商業会議所法
法令番号: 法律第三十一號
公布年月日: 明治35年3月25日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル商業會議所法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十五年三月二十四日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 平田東助
法律第三十一號
商業會議所法
第一條 商業會議所ハ法人トス
第二條 商業會議所ノ地區ハ市ノ區域ニ依ル但シ特別ノ事情アル場合ニ於テハ市ト市町村又ハ町ト町村ヲ合シテ一地區ト爲スコトヲ得
第三條 商業會議所ヲ設立セムトスルトキハ議員ノ被選擧權ヲ有スヘキ者三十人以上發起人ト爲リ發起ノ認可ヲ農商務大臣ニ申請スヘシ
第四條 發起人前條ノ認可ヲ受ケタルトキハ定款ヲ作リ議員ノ選擧權ヲ有スヘキ者三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ設立ノ認可ヲ農商務大臣ニ申請スヘシ
第五條 商業會議所ハ設立ノ認可ヲ受ケタル日ニ於テ成立ス
商業會議所成立ノ後役員ノ認可アル迄ノ間必要ナル事務ハ發起人之ヲ行フ
第六條 定款ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 名稱、地區及所在地
二 議員ノ定數及其ノ選擧ニ關スル規定
三 役員ノ權限、選任及解任ニ關スル規定
四 會議ニ關スル規定
五 仲裁ニ關スル規定
六 庶務ニ關スル規定
七 會計ニ關スル規定
八 營造物ヲ設立シ又ハ管理スルトキハ其ノ管理ニ關スル規定
第七條 商業會議所ノ事務權限左ノ如シ
一 商工業ノ發達ヲ圖ルニ必要ナル方案ヲ調査スル事
二 商工業ニ關スル法規ノ制定、改廢、施行ニ關シ意見ヲ行政廳ニ開申シ及商工業ノ利害ニ關スル意見ヲ表示スル事
三 商工業ニ關スル事項ニ關シ行政廳ノ諮問ニ應スル事
四 商工業ノ狀況及統計ヲ調査發表スル事
五 商工業者ノ委囑ニ因リ商工業ニ關スル事項ヲ調査シ又ハ商品ノ產地價格等ヲ證明スル事
六 官廳ノ命ニ因リ商工業ニ關スル鑑定人又ハ參考人ヲ推薦スル事
七 關係人ノ請求ニ因リ商工業ニ關スル紛議ヲ仲裁スル事
八 農商務大臣ノ認可ヲ受ケ商工業ニ關スル營造物ヲ設立シ又ハ管理シ其ノ他商工業ノ發達ヲ圖ルニ必要ナル施設ヲ爲ス事
第八條 農商務大臣又ハ地方長官ハ商工業ニ關スル事項ノ調査ヲ商業會議所ニ命スルコトヲ得
第九條 帝國臣民又ハ帝國法律ニ依リ設立シタル法人ニシテ商業會議所ノ地區內ニ主タル營業所又ハ事務所ヲ有シ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ議員ノ選擧權ヲ有ス但シ合名會社ニ在リテハ社員ノ半數以上、合資會社及株式合資會社ニ在リテハ無限責任社員ノ半數以上、株式會社ニ在リテハ取締役ノ半數以上帝國臣民タルコトヲ要ス
一 自己ノ名ヲ以テ商法第二百六十三條、第二百六十四條第一號、第三號乃至第六號及第八號乃至第十二號ニ揭ケタル行爲ヲ爲スコトヲ業トシ營業稅ヲ納ムル者
二 自己ノ名ヲ以テ製造及加工ニ關スル行爲ヲ爲スコトヲ業トシ營業稅ヲ納ムル者
三 取引所稅ヲ納ムル取引所
四 鑛業稅ヲ納ムル鑛業權者
前項納稅ノ額ニ關スル制限ハ地方ノ狀況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
帝國法律ニ依リ設立シタル法人ニシテ商業會議所ノ地區內ニ營業所又ハ事務所ヲ有シ第一項各號ノ一ニ該當スルモノノ業務ヲ執行スル社員、取締役、理事長、理事又ハ登記シタル支配人ニシテ所得稅ヲ納ムル帝國臣民ハ其ノ主トシテ職務ニ從事スル營業所又ハ事務所ノ所在地ニ於テ議員ノ選擧權ヲ有ス
