所得税法施行規則
法令番号: 勅令第七十八號
公布年月日: 明治32年3月30日
法令の形式: 勅令
朕所得稅法施行規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十九日
大藏大臣 伯爵 松方正義
勅令第七十八號
所得稅法施行規則
第一條 所得稅法第四條第一項第三號ニ依リ總收入金額ヨリ控除スヘキモノハ種苗蠶種肥料ノ購買費、家畜其ノ他ノ飼養料、仕入品ノ原價、原料品ノ代價、場所物件ノ修繕費、其ノ借入料、場所物件又ハ業務ニ係ル公課、雇人ノ給料其ノ他其ノ收入ヲ得ルニ必要ナル經費ニ限ル但シ家事上ノ費用及之ト關聯スルモノハ之ヲ控除セス
第二條 第三種ノ所得金額ハ申吿、調査又ハ決定當時ノ現況ニ依リ所得稅法第五條ノ所得ヲ除キ之ヲ算出スヘシ
第三條 納稅義務アル法人ハ每事業年度通常總會後七日以內ニ損益計算書ヲ所轄稅務署ニ提出スヘシ
第四條 第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者ハ所得ノ種類及金額ヲ所轄稅務署ニ申吿スヘシ
所得稅法第三條第二項ニ依リ同居者ノ所得ヲ合算スヘキ場合ニ於テハ其ノ所得ヲ區分シ同時ニ之ヲ申吿スヘシ
第五條 所得調査委員ノ定數ハ五人トス但シ特別ノ事由アリト認ムルトキハ大藏大臣ハ之ヲ增減スルコトヲ得
第六條 稅務署長ハ調査委員選擧人ノ選擧前選擧資格ヲ有スル者ノ住所氏名ヲ其ノ市區町村長又ハ戶長ニ通知スヘシ
第七條 調査委員選擧人ノ選擧ヲ執行スルトキハ市區町村長又ハ戶長ハ其ノ選擧資格ヲ有スル者二人ヲ選任シ開票ニ立會ハシムヘシ
第八條 調査委員ノ選擧ヲ執行スルトキハ稅務署長ハ調査委員選擧人二人ヲ選任シ開票ニ立會ハシムヘシ
第九條 調査委員選擧人及調査委員ノ選擧ニ於テ投票ニ記載シタル人員其ノ選擧スヘキ定數ニ超エタルトキハ末尾ニ記載シタル人名ヲ順次棄却スヘシ
第十條 調査委員又ハ補闕員ヲ辭スルコトヲ得ル者ハ稅務管理局長ニ於テ已ムヲ得スト認ムヘキ事故アル者ニ限ル
第十一條 調査委員會ノ會長出席セサルトキハ出席シタル調査委員中ノ年長者之ヲ代理スヘシ
第十二條 調査委員會ノ決議ハ會長ヨリ之ヲ稅務署長ニ通知スヘシ
第十三條 稅務管理局長ハ所得稅法第九條第三十條第三十一條ニ依リ所得金額ヲ決定シ之ヲ納稅義務者ニ通知スヘシ
第十四條 所得稅法第三十六條ニ依リ審査ヲ求メムトスル者ハ事由ヲ具シ證憑書類ヲ添ヘ稅務管理局長ニ申出ツヘシ
第十五條 各稅務管理局所轄內ニ審査委員會ヲ置ク
第十六條 收稅官吏ヲ以テスヘキ審査委員ハ大藏大臣之ヲ命シ調査委員ヲ以テスヘキ審査委員ハ稅務管理局所轄內ノ調査委員每年之ヲ選擧ス
第十七條 審査委員ノ選擧事務ハ稅務管理局長之ヲ執行ス
第十八條 審査委員ノ選擧ヲ執行セムトスルトキハ稅務管理局長選擧期日ヲ定メ所轄內調査委員ノ氏名ト共ニ之ヲ各調査委員會ニ通知スヘシ
第十九條 選擧ハ記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ稅務管理局ニ差出スヘシ
第二十條 稅務管理局長ハ所轄內調査委員二人ヲ選任シ開票ニ立會ハシムヘシ
第二十一條 選擧ハ投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス投票ノ數同シキトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條 審査委員ノ選擧終了シタルトキハ稅務管理局長ハ當選人ノ氏名ヲ公示スヘシ
