朕文官試驗規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十六年十月三十日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
勅令第百九十七號
文官試驗規則
第一章 總則
第一條 文官試驗ハ別ニ規程ヲ設クルモノヽ外本令ニ依リ之ヲ行フ
第二條 文官試驗ヲ分チテ文官高等試驗及文官普通試驗ノ二種トス
第三條 文官試驗ヲ行フヘキ期日及場所ハ豫メ官報ヲ以テ之ヲ公吿シ東京以外ノ地ニ於テ行フ試驗ニ在リテハ仍其ノ地方ノ新聞紙一種以上ニ公吿スヘシ
第四條 年齡滿二十年以上ノ男子ニシテ左ノ諸項ノ一ニ該當セサル者ハ文官試驗ヲ受クルコトヲ得
一 重罪ヲ犯シタル者但國事犯ニシテ復權シタル者ハ此ノ限ニアラス
二 定役ニ服スヘキ輕罪ヲ犯シタル者
三 破產若クハ家資分散ノ宣吿ヲ受ケ復權セサル者又ハ身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者
第五條 文官試驗ヲ受ケテ合格シタル者ニハ合格證書ヲ付與ス
第六條 不正ノ方法ニ因リ試驗ヲ受ケント企テタル者及試驗ニ關スル規程ニ違背シタル者ハ其ノ期ノ試驗ヲ受クルコトヲ得ス試驗合格證書ヲ受領シタル後是等ノ事實發覺シタルトキハ其ノ合格證書ヲ無效トス
第七條 文官試驗ヲ出願スル者ニハ手數料トシテ高等試驗ニ在リテハ金十圓、普通試驗ニ在リテハ金二圓ヲ納メシム
第二章 文官高等試驗
第八條 文官高等試驗ハ每年一囘東京ニ於テ文官高等試驗委員之ヲ行フ
第九條 文官高等試驗ヲ分チテ豫備試驗及本試驗トス豫備試驗ニ合格シタル者ニアラサレハ本試驗ヲ受クルコトヲ得ス
第十條 豫備試驗ハ受驗人尋常中學校以上ノ官立公立學校ヲ卒業シ又ハ之ト同等以上ノ學力ヲ有スル者ニシテ本試驗ヲ受クルニ相當ナル學科ヲ修メタル者ト認ムヘキヤ否ヲ考試スルヲ以テ目的トス
第十一條 豫備試驗ハ論文試驗竝ニ論文ニ關聯スル口述試驗及迅速作文試驗ノ二次トス口述試驗及迅速作文試驗ハ論文試驗ニ合格シタル者ニ就キ之ヲ行フ
前項ノ口述試驗及迅速作文試驗ハ試驗委員ニ於テ便宜其ノ一ヲ省略スルコトヲ得
第十二條 帝國大學法科大學、舊東京大學法學部、文學部及舊司法省法學校正則部ノ卒業證書ヲ有スル者ハ豫備試驗ヲ免ス
第十三條 本試驗ハ受驗人學理上ノ原則及現行法令ニ通曉シ竝ニ其ノ修得シタル學術ヲ實務ニ應用スルノ能力アルヤ否ヲ考試スルヲ以テ目的トス
第十四條 本試驗ハ左ノ科目ヲ用井テ之ヲ行フ
一 憲法
二 刑法
三 民法
四 行政法
五 經濟學
六 國際法
以上ノ科目ハ試驗ノ際選擇取捨スルコトヲ得ス
一 財政學
二 商法
三 刑事訴訟法
四 民事訴訟法
以上ノ科目ハ受驗者ヲシテ其ノ中ニ就キ豫メ一科目ヲ選擇セシメ之ヲ試驗ス
第十五條 本試驗ハ分チテ筆記試驗及口述試驗トス筆記試驗ニ合格シタル者ニアラサレハ口述試驗ヲ受クルコトヲ得ス
第十六條 豫備試驗及本試驗ノ合格者ヲ定ムル方法ハ試驗委員ノ議定スル所ニ依ル
第十七條 文官高等試驗ニ關スル細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 文官普通試驗
第十八條 文官普通試驗ハ各官廳ノ須要ニ應シ其ノ廳ノ文官普通試驗委員之ヲ行フ
第十九條 文官普通試驗ノ科目ハ尋常中學校ノ科程ヲ標準トシ各官廳所掌ノ事務ヲ斟酌シテ文官普通試驗委員之ヲ定メ文官高等試驗委員ノ承認ヲ經ヘシ
第二十條 文官普通試驗ニ關スル細則ハ文官普通試驗委員之ヲ定メ文官高等試驗委員ニ報吿スヘシ
附 則
第二十一條 本令ハ明治二十七年一月一日ヨリ施行ス
