朕水道條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年二月十二日
內閣總理大臣兼內務大臣 伯爵 山縣有朋
法律第九號
水道條例
第一條 水道トハ市町村ノ住民ノ需要ニ應シ給水ノ目的ヲ以テ布設スル水道ヲ云ヒ水道用地トハ水源地、貯水地、濾水場、喞水場及水道線路ニ要スル地ヲ云フ
第二條 水道ハ市町村其公費ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ布設スルコトヲ得ス
第三條 市町村ニ於テ水道ヲ布設セントスルトキハ其目論見書ニ左ノ事項ヲ詳記シ地方長官ヲ經テ內務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第一 水道事務所ノ所在地
第二 水源ノ位置河川池湖又ハ堀井ノ別其周圍ノ槪況及其水量ノ槪算但圖面及水質ノ分析表ヲ添フヘシ
第三 水道線路及水道線路ニ沿フタル地名貯水地、濾水場、喞水場ノ位置但圖面ヲ添フヘシ
第四 給水ノ區域其人口及其一人一日ニ對スル平均給水量
第五 人口增殖及多量ノ水ヲ用フル製造場等ニ對スル給水量增加ノ見込
第六 水壓ノ槪算
第七 工事方法
第八 起工竝竣工期限
第九 工費ノ總額其收入支出ノ方法及其豫算
第十 水料ノ等級、價格、水料徵收ノ方法及經常收支ノ槪算
第四條 內務大臣ハ前條ノ圖面書類ヲ審査シ不都合ナシト認ムルトキハ水道布設ノ認可狀ヲ與フヘシ
第五條 水道用地ハ國稅地方稅ヲ免除ス
第六條 官有ノ土地ニシテ水道用地ニ必要ナルモノハ之ヲ拂下ケ又ハ貸付スヘシ
第七條 水管ヲ官有地又ハ公道ノ地下ニ布設セントスルトキハ當該官廳ノ許可ヲ受クヘシ
第八條 地方長官ハ隨時當該官吏又ハ技術官ヲ派遣シテ水道工事及水質水量ヲ檢査セシメ其改築修理ヲ要シ又ハ水質不良水量不足ナリト認ムルトキハ地方衞生會ノ議定ヲ經相當ノ猶豫期日ヲ定メテ之カ改良ヲ市町村ニ命スヘシ
第九條 市町村ハ工事落成又ハ改築修理ヲ了リタルトキハ地方官廳ニ屆出監査ヲ受クヘシ
第十條 水道ノ給水ヲ受クル者ハ水質水量ノ檢査ヲ市町村長ニ請求スルコトヲ得
第十一條 家屋內ノ給水用具及本支水管ヨリ之ニ接續スル細管ハ市町村ノ所定ニ從ヒ之ヲ設置シ其費用ハ水道ノ給水ヲ受クル家主ノ負擔トス
第十二條 市町村ノ水道掛ハ午前八時ヨリ午後五時迄ノ內ニ於テ家屋內ノ給水用具ヲ檢査スルコトヲ得但水道掛ハ其證票ヲ携帶スヘシ
第十三條 市町村長ハ水道掛ノ報吿ニ依リ家屋內ノ給水用具不完全ナリト認ムルトキハ相當ノ猶豫期日ヲ定メテ之カ修繕ヲ爲サシムヘシ
家主若シ其修繕ヲ怠ルトキハ市町村ニ於テ之ヲ修繕シ其費用ヲ徵收スルコトヲ得
第十四條 家主ハ家屋內給水用具ノ設置又ハ其修繕ヲ了リタルトキハ市町村ノ水道掛ニ屆出ツヘシ水道掛ハ速ニ之ヲ檢査スヘシ
第十五條 市町村ハ一家專用ノ給水用具ヲ設クル能ハサルモノヽ爲メニ共用給水器ヲ設クヘシ
第十六條 市町村ハ消防用ノ爲メニ消火栓ヲ設置スヘシ消防用ニ消費シタル水ハ水料ヲ徵收スヘカラス