第二十三條 審査委員會ハ稅務管理局長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
第二十四條 審査委員會ハ每年開會ノ初ニ於テ審査委員中ヨリ會長ヲ選擧スヘシ
第二十五條 審査委員會ハ定員ノ過半數ニ當ル委員出席スルニアラサレハ決議スルコトヲ得ス
議事ハ出席員ノ多數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ會長ノ決スル所ニ依ル
第二十六條 審査委員會ノ會長出席セサルトキハ出席シタル審査委員中ノ年長者之ヲ代理スヘシ
第二十七條 審査委員ハ自己ノ所得金ニ關スル議事ニ與ルコトヲ得ス
第二十八條 稅務管理局長又ハ其ノ代理官ハ審査委員會ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十九條 審査委員會ノ決議ハ會長ヨリ之ヲ稅務管理局長ニ通知スヘシ
第三十條 稅務管理局長ハ所得稅法第三十七條ニ依リ所得金額ヲ決定シ之ヲ納稅義務者ニ通知スヘシ
第三十一條 納稅義務アル法人損益計算書ヲ提出セサルトキハ政府其ノ損益ヲ調査シ其ノ所得金額ヲ定ム
第三十二條 所得稅ハ所得稅法第九條第三十條第三十一條ニ依ル決定金額ニ依リ之ヲ徵收ス
前項ノ決定金額ハ所得稅法第三十七條第三十九條第四十一條ノ結果ニ依ルノ外之ヲ變更セス
第三十三條 所得稅法第三條第二項ノ場合ニ於テ同居者所得金額決定後別居スルモ所得金額決定當時ノ稅率ニ依リ其ノ年ノ所得稅ヲ納ムヘシ
第三十四條 公ニ募集シタル公債社債ノ利子ヲ支拂フ者ハ支拂ノ際所得稅金額ヲ控除スヘシ
第三十五條 營利ヲ目的トセサル法人ニシテ無記名ノ公債證券又ハ社債券ヲ取得シタルトキハ其ノ發行者又ハ讓渡人ノ證明ヲ得テ之ヲ利子支拂ノ取扱所ニ通知シ其ノ所有ヲ證明スヘシ但シ從來無記名ノ公債證券又ハ社債券ヲ所有スル者ハ本令施行ノ際利子支拂ノ取扱所ニ通知シ便宜ノ方法ニ依リ其ノ所有ヲ證明スヘシ
第三十六條 府縣郡市區町村其ノ他公共ノ團體若ハ組合又ハ會社ニ於テ公債社債ノ利子ニ付所得稅ヲ徵收シタルトキハ直チニ拂込書及計算書ヲ添ヘ之ヲ其ノ所在地ノ金庫ニ拂込ムヘシ
國債利子支拂ノ取扱銀行ニ於テ國債ノ利子ニ付所得稅ヲ徵收シタルトキハ大藏大臣ノ命令ニ依リ之ヲ本店所在地ノ金庫ニ拂込ムヘシ
第三十七條 所得稅法第四十條ノ申出アリタルトキハ稅務管理局長ハ其ノ年所得ノ實況ヲ調査シ所得金額四分ノ一以上ノ減損アルトキハ所得金額ヲ更訂シテ之ヲ納稅義務者ニ通知スヘシ
第三十八條 前期納稅後所得金額ノ變更ニ因リ所得稅金額ヲ減シタルトキ旣納ノ稅金全額以上ナルトキハ其ノ超過額ヲ還付シ全額以下ナルトキハ後納期ニ於テ其ノ不足額ヲ徵收スヘシ
第三十九條 第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者納稅地ノ稅務署管轄以外ニ於テ所得ヲ取得スルトキハ納稅地ヲ其ノ地ノ稅務署ニ申吿スヘシ
第四十條 納稅義務者住所又ハ居所以外ノ地ニ於テ所得稅ヲ納メムトスルトキ又ハ所得稅法施行地ニ住所又ハ居所ヲ有セサルトキハ納稅地ヲ定メ其ノ地ノ稅務署ニ申吿スヘシ
第四十一條 納稅義務者納稅地ヲ變更スルトキハ其ノ旨新納稅地ノ所轄稅務署ニ申吿スヘシ
