朕癈兵院條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年八月四日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺內正毅
勅令第二百十四號
癈兵院條例
第一條 癈兵院ハ所在地所管ノ師團長之ヲ管理シ陸軍大臣ノ監督ニ屬ス
癈兵院ノ位置及收容ニ關スル事項ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第二條 癈兵院ニ左ノ職員ヲ置ク
院長
主事
主計
軍醫
下士判任文官
院長及主事ハ將校同相當官ヲ以テ之ニ充ツ
第一項ノ職員ハ豫備役後備役ノ者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第三條 院長ハ師團長ニ隸シ院務ヲ掌理ス
第四條 主事、主計、軍醫ハ院長ノ命ヲ承ケ院務ニ從事ス
第五條 下士判任文官ハ上官ノ命ヲ承ケ事務ニ服ス
第六條 癈兵院ニ於テハ戰鬪其ノ他公務ニ基因スル傷痍疾病ノ爲退役ト爲リ其ノ他服役ヲ免セラレタル者ヲ事務員ト爲シ主事以下職員ノ事務ヲ執ラシムルコトヲ得
前項事務員ニハ俸給豫算定額內ニ於テ手當ヲ支給ス
第七條 癈兵院ニ收容スル者ハ入院志願者中自己ノ資產又ハ勞役ニ依リ自活スルコト能ハサル者ニ限ル
軍人恩給法第九條第一項第二號以上ノ不具癈疾者ニシテ救護ヲ要スヘキ特別ノ事情アル者ハ前項ノ規定ニ拘ラス之ヲ收容スルコトヲ得
第八條 癈兵院ニ收容スル順序ハ左ノ各號ヲ參酌シ救護ノ必要多キ者ヲ先ニス
一 症項ノ原因及輕重
二 資產ノ多少及勞役ノ能否
三 扶養義務者其ノ他救護ヲ爲ス者ノ有無
四 年齡ノ多少
五 品行ノ良否
六 其ノ他生活ニ關スル各種ノ狀況
第九條 癈兵院ニ收容シタル者ニハ入院及退院ニ要スル旅費ヲ給ス其ノ金額及支給ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十條 癈兵院ニ收容シタル者ニハ入院ノ日ヨリ退院ノ日迄本人ノ受クヘキ恩給月割額五分ノ一ニ相當スル金額ヲ每月手當トシテ支給ス但シ死亡ノ場合ニ在リテハ其ノ月ノ全額ヲ支給ス
第十一條 癈兵院ニ收容シタル者ノ糧食ハ現人員ニ應シ定額ヲ交付シ院長ニ其ノ經理ヲ委任ス其ノ定額ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十二條 癈兵院ニ收容シタル者ニハ所要ノ被服ヲ支給シ又ハ貸與ス
前項被服ハ初度現品ヲ備附ケ爾後新調補修料トシテ現人員ニ應シ定額ヲ交付シ院長ニ其ノ經理ヲ委任ス
備附被服ノ種類、員數及新調補修料ノ定額ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十三條 癈兵院ニ收容シタル者傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ病院ニ於テ治療ヲ要スルトキハ所在地衞戍病院ニ收療ス
第十四條 癈兵院ニ收容シタル者ハ服役ヲ免セラレタル當時ノ官等級ニ應シ現役陸軍軍人ト看做シ陸軍懲罰令ノ規定ヲ適用ス但シ下士兵卒タリシ者ハ營內居住者ノ例ニ依ル
第十五條 癈兵院ニ收容シタル者入院中死亡シタルトキハ士官以上ニ在リテハ三十圓以內、准士官ニ在リテハ二十圓以內、其ノ他ノ者ニ在リテハ十五圓以內ノ費用ヲ以テ官ニ於テ埋葬ス但シ遺族又ハ故舊ヨリ遺骸ノ引渡ヲ請フ者アルトキハ埋葬料トシテ本條ノ金額ヲ支給ス
第十六條 癈兵院ハ圖書器物等ノ寄附ヲ受ケ各其ノ目的ニ使用スルコトヲ得
附 則
本令ハ明治三十九年九月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕廃兵院条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年八月四日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺内正毅
勅令第二百十四号
廃兵院条例
第一条 廃兵院ハ所在地所管ノ師団長之ヲ管理シ陸軍大臣ノ監督ニ属ス
廃兵院ノ位置及収容ニ関スル事項ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第二条 廃兵院ニ左ノ職員ヲ置ク
院長
主事
主計
軍医
下士判任文官
院長及主事ハ将校同相当官ヲ以テ之ニ充ツ
第一項ノ職員ハ予備役後備役ノ者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第三条 院長ハ師団長ニ隷シ院務ヲ掌理ス
第四条 主事、主計、軍医ハ院長ノ命ヲ承ケ院務ニ従事ス
第五条 下士判任文官ハ上官ノ命ヲ承ケ事務ニ服ス
第六条 廃兵院ニ於テハ戦闘其ノ他公務ニ基因スル傷痍疾病ノ為退役ト為リ其ノ他服役ヲ免セラレタル者ヲ事務員ト為シ主事以下職員ノ事務ヲ執ラシムルコトヲ得
前項事務員ニハ俸給予算定額内ニ於テ手当ヲ支給ス
第七条 廃兵院ニ収容スル者ハ入院志願者中自己ノ資産又ハ労役ニ依リ自活スルコト能ハサル者ニ限ル
軍人恩給法第九条第一項第二号以上ノ不具廃疾者ニシテ救護ヲ要スヘキ特別ノ事情アル者ハ前項ノ規定ニ拘ラス之ヲ収容スルコトヲ得
第八条 廃兵院ニ収容スル順序ハ左ノ各号ヲ参酌シ救護ノ必要多キ者ヲ先ニス
一 症項ノ原因及軽重
二 資産ノ多少及労役ノ能否
三 扶養義務者其ノ他救護ヲ為ス者ノ有無
四 年齢ノ多少
五 品行ノ良否
六 其ノ他生活ニ関スル各種ノ状況
第九条 廃兵院ニ収容シタル者ニハ入院及退院ニ要スル旅費ヲ給ス其ノ金額及支給ノ方法ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十条 廃兵院ニ収容シタル者ニハ入院ノ日ヨリ退院ノ日迄本人ノ受クヘキ恩給月割額五分ノ一ニ相当スル金額ヲ毎月手当トシテ支給ス但シ死亡ノ場合ニ在リテハ其ノ月ノ全額ヲ支給ス
第十一条 廃兵院ニ収容シタル者ノ糧食ハ現人員ニ応シ定額ヲ交付シ院長ニ其ノ経理ヲ委任ス其ノ定額ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十二条 廃兵院ニ収容シタル者ニハ所要ノ被服ヲ支給シ又ハ貸与ス
前項被服ハ初度現品ヲ備附ケ爾後新調補修料トシテ現人員ニ応シ定額ヲ交付シ院長ニ其ノ経理ヲ委任ス
備附被服ノ種類、員数及新調補修料ノ定額ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十三条 廃兵院ニ収容シタル者傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ病院ニ於テ治療ヲ要スルトキハ所在地衛戍病院ニ収療ス
第十四条 廃兵院ニ収容シタル者ハ服役ヲ免セラレタル当時ノ官等級ニ応シ現役陸軍軍人ト看做シ陸軍懲罰令ノ規定ヲ適用ス但シ下士兵卒タリシ者ハ営内居住者ノ例ニ依ル
第十五条 廃兵院ニ収容シタル者入院中死亡シタルトキハ士官以上ニ在リテハ三十円以内、准士官ニ在リテハ二十円以内、其ノ他ノ者ニ在リテハ十五円以内ノ費用ヲ以テ官ニ於テ埋葬ス但シ遺族又ハ故旧ヨリ遺骸ノ引渡ヲ請フ者アルトキハ埋葬料トシテ本条ノ金額ヲ支給ス
第十六条 廃兵院ハ図書器物等ノ寄附ヲ受ケ各其ノ目的ニ使用スルコトヲ得
附 則
本令ハ明治三十九年九月一日ヨリ之ヲ施行ス