朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ領事官職務規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年四月十八日
外務大臣 子爵 靑木周藏
勅令第百五十三號
領事官職務規則
第一條 領事官ハ外務大臣ノ指揮監督及其ノ駐在國ニ在ル帝國公使ノ監督ヲ受クヘシ
外務大臣カ特定ノ事項ニ關シテ領事官ヲ指揮スルコトヲ其ノ駐在國ニ在ル帝國公使ニ命シタルトキハ領事官ハ該事項ニ關シテ帝國公使ノ指揮ヲ受クヘシ
第二條 領事官ハ駐在國ニ於テ日本臣民ヲ保護シ帝國ノ通商航海ニ關スル利益ヲ維持增進スヘシ
第三條 領事官ハ駐在國カ條約又ハ國際法ニ依リ帝國ニ對シテ負フ所ノ義務ノ遵守ヲ視察シ日本臣民ノ利益又ハ帝國ノ通商航海ニ關スル利益ヲ害セラレタル場合ニ於テハ駐在國ノ官廳ニ對シテ必要ナル措置ヲ爲スヘシ
第四條 領事官ハ其ノ駐在國ニ在ル帝國軍艦ニ對シテ必要ナル幫助ヲ爲スヘシ
第五條 領事官ハ其ノ管轄區域內ニ在ル日本臣民ノ救助又ハ取締ノ爲必要ナル措置ヲ爲スヘシ
領事官ハ救助又ハ取締ノ爲必要ナルトキハ日本臣民ノ送還ヲ日本船舶ノ船長ニ命スルコトヲ得
第六條 領事官ハ其ノ管轄區域內ニ於テ日本臣民ノ財產又ハ遺產ノ保護管理ニ必要ナル措置ヲ爲スヘシ
第七條 領事官ハ其ノ管轄區域內ニ在ル日本臣民ノ名簿ヲ備ヘ居住及身分ニ關スル屆出ヲ受理シ屆出又ハ其ノ他ノ事實ニ依リテ確知シタル日本臣民ノ居住及身分ニ關スル事項ヲ該名簿ニ登錄スヘシ
第八條 領事官ハ其ノ駐在國ニ在ル日本船舶及其ノ船員ニ對シテ必要ナル保護及取締ヲ爲スヘシ
第九條 領事官ハ帝國軍艦其ノ他日本船舶ノ乘組員カ脫船シタルトキハ艦長又ハ船長ノ請求ニ因リ脫船者ヲ復役セシムル爲必要ナル措置ヲ爲スヘシ
第十條 領事官ハ其ノ駐在國ノ官廳又ハ公署ノ發シタル文書ノ眞正ヲ證明スルコトヲ得
第十一條 領事官ハ日本臣民又ハ外國人ノ申請ニ因リ其ノ職務上取扱フヘキ事項及職務ヲ行フ際知リ得タル事實ノ認證ヲ爲スコトヲ得
第十二條 領事官ハ日本臣民ニ旅券ヲ付與シ又ハ其ノ旅券ヲ査證スルコトヲ得
領事官ハ日本ニ旅行セムトスル外國人ノ申請ニ因リ其ノ旅券ヲ査證スルコトヲ得
第十三條 領事官ハ其ノ管轄區域內ニ於テ日本臣民又ハ外國人ノ申請ニ因リ日本臣民又ハ日本ニ在ル土地ニ關スル法律行爲ニ付公證ヲ爲スコトヲ得
第十四條 領事官ハ日本臣民相互ノ間又ハ日本臣民及外國人ノ間ニ生シタル民事上ノ爭論ニ關シ和解ヲ爲サシメ又ハ仲裁ヲ爲スコトヲ得
第十五條 條約又ハ慣例ニ依リ領事裁判權ヲ行フコトヲ得ル領事官ハ其ノ所管事務ニ付命令ヲ發スルコトヲ得
領事官ノ發スル命令ニハ十圓以內ノ罰金又ハ拘留ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
領事官ノ發スル命令ノ公布ニ關スル規程ハ領事官之ヲ定ム
第十六條 外務大臣ハ領事官ノ發シタル命令ニシテ條約若ハ法令ニ違反シ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ其ノ取消ヲ命スルコトヲ得
領事官ノ駐在國ニ在ル帝國公使ハ領事官ノ發シタル命令ニシテ條約若ハ法令ニ違反シ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ其ノ施行停止ヲ命スルコトヲ得但シ此ノ場合ニ於テハ直ニ其ノ旨ヲ外務大臣ニ報吿スルコトヲ要ス
前項ノ施行停止ハ三箇月ヲ經過スルトキハ其ノ效ヲ失フ
第十七條 領事官ハ其ノ職務上必要アルトキハ帝國軍艦ニ幫助ヲ求ムルコトヲ得
第十八條 領事官ハ其ノ職務上ノ事項ニ付外務大臣ニ報吿スヘシ
第十九條 領事官ハ豫メ外務大臣ノ認可ヲ得タル場合ノ外帝國ノ他ノ官廳又ハ公署ト直接通信ヲ爲スコトヲ得ス
第二十條 領事官ノ徵收スル手數料及出張費用ニ關スル規程ハ外務大臣之ヲ定ム
第二十一條 名譽領事及貿易事務官ハ外務大臣ノ訓令ニ基キ本令其ノ他領事官ノ職務ニ關スル法令及條約ノ規定ニ準依シテ其ノ職務ヲ行フ
第二十二條 本令ノ施行期日ハ外務大臣之ヲ定ム