朕文官試験規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十六年十月三十日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
勅令第百九十七号
文官試験規則
第一章 総則
第一条 文官試験ハ別ニ規程ヲ設クルモノヽ外本令ニ依リ之ヲ行フ
第二条 文官試験ヲ分チテ文官高等試験及文官普通試験ノ二種トス
第三条 文官試験ヲ行フヘキ期日及場所ハ予メ官報ヲ以テ之ヲ公告シ東京以外ノ地ニ於テ行フ試験ニ在リテハ仍其ノ地方ノ新聞紙一種以上ニ公告スヘシ
第四条 年齢満二十年以上ノ男子ニシテ左ノ諸項ノ一ニ該当セサル者ハ文官試験ヲ受クルコトヲ得
一 重罪ヲ犯シタル者但国事犯ニシテ復権シタル者ハ此ノ限ニアラス
二 定役ニ服スヘキ軽罪ヲ犯シタル者
三 破産若クハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ復権セサル者又ハ身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者
第五条 文官試験ヲ受ケテ合格シタル者ニハ合格証書ヲ付与ス
第六条 不正ノ方法ニ因リ試験ヲ受ケント企テタル者及試験ニ関スル規程ニ違背シタル者ハ其ノ期ノ試験ヲ受クルコトヲ得ス試験合格証書ヲ受領シタル後是等ノ事実発覚シタルトキハ其ノ合格証書ヲ無効トス
第七条 文官試験ヲ出願スル者ニハ手数料トシテ高等試験ニ在リテハ金十円、普通試験ニ在リテハ金二円ヲ納メシム
第二章 文官高等試験
第八条 文官高等試験ハ毎年一回東京ニ於テ文官高等試験委員之ヲ行フ
第九条 文官高等試験ヲ分チテ予備試験及本試験トス予備試験ニ合格シタル者ニアラサレハ本試験ヲ受クルコトヲ得ス
第十条 予備試験ハ受験人尋常中学校以上ノ官立公立学校ヲ卒業シ又ハ之ト同等以上ノ学力ヲ有スル者ニシテ本試験ヲ受クルニ相当ナル学科ヲ修メタル者ト認ムヘキヤ否ヲ考試スルヲ以テ目的トス
第十一条 予備試験ハ論文試験並ニ論文ニ関連スル口述試験及迅速作文試験ノ二次トス口述試験及迅速作文試験ハ論文試験ニ合格シタル者ニ就キ之ヲ行フ
前項ノ口述試験及迅速作文試験ハ試験委員ニ於テ便宜其ノ一ヲ省略スルコトヲ得
第十二条 帝国大学法科大学、旧東京大学法学部、文学部及旧司法省法学校正則部ノ卒業証書ヲ有スル者ハ予備試験ヲ免ス
第十三条 本試験ハ受験人学理上ノ原則及現行法令ニ通暁シ並ニ其ノ修得シタル学術ヲ実務ニ応用スルノ能力アルヤ否ヲ考試スルヲ以テ目的トス
第十四条 本試験ハ左ノ科目ヲ用井テ之ヲ行フ
一 憲法
二 刑法
三 民法
四 行政法
五 経済学
六 国際法
以上ノ科目ハ試験ノ際選択取捨スルコトヲ得ス
一 財政学
二 商法
三 刑事訴訟法
四 民事訴訟法
以上ノ科目ハ受験者ヲシテ其ノ中ニ就キ予メ一科目ヲ選択セシメ之ヲ試験ス
第十五条 本試験ハ分チテ筆記試験及口述試験トス筆記試験ニ合格シタル者ニアラサレハ口述試験ヲ受クルコトヲ得ス
第十六条 予備試験及本試験ノ合格者ヲ定ムル方法ハ試験委員ノ議定スル所ニ依ル
第十七条 文官高等試験ニ関スル細則ハ閣令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 文官普通試験
第十八条 文官普通試験ハ各官庁ノ須要ニ応シ其ノ庁ノ文官普通試験委員之ヲ行フ
第十九条 文官普通試験ノ科目ハ尋常中学校ノ科程ヲ標準トシ各官庁所掌ノ事務ヲ斟酌シテ文官普通試験委員之ヲ定メ文官高等試験委員ノ承認ヲ経ヘシ
第二十条 文官普通試験ニ関スル細則ハ文官普通試験委員之ヲ定メ文官高等試験委員ニ報告スヘシ
附 則
第二十一条 本令ハ明治二十七年一月一日ヨリ施行ス