朕日本帝國領事規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム此規則ハ明治二十三年七月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年五月十九日
外務大臣 子爵 靑木周藏
勅令第八十號
日本帝國領事規則
第一條 領事ハ日本帝國ノ利益殊ニ貿易交通及航海ノ利益ヲ保護奬勵シ日本ト駐在國トノ間ニ締結セル條約ノ施行ヲ視察シ日本臣民竝ニ日本ト友好アル外國ノ臣民ヨリ倚賴アルトキハ之ニ相當ノ勸吿若クハ保護ヲ與フヘシ
領事ハ諸般ノ事務ヲ執行スルニ當テハ日本ノ法律及命令ニ準據スヘシ但特別ノ條約又ハ慣例アル國ニ駐在スル者ノ外駐在國ノ法律及慣例ニ違フコトヲ得ス
第二條 領事ハ駐在國ニ於テ日本臣民ノ爲メ名簿ヲ備置キ日本臣民ヨリ居住、婚姻、出生、死亡ノ屆出ヲ受ケタルトキハ之ヲ其名簿ニ登錄スヘシ其請求アルトキハ右事項ニ關シ證明書ヲ付與スヘシ
第三條 領事ハ駐在國ニ於テ日本臣民死亡ノ際其遺留財產ヲ相續スヘキ者不在ナルカ又ハ其他ノ事故アリテ遺留財產ニ危險アルトキハ之ヲ保護スルノ手續ヲ爲スヘシ
第四條 領事ハ駐在國ニ於テ救助ヲ要スル日本臣民アルトキハ之ニ一時ノ救助ヲ爲シ若クハ之ヲ本邦ニ送還スヘシ
第五條 領事ハ必要アルトキハ日本ノ海軍艦船及其乘組員ヲ幇助スヘシ
第六條 領事ハ駐在國ニ於テ日本海軍艦船乘組員脫走シタルトキハ艦船長ノ要求ニ依リ其逮捕ヲ駐在國ノ官廳ニ照會スヘシ
第七條 領事ハ災厄ニ遭遇セル日本船舶ニ對シ必要ノ救助ヲ爲シ及駐在國ヨリ與フル救助ヲ監視スヘシ
領事ハ船難報吿及船難證書ヲ證明スヘシ
第八條 領事ハ日本船舶ノ國旗ヲ監視スヘシ
領事ハ國旗揭揚ノ認可書ヲ付與スヘシ
第九條 領事ハ駐在國ニ於テ日本船舶ノ海員雇入雇止定約ヲ公認スヘシ
第十條 領事ハ日本船舶ノ賣却及抵當ヲ公認スヘシ
第十一條 領事ハ駐在國ニ於テ日本船舶ノ船長ヲシテ出入港屆出ヲ爲サシムルコトヲ得
入港地ニ於テ船舶諸證書ヲ領事ノ保管ニ附スヘキ成規又ハ慣例アル時ハ領事之ヲ保管スヘシ
第十二條 領事ハ日本臣民ニ旅券ヲ付與シ及其旅券ヲ査證スルコトヲ得
領事ハ日本ニ旅行セントスル外國人ノ倚賴ニ依リ其旅券ノ査證ヲ爲スコトヲ得
第十三條 領事ハ日本船舶及日本ニ航行スル外國船舶ニ對シ其船長ノ倚賴ニ依リ船舶健康證書ヲ付與スルコトヲ得
第十四條 領事ハ駐在國ノ官廳ヨリ發セル證書ノ署名捺印ヲ證明スルコトヲ得
第十五條 領事ハ駐在國ニ於テ日本船舶ノ海員脫走シタルトキハ船長ノ申出ニ依リ其復役ヲ强制スル爲メ駐在國ノ官廳ニ照會スルコトヲ得
