朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル國籍法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月十五日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
內務大臣 侯爵 西鄕從道
法律第六十六號
國籍法
第一條 子ハ出生ノ時其父カ日本人ナルトキハ之ヲ日本人トス其出生前ニ死亡シタル父カ死亡ノ時日本人ナリシトキ亦同シ
第二條 父カ子ノ出生前ニ離婚又ハ離緣ニ因リテ日本ノ國籍ヲ失ヒタルトキハ前條ノ規定ハ懷胎ノ始ニ遡リテ之ヲ適用ス
前項ノ規定ハ父母カ共ニ其家ヲ去リタル場合ニハ之ヲ適用セス但母カ子ノ出生前ニ復籍ヲ爲シタルトキハ此限ニ在ラス
第三條 父カ知レサル場合又ハ國籍ヲ有セサル場合ニ於テ母カ日本人ナルトキハ其子ハ之ヲ日本人トス
第四條 日本ニ於テ生マレタル子ノ父母カ共ニ知レサルトキ又ハ國籍ヲ有セサルトキハ其子ハ之ヲ日本人トス
第五條 外國人ハ左ノ場合ニ於テ日本ノ國籍ヲ取得ス
一 日本人ノ妻ト爲リタルトキ
二 日本人ノ入夫ト爲リタルトキ
三 日本人タル父又ハ母ニ依リテ認知セラレタルトキ
四 日本人ノ養子ト爲リタルトキ
五 歸化ヲ爲シタルトキ
第六條 外國人カ認知ニ因リテ日本ノ國籍ヲ取得スルニハ左ノ條件ヲ具備スルコトヲ要ス
一 本國法ニ依リテ未成年者タルコト
二 外國人ノ妻ニ非サルコト
三 父母ノ中先ツ認知ヲ爲シタル者カ日本人ナルコト
四 父母カ同時ニ認知ヲ爲シタルトキハ父カ日本人ナルコト
第七條 外國人ハ內務大臣ノ許可ヲ得テ歸化ヲ爲スコトヲ得
內務大臣ハ左ノ條件ヲ具備スル者ニ非サレハ其歸化ヲ許可スルコトヲ得ス
一 引續キ五年以上日本ニ住所ヲ有スルコト
二 滿二十年以上ニシテ本國法ニ依リ能力ヲ有スルコト
三 品行端正ナルコト
四 獨立ノ生計ヲ營ムニ足ルヘキ資產又ハ技能アルコト
五 國籍ヲ有セス又ハ日本ノ國籍ノ取得ニ因リテ其國籍ヲ失フヘキコト
第八條 外國人ノ妻ハ其夫ト共ニスルニ非サレハ歸化ヲ爲スコトヲ得ス
第九條 左ニ揭ケタル外國人カ現ニ日本ニ住所ヲ有スルトキハ第七條第二項第一號ノ條件ヲ具備セサルトキト雖モ歸化ヲ爲スコトヲ得
一 父又ハ母ノ日本人タリシ者
二 妻ノ日本人タリシ者
三 日本ニ於テ生マレタル者
四 引續キ十年以上日本ニ居所ヲ有スル者
前項第一號乃至第三號ニ揭ケタル者ハ引續キ三年以上日本ニ居所ヲ有スルニ非サレハ歸化ヲ爲スコトヲ得ス但第三號ニ揭ケタル者ノ父又ハ母カ日本ニ於テ生マレタル者ナルトキハ此限ニ在ラス
第十條 外國人ノ父又ハ母カ日本人ナル場合ニ於テ其外國人カ現ニ日本ニ住所ヲ有スルトキハ第七條第二項第一號、第二號及ヒ第四號ノ條件ヲ具備セサルトキト雖モ歸化ヲ爲スコトヲ得
第十一條 日本ニ特別ノ功勞アル外國人ハ第七條第二項ノ規定ニ拘ハラス內務大臣勅裁ヲ經テ其歸化ヲ許可スルコトヲ得
第十二條 歸化ハ之ヲ官報ニ吿示スルコトヲ要ス