朕水道条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年二月十二日
内閣総理大臣兼内務大臣 伯爵 山県有朋
法律第九号
水道条例
第一条 水道トハ市町村ノ住民ノ需要ニ応シ給水ノ目的ヲ以テ布設スル水道ヲ云ヒ水道用地トハ水源地、貯水地、濾水場、喞水場及水道線路ニ要スル地ヲ云フ
第二条 水道ハ市町村其公費ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ布設スルコトヲ得ス
第三条 市町村ニ於テ水道ヲ布設セントスルトキハ其目論見書ニ左ノ事項ヲ詳記シ地方長官ヲ経テ内務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第一 水道事務所ノ所在地
第二 水源ノ位置河川池湖又ハ堀井ノ別其周囲ノ概況及其水量ノ概算但図面及水質ノ分析表ヲ添フヘシ
第三 水道線路及水道線路ニ沿フタル地名貯水地、濾水場、喞水場ノ位置但図面ヲ添フヘシ
第四 給水ノ区域其人口及其一人一日ニ対スル平均給水量
第五 人口増殖及多量ノ水ヲ用フル製造場等ニ対スル給水量増加ノ見込
第六 水圧ノ概算
第七 工事方法
第八 起工並竣工期限
第九 工費ノ総額其収入支出ノ方法及其予算
第十 水料ノ等級、価格、水料徴収ノ方法及経常収支ノ概算
第四条 内務大臣ハ前条ノ図面書類ヲ審査シ不都合ナシト認ムルトキハ水道布設ノ認可状ヲ与フヘシ
第五条 水道用地ハ国税地方税ヲ免除ス
第六条 官有ノ土地ニシテ水道用地ニ必要ナルモノハ之ヲ払下ケ又ハ貸付スヘシ
第七条 水管ヲ官有地又ハ公道ノ地下ニ布設セントスルトキハ当該官庁ノ許可ヲ受クヘシ
第八条 地方長官ハ随時当該官吏又ハ技術官ヲ派遣シテ水道工事及水質水量ヲ検査セシメ其改築修理ヲ要シ又ハ水質不良水量不足ナリト認ムルトキハ地方衛生会ノ議定ヲ経相当ノ猶予期日ヲ定メテ之カ改良ヲ市町村ニ命スヘシ
第九条 市町村ハ工事落成又ハ改築修理ヲ了リタルトキハ地方官庁ニ届出監査ヲ受クヘシ
第十条 水道ノ給水ヲ受クル者ハ水質水量ノ検査ヲ市町村長ニ請求スルコトヲ得
第十一条 家屋内ノ給水用具及本支水管ヨリ之ニ接続スル細管ハ市町村ノ所定ニ従ヒ之ヲ設置シ其費用ハ水道ノ給水ヲ受クル家主ノ負担トス
第十二条 市町村ノ水道掛ハ午前八時ヨリ午後五時迄ノ内ニ於テ家屋内ノ給水用具ヲ検査スルコトヲ得但水道掛ハ其証票ヲ携帯スヘシ
第十三条 市町村長ハ水道掛ノ報告ニ依リ家屋内ノ給水用具不完全ナリト認ムルトキハ相当ノ猶予期日ヲ定メテ之カ修繕ヲ為サシムヘシ
家主若シ其修繕ヲ怠ルトキハ市町村ニ於テ之ヲ修繕シ其費用ヲ徴収スルコトヲ得
第十四条 家主ハ家屋内給水用具ノ設置又ハ其修繕ヲ了リタルトキハ市町村ノ水道掛ニ届出ツヘシ水道掛ハ速ニ之ヲ検査スヘシ
第十五条 市町村ハ一家専用ノ給水用具ヲ設クル能ハサルモノヽ為メニ共用給水器ヲ設クヘシ
第十六条 市町村ハ消防用ノ為メニ消火栓ヲ設置スヘシ消防用ニ消費シタル水ハ水料ヲ徴収スヘカラス