第十六條 日本船舶ノ船長疾病、死亡其他ノ事故ニ由リ船舶ノ指揮運轉ニ差支ヲ生シタルトキハ領事ハ其船舶關係人ノ申出ニ依リ假ニ船長ヲ選定スルコトヲ得
第十七條 條約若クハ慣例ニ從ヒ領事裁判權ヲ行フヘキ國ニ駐在スル領事ハ裁判權ヲ行フヘシ
第十八條 領事ハ日本臣民相互ノ間若クハ日本臣民ト外國人トノ間ニ生シタル民事上ノ爭論ニ關シ勸解ノ倚賴ヲ受ケタルトキハ之ヲ勸解スルコトヲ得
第十九條 領事ハ駐在國ノ法律規則及慣例ニ矛盾セサル限リハ日本臣民及日本船舶ニ對シ取締ヲ爲スコトヲ得
第二十條 領事ハ職務上必要アルトキハ日本軍艦ニ幇助ヲ要求スルコトヲ得
第二十一條 領事ハ此規則ニ揭クル領事手數料及出張入費表目ニ據リ手數料及出張入費ヲ徵收スヘシ但別ニ法律規則ノ明文アル事項ニ付テハ其規定ニ從フヘシ
第二十二條 表目第一第二ノ手數料ハ其關係者無資力ナル場合ニ於テハ之ヲ免除スルコトヲ得
第三ノ手數料ハ遺留財產ノ價額五拾圓未滿ナルトキハ之ヲ免除ス
第二十三條 領事ノ取扱ヲ願出タル後中途ニシテ之ヲ願下ルトキハ其手數料ノ半額ヲ徵收スヘシ
第二十四條 外國語ヲ以テ證明書ヲ付與シタルトキハ規定ノ手數料ニ十分ノ五ヲ增課スヘシ
飜譯ヲ要スルモノアルトキハ更ニ其實費ヲ拂ハシムヘシ
第二十五條 各地ノ法律規則又ハ慣例ニ依リ領事ノ證明又ハ取扱ヲ要スヘキ事項ニシテ表目中明文ナキモノニ付テハ其地ノ慣例ニ從ヒ五圓以內ノ手數料ヲ徵收スヘシ
第二十六條 日本臣民ノ願出ニ依リ領事館所在地外ニ出張シテ事務ノ取扱ヲ要スルトキハ規定ノ手數料ノ外其出張入費ヲ出願人ヨリ拂ハシムヘシ
第二十七條 領事ノ裁判權執行ニ付テハ民事訴訟用印紙規則ヲ適用スヘシ
第二十八條 領事ハ其職務上ノ事項ニ付外務大臣ニ報吿スヘシ
第二十九條 領事ト本邦他官廳トノ往復文書ハ開封ニテ外務省ヲ經由スヘキモノトス但緊急ノ場合ニ於テ直接ノ通信ヲ爲シタルトキハ次便ヲ以テ其寫ヲ外務大臣ニ送達スヘシ
第三十條 此規則ニ於テ領事ト稱スルハ總領事領事又ハ其代理及ヒ委任狀ヲ有スル副領事又ハ其代理ヲ云フ
領事手數料及出張入費表目
一 居住、婚姻、出生、死亡ノ屆出登錄 貳拾錢
二 同上證明書 五拾錢
三 遺留財產取調書及封緘、保管、公賣
價額五百圓以下 百分一
但最少額貳圓
價額五百圓以上 貳百分一
但最多額貳拾圓
四 旅券 貳圓
五 同上査證 壹圓
六 船難報吿 壹圓
七 船難證書 五圓
八 同上謄寫 壹圓
九 船舶出入港屆出及船舶諸證書保管 五圓
十 船舶賣却及抵當ノ公認 四圓
十一 國旗揭揚ノ認可書 四圓
十二 脫走船員復役取扱 貳圓
十三 海員雇入雇止公認 被雇者給金一月分ノ百分一
十四 船舶健康證書 貳圓
十五 出張入費
最初一時間 壹圓
之ニ次ク每一時間及一時間未滿 五拾錢
六時間以上ハ一日ト看做シ每一日 五圓