歸化ハ其吿示アリタル後ニ非サレハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十三條 日本ノ國籍ヲ取得スル者ノ妻ハ夫ト共ニ日本ノ國籍ヲ取得ス
前項ノ規定ハ妻ノ本國法ニ反對ノ規定アルトキハ之ヲ適用セス
第十四條 日本ノ國籍ヲ取得シタル者ノ妻カ前條ノ規定ニ依リテ日本ノ國籍ヲ取得セサリシトキハ第七條第二項ニ揭ケタル條件ヲ具備セサルトキト雖モ歸化ヲ爲スコトヲ得
第十五條 日本ノ國籍ヲ取得スル者ノ子カ其本國法ニ依リテ未成年者ナルトキハ父又ハ母ト共ニ日本ノ國籍ヲ取得ス
前項ノ規定ハ子ノ本國法ニ反對ノ規定アルトキハ之ヲ適用セス
第十六條 歸化人、歸化人ノ子ニシテ日本ノ國籍ヲ取得シタル者及ヒ日本人ノ養子又ハ入夫ト爲リタル者ハ左ニ揭ケタル權利ヲ有セス
一 國務大臣ト爲ルコト
二 樞密院ノ議長、副議長又ハ顧問官ト爲ルコト
三 宮內勅任官ト爲ルコト
四 特命全權公使ト爲ルコト
五 陸海軍ノ將官ト爲ルコト
六 大審院長、會計檢査院長又ハ行政裁判所長官ト爲ルコト
七 帝國議會ノ議員ト爲ルコト
第十七條 前條ニ定メタル制限ハ第十一條ノ規定ニ依リテ歸化ヲ許可シタル者ニ付テハ國籍取得ノ時ヨリ五年ノ後其他ノ者ニ付テハ十年ノ後內務大臣勅裁ヲ經テ之ヲ解除スルコトヲ得
第十八條 日本ノ女カ外國人ト婚姻ヲ爲シタルトキハ日本ノ國籍ヲ失フ
第十九條 婚姻又ハ養子緣組ニ因リテ日本ノ國籍ヲ取得シタル者ハ離婚又ハ離緣ノ場合ニ於テ其外國ノ國籍ヲ有スヘキトキニ限リ日本ノ國籍ヲ失フ
第二十條 自己ノ志望ニ依リテ外國ノ國籍ヲ取得シタル者ハ日本ノ國籍ヲ失フ
第二十一條 日本ノ國籍ヲ失ヒタル者ノ妻及ヒ子カ其者ノ國籍ヲ取得シタルトキハ日本ノ國籍ヲ失フ
第二十二條 前條ノ規定ハ離婚又ハ離緣ニ因リテ日本ノ國籍ヲ失ヒタル者ノ妻及ヒ子ニハ之ヲ適用セス但妻カ夫ノ離緣ノ場合ニ於テ離婚ヲ爲サス又ハ子カ父ニ隨ヒテ其家ヲ去リタルトキハ此限ニ在ラス
第二十三條 日本人タル子カ認知ニ因リテ外國ノ國籍ヲ取得シタルトキハ日本ノ國籍ヲ失フ但日本人ノ妻、入夫又ハ養子ト爲リタル者ハ此限ニ在ラス
第二十四條 滿十七年以上ノ男子ハ前五條ノ規定ニ拘ハラス旣ニ陸海軍ノ現役ニ服シタルトキ又ハ之ニ服スル義務ナキトキニ非サレハ日本ノ國籍ヲ失ハス
現ニ文武ノ官職ヲ帶フル者ハ前六條ノ規定ニ拘ハラス其官職ヲ失ヒタル後ニ非サレハ日本ノ國籍ヲ失ハス
第二十五條 婚姻ニ因リテ日本ノ國籍ヲ失ヒタル者カ婚姻解消ノ後日本ニ住所ヲ有スルトキハ內務大臣ノ許可ヲ得テ日本ノ國籍ヲ囘復スルコトヲ得
第二十六條 第二十條又ハ第二十一條ノ規定ニ依リテ日本ノ國籍ヲ失ヒタル者カ日本ニ住所ヲ有スルトキハ內務大臣ノ許可ヲ得テ日本ノ國籍ヲ囘復スルコトヲ得但第十六條ニ揭ケタル者カ日本ノ國籍ヲ失ヒタル場合ハ此限ニ在ラス
第二十七條 第十三條乃至第十五條ノ規定ハ前二條ノ場合ニ之ヲ準用ス
附 則