第四十二條 納稅義務者帝國外ニ住所若ハ居所ヲ移ストキハ其ノ旨稅務署ニ申吿スヘシ
第四十三條 納稅義務者納稅管理人ヲ定メタルトキハ其ノ氏名及住所又ハ居所ヲ納稅地ノ稅務署ニ申吿スヘシ
朕所得税法施行規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十九日
大蔵大臣 伯爵 松方正義
勅令第七十八号
所得税法施行規則
第一条 所得税法第四条第一項第三号ニ依リ総収入金額ヨリ控除スヘキモノハ種苗蚕種肥料ノ購買費、家畜其ノ他ノ飼養料、仕入品ノ原価、原料品ノ代価、場所物件ノ修繕費、其ノ借入料、場所物件又ハ業務ニ係ル公課、雇人ノ給料其ノ他其ノ収入ヲ得ルニ必要ナル経費ニ限ル但シ家事上ノ費用及之ト関連スルモノハ之ヲ控除セス
第二条 第三種ノ所得金額ハ申告、調査又ハ決定当時ノ現況ニ依リ所得税法第五条ノ所得ヲ除キ之ヲ算出スヘシ
第三条 納税義務アル法人ハ毎事業年度通常総会後七日以内ニ損益計算書ヲ所轄税務署ニ提出スヘシ
第四条 第三種ノ所得ニ付納税義務アル者ハ所得ノ種類及金額ヲ所轄税務署ニ申告スヘシ
所得税法第三条第二項ニ依リ同居者ノ所得ヲ合算スヘキ場合ニ於テハ其ノ所得ヲ区分シ同時ニ之ヲ申告スヘシ
第五条 所得調査委員ノ定数ハ五人トス但シ特別ノ事由アリト認ムルトキハ大蔵大臣ハ之ヲ増減スルコトヲ得
第六条 税務署長ハ調査委員選挙人ノ選挙前選挙資格ヲ有スル者ノ住所氏名ヲ其ノ市区町村長又ハ戸長ニ通知スヘシ
第七条 調査委員選挙人ノ選挙ヲ執行スルトキハ市区町村長又ハ戸長ハ其ノ選挙資格ヲ有スル者二人ヲ選任シ開票ニ立会ハシムヘシ
第八条 調査委員ノ選挙ヲ執行スルトキハ税務署長ハ調査委員選挙人二人ヲ選任シ開票ニ立会ハシムヘシ
第九条 調査委員選挙人及調査委員ノ選挙ニ於テ投票ニ記載シタル人員其ノ選挙スヘキ定数ニ超エタルトキハ末尾ニ記載シタル人名ヲ順次棄却スヘシ
第十条 調査委員又ハ補闕員ヲ辞スルコトヲ得ル者ハ税務管理局長ニ於テ已ムヲ得スト認ムヘキ事故アル者ニ限ル
第十一条 調査委員会ノ会長出席セサルトキハ出席シタル調査委員中ノ年長者之ヲ代理スヘシ
第十二条 調査委員会ノ決議ハ会長ヨリ之ヲ税務署長ニ通知スヘシ
第十三条 税務管理局長ハ所得税法第九条第三十条第三十一条ニ依リ所得金額ヲ決定シ之ヲ納税義務者ニ通知スヘシ
第十四条 所得税法第三十六条ニ依リ審査ヲ求メムトスル者ハ事由ヲ具シ証憑書類ヲ添ヘ税務管理局長ニ申出ツヘシ
第十五条 各税務管理局所轄内ニ審査委員会ヲ置ク
第十六条 収税官吏ヲ以テスヘキ審査委員ハ大蔵大臣之ヲ命シ調査委員ヲ以テスヘキ審査委員ハ税務管理局所轄内ノ調査委員毎年之ヲ選挙ス
第十七条 審査委員ノ選挙事務ハ税務管理局長之ヲ執行ス
第十八条 審査委員ノ選挙ヲ執行セムトスルトキハ税務管理局長選挙期日ヲ定メ所轄内調査委員ノ氏名ト共ニ之ヲ各調査委員会ニ通知スヘシ
第十九条 選挙ハ記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ税務管理局ニ差出スヘシ
第二十条 税務管理局長ハ所轄内調査委員二人ヲ選任シ開票ニ立会ハシムヘシ
第二十一条 選挙ハ投票ノ多数ヲ得タル者ヲ以テ当選トス投票ノ数同シキトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二条 審査委員ノ選挙終了シタルトキハ税務管理局長ハ当選人ノ氏名ヲ公示スヘシ
第二十三条 審査委員会ハ税務管理局長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
第二十四条 審査委員会ハ毎年開会ノ初ニ於テ審査委員中ヨリ会長ヲ選挙スヘシ
第二十五条 審査委員会ハ定員ノ過半数ニ当ル委員出席スルニアラサレハ決議スルコトヲ得ス
議事ハ出席員ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ会長ノ決スル所ニ依ル
第二十六条 審査委員会ノ会長出席セサルトキハ出席シタル審査委員中ノ年長者之ヲ代理スヘシ
第二十七条 審査委員ハ自己ノ所得金ニ関スル議事ニ与ルコトヲ得ス
第二十八条 税務管理局長又ハ其ノ代理官ハ審査委員会ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十九条 審査委員会ノ決議ハ会長ヨリ之ヲ税務管理局長ニ通知スヘシ
第三十条 税務管理局長ハ所得税法第三十七条ニ依リ所得金額ヲ決定シ之ヲ納税義務者ニ通知スヘシ
第三十一条 納税義務アル法人損益計算書ヲ提出セサルトキハ政府其ノ損益ヲ調査シ其ノ所得金額ヲ定ム
第三十二条 所得税ハ所得税法第九条第三十条第三十一条ニ依ル決定金額ニ依リ之ヲ徴収ス
前項ノ決定金額ハ所得税法第三十七条第三十九条第四十一条ノ結果ニ依ルノ外之ヲ変更セス
第三十三条 所得税法第三条第二項ノ場合ニ於テ同居者所得金額決定後別居スルモ所得金額決定当時ノ税率ニ依リ其ノ年ノ所得税ヲ納ムヘシ
第三十四条 公ニ募集シタル公債社債ノ利子ヲ支払フ者ハ支払ノ際所得税金額ヲ控除スヘシ
第三十五条 営利ヲ目的トセサル法人ニシテ無記名ノ公債証券又ハ社債券ヲ取得シタルトキハ其ノ発行者又ハ譲渡人ノ証明ヲ得テ之ヲ利子支払ノ取扱所ニ通知シ其ノ所有ヲ証明スヘシ但シ従来無記名ノ公債証券又ハ社債券ヲ所有スル者ハ本令施行ノ際利子支払ノ取扱所ニ通知シ便宜ノ方法ニ依リ其ノ所有ヲ証明スヘシ
第三十六条 府県郡市区町村其ノ他公共ノ団体若ハ組合又ハ会社ニ於テ公債社債ノ利子ニ付所得税ヲ徴収シタルトキハ直チニ払込書及計算書ヲ添ヘ之ヲ其ノ所在地ノ金庫ニ払込ムヘシ
国債利子支払ノ取扱銀行ニ於テ国債ノ利子ニ付所得税ヲ徴収シタルトキハ大蔵大臣ノ命令ニ依リ之ヲ本店所在地ノ金庫ニ払込ムヘシ
第三十七条 所得税法第四十条ノ申出アリタルトキハ税務管理局長ハ其ノ年所得ノ実況ヲ調査シ所得金額四分ノ一以上ノ減損アルトキハ所得金額ヲ更訂シテ之ヲ納税義務者ニ通知スヘシ
第三十八条 前期納税後所得金額ノ変更ニ因リ所得税金額ヲ減シタルトキ既納ノ税金全額以上ナルトキハ其ノ超過額ヲ還付シ全額以下ナルトキハ後納期ニ於テ其ノ不足額ヲ徴収スヘシ
第三十九条 第三種ノ所得ニ付納税義務アル者納税地ノ税務署管轄以外ニ於テ所得ヲ取得スルトキハ納税地ヲ其ノ地ノ税務署ニ申告スヘシ
第四十条 納税義務者住所又ハ居所以外ノ地ニ於テ所得税ヲ納メムトスルトキ又ハ所得税法施行地ニ住所又ハ居所ヲ有セサルトキハ納税地ヲ定メ其ノ地ノ税務署ニ申告スヘシ
第四十一条 納税義務者納税地ヲ変更スルトキハ其ノ旨新納税地ノ所轄税務署ニ申告スヘシ
第四十二条 納税義務者帝国外ニ住所若ハ居所ヲ移ストキハ其ノ旨税務署ニ申告スヘシ
第四十三条 納税義務者納税管理人ヲ定メタルトキハ其ノ氏名及住所又ハ居所ヲ納税地ノ税務署ニ申告スヘシ