(目的)
第一条 この法律は、我が国の領海、排他的経済水域等を適切に管理する必要性が増大していることに鑑み、有人国境離島地域が有する我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に関する活動の拠点としての機能を維持するため、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別の措置を講じ、もって我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「有人国境離島地域」とは、次に掲げる地域をいう。
一 自然的経済的社会的観点から一体をなすと認められる二以上の離島で構成される地域(当該離島のうちに領海及び接続水域に関する法律(昭和五十二年法律第三十号)第一条第一項の海域の限界を画する基礎となる基線(同法第二条第一項に規定する基線をいい、同項の直線基線の基点を含む。次号において「領海基線」という。)を有する離島があるものに限る。)内の現に日本国民が居住する離島で構成される地域
二 前号に定めるもののほか、領海基線を有する離島であって現に日本国民が居住するものの地域
2 この法律において「特定有人国境離島地域」とは、有人国境離島地域のうち、継続的な居住が可能となる環境の整備を図ることがその地域社会を維持する上で特に必要と認められるものとして別表に掲げるものをいう。
(国の責務)
第三条 国は、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持のため必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(基本方針)
第四条 内閣総理大臣は、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。
2 基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持の意義及び方向に関する事項
五 外国船舶による不法入国等の違法行為の防止に関する基本的な事項
七 第十二条に規定する国内一般旅客定期航路事業等に係る運賃等の低廉化に関する基本的な事項
八 第十三条に規定する国内定期航空運送事業に係る運賃の低廉化に関する基本的な事項
九 生活又は事業活動に必要な物資の費用の負担の軽減に関する基本的な事項
十一 安定的な漁業経営の確保等に関する基本的な事項
十二 前各号に掲げるもののほか、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する重要事項
3 内閣総理大臣は、基本方針を定めようとするときは、関係行政機関の長(関係行政機関が国家公安委員会である場合にあっては、国家公安委員会)に協議しなければならない。
4 関係地方公共団体は、基本方針に関し、内閣総理大臣に対し、意見を申し出ることができる。
5 内閣総理大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 第三項及び前項の規定は、基本方針の変更について準用する。
(国の行政機関の施設の設置)
第五条 国は、有人国境離島地域に国の行政機関の施設を設置するよう努めるものとする。
(国による土地の買取り等)
第六条 国は、有人国境離島地域内の土地であって、当該有人国境離島地域の保全のため国が適切な管理を行う必要があると認められるものについては、買取りその他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(港湾等の整備)
第七条 国及び地方公共団体は、領海、排他的経済水域等の保全等に関する活動に利用される有人国境離島地域内の港湾、漁港、道路及び空港の整備のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(外国船舶による不法入国等の違法行為の防止)
第八条 国及び地方公共団体は、有人国境離島地域及びその周辺の海域について、外国船舶による不法入国等の違法行為の防止のための体制の強化その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(広域の見地からの連携)
第九条 国及び地方公共団体は、有人国境離島地域の保全を図るに当たっては、当該有人国境離島地域を超える広域の見地からの関係機関の連携が図られるよう配慮するものとする。
(都道県計画)
第十条 特定有人国境離島地域をその区域に含む都道県は、基本方針に基づき、当該特定有人国境離島地域について、その地域社会の維持に関する計画(以下単に「計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 計画は、おおむね次に掲げる事項について定めるものとする。
一 特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持の基本的方針に関する事項
二 第十二条に規定する国内一般旅客定期航路事業等に係る運賃等の低廉化に関する事項
三 第十三条に規定する国内定期航空運送事業に係る運賃の低廉化に関する事項
四 生活又は事業活動に必要な物資の費用の負担の軽減に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関し必要な事項
3 都道県は、特定有人国境離島地域について計画を定めようとするときは、あらかじめ、その全部又は一部の区域が当該特定有人国境離島地域である市町村の意見を聴かなければならない。
4 その全部又は一部の区域が一の特定有人国境離島地域である市町村は、当該特定有人国境離島地域に係る計画が定められていない場合には、単独で又は共同して、都道県に対し、当該特定有人国境離島地域について計画を定めることを要請することができる。
5 前項の規定による要請があったときは、都道県は、速やかに、当該要請に係る特定有人国境離島地域について計画を定めなければならない。
6 都道県は、計画を定めたときは、これを公表するよう努めるとともに、直ちに、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
7 内閣総理大臣は、前項の規定により計画の提出があった場合においては、直ちに、その内容を関係行政機関の長に通知しなければならない。この場合において、関係行政機関の長は、当該計画についてその意見を内閣総理大臣に申し出ることができる。
8 内閣総理大臣は、第六項の規定により提出された計画が基本方針に適合していないと認めるときは、当該都道県に対し、これを変更すべきことを求めることができる。
9 内閣総理大臣は、第六項の規定により提出された計画について前項の規定による措置を執る必要がないと認めるときは、その旨を当該都道県に通知しなければならない。
10 第三項、第四項及び第六項から前項までの規定は、計画の変更について準用する。
(財政上の措置等)
第十一条 国は、毎年度、予算で定めるところにより、計画の円滑な実施その他の特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する施策の実施に必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
(国内一般旅客定期航路事業等に係る運賃等の低廉化)
第十二条 国及び地方公共団体は、国内一般旅客定期航路事業等(特定有人国境離島地域とその他の本邦の地域及び特定有人国境離島地域内を連絡する航路における海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第二条第五項に規定する一般旅客定期航路事業及び同法第十九条の六の二に規定する人の運送をする貨物定期航路事業をいう。)に係る旅客の運賃及び料金の低廉化について特別の配慮をするものとする。
(国内定期航空運送事業に係る運賃の低廉化)
第十三条 国及び地方公共団体は、国内定期航空運送事業(特定有人国境離島地域とその他の本邦の地域及び特定有人国境離島地域内を連絡する航空路における航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第二十項に規定する国内定期航空運送事業をいう。)に係る旅客の運賃の低廉化について特別の配慮をするものとする。
(生活又は事業活動に必要な物資の費用の負担の軽減)
第十四条 国及び地方公共団体は、特定有人国境離島地域の住民の生活又は事業活動に必要な物資であって、当該特定有人国境離島地域における居住又は事業の継続に特に寄与すると認められるものの購入等に要する費用の負担の軽減について適切な配慮をするものとする。
(雇用機会の拡充等)
第十五条 国及び地方公共団体は、特定有人国境離島地域の住民の雇用機会の拡充を図るため、特定有人国境離島地域において事業を営み、又は営もうとする者が行うその事業の事業規模若しくは事業活動の拡大又は事業の開始に要する費用の負担の軽減について適切な配慮をするものとする。
2 国及び地方公共団体は、前項の事業に係る専門的な知識又は技術を有する人材を育成するため、職業訓練の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(安定的な漁業経営の確保等)
第十六条 国及び地方公共団体は、特定有人国境離島地域においては漁業が重要な産業であること及び我が国の領海、排他的経済水域等の保全等に重要な役割を果たしていることに鑑み、特定有人国境離島地域における安定的な漁業経営の確保を図り、及び特定有人国境離島地域の周辺の海域における我が国の領海、排他的経済水域等の適切な管理に資するため、特定有人国境離島地域の住民であって特定有人国境離島地域の周辺の海域において漁業を営むものが行う漁船の操業に要する費用の負担の軽減について適切な配慮をするものとする。
(啓発活動)
第十七条 国及び地方公共団体は、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持の必要性に関する国民の理解と関心を深めるよう、広報その他の啓発活動を行うものとする。