第一條 此ノ法律ニ於テ國有林野ト稱スルハ國ノ所有ニ屬スル森林原野ヲ謂フ
第二條 國有林野ニシテ國土保安又ハ國有林野ノ經營上國有トシテ保存ノ必要アルモノハ賣拂讓與又ハ交換スルコトヲ得ス但シ公用又ハ公益事業ノ爲必要アルトキ及第十五條ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三條 前條ノ國有林野ト雖他ノ官有地ニ編入スルノ必要アルトキハ之カ組換ヲ爲スコトヲ得
組換ヲ爲シタル土地ニシテ其ノ使用ヲ廢シタル場合ニ於テ林野ニ復スヘキ必要アルモノハ更ニ國有林野ニ編入ス
社寺上地ニシテ其ノ境內ニ必要ナル風致林野ハ區域ヲ畫シテ社寺現境內ニ編入スルコトヲ得
第四條 國有林野ノ境界査定ハ當該官廳ニ於テ豫メ期日ヲ定メ鄰接地所有者ニ通吿シテ其ノ立會ヲ求メ施行スヘシ
鄰接地所有者豫定期日ニ於テ立會ハサルコトアルモ當該官廳ハ境界査定ヲ施行スルコトヲ得
第五條 國有林野ノ境界査定ヲ終ヘタルトキハ當該官廳ハ直ニ鄰接地所有者ニ通吿スヘシ
第六條 國有林野ノ境界査定又ハ測量ノ爲目標ヲ設置シ若ハ支障木竹ヲ伐採スルノ必要アルトキハ其ノ土地若ハ木竹ノ所有者ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス但シ相當ノ補償ヲ求ムルコトヲ得
第七條 鄰接地所有者境界査定ニ不服アルトキハ第五條ノ通吿ヲ受ケタル日ヨリ六十日以內ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第八條 國有林野ハ左ノ場合ニ限リ隨意契約ヲ以テ賣拂フコトヲ得
四 命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ緣故アル林野ヲ其ノ緣故アル者ニ賣拂フトキ
五 民有地、道路、河川等ニ介在スル十町步以內ノ林野ヲ賣拂フトキ
六 道路、溜池、堤塘、溝渠等ノ敷地トシテ貸付シアル林野ヲ其ノ借地人ニ賣拂フトキ
七 此ノ法律施行以前ニ開墾、牧畜又ハ植樹ノ爲貸付シタル林野又ハ第九條ノ開墾地ヲ其ノ事業ヲ成功シタル者ニ賣拂フトキ
第九條 國有林野ハ開墾ノ成功ヲ條件トシ豫メ其ノ價格及成功期限ヲ定メ隨意契約ヲ以テ賣拂ノ豫約ヲ爲スコトヲ得
第十條 國有林野產物ノ隨意契約ニ依ル賣拂ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條 國有林野ハ左ノ場合ニ限リ隨意契約ヲ以テ貸付シ又ハ使用セシムルコトヲ得
第十二條 國有林野ヲ貸付シ又ハ使用セシムルトキハ相當ノ貸付料又ハ牛馬放牧料ヲ徵收スヘシ但シ前條第一號及第四號ノ場合ニ於テハ貸付料ヲ免スルコトヲ得
第十三條 國有林野ヲ貸付シ又ハ使用セシムルトキハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第十四條 國土保安又ハ國有林野ノ經營上必要ナル場合ニ限リ國有林野又ハ立木竹ト他ノ同價格以上ノ土地、森林、原野又ハ立木竹ト交換スルコトヲ得
第十五條 國有林野ハ左ノ場合ニ限リ讓與スルコトヲ得
一 段別一町步以下ニシテ公立ノ學校又ハ病院ノ用地ニ供スルトキ
二 府縣郡市町村及其ノ他ノ公共團體ニ於テ道路、河川、港灣、水道、堤塘、溝渠、溜池、火葬場、墓地、公園等公共ノ用ニ供スルトキ
第十六條 用途ヲ指定シテ讓與シタル國有林野ヲ指定ノ期間內ニ其ノ用途ニ使用セサルトキ又ハ一旦其ノ用途ニ使用シタル後當該官廳ニ於テ指定シタル期間其ノ使用ヲ繼續セサルトキハ之ヲ返還セシムルコトヲ得
前項ニ依リ林野ヲ返還セシメタル場合ニ於テハ其ノ林野ノ上ニ設定シタル第三者ノ權利ハ消滅ス
第十七條 社寺上地ノ森林ハ其ノ社寺ニ保管セシムルコトヲ得
社寺ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ社寺林地ヲ使用シ又ハ主副產物ヲ採取スルコトヲ得
第十八條 國有林野ニシテ保護上必要ナル場合ニ於テハ市町村又ハ市町村內ノ一部ニ其ノ保護ヲ委託スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ其ノ受託者ニ林野產物ヲ讓與スルコトヲ得
委託ノ方法及受託者ニ讓與スヘキ林野產物ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條 國ハ造林者ト其ノ收益ヲ分收スルノ契約ヲ以テ國有林野ニ部分林ヲ設クルコトヲ得
法令、慣行又ハ其ノ他ノ理由ニ依リ國有林ニ就キ收益ノ分收ヲ爲スモノハ前項ノ部分林ト看做ス
第二十條 部分林ノ樹木ハ國ト造林者トノ共有トシ其ノ持分ハ收益分收ノ部合ニ均シキモノトス
第二十一條 部分林ノ存續期間ハ八十年ヲ超ユルコトヲ得ス
第二十二條 民法第二百五十六條ノ規定ハ部分林ノ樹木ニ適用セス
第二十三條 第十八條第二項及第三項ノ規定ハ部分林ノ造林者ニ之ヲ準用ス
第二十四條 主務大臣ハ十箇年每ニ其ノ年三月三十一日ニ現在スル國有林野現在表ヲ其ノ年開會ノ帝國議會ニ報吿スヘシ但シ第一囘ノ報吿ハ明治三十四年三月三十一日ノ現在ニ依ル
第二十五條 主務大臣ハ每會計年度間ニ於ケル國有林野ノ增減異動ヲ翌年度開會ノ帝國議會ニ報吿スヘシ