第二十八條 本法ハ明治三十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル国籍法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月十五日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
内務大臣 侯爵 西郷従道
法律第六十六号
国籍法
第一条 子ハ出生ノ時其父カ日本人ナルトキハ之ヲ日本人トス其出生前ニ死亡シタル父カ死亡ノ時日本人ナリシトキ亦同シ
第二条 父カ子ノ出生前ニ離婚又ハ離縁ニ因リテ日本ノ国籍ヲ失ヒタルトキハ前条ノ規定ハ懐胎ノ始ニ遡リテ之ヲ適用ス
前項ノ規定ハ父母カ共ニ其家ヲ去リタル場合ニハ之ヲ適用セス但母カ子ノ出生前ニ復籍ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス
第三条 父カ知レサル場合又ハ国籍ヲ有セサル場合ニ於テ母カ日本人ナルトキハ其子ハ之ヲ日本人トス
第四条 日本ニ於テ生マレタル子ノ父母カ共ニ知レサルトキ又ハ国籍ヲ有セサルトキハ其子ハ之ヲ日本人トス
第五条 外国人ハ左ノ場合ニ於テ日本ノ国籍ヲ取得ス
一 日本人ノ妻ト為リタルトキ
二 日本人ノ入夫ト為リタルトキ
三 日本人タル父又ハ母ニ依リテ認知セラレタルトキ
四 日本人ノ養子ト為リタルトキ
五 帰化ヲ為シタルトキ
第六条 外国人カ認知ニ因リテ日本ノ国籍ヲ取得スルニハ左ノ条件ヲ具備スルコトヲ要ス
一 本国法ニ依リテ未成年者タルコト
二 外国人ノ妻ニ非サルコト
三 父母ノ中先ツ認知ヲ為シタル者カ日本人ナルコト
四 父母カ同時ニ認知ヲ為シタルトキハ父カ日本人ナルコト
第七条 外国人ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ帰化ヲ為スコトヲ得
内務大臣ハ左ノ条件ヲ具備スル者ニ非サレハ其帰化ヲ許可スルコトヲ得ス
一 引続キ五年以上日本ニ住所ヲ有スルコト
二 満二十年以上ニシテ本国法ニ依リ能力ヲ有スルコト
三 品行端正ナルコト
四 独立ノ生計ヲ営ムニ足ルヘキ資産又ハ技能アルコト
五 国籍ヲ有セス又ハ日本ノ国籍ノ取得ニ因リテ其国籍ヲ失フヘキコト
第八条 外国人ノ妻ハ其夫ト共ニスルニ非サレハ帰化ヲ為スコトヲ得ス
第九条 左ニ掲ケタル外国人カ現ニ日本ニ住所ヲ有スルトキハ第七条第二項第一号ノ条件ヲ具備セサルトキト雖モ帰化ヲ為スコトヲ得
一 父又ハ母ノ日本人タリシ者
二 妻ノ日本人タリシ者
三 日本ニ於テ生マレタル者
四 引続キ十年以上日本ニ居所ヲ有スル者
前項第一号乃至第三号ニ掲ケタル者ハ引続キ三年以上日本ニ居所ヲ有スルニ非サレハ帰化ヲ為スコトヲ得ス但第三号ニ掲ケタル者ノ父又ハ母カ日本ニ於テ生マレタル者ナルトキハ此限ニ在ラス
第十条 外国人ノ父又ハ母カ日本人ナル場合ニ於テ其外国人カ現ニ日本ニ住所ヲ有スルトキハ第七条第二項第一号、第二号及ヒ第四号ノ条件ヲ具備セサルトキト雖モ帰化ヲ為スコトヲ得
第十一条 日本ニ特別ノ功労アル外国人ハ第七条第二項ノ規定ニ拘ハラス内務大臣勅裁ヲ経テ其帰化ヲ許可スルコトヲ得
第十二条 帰化ハ之ヲ官報ニ告示スルコトヲ要ス
