朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル賣藥稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年五月五日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
大藏大臣 男爵 曾禰荒助
法律第七十一號
賣藥稅法
第一條 賣藥ニハ定價一割ノ賣藥稅ヲ課ス
定價一錢未滿ナルトキ又ハ一錢未滿ノ端數アルトキハ一錢未滿ノ金額ハ總テ之ヲ一錢トシテ賣藥稅ヲ計算ス
第二條 賣藥稅ハ印紙ヲ貼用シテ納ムルモノトス
第三條 賣藥營業者ハ賣藥ノ容器又ハ包紙等ニ定價ヲ附記シ其ノ賣藥稅ニ相當スル印紙ヲ貼用シ印紙面ヨリ他所ニカケ消印スヘシ
第四條 賣藥營業者ハ賣藥ノ容器又ハ包紙等ニ貼用印紙ヲ破毀スルニ非サレハ賣藥ヲ取出スコトヲ得サルノ裝置ヲ爲スヘシ
第五條 賣藥營業者定價ヲ增加シテ賣藥ヲ販賣セムトスルトキハ其ノ定價ヲ改記シ其ノ賣藥稅ニ相當スル印紙ヲ增貼スヘシ
第六條 賣藥營業者、請賣者及行商者ハ帳簿ヲ調製シ賣藥ノ製造出入ニ關スル事實ヲ詳細明瞭ニ記載スヘシ
第七條 賣藥營業者ハ相當印紙ノ貼用ナキ賣藥、第三條ニ依リ貼用印紙ニ消印ヲ爲ササル賣藥又ハ第四條ノ裝置ヲ爲ササル賣藥ヲ販賣スルコトヲ得ス
賣藥請賣者又ハ行商者ハ相當印紙ノ貼用ナキ賣藥、第三條ニ依リ貼用印紙ニ消印ヲ爲ササル賣藥又ハ第四條ノ裝置ヲ爲ササル賣藥ヲ所持スルコトヲ得ス
第八條 收稅官吏ハ前條ニ違反シタル賣藥ヲ發見スルトキハ處罰セラレタルト否トヲ問ハス賣藥營業者ノ費用ヲ以テ印紙ヲ貼用シ、貼用印紙ニ消印シ又ハ相當ノ裝置ヲ爲スコトヲ得
前項ノ費用徵收ニハ國稅徵收法ノ規定ヲ準用ス
第九條 收稅官吏ハ賣藥ノ所在ニ就キ檢査ヲ爲シ又ハ賣藥營業者、請賣者及行商者ノ帳簿書類ヲ檢閱スルコトヲ得
第十條 外國ニ輸出スル賣藥ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ賣藥稅ヲ免除ス
前項ノ賣藥ニ付テハ第二條乃至第五條、第七條、第八條及第十一條乃至第十三條ヲ適用セス
第十一條 賣藥營業者ニシテ所持ノ賣藥中性效ヲ失シタルモノヲ廢棄セムトスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ旣貼印紙ト新印紙トノ交換ヲ請求スルコトヲ得
第十二條 賣藥營業者相當印紙ノ貼用ナキ賣藥ヲ販賣シ又ハ附記定價以上ニ賣藥ヲ販賣シタルトキハ脫稅高二十倍ノ罰金ニ處ス但シ脫稅高二十倍ノ金額五圓ニ達セサルトキハ五圓ノ罰金ニ處ス
賣藥營業者定價ヲ附記セサル賣藥ヲ販賣シタルトキハ二圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス因リテ脫稅ヲ爲シタル者ハ前項ニ依リテ處斷ス
第十三條 賣藥營業者第三條ニ依リ貼用印紙ニ消印ヲ爲ササル賣藥又ハ第四條ノ裝置ヲ爲ササル賣藥ヲ販賣シタルトキハ三圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
賣藥請賣者又ハ行商者相當印紙ノ貼用ナキ賣藥ヲ所持又ハ販賣シタルトキハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ第三條ニ依リ貼用印紙ニ消印ヲ爲ササル賣藥又ハ第四條ノ裝置ヲ爲ササル賣藥ヲ所持又ハ販賣シタルトキハ三圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條 賣藥營業者、請賣者又ハ行商者賣藥ノ製造出入ニ關スル帳簿書類ヲ隱匿シタルトキハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ帳簿ヲ調製セス又ハ其ノ記載ヲ怠リ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 收稅官吏ノ尋問ニ對シ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ收稅官吏ノ職務執行ヲ拒ミ、之ヲ忌避シ若ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル
第十六條 本法ノ規定ニ違反シタル者ニハ刑法ノ減輕、再犯加重及數罪俱發ノ例ヲ用井ス
第十七條 賣藥營業者、請賣者及行商者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法ノ規定ニ依リ賣藥營業者、請賣者及行商者ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十八條 賣藥營業者、請賣者及行商者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ノ規定ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第十九條 賣藥類似品及其ノ營業者、請賣者及行商者ニ關シテハ本法ノ規定ヲ準用ス
賣藥類似品ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
賣藥印紙稅規則ハ之ヲ廢止ス
本法施行ノ際販賣ノ爲賣藥類似品ヲ所持スル者ハ本法施行ノ日ヨリ三十日以內ニ本法第三條及第四條ニ依リ印紙ヲ貼用スヘシ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル売薬税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年五月五日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
大蔵大臣 男爵 曽祢荒助
法律第七十一号
売薬税法
第一条 売薬ニハ定価一割ノ売薬税ヲ課ス
定価一銭未満ナルトキ又ハ一銭未満ノ端数アルトキハ一銭未満ノ金額ハ総テ之ヲ一銭トシテ売薬税ヲ計算ス
第二条 売薬税ハ印紙ヲ貼用シテ納ムルモノトス
第三条 売薬営業者ハ売薬ノ容器又ハ包紙等ニ定価ヲ附記シ其ノ売薬税ニ相当スル印紙ヲ貼用シ印紙面ヨリ他所ニカケ消印スヘシ
第四条 売薬営業者ハ売薬ノ容器又ハ包紙等ニ貼用印紙ヲ破毀スルニ非サレハ売薬ヲ取出スコトヲ得サルノ装置ヲ為スヘシ
第五条 売薬営業者定価ヲ増加シテ売薬ヲ販売セムトスルトキハ其ノ定価ヲ改記シ其ノ売薬税ニ相当スル印紙ヲ増貼スヘシ
第六条 売薬営業者、請売者及行商者ハ帳簿ヲ調製シ売薬ノ製造出入ニ関スル事実ヲ詳細明瞭ニ記載スヘシ
第七条 売薬営業者ハ相当印紙ノ貼用ナキ売薬、第三条ニ依リ貼用印紙ニ消印ヲ為ササル売薬又ハ第四条ノ装置ヲ為ササル売薬ヲ販売スルコトヲ得ス
売薬請売者又ハ行商者ハ相当印紙ノ貼用ナキ売薬、第三条ニ依リ貼用印紙ニ消印ヲ為ササル売薬又ハ第四条ノ装置ヲ為ササル売薬ヲ所持スルコトヲ得ス
第八条 収税官吏ハ前条ニ違反シタル売薬ヲ発見スルトキハ処罰セラレタルト否トヲ問ハス売薬営業者ノ費用ヲ以テ印紙ヲ貼用シ、貼用印紙ニ消印シ又ハ相当ノ装置ヲ為スコトヲ得
前項ノ費用徴収ニハ国税徴収法ノ規定ヲ準用ス
第九条 収税官吏ハ売薬ノ所在ニ就キ検査ヲ為シ又ハ売薬営業者、請売者及行商者ノ帳簿書類ヲ検閲スルコトヲ得
第十条 外国ニ輸出スル売薬ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ売薬税ヲ免除ス
前項ノ売薬ニ付テハ第二条乃至第五条、第七条、第八条及第十一条乃至第十三条ヲ適用セス
第十一条 売薬営業者ニシテ所持ノ売薬中性効ヲ失シタルモノヲ廃棄セムトスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ既貼印紙ト新印紙トノ交換ヲ請求スルコトヲ得
第十二条 売薬営業者相当印紙ノ貼用ナキ売薬ヲ販売シ又ハ附記定価以上ニ売薬ヲ販売シタルトキハ脱税高二十倍ノ罰金ニ処ス但シ脱税高二十倍ノ金額五円ニ達セサルトキハ五円ノ罰金ニ処ス
売薬営業者定価ヲ附記セサル売薬ヲ販売シタルトキハ二円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス因リテ脱税ヲ為シタル者ハ前項ニ依リテ処断ス
第十三条 売薬営業者第三条ニ依リ貼用印紙ニ消印ヲ為ササル売薬又ハ第四条ノ装置ヲ為ササル売薬ヲ販売シタルトキハ三円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス
売薬請売者又ハ行商者相当印紙ノ貼用ナキ売薬ヲ所持又ハ販売シタルトキハ五円以上百円以下ノ罰金ニ処シ第三条ニ依リ貼用印紙ニ消印ヲ為ササル売薬又ハ第四条ノ装置ヲ為ササル売薬ヲ所持又ハ販売シタルトキハ三円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス
第十四条 売薬営業者、請売者又ハ行商者売薬ノ製造出入ニ関スル帳簿書類ヲ隠匿シタルトキハ五円以上百円以下ノ罰金ニ処シ帳簿ヲ調製セス又ハ其ノ記載ヲ怠リ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 収税官吏ノ尋問ニ対シ虚偽ノ答弁ヲ為シ又ハ収税官吏ノ職務執行ヲ拒ミ、之ヲ忌避シ若ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス其ノ刑法ニ正条アルモノハ刑法ニ依ル
第十六条 本法ノ規定ニ違反シタル者ニハ刑法ノ減軽、再犯加重及数罪俱発ノ例ヲ用井ス
第十七条 売薬営業者、請売者及行商者カ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ本法ノ規定ニ依リ売薬営業者、請売者及行商者ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十八条 売薬営業者、請売者及行商者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法ノ規定ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第十九条 売薬類似品及其ノ営業者、請売者及行商者ニ関シテハ本法ノ規定ヲ準用ス
売薬類似品ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
附 則
売薬印紙税規則ハ之ヲ廃止ス
本法施行ノ際販売ノ為売薬類似品ヲ所持スル者ハ本法施行ノ日ヨリ三十日以内ニ本法第三条及第四条ニ依リ印紙ヲ貼用スヘシ