第二十三條 日本帝國領事規則及明治二十三年勅令第二百五十八號ハ之ヲ廢止ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ領事官職務規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年四月十八日
外務大臣 子爵 青木周蔵
勅令第百五十三号
領事官職務規則
第一条 領事官ハ外務大臣ノ指揮監督及其ノ駐在国ニ在ル帝国公使ノ監督ヲ受クヘシ
外務大臣カ特定ノ事項ニ関シテ領事官ヲ指揮スルコトヲ其ノ駐在国ニ在ル帝国公使ニ命シタルトキハ領事官ハ該事項ニ関シテ帝国公使ノ指揮ヲ受クヘシ
第二条 領事官ハ駐在国ニ於テ日本臣民ヲ保護シ帝国ノ通商航海ニ関スル利益ヲ維持増進スヘシ
第三条 領事官ハ駐在国カ条約又ハ国際法ニ依リ帝国ニ対シテ負フ所ノ義務ノ遵守ヲ視察シ日本臣民ノ利益又ハ帝国ノ通商航海ニ関スル利益ヲ害セラレタル場合ニ於テハ駐在国ノ官庁ニ対シテ必要ナル措置ヲ為スヘシ
第四条 領事官ハ其ノ駐在国ニ在ル帝国軍艦ニ対シテ必要ナル幫助ヲ為スヘシ
第五条 領事官ハ其ノ管轄区域内ニ在ル日本臣民ノ救助又ハ取締ノ為必要ナル措置ヲ為スヘシ
領事官ハ救助又ハ取締ノ為必要ナルトキハ日本臣民ノ送還ヲ日本船舶ノ船長ニ命スルコトヲ得
第六条 領事官ハ其ノ管轄区域内ニ於テ日本臣民ノ財産又ハ遺産ノ保護管理ニ必要ナル措置ヲ為スヘシ
第七条 領事官ハ其ノ管轄区域内ニ在ル日本臣民ノ名簿ヲ備ヘ居住及身分ニ関スル届出ヲ受理シ届出又ハ其ノ他ノ事実ニ依リテ確知シタル日本臣民ノ居住及身分ニ関スル事項ヲ該名簿ニ登録スヘシ
第八条 領事官ハ其ノ駐在国ニ在ル日本船舶及其ノ船員ニ対シテ必要ナル保護及取締ヲ為スヘシ
第九条 領事官ハ帝国軍艦其ノ他日本船舶ノ乗組員カ脱船シタルトキハ艦長又ハ船長ノ請求ニ因リ脱船者ヲ復役セシムル為必要ナル措置ヲ為スヘシ
第十条 領事官ハ其ノ駐在国ノ官庁又ハ公署ノ発シタル文書ノ真正ヲ証明スルコトヲ得
第十一条 領事官ハ日本臣民又ハ外国人ノ申請ニ因リ其ノ職務上取扱フヘキ事項及職務ヲ行フ際知リ得タル事実ノ認証ヲ為スコトヲ得
第十二条 領事官ハ日本臣民ニ旅券ヲ付与シ又ハ其ノ旅券ヲ査証スルコトヲ得
領事官ハ日本ニ旅行セムトスル外国人ノ申請ニ因リ其ノ旅券ヲ査証スルコトヲ得
第十三条 領事官ハ其ノ管轄区域内ニ於テ日本臣民又ハ外国人ノ申請ニ因リ日本臣民又ハ日本ニ在ル土地ニ関スル法律行為ニ付公証ヲ為スコトヲ得
第十四条 領事官ハ日本臣民相互ノ間又ハ日本臣民及外国人ノ間ニ生シタル民事上ノ争論ニ関シ和解ヲ為サシメ又ハ仲裁ヲ為スコトヲ得
第十五条 条約又ハ慣例ニ依リ領事裁判権ヲ行フコトヲ得ル領事官ハ其ノ所管事務ニ付命令ヲ発スルコトヲ得
領事官ノ発スル命令ニハ十円以内ノ罰金又ハ拘留ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
領事官ノ発スル命令ノ公布ニ関スル規程ハ領事官之ヲ定ム
第十六条 外務大臣ハ領事官ノ発シタル命令ニシテ条約若ハ法令ニ違反シ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ其ノ取消ヲ命スルコトヲ得
領事官ノ駐在国ニ在ル帝国公使ハ領事官ノ発シタル命令ニシテ条約若ハ法令ニ違反シ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ其ノ施行停止ヲ命スルコトヲ得但シ此ノ場合ニ於テハ直ニ其ノ旨ヲ外務大臣ニ報告スルコトヲ要ス
前項ノ施行停止ハ三箇月ヲ経過スルトキハ其ノ効ヲ失フ
第十七条 領事官ハ其ノ職務上必要アルトキハ帝国軍艦ニ幫助ヲ求ムルコトヲ得
第十八条 領事官ハ其ノ職務上ノ事項ニ付外務大臣ニ報告スヘシ
第十九条 領事官ハ予メ外務大臣ノ認可ヲ得タル場合ノ外帝国ノ他ノ官庁又ハ公署ト直接通信ヲ為スコトヲ得ス
第二十条 領事官ノ徴収スル手数料及出張費用ニ関スル規程ハ外務大臣之ヲ定ム
第二十一条 名誉領事及貿易事務官ハ外務大臣ノ訓令ニ基キ本令其ノ他領事官ノ職務ニ関スル法令及条約ノ規定ニ準依シテ其ノ職務ヲ行フ
第二十二条 本令ノ施行期日ハ外務大臣之ヲ定ム
第二十三条 日本帝国領事規則及明治二十三年勅令第二百五十八号ハ之ヲ廃止ス