朕日本帝国領事規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム此規則ハ明治二十三年七月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年五月十九日
外務大臣 子爵 青木周蔵
勅令第八十号
日本帝国領事規則
第一条 領事ハ日本帝国ノ利益殊ニ貿易交通及航海ノ利益ヲ保護奨励シ日本ト駐在国トノ間ニ締結セル条約ノ施行ヲ視察シ日本臣民並ニ日本ト友好アル外国ノ臣民ヨリ倚頼アルトキハ之ニ相当ノ勧告若クハ保護ヲ与フヘシ
領事ハ諸般ノ事務ヲ執行スルニ当テハ日本ノ法律及命令ニ準拠スヘシ但特別ノ条約又ハ慣例アル国ニ駐在スル者ノ外駐在国ノ法律及慣例ニ違フコトヲ得ス
第二条 領事ハ駐在国ニ於テ日本臣民ノ為メ名簿ヲ備置キ日本臣民ヨリ居住、婚姻、出生、死亡ノ届出ヲ受ケタルトキハ之ヲ其名簿ニ登録スヘシ其請求アルトキハ右事項ニ関シ証明書ヲ付与スヘシ
第三条 領事ハ駐在国ニ於テ日本臣民死亡ノ際其遺留財産ヲ相続スヘキ者不在ナルカ又ハ其他ノ事故アリテ遺留財産ニ危険アルトキハ之ヲ保護スルノ手続ヲ為スヘシ
第四条 領事ハ駐在国ニ於テ救助ヲ要スル日本臣民アルトキハ之ニ一時ノ救助ヲ為シ若クハ之ヲ本邦ニ送還スヘシ
第五条 領事ハ必要アルトキハ日本ノ海軍艦船及其乗組員ヲ幇助スヘシ
第六条 領事ハ駐在国ニ於テ日本海軍艦船乗組員脱走シタルトキハ艦船長ノ要求ニ依リ其逮捕ヲ駐在国ノ官庁ニ照会スヘシ
第七条 領事ハ災厄ニ遭遇セル日本船舶ニ対シ必要ノ救助ヲ為シ及駐在国ヨリ与フル救助ヲ監視スヘシ
領事ハ船難報告及船難証書ヲ証明スヘシ
第八条 領事ハ日本船舶ノ国旗ヲ監視スヘシ
領事ハ国旗掲揚ノ認可書ヲ付与スヘシ
第九条 領事ハ駐在国ニ於テ日本船舶ノ海員雇入雇止定約ヲ公認スヘシ
第十条 領事ハ日本船舶ノ売却及抵当ヲ公認スヘシ
第十一条 領事ハ駐在国ニ於テ日本船舶ノ船長ヲシテ出入港届出ヲ為サシムルコトヲ得
入港地ニ於テ船舶諸証書ヲ領事ノ保管ニ附スヘキ成規又ハ慣例アル時ハ領事之ヲ保管スヘシ
第十二条 領事ハ日本臣民ニ旅券ヲ付与シ及其旅券ヲ査証スルコトヲ得
領事ハ日本ニ旅行セントスル外国人ノ倚頼ニ依リ其旅券ノ査証ヲ為スコトヲ得
第十三条 領事ハ日本船舶及日本ニ航行スル外国船舶ニ対シ其船長ノ倚頼ニ依リ船舶健康証書ヲ付与スルコトヲ得
第十四条 領事ハ駐在国ノ官庁ヨリ発セル証書ノ署名捺印ヲ証明スルコトヲ得
第十五条 領事ハ駐在国ニ於テ日本船舶ノ海員脱走シタルトキハ船長ノ申出ニ依リ其復役ヲ強制スル為メ駐在国ノ官庁ニ照会スルコトヲ得