帰化ハ其告示アリタル後ニ非サレハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第十三条 日本ノ国籍ヲ取得スル者ノ妻ハ夫ト共ニ日本ノ国籍ヲ取得ス
前項ノ規定ハ妻ノ本国法ニ反対ノ規定アルトキハ之ヲ適用セス
第十四条 日本ノ国籍ヲ取得シタル者ノ妻カ前条ノ規定ニ依リテ日本ノ国籍ヲ取得セサリシトキハ第七条第二項ニ掲ケタル条件ヲ具備セサルトキト雖モ帰化ヲ為スコトヲ得
第十五条 日本ノ国籍ヲ取得スル者ノ子カ其本国法ニ依リテ未成年者ナルトキハ父又ハ母ト共ニ日本ノ国籍ヲ取得ス
前項ノ規定ハ子ノ本国法ニ反対ノ規定アルトキハ之ヲ適用セス
第十六条 帰化人、帰化人ノ子ニシテ日本ノ国籍ヲ取得シタル者及ヒ日本人ノ養子又ハ入夫ト為リタル者ハ左ニ掲ケタル権利ヲ有セス
一 国務大臣ト為ルコト
二 枢密院ノ議長、副議長又ハ顧問官ト為ルコト
三 宮内勅任官ト為ルコト
四 特命全権公使ト為ルコト
五 陸海軍ノ将官ト為ルコト
六 大審院長、会計検査院長又ハ行政裁判所長官ト為ルコト
七 帝国議会ノ議員ト為ルコト
第十七条 前条ニ定メタル制限ハ第十一条ノ規定ニ依リテ帰化ヲ許可シタル者ニ付テハ国籍取得ノ時ヨリ五年ノ後其他ノ者ニ付テハ十年ノ後内務大臣勅裁ヲ経テ之ヲ解除スルコトヲ得
第十八条 日本ノ女カ外国人ト婚姻ヲ為シタルトキハ日本ノ国籍ヲ失フ
第十九条 婚姻又ハ養子縁組ニ因リテ日本ノ国籍ヲ取得シタル者ハ離婚又ハ離縁ノ場合ニ於テ其外国ノ国籍ヲ有スヘキトキニ限リ日本ノ国籍ヲ失フ
第二十条 自己ノ志望ニ依リテ外国ノ国籍ヲ取得シタル者ハ日本ノ国籍ヲ失フ
第二十一条 日本ノ国籍ヲ失ヒタル者ノ妻及ヒ子カ其者ノ国籍ヲ取得シタルトキハ日本ノ国籍ヲ失フ
第二十二条 前条ノ規定ハ離婚又ハ離縁ニ因リテ日本ノ国籍ヲ失ヒタル者ノ妻及ヒ子ニハ之ヲ適用セス但妻カ夫ノ離縁ノ場合ニ於テ離婚ヲ為サス又ハ子カ父ニ随ヒテ其家ヲ去リタルトキハ此限ニ在ラス
第二十三条 日本人タル子カ認知ニ因リテ外国ノ国籍ヲ取得シタルトキハ日本ノ国籍ヲ失フ但日本人ノ妻、入夫又ハ養子ト為リタル者ハ此限ニ在ラス
第二十四条 満十七年以上ノ男子ハ前五条ノ規定ニ拘ハラス既ニ陸海軍ノ現役ニ服シタルトキ又ハ之ニ服スル義務ナキトキニ非サレハ日本ノ国籍ヲ失ハス
現ニ文武ノ官職ヲ帯フル者ハ前六条ノ規定ニ拘ハラス其官職ヲ失ヒタル後ニ非サレハ日本ノ国籍ヲ失ハス
第二十五条 婚姻ニ因リテ日本ノ国籍ヲ失ヒタル者カ婚姻解消ノ後日本ニ住所ヲ有スルトキハ内務大臣ノ許可ヲ得テ日本ノ国籍ヲ回復スルコトヲ得
第二十六条 第二十条又ハ第二十一条ノ規定ニ依リテ日本ノ国籍ヲ失ヒタル者カ日本ニ住所ヲ有スルトキハ内務大臣ノ許可ヲ得テ日本ノ国籍ヲ回復スルコトヲ得但第十六条ニ掲ケタル者カ日本ノ国籍ヲ失ヒタル場合ハ此限ニ在ラス
第二十七条 第十三条乃至第十五条ノ規定ハ前二条ノ場合ニ之ヲ準用ス
附 則
第二十八条 本法ハ明治三十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス