新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法
法令番