第十六条 日本船舶ノ船長疾病、死亡其他ノ事故ニ由リ船舶ノ指揮運転ニ差支ヲ生シタルトキハ領事ハ其船舶関係人ノ申出ニ依リ仮ニ船長ヲ選定スルコトヲ得
第十七条 条約若クハ慣例ニ従ヒ領事裁判権ヲ行フヘキ国ニ駐在スル領事ハ裁判権ヲ行フヘシ
第十八条 領事ハ日本臣民相互ノ間若クハ日本臣民ト外国人トノ間ニ生シタル民事上ノ争論ニ関シ勧解ノ倚頼ヲ受ケタルトキハ之ヲ勧解スルコトヲ得
第十九条 領事ハ駐在国ノ法律規則及慣例ニ矛盾セサル限リハ日本臣民及日本船舶ニ対シ取締ヲ為スコトヲ得
第二十条 領事ハ職務上必要アルトキハ日本軍艦ニ幇助ヲ要求スルコトヲ得
第二十一条 領事ハ此規則ニ掲クル領事手数料及出張入費表目ニ拠リ手数料及出張入費ヲ徴収スヘシ但別ニ法律規則ノ明文アル事項ニ付テハ其規定ニ従フヘシ
第二十二条 表目第一第二ノ手数料ハ其関係者無資力ナル場合ニ於テハ之ヲ免除スルコトヲ得
第三ノ手数料ハ遺留財産ノ価額五拾円未満ナルトキハ之ヲ免除ス
第二十三条 領事ノ取扱ヲ願出タル後中途ニシテ之ヲ願下ルトキハ其手数料ノ半額ヲ徴収スヘシ
第二十四条 外国語ヲ以テ証明書ヲ付与シタルトキハ規定ノ手数料ニ十分ノ五ヲ増課スヘシ
翻訳ヲ要スルモノアルトキハ更ニ其実費ヲ払ハシムヘシ
第二十五条 各地ノ法律規則又ハ慣例ニ依リ領事ノ証明又ハ取扱ヲ要スヘキ事項ニシテ表目中明文ナキモノニ付テハ其地ノ慣例ニ従ヒ五円以内ノ手数料ヲ徴収スヘシ
第二十六条 日本臣民ノ願出ニ依リ領事館所在地外ニ出張シテ事務ノ取扱ヲ要スルトキハ規定ノ手数料ノ外其出張入費ヲ出願人ヨリ払ハシムヘシ
第二十七条 領事ノ裁判権執行ニ付テハ民事訴訟用印紙規則ヲ適用スヘシ
第二十八条 領事ハ其職務上ノ事項ニ付外務大臣ニ報告スヘシ
第二十九条 領事ト本邦他官庁トノ往復文書ハ開封ニテ外務省ヲ経由スヘキモノトス但緊急ノ場合ニ於テ直接ノ通信ヲ為シタルトキハ次便ヲ以テ其写ヲ外務大臣ニ送達スヘシ
第三十条 此規則ニ於テ領事ト称スルハ総領事領事又ハ其代理及ヒ委任状ヲ有スル副領事又ハ其代理ヲ云フ
領事手数料及出張入費表目
一 居住、婚姻、出生、死亡ノ届出登録 弐拾銭
二 同上証明書 五拾銭
三 遺留財産取調書及封緘、保管、公売
価額五百円以下 百分一
但最少額弐円
価額五百円以上 弐百分一
但最多額弐拾円
四 旅券 弐円
五 同上査証 壱円
六 船難報告 壱円
七 船難証書 五円
八 同上謄写 壱円
九 船舶出入港届出及船舶諸証書保管 五円
十 船舶売却及抵当ノ公認 四円
十一 国旗掲揚ノ認可書 四円
十二 脱走船員復役取扱 弐円
十三 海員雇入雇止公認 被雇者給金一月分ノ百分一
十四 船舶健康証書 弐円
十五 出張入費
最初一時間 壱円
之ニ次ク毎一時間及一時間未満 五拾銭
六時間以上ハ一日ト看做シ毎一日 五円