朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル北海道舊土人保護法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月一日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
內務大臣 侯爵 西鄕從道
法律第二十七號
北海道舊土人保護法
第一條 北海道舊土人ニシテ農業ニ從事スル者又ハ從事セムト欲スル者ニハ一戶ニ付土地一萬五千坪以內ヲ限リ無償下付スルコトヲ得
第二條 前條ニ依リ下付シタル土地ノ所有權ハ左ノ制限ニ從フヘキモノトス
一 相續ニ因ルノ外讓渡スコトヲ得ス
二 質權抵當權地上權又ハ永小作權ヲ設定スルコトヲ得ス
三 北海道廳長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ地役權ヲ設定スルコトヲ得ス
四 留置權先取特權ノ目的トナルコトナシ
前條ニ依リ下付シタル土地ハ下付ノ年ヨリ起算シテ三十箇年ノ後ニ非サレハ地租及地方稅ヲ課セス又登錄稅ヲ徵收セス
舊土人ニ於テ從前ヨリ所有シタル土地ハ北海道廳長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ相續ニ因ルノ外之ヲ讓渡シ又ハ第一項第二及第三ニ揭ケタル物權ヲ設定スルコトヲ得ス
第三條 第一條ニ依リ下付シタル土地ニシテ其ノ下付ノ年ヨリ起算シ十五箇年ヲ經ルモ尙開墾セサル部分ハ之ヲ沒收ス
第四條 北海道舊土人ニシテ貧困ナル者ニハ農具及種子ヲ給スルコトヲ得
第五條 北海道舊土人ニシテ疾病ニ罹リ自費治療スルコト能ハサル者ニハ藥價ヲ給スルコトヲ得
第六條 北海道舊土人ニシテ疾病、不具、老衰又ハ幼少ノ爲自活スルコト能ハサル者ハ從來ノ成規ニ依リ救助スルノ外仍之ヲ救助シ救助中死亡シタルトキハ埋葬料ヲ給スルコトヲ得
第七條 北海道舊土人ノ貧困ナル者ノ子弟ニシテ就學スル者ニハ授業料ヲ給スルコトヲ得
第八條 第四條乃至第七條ニ要スル費用ハ北海道舊土人共有財產ノ收益ヲ以テ之ニ充ツ若シ不足アルトキハ國庫ヨリ之ヲ支出ス
第九條 北海道舊土人ノ部落ヲ爲シタル場所ニハ國庫ノ費用ヲ以テ小學校ヲ設クルコトヲ得
第十條 北海道廳長官ハ北海道舊土人共有財產ヲ管理スルコトヲ得
北海道廳長官ハ內務大臣ノ認可ヲ經テ共有者ノ利益ノ爲ニ共有財產ノ處分ヲ爲シ又必要ト認ムルトキハ其ノ分割ヲ拒ムコトヲ得
北海道廳長官ノ管理スル共有財產ハ北海道廳長官之ヲ指定ス
第十一條 北海道廳長官ハ北海道舊土人保護ニ關シテ警察令ヲ發シ之ニ二圓以上二十五圓以下ノ罰金若ハ十一日以上二十五日以下ノ禁錮ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
附 則
第十二條 此ノ法律ハ明治三十二年四月一日ヨリ施行ス
第十三條 此ノ法律ノ施行ニ關スル細則ハ內務大臣之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル北海道旧土人保護法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月一日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
内務大臣 侯爵 西郷従道
法律第二十七号
北海道旧土人保護法
第一条 北海道旧土人ニシテ農業ニ従事スル者又ハ従事セムト欲スル者ニハ一戸ニ付土地一万五千坪以内ヲ限リ無償下付スルコトヲ得
第二条 前条ニ依リ下付シタル土地ノ所有権ハ左ノ制限ニ従フヘキモノトス
一 相続ニ因ルノ外譲渡スコトヲ得ス
二 質権抵当権地上権又ハ永小作権ヲ設定スルコトヲ得ス
三 北海道庁長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ地役権ヲ設定スルコトヲ得ス
四 留置権先取特権ノ目的トナルコトナシ
前条ニ依リ下付シタル土地ハ下付ノ年ヨリ起算シテ三十箇年ノ後ニ非サレハ地租及地方税ヲ課セス又登録税ヲ徴収セス
旧土人ニ於テ従前ヨリ所有シタル土地ハ北海道庁長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ相続ニ因ルノ外之ヲ譲渡シ又ハ第一項第二及第三ニ掲ケタル物権ヲ設定スルコトヲ得ス
第三条 第一条ニ依リ下付シタル土地ニシテ其ノ下付ノ年ヨリ起算シ十五箇年ヲ経ルモ尚開墾セサル部分ハ之ヲ没収ス
第四条 北海道旧土人ニシテ貧困ナル者ニハ農具及種子ヲ給スルコトヲ得
第五条 北海道旧土人ニシテ疾病ニ罹リ自費治療スルコト能ハサル者ニハ薬価ヲ給スルコトヲ得
第六条 北海道旧土人ニシテ疾病、不具、老衰又ハ幼少ノ為自活スルコト能ハサル者ハ従来ノ成規ニ依リ救助スルノ外仍之ヲ救助シ救助中死亡シタルトキハ埋葬料ヲ給スルコトヲ得
第七条 北海道旧土人ノ貧困ナル者ノ子弟ニシテ就学スル者ニハ授業料ヲ給スルコトヲ得
第八条 第四条乃至第七条ニ要スル費用ハ北海道旧土人共有財産ノ収益ヲ以テ之ニ充ツ若シ不足アルトキハ国庫ヨリ之ヲ支出ス
第九条 北海道旧土人ノ部落ヲ為シタル場所ニハ国庫ノ費用ヲ以テ小学校ヲ設クルコトヲ得
第十条 北海道庁長官ハ北海道旧土人共有財産ヲ管理スルコトヲ得
北海道庁長官ハ内務大臣ノ認可ヲ経テ共有者ノ利益ノ為ニ共有財産ノ処分ヲ為シ又必要ト認ムルトキハ其ノ分割ヲ拒ムコトヲ得
北海道庁長官ノ管理スル共有財産ハ北海道庁長官之ヲ指定ス
第十一条 北海道庁長官ハ北海道旧土人保護ニ関シテ警察令ヲ発シ之ニ二円以上二十五円以下ノ罰金若ハ十一日以上二十五日以下ノ禁錮ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
附 則
第十二条 此ノ法律ハ明治三十二年四月一日ヨリ施行ス
第十三条 此ノ法律ノ施行ニ関スル細則ハ内務大臣之ヲ定ム