商業会議所条例
法令番号: 法律第八十一號
公布年月日: 明治23年9月12日
法令の形式: 法律
朕商業會議所條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年九月十一日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
農商務大臣 陸奧宗光
法律第八十一號
商業會議所條例
第一條 此條例ニ商業者ト稱スルハ商法第四條ニ揭ケタル商取引ノ各部類ニ屬スル商人及作業人ヲ謂フ
第二條 商業會議所ヲ設立セントスルトキハ其地ノ商業者中此條例ニ依リ會員タルヲ得ヘキ者發起人ト爲リ地方長官ヲ經由シ農商務大臣ノ認可ヲ請フヘシ但發起人ノ數ハ定款ヲ以テ定ムヘキ會員ノ半數以上ナルコトヲ要ス
地方長官ハ前項ノ申請ヲ受ケタルトキハ郡若クハ市參事會ニ諮問シ其意見ヲ徵シ尙ホ自己ノ意見ヲ添ヘ農商務大臣ニ進達スヘシ
第三條 會議所設立地ノ境界ハ市町村ノ區域ニ依ルヘシ但土地商業ノ情況ニ由リ數市町村ノ區域ヲ互ニ聯合シテ其地ニ一會議所ヲ設立スルコトヲ得
第四條 會議所ノ事務權限左ノ如シ
一 商業ノ發達ヲ圖リ若クハ其衰退ヲ防クニ必要ノ方案ヲ議定スルコト
二 商業ニ關スル法律規則ノ制定改正廢止及施行方法其他商業上ノ利害ニ關スル意見ヲ官廳ニ開申スルコト
三 商業ノ實況及其統計ヲ官廳ニ報吿スルコト
四 商業ニ關スル事項ニ付官廳ノ諮問ニ應答スルコト
五 法律命令若クハ官ノ委任ニ依リ其地ノ公設營業所仲立人組合及商業ニ關スル諸營造物ヲ管理スルコト
六 仲立人ノ資格員數及手數料ヲ審査スルコト
七 關係人ノ請求ニ依リ其地ノ商業ニ關スル紛議ヲ仲裁スルコト
第五條 會議所設立地ノ商業者ニシテ所得稅ヲ納ムル者ハ會員ノ選擧權ヲ有ス
第六條 會議所設立地ニ於テ所得稅ヲ納ムル商業者ニシテ年齡三十歲以上ノ男子及商事會社ハ會員ノ被選擧權ヲ有ス
商事會社ヲ代表スヘキ者ハ法律上其會社ノ代理權ヲ有スル者一員ニ限ル
第七條 第五條及第六條ノ規定中會員ノ選擧權及被選擧權ニ關スル財產上ノ資格ニ付テハ農商務大臣ハ地方ノ情況ニ依リ省令ヲ以テ特ニ其所得稅ノ等級ヲ定メ又ハ他ノ國稅ヲ加フルコトヲ得
第八條 左ニ揭クル者ハ會員ノ選擧權及被選擧權ヲ有セス
一 瘋癲白癡ノ者
二 重禁錮一年以上ノ刑ニ處セラレ又ハ商業及農工ノ業ヲ防害スル罪、財產ニ對スル罪、風俗ヲ害スル罪及信用ヲ害スル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレ滿期後又ハ赦免後三箇年ヲ經サル者
三 公權剝奪若クハ停止中ノ者
第九條 會員ノ數ハ十五名以上五十名以下各會議所ノ定款ヲ以テ定ムヘシ
第十條 會員ハ無給トス其任期ハ四箇年トシ每二年其半數ヲ改選ス初囘ノ解任者ハ抽籤ヲ以テ定ムヘシ
第十一條 會員當選者ハ左ニ揭クル者ヲ除クノ外會議所ノ議決ヲ經スシテ其就職ヲ辭シ又ハ任期中辭職スルコトヲ得ス
一 疾病若クハ老衰ニ依リ職務ニ堪ヘサルコトヲ證明スル者
二 營業ノ爲メ常ニ會議所設立地ニ住居スル能ハサルコトヲ證明スル者
第十二條 前條ノ規定ニ依ルニ非スシテ會員ノ職ヲ辭スル者ハ會議所ノ議決ヲ以テ二百圓以下ノ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第十三條 會員ノ選擧ハ郡長若クハ市長委員ヲ命シ日時及場所ヲ定メテ施行セシム其費用ハ會議所ノ負擔トス
第十四條 會議所ノ會議ハ第四條第二項第四項及第七項ノ事件ニ係ル會議ハ公開スルコトヲ得ス
前項ノ外農商務大臣ノ命令又ハ會議所ノ議決ヲ以テ公開ヲ禁スルコトヲ得
第十五條 會議所ハ第四條第七項ノ場合ニ於テ其關係人ヨリ相當ノ手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第十六條 會議所ハ法人トシテ財產ヲ所有スルモノトス
第十七條 會議所ハ其議決ニ依リ會員定數ノ五分一ヨリ多カラサル特別會員ヲ置キ會議ニ參列セシムルコトヲ得但特別會員ハ其議決ニ加フルコトヲ得ス
特別會員ノ資格ハ學術技藝若クハ商業上ノ經驗アル者タルヘシ
第十八條 會議所經費ノ豫算ハ地方長官ヲ經由シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
豫算ノ決算ハ地方長官ヲ經由シ農商務大臣ニ報吿スヘシ
第十九條 會議所ノ經費ハ會員ノ選擧權ヲ有スル者ヨリ徵收ス其徵收方法ハ會議所ノ議決ヲ以テ地方長官ヲ經由シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
經費ヲ納期ニ納メサル者アルトキハ其地ノ地方稅收入役ニ囑託シテ之ヲ徵收スルコトヲ得
收入役ノ督促ヲ受クルモ經費ヲ納メサル者ハ會員ノ選擧權及被選擧權ヲ四箇年以上八箇年以下停止シ尙ホ二百圓以下ノ過料ニ處ス
第二十條 會議所ノ定款ハ會議所ノ議決ヲ以テ左ノ事項ヲ規定シ地方長官ヲ經由シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
一 會員選擧規則
二 議事規則
三 庶務規程
四 役員職務權限
五 仲裁規則
六 會計規則
七 公設ノ營造物若クハ其營業所ノ管理規則
第二十一條 農商務大臣ハ會議所其權限ヲ犯シ又ハ商業上有害ノ行爲アリト認メタルトキハ會議ヲ停止シ尙ホ其情況ニ依リ役員若クハ會員ノ幾部又ハ全部ノ改選ヲ命スルコトアルヘシ
第二十二條 農商務大臣ハ此條例施行ノ責ニ任シ之カ爲メ必要ナル命令ヲ發スヘシ
朕商業会議所条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年九月十一日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
農商務大臣 陸奥宗光
法律第八十一号
商業会議所条例
第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ商法第四条ニ掲ケタル商取引ノ各部類ニ属スル商人及作業人ヲ謂フ
第二条 商業会議所ヲ設立セントスルトキハ其地ノ商業者中此条例ニ依リ会員タルヲ得ヘキ者発起人ト為リ地方長官ヲ経由シ農商務大臣ノ認可ヲ請フヘシ但発起人ノ数ハ定款ヲ以テ定ムヘキ会員ノ半数以上ナルコトヲ要ス
地方長官ハ前項ノ申請ヲ受ケタルトキハ郡若クハ市参事会ニ諮問シ其意見ヲ徴シ尚ホ自己ノ意見ヲ添ヘ農商務大臣ニ進達スヘシ
第三条 会議所設立地ノ境界ハ市町村ノ区域ニ依ルヘシ但土地商業ノ情況ニ由リ数市町村ノ区域ヲ互ニ連合シテ其地ニ一会議所ヲ設立スルコトヲ得
第四条 会議所ノ事務権限左ノ如シ
一 商業ノ発達ヲ図リ若クハ其衰退ヲ防クニ必要ノ方案ヲ議定スルコト
二 商業ニ関スル法律規則ノ制定改正廃止及施行方法其他商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ官庁ニ開申スルコト
三 商業ノ実況及其統計ヲ官庁ニ報告スルコト
四 商業ニ関スル事項ニ付官庁ノ諮問ニ応答スルコト
五 法律命令若クハ官ノ委任ニ依リ其地ノ公設営業所仲立人組合及商業ニ関スル諸営造物ヲ管理スルコト
六 仲立人ノ資格員数及手数料ヲ審査スルコト
七 関係人ノ請求ニ依リ其地ノ商業ニ関スル紛議ヲ仲裁スルコト
第五条 会議所設立地ノ商業者ニシテ所得税ヲ納ムル者ハ会員ノ選挙権ヲ有ス
第六条 会議所設立地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者ニシテ年齢三十歳以上ノ男子及商事会社ハ会員ノ被選挙権ヲ有ス
商事会社ヲ代表スヘキ者ハ法律上其会社ノ代理権ヲ有スル者一員ニ限ル
第七条 第五条及第六条ノ規定中会員ノ選挙権及被選挙権ニ関スル財産上ノ資格ニ付テハ農商務大臣ハ地方ノ情況ニ依リ省令ヲ以テ特ニ其所得税ノ等級ヲ定メ又ハ他ノ国税ヲ加フルコトヲ得
第八条 左ニ掲クル者ハ会員ノ選挙権及被選挙権ヲ有セス
一 瘋癲白痴ノ者
二 重禁錮一年以上ノ刑ニ処セラレ又ハ商業及農工ノ業ヲ防害スル罪、財産ニ対スル罪、風俗ヲ害スル罪及信用ヲ害スル罪ヲ犯シ刑ニ処セラレ満期後又ハ赦免後三箇年ヲ経サル者
三 公権剥奪若クハ停止中ノ者
第九条 会員ノ数ハ十五名以上五十名以下各会議所ノ定款ヲ以テ定ムヘシ
第十条 会員ハ無給トス其任期ハ四箇年トシ毎二年其半数ヲ改選ス初回ノ解任者ハ抽籤ヲ以テ定ムヘシ
第十一条 会員当選者ハ左ニ掲クル者ヲ除クノ外会議所ノ議決ヲ経スシテ其就職ヲ辞シ又ハ任期中辞職スルコトヲ得ス
一 疾病若クハ老衰ニ依リ職務ニ堪ヘサルコトヲ証明スル者
二 営業ノ為メ常ニ会議所設立地ニ住居スル能ハサルコトヲ証明スル者
第十二条 前条ノ規定ニ依ルニ非スシテ会員ノ職ヲ辞スル者ハ会議所ノ議決ヲ以テ二百円以下ノ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第十三条 会員ノ選挙ハ郡長若クハ市長委員ヲ命シ日時及場所ヲ定メテ施行セシム其費用ハ会議所ノ負担トス
第十四条 会議所ノ会議ハ第四条第二項第四項及第七項ノ事件ニ係ル会議ハ公開スルコトヲ得ス
前項ノ外農商務大臣ノ命令又ハ会議所ノ議決ヲ以テ公開ヲ禁スルコトヲ得
第十五条 会議所ハ第四条第七項ノ場合ニ於テ其関係人ヨリ相当ノ手数料ヲ徴収スルコトヲ得
第十六条 会議所ハ法人トシテ財産ヲ所有スルモノトス
第十七条 会議所ハ其議決ニ依リ会員定数ノ五分一ヨリ多カラサル特別会員ヲ置キ会議ニ参列セシムルコトヲ得但特別会員ハ其議決ニ加フルコトヲ得ス
特別会員ノ資格ハ学術技芸若クハ商業上ノ経験アル者タルヘシ
第十八条 会議所経費ノ予算ハ地方長官ヲ経由シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
予算ノ決算ハ地方長官ヲ経由シ農商務大臣ニ報告スヘシ
第十九条 会議所ノ経費ハ会員ノ選挙権ヲ有スル者ヨリ徴収ス其徴収方法ハ会議所ノ議決ヲ以テ地方長官ヲ経由シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
経費ヲ納期ニ納メサル者アルトキハ其地ノ地方税収入役ニ嘱託シテ之ヲ徴収スルコトヲ得
収入役ノ督促ヲ受クルモ経費ヲ納メサル者ハ会員ノ選挙権及被選挙権ヲ四箇年以上八箇年以下停止シ尚ホ二百円以下ノ過料ニ処ス
第二十条 会議所ノ定款ハ会議所ノ議決ヲ以テ左ノ事項ヲ規定シ地方長官ヲ経由シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
一 会員選挙規則
二 議事規則
三 庶務規程
四 役員職務権限
五 仲裁規則
六 会計規則
七 公設ノ営造物若クハ其営業所ノ管理規則
第二十一条 農商務大臣ハ会議所其権限ヲ犯シ又ハ商業上有害ノ行為アリト認メタルトキハ会議ヲ停止シ尚ホ其情況ニ依リ役員若クハ会員ノ幾部又ハ全部ノ改選ヲ命スルコトアルヘシ
第二十二条 農商務大臣ハ此条例施行ノ責ニ任シ之カ為メ必要ナル命令ヲ発スヘシ