前項納稅ノ額及法人ノ資本額又ハ財產ヲ目的トスル出資額ニ關スル制限ハ地方ノ狀況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ選擧權ヲ有セス
一 身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者及家資分散又ハ破產ノ宣吿ヲ受ケ其ノ確定シタル時ヨリ復權ノ決定確定スルニ至ル迄ノ者
二 剝奪公權者及停止公權者
三 禁錮以上ノ刑ノ宣吿ヲ受ケタル時ヨリ其ノ裁判確定スルニ至ル迄ノ者
第十一條 一人ニシテ同一商業會議所ノ議員ノ選擧ニ關シ二以上ノ選擧權ヲ有スルコトヲ得ス
第十二條 法人及年齡三十歲以上ノ男子ニシテ二箇年以來議員ノ選擧權ニ關スル要件ヲ具備スル者ハ議員ノ被選擧權ヲ有ス但シ合名會社ニ在リテハ社員ノ全員、合資會社及株式合資會社ニ在リテハ無限責任社員ノ全員、株式會社ニ在リテハ取締役ノ全員帝國臣民タルコトヲ要ス
第十三條 第十條各號ノ一ニ該當スル者竝禁治產者及準禁治產者ハ被選擧權ヲ有セス
第十四條 議員ノ定數ハ五十人以下トス
第十五條 商業會議所ハ定款ノ定ムル所ニ依リ議員定數ノ五分ノ一ヲ超エサル特別議員ヲ置クコトヲ得
地方長官ハ議員定數ノ五分ノ一ヲ超エサル特別議員ヲ命スルコトヲ得
特別議員ハ決議ニ加ハルコトヲ得但シ定款ニ別段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
特別議員ハ年齡三十歲以上ノ帝國臣民タル男子ニシテ商工業ニ關スル學術、技藝又ハ經驗アル者タルコトヲ要ス
第十六條 議員ノ選擧ニ關シテハ複選擧、階級選擧其ノ他ノ方法ニ依ルコトヲ得
議員選擧人ノ選擧ニ關シテハ議員ノ選擧ニ關スル規定ヲ準用ス
第十七條 議員ノ選擧事務ハ地方長官ノ命シタル選擧委員之ヲ行フ其ノ費用ハ商業會議所ノ負擔トス
地方長官ハ選擧事務ヲ監督ス
第十八條 議員ノ選擧ハ選擧人自ラ之ヲ行フヘシ但シ法人女子及無能力者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ代人ヲ以テ之ヲ行フ
第十九條 議員及議員選擧人選擧ノ方法、手續及取締ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十條 議員當選者ハ地方長官、議員ハ會頭ニ於テ正當ノ事由アリト認メタル場合ヲ除クノ外商業會議所ノ決議ヲ經ルニ非サレハ當選ヲ辭シ又ハ其ノ職ヲ辭スルコトヲ得ス
第二十一條 議員タル法人ハ其ノ代表者ヲ定ムヘシ
代表者ハ業務ヲ執行スル社員、取締役、理事長又ハ理事ニシテ年齡三十歲以上ノ男子タルコトヲ要ス
第十三條ニ該當スル者ハ代表者タルコトヲ得ス
第二十二條 一人ニシテ同一商業會議所ニ於テ二以上ノ法人ノ代表者ト爲リ又ハ議員ト代表者トヲ兼ヌルコトヲ得ス
第二十三條 議員及特別議員ハ無給トス
第二十四條 議員ノ任期ハ四箇年トシ二箇年每ニ其ノ半數ヲ改選ス若シ二分シ難キトキハ初囘ニ於テ多數ノ一半ヲ改選ス
初囘ノ改選期及減員ノ場合ニ於テ解任者ヲ定ムル方法ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條 補闕議員ノ任期ハ前任者ノ殘任期間トス
增員議員ノ任期ハ現任者ノ任期ヲ超ユルコトヲ得ス
議員增減ノ爲必要ナル任期ノ異動ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條 特別議員ハ議員ノ半數改選期每ニ解任ス
第二十七條 議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ
第二十八條 商業會議所ニ左ノ役員ヲ置ク
會頭 一人
副會頭
會頭ハ商業會議所ヲ統轄シ其ノ事務ヲ擔任シ會議ノ議長ト爲リ商業會議所ヲ代表ス
副會頭ハ會頭ヲ輔佐シ會頭事故アルトキハ之ヲ代理ス
商業會議所ニハ定款ノ定ムル所ニ依リ會頭副會頭ノ外必要ナル役員及事務員ヲ置クコトヲ得
役員ハ議員中ヨリ之ヲ互選シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
役員ニシテ議員ノ職ヲ失ヒタルトキハ解任ス但シ定款ノ定ムル所ニ依リ後任者ノ認可アル迄其ノ職務ヲ行フコトヲ得
第二十九條 商業會議所ハ商工業ノ狀況及統計ノ調査ノ爲必要ナル材料ノ提出ヲ商工業者ニ請求スルコトヲ得
第三十條 商業會議所ノ經費ハ議員ノ選擧權ヲ有スル者ニ於テ之ヲ負擔ス
選擧權ヲ停止セラレタル者ハ停止中ト雖經費ヲ負擔ス
第三十一條 商業會議所ハ定款ノ定ムル所ニ依リ使用料若ハ手數料ヲ徵收シ又ハ實費ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
前項ノ收入ニ關シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十二條 商業會議所ハ其ノ決議ヲ以テ職務ヲ怠リ其ノ他不正ノ行爲アリタル議員ニ二百圓以下ノ過怠金ヲ課シ又ハ之ヲ除名スルコトヲ得
第三十三條 經費又ハ過怠金ヲ滯納シ督促ヲ受クルモ尙之ヲ完納セサルトキハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ徵收金ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付時效ニ關シテハ國稅ノ例ニ依ル
滯納處分ハ滯納者住所地ノ市參事會、町村長之ヲ行フ
第三十四條 商業會議所ハ滯納又ハ除名ノ處分ヲ受ケタル者ニ對シ其ノ決議ヲ以テ四箇年以內選擧權及被選擧權ヲ停止スルコトヲ得
第三十五條 左ノ決議ハ議員三分ノ二以上出席シ其ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
一 定款變更ノ決議
二 第三十二條、第三十四條及第四十二條第一項ノ決議
前項ノ決議及經費ノ豫算、賦課徵收方法ノ決議ハ農商務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第三十六條 商業會議所ハ經費ノ決算ヲ農商務大臣ニ報吿スヘシ
商業會議所ハ每年少クトモ一囘其ノ事業成蹟ヲ農商務大臣ニ報吿スヘシ
第三十七條 商業會議所解散ノ決議ハ議員總數ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ決議ハ農商務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第三十八條 商業會議所ハ解散ノ後ト雖淸算ノ目的ノ範圍內ニ於テハ尙存續スルモノト看做ス
第三十九條 商業會議所解散シタルトキハ其ノ決議ヲ以テ淸算人ヲ選任スヘシ淸算人缺ケタルトキ亦同シ
淸算人ヲ選任シタルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第四十條 前條ノ規定ニ依リ淸算人タル者ナキトキハ地方長官淸算人ヲ選任ス
第四十一條 淸算人ハ商業會議所ヲ代表シ淸算ヲ爲スニ必要ナル一切ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有ス
第四十二條 淸算人ハ淸算及財產處分ノ方法ヲ定メ商業會議所ノ決議ヲ經ヘシ
商業會議所前項ノ決議ヲ爲サス又ハ爲スコト能ハサルトキハ淸算人ハ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ淸算及財產處分ノ方法ヲ定ムヘシ
第四十三條 商業會議所ハ解散ノ後ト雖其ノ債務ヲ完濟スルニ必要ナル金額ヲ賦課徵收スルコトヲ得
前項ノ賦課徵收ニ關シテハ第三十條及第三十三條ノ規定ヲ準用ス
第四十四條 農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ定款、經費ノ豫算及賦課徵收方法、淸算及財產處分方法ノ變更ヲ命シ其ノ他必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十五條 議員ノ選擧、商業會議所ノ決議、行爲又ハ役員、淸算人ノ行爲ニシテ法令若ハ定款ニ違背シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ農商務大臣ハ選擧若ハ當選ノ取消、役員、淸算人、議員若ハ特別議員ノ停職若ハ解任、商業會議所ノ決議、行爲若ハ役員、淸算人ノ行爲ノ停止若ハ取消又ハ商業會議所ノ解散ヲ命スルコトヲ得
農商務大臣ハ前項ニ依リ解任セラレタル議員又ハ役員及不正ノ行爲ニ因リ當選ヲ取消サレタル者ニ對シ四箇年以內選擧權及被選擧權ヲ停止スルコトヲ得
第四十六條 選擧權及被選擧權ヲ停止セラレタル者ハ其ノ停止中議員、特別議員又ハ法人ノ代表者タルコトヲ得ス
第四十七條 農商務大臣ハ本法ニ規定シタル職權ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第四十八條 本法中市町村、市參事會、町村長ニ關スル規定ハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ之ニ準スヘキモノニ之ヲ準用ス
附 則
第四十九條 本法ハ明治三十五年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
商業會議所條例ハ之ヲ廢止ス但シ同條例ニ依リ設立シタル商業會議所ニ關シテハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外第五十二條ノ認可ヲ受クル迄其ノ效力ヲ有ス
第五十條 商業會議所條例ニ依リ設立シタル商業會議所ニシテ本法施行後繼續セムトスルモノハ本法ノ規定ニ從ヒ議員ノ定數、選擧方法其ノ他選擧ニ關スル必要ナル規定ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ明治三十六年三月三十一日迄ニ議員ノ選擧ヲ爲スヘシ
前項ノ選擧及之ニ依リ選擧セラレタル議員ニ關シテハ本法及本法ニ基ツキテ發スル命令ノ規定ヲ適用ス
第五十一條 商業會議所條例ニ依リ設立シタル商業會議所ノ會員及特別會員ニシテ本法施行ノ際其ノ職ニ在ル者ノ任期ハ前條第一項ノ選擧終了ノ日迄トス
第五十二條 第五十條第一項ノ選擧ニ當選シタル議員ハ選擧終了ノ日ヨリ三十日以內ニ本法ノ規定ニ從ヒ定款ヲ議定シ及役員ヲ選任シ農商務大臣ノ認可ヲ申請スヘシ
商業會議所條例ニ依リ設立シタル商業會議所ハ第二條ノ規定ニ拘ラス從前ノ地區ニ依ルコトヲ得
第五十三條 商業會議所條例ニ依リ設立シタル商業會議所ノ役員ノ任期ハ前條第一項ニ依リ選任シタル役員認可ノ日迄トス
第五十四條 商業會議所條例ニ依リ設立シタル商業會議所ニシテ第五十二條第一項ノ認可ヲ受ケタルモノハ本法ニ依リテ設立シタルモノト看做ス
商業會議所條例ニ依リ設立シタル商業會議所第五十條第一項又ハ第五十二條第一項ニ定メタル手續ヲ爲ササルトキハ解散シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ第三十八條乃至第四十五條ノ規定ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル商業会議所法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十五年三月二十四日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 平田東助
法律第三十一号
商業会議所法
第一条 商業会議所ハ法人トス
第二条 商業会議所ノ地区ハ市ノ区域ニ依ル但シ特別ノ事情アル場合ニ於テハ市ト市町村又ハ町ト町村ヲ合シテ一地区ト為スコトヲ得
第三条 商業会議所ヲ設立セムトスルトキハ議員ノ被選挙権ヲ有スヘキ者三十人以上発起人ト為リ発起ノ認可ヲ農商務大臣ニ申請スヘシ
第四条 発起人前条ノ認可ヲ受ケタルトキハ定款ヲ作リ議員ノ選挙権ヲ有スヘキ者三分ノ二以上ノ同意ヲ得テ設立ノ認可ヲ農商務大臣ニ申請スヘシ
第五条 商業会議所ハ設立ノ認可ヲ受ケタル日ニ於テ成立ス
商業会議所成立ノ後役員ノ認可アル迄ノ間必要ナル事務ハ発起人之ヲ行フ
第六条 定款ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 名称、地区及所在地
二 議員ノ定数及其ノ選挙ニ関スル規定
三 役員ノ権限、選任及解任ニ関スル規定
四 会議ニ関スル規定
五 仲裁ニ関スル規定
六 庶務ニ関スル規定
七 会計ニ関スル規定
八 営造物ヲ設立シ又ハ管理スルトキハ其ノ管理ニ関スル規定
第七条 商業会議所ノ事務権限左ノ如シ
一 商工業ノ発達ヲ図ルニ必要ナル方案ヲ調査スル事
二 商工業ニ関スル法規ノ制定、改廃、施行ニ関シ意見ヲ行政庁ニ開申シ及商工業ノ利害ニ関スル意見ヲ表示スル事
三 商工業ニ関スル事項ニ関シ行政庁ノ諮問ニ応スル事
四 商工業ノ状況及統計ヲ調査発表スル事
五 商工業者ノ委嘱ニ因リ商工業ニ関スル事項ヲ調査シ又ハ商品ノ産地価格等ヲ証明スル事
六 官庁ノ命ニ因リ商工業ニ関スル鑑定人又ハ参考人ヲ推薦スル事
七 関係人ノ請求ニ因リ商工業ニ関スル紛議ヲ仲裁スル事
八 農商務大臣ノ認可ヲ受ケ商工業ニ関スル営造物ヲ設立シ又ハ管理シ其ノ他商工業ノ発達ヲ図ルニ必要ナル施設ヲ為ス事
第八条 農商務大臣又ハ地方長官ハ商工業ニ関スル事項ノ調査ヲ商業会議所ニ命スルコトヲ得
第九条 帝国臣民又ハ帝国法律ニ依リ設立シタル法人ニシテ商業会議所ノ地区内ニ主タル営業所又ハ事務所ヲ有シ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ議員ノ選挙権ヲ有ス但シ合名会社ニ在リテハ社員ノ半数以上、合資会社及株式合資会社ニ在リテハ無限責任社員ノ半数以上、株式会社ニ在リテハ取締役ノ半数以上帝国臣民タルコトヲ要ス
一 自己ノ名ヲ以テ商法第二百六十三条、第二百六十四条第一号、第三号乃至第六号及第八号乃至第十二号ニ掲ケタル行為ヲ為スコトヲ業トシ営業税ヲ納ムル者
二 自己ノ名ヲ以テ製造及加工ニ関スル行為ヲ為スコトヲ業トシ営業税ヲ納ムル者
三 取引所税ヲ納ムル取引所
四 鉱業税ヲ納ムル鉱業権者
前項納税ノ額ニ関スル制限ハ地方ノ状況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
帝国法律ニ依リ設立シタル法人ニシテ商業会議所ノ地区内ニ営業所又ハ事務所ヲ有シ第一項各号ノ一ニ該当スルモノノ業務ヲ執行スル社員、取締役、理事長、理事又ハ登記シタル支配人ニシテ所得税ヲ納ムル帝国臣民ハ其ノ主トシテ職務ニ従事スル営業所又ハ事務所ノ所在地ニ於テ議員ノ選挙権ヲ有ス
前項納税ノ額及法人ノ資本額又ハ財産ヲ目的トスル出資額ニ関スル制限ハ地方ノ状況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ選挙権ヲ有セス
一 身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者及家資分散又ハ破産ノ宣告ヲ受ケ其ノ確定シタル時ヨリ復権ノ決定確定スルニ至ル迄ノ者
二 剥奪公権者及停止公権者
三 禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタル時ヨリ其ノ裁判確定スルニ至ル迄ノ者
第十一条 一人ニシテ同一商業会議所ノ議員ノ選挙ニ関シ二以上ノ選挙権ヲ有スルコトヲ得ス
第十二条 法人及年齢三十歳以上ノ男子ニシテ二箇年以来議員ノ選挙権ニ関スル要件ヲ具備スル者ハ議員ノ被選挙権ヲ有ス但シ合名会社ニ在リテハ社員ノ全員、合資会社及株式合資会社ニ在リテハ無限責任社員ノ全員、株式会社ニ在リテハ取締役ノ全員帝国臣民タルコトヲ要ス
第十三条 第十条各号ノ一ニ該当スル者並禁治産者及準禁治産者ハ被選挙権ヲ有セス
第十四条 議員ノ定数ハ五十人以下トス
第十五条 商業会議所ハ定款ノ定ムル所ニ依リ議員定数ノ五分ノ一ヲ超エサル特別議員ヲ置クコトヲ得
地方長官ハ議員定数ノ五分ノ一ヲ超エサル特別議員ヲ命スルコトヲ得
特別議員ハ決議ニ加ハルコトヲ得但シ定款ニ別段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
特別議員ハ年齢三十歳以上ノ帝国臣民タル男子ニシテ商工業ニ関スル学術、技芸又ハ経験アル者タルコトヲ要ス
第十六条 議員ノ選挙ニ関シテハ複選挙、階級選挙其ノ他ノ方法ニ依ルコトヲ得
議員選挙人ノ選挙ニ関シテハ議員ノ選挙ニ関スル規定ヲ準用ス
第十七条 議員ノ選挙事務ハ地方長官ノ命シタル選挙委員之ヲ行フ其ノ費用ハ商業会議所ノ負担トス
地方長官ハ選挙事務ヲ監督ス
第十八条 議員ノ選挙ハ選挙人自ラ之ヲ行フヘシ但シ法人女子及無能力者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ代人ヲ以テ之ヲ行フ
第十九条 議員及議員選挙人選挙ノ方法、手続及取締ニ関スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十条 議員当選者ハ地方長官、議員ハ会頭ニ於テ正当ノ事由アリト認メタル場合ヲ除クノ外商業会議所ノ決議ヲ経ルニ非サレハ当選ヲ辞シ又ハ其ノ職ヲ辞スルコトヲ得ス
第二十一条 議員タル法人ハ其ノ代表者ヲ定ムヘシ
代表者ハ業務ヲ執行スル社員、取締役、理事長又ハ理事ニシテ年齢三十歳以上ノ男子タルコトヲ要ス
第十三条ニ該当スル者ハ代表者タルコトヲ得ス
第二十二条 一人ニシテ同一商業会議所ニ於テ二以上ノ法人ノ代表者ト為リ又ハ議員ト代表者トヲ兼ヌルコトヲ得ス
第二十三条 議員及特別議員ハ無給トス
第二十四条 議員ノ任期ハ四箇年トシ二箇年毎ニ其ノ半数ヲ改選ス若シ二分シ難キトキハ初回ニ於テ多数ノ一半ヲ改選ス
初回ノ改選期及減員ノ場合ニ於テ解任者ヲ定ムル方法ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五条 補闕議員ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス
増員議員ノ任期ハ現任者ノ任期ヲ超ユルコトヲ得ス
議員増減ノ為必要ナル任期ノ異動ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条 特別議員ハ議員ノ半数改選期毎ニ解任ス
第二十七条 議員ニシテ被選挙権ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ
第二十八条 商業会議所ニ左ノ役員ヲ置ク
会頭 一人
副会頭
会頭ハ商業会議所ヲ統轄シ其ノ事務ヲ担任シ会議ノ議長ト為リ商業会議所ヲ代表ス
副会頭ハ会頭ヲ輔佐シ会頭事故アルトキハ之ヲ代理ス
商業会議所ニハ定款ノ定ムル所ニ依リ会頭副会頭ノ外必要ナル役員及事務員ヲ置クコトヲ得
役員ハ議員中ヨリ之ヲ互選シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
役員ニシテ議員ノ職ヲ失ヒタルトキハ解任ス但シ定款ノ定ムル所ニ依リ後任者ノ認可アル迄其ノ職務ヲ行フコトヲ得
第二十九条 商業会議所ハ商工業ノ状況及統計ノ調査ノ為必要ナル材料ノ提出ヲ商工業者ニ請求スルコトヲ得
第三十条 商業会議所ノ経費ハ議員ノ選挙権ヲ有スル者ニ於テ之ヲ負担ス
選挙権ヲ停止セラレタル者ハ停止中ト雖経費ヲ負担ス
第三十一条 商業会議所ハ定款ノ定ムル所ニ依リ使用料若ハ手数料ヲ徴収シ又ハ実費ノ弁償ヲ受クルコトヲ得
前項ノ収入ニ関シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第三十二条 商業会議所ハ其ノ決議ヲ以テ職務ヲ怠リ其ノ他不正ノ行為アリタル議員ニ二百円以下ノ過怠金ヲ課シ又ハ之ヲ除名スルコトヲ得
第三十三条 経費又ハ過怠金ヲ滞納シ督促ヲ受クルモ尚之ヲ完納セサルトキハ国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ徴収スルコトヲ得
前項ノ徴収金ハ市町村其ノ他之ニ準スヘキモノノ徴収金ニ次テ先取特権ヲ有シ其ノ追徴還付時効ニ関シテハ国税ノ例ニ依ル
滞納処分ハ滞納者住所地ノ市参事会、町村長之ヲ行フ
第三十四条 商業会議所ハ滞納又ハ除名ノ処分ヲ受ケタル者ニ対シ其ノ決議ヲ以テ四箇年以内選挙権及被選挙権ヲ停止スルコトヲ得
第三十五条 左ノ決議ハ議員三分ノ二以上出席シ其ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
一 定款変更ノ決議
二 第三十二条、第三十四条及第四十二条第一項ノ決議
前項ノ決議及経費ノ予算、賦課徴収方法ノ決議ハ農商務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第三十六条 商業会議所ハ経費ノ決算ヲ農商務大臣ニ報告スヘシ
商業会議所ハ毎年少クトモ一回其ノ事業成蹟ヲ農商務大臣ニ報告スヘシ
第三十七条 商業会議所解散ノ決議ハ議員総数ノ三分ノ二以上ノ同意アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ決議ハ農商務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第三十八条 商業会議所ハ解散ノ後ト雖清算ノ目的ノ範囲内ニ於テハ尚存続スルモノト看做ス
第三十九条 商業会議所解散シタルトキハ其ノ決議ヲ以テ清算人ヲ選任スヘシ清算人欠ケタルトキ亦同シ
清算人ヲ選任シタルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第四十条 前条ノ規定ニ依リ清算人タル者ナキトキハ地方長官清算人ヲ選任ス
第四十一条 清算人ハ商業会議所ヲ代表シ清算ヲ為スニ必要ナル一切ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス
第四十二条 清算人ハ清算及財産処分ノ方法ヲ定メ商業会議所ノ決議ヲ経ヘシ
商業会議所前項ノ決議ヲ為サス又ハ為スコト能ハサルトキハ清算人ハ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ清算及財産処分ノ方法ヲ定ムヘシ
第四十三条 商業会議所ハ解散ノ後ト雖其ノ債務ヲ完済スルニ必要ナル金額ヲ賦課徴収スルコトヲ得
前項ノ賦課徴収ニ関シテハ第三十条及第三十三条ノ規定ヲ準用ス
第四十四条 農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ定款、経費ノ予算及賦課徴収方法、清算及財産処分方法ノ変更ヲ命シ其ノ他必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第四十五条 議員ノ選挙、商業会議所ノ決議、行為又ハ役員、清算人ノ行為ニシテ法令若ハ定款ニ違背シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ農商務大臣ハ選挙若ハ当選ノ取消、役員、清算人、議員若ハ特別議員ノ停職若ハ解任、商業会議所ノ決議、行為若ハ役員、清算人ノ行為ノ停止若ハ取消又ハ商業会議所ノ解散ヲ命スルコトヲ得
農商務大臣ハ前項ニ依リ解任セラレタル議員又ハ役員及不正ノ行為ニ因リ当選ヲ取消サレタル者ニ対シ四箇年以内選挙権及被選挙権ヲ停止スルコトヲ得
第四十六条 選挙権及被選挙権ヲ停止セラレタル者ハ其ノ停止中議員、特別議員又ハ法人ノ代表者タルコトヲ得ス
第四十七条 農商務大臣ハ本法ニ規定シタル職権ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第四十八条 本法中市町村、市参事会、町村長ニ関スル規定ハ市制町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ之ニ準スヘキモノニ之ヲ準用ス
附 則
第四十九条 本法ハ明治三十五年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
商業会議所条例ハ之ヲ廃止ス但シ同条例ニ依リ設立シタル商業会議所ニ関シテハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外第五十二条ノ認可ヲ受クル迄其ノ効力ヲ有ス
第五十条 商業会議所条例ニ依リ設立シタル商業会議所ニシテ本法施行後継続セムトスルモノハ本法ノ規定ニ従ヒ議員ノ定数、選挙方法其ノ他選挙ニ関スル必要ナル規定ヲ議定シ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ明治三十六年三月三十一日迄ニ議員ノ選挙ヲ為スヘシ
前項ノ選挙及之ニ依リ選挙セラレタル議員ニ関シテハ本法及本法ニ基ツキテ発スル命令ノ規定ヲ適用ス
第五十一条 商業会議所条例ニ依リ設立シタル商業会議所ノ会員及特別会員ニシテ本法施行ノ際其ノ職ニ在ル者ノ任期ハ前条第一項ノ選挙終了ノ日迄トス
第五十二条 第五十条第一項ノ選挙ニ当選シタル議員ハ選挙終了ノ日ヨリ三十日以内ニ本法ノ規定ニ従ヒ定款ヲ議定シ及役員ヲ選任シ農商務大臣ノ認可ヲ申請スヘシ
商業会議所条例ニ依リ設立シタル商業会議所ハ第二条ノ規定ニ拘ラス従前ノ地区ニ依ルコトヲ得
第五十三条 商業会議所条例ニ依リ設立シタル商業会議所ノ役員ノ任期ハ前条第一項ニ依リ選任シタル役員認可ノ日迄トス
第五十四条 商業会議所条例ニ依リ設立シタル商業会議所ニシテ第五十二条第一項ノ認可ヲ受ケタルモノハ本法ニ依リテ設立シタルモノト看做ス
商業会議所条例ニ依リ設立シタル商業会議所第五十条第一項又ハ第五十二条第一項ニ定メタル手続ヲ為ササルトキハ解散シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ第三十八条乃至第四十五条ノ規定ヲ適用ス