三条ノ区域及期間ノ指定、変更又ハ取消ハ地方長官之ヲ告示スヘシ
第十一条 家畜市場開設者ハ正当ノ事由ナクシテ其ノ市場ノ取扱フ家畜ノ売買交換ヲ拒ムコトヲ得ス
第十二条 家畜市場ニ於テ家畜ノ売買交換ニ関スル行為ヲ為ス者ハ其ノ市場ノ業務規程ヲ知ラサルノ故ヲ以テ其ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス
市町村其ノ他之ニ準スヘキモノハ其ノ市場業務規程中ニ五十円以下ノ過怠金ニ関スル規定ヲ設クルコトヲ得
第十三条 家畜市場及其ノ附属建設物ノ構造、設備、市場ノ取引方法、仲立業者ノ資格其ノ他市場ノ監督及衛生上必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四条 主務大臣又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ官吏又ハ吏員ヲシテ家畜市場若ハ其ノ附属ノ場所ニ臨検シ市場開設者若ハ仲立業者ノ帳簿、書類其ノ他ノ物品ヲ検査シ又ハ市場若ハ其ノ附属ノ場所ニ在ル家畜ヲ診断シ又ハ其ノ移動ヲ停止セシムルコトヲ得
第十五条 家畜市場ノ休場又ハ廃止ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
家畜市場開設許可ノ際指定シタル期間内ニ開場セサルトキハ之ヲ休場ト看做ス
第十六条 家畜市場開設者カ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキ又ハ主務大臣若ハ地方長官公益ヲ害スルノ虞アリト認ムルトキハ家畜市場ノ開設許可ヲ取消シ又ハ業務ヲ停止シ若ハ制限スルコトヲ得
主務大臣又ハ地方長官公益上必要アリト認ムルトキハ家畜市場及其ノ附属建設物ノ位置、構造、設備又ハ市場業務規程ノ変更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
第一項ノ処分ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起シ違法ニ権利ヲ傷害セラレタリトスルトキハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第十七条 許可ヲ受ケスシテ家畜市場ヲ開設シ又ハ第十六条第一項ノ規定ニ依ル停止若ハ制限ニ違反シタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第十八条 第六条、第七条第一項、第十一条、第十五条第一項ノ規定ニ違反シタル者、第九条ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反シタル者又ハ第十四条ノ規定ニ依ル停止ノ処分ニ違反シタル者ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス
第十九条 第十四条ノ規定ニ依ル職務ノ執行ヲ拒ミ若ハ妨ケタル者又ハ臨検検査ノ際当該官吏吏員ノ訊問ニ対シ答弁ヲ為サス若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第二十条 家畜市場開設者又ハ家畜ニ関スル営業者未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ之ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十一条 家畜市場開設者又ハ家畜ニ関スル営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第二十二条 明治三十三年法律第五十二号ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
第二十三条 本法ハ帝室、政府、北海道地方費又ハ府県ノ行フ家畜ノ売買交換ニ之ヲ適用セス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前地方長官ノ許可又ハ認可ヲ得タル家畜市場ハ本法施行後三年ヲ限リ本法ニ依リ許可セラレタルモノト看做ス但シ本法施行ノ日ヨリ起算シ許可又ハ認可ノ期間三年以内ナルトキハ其ノ期間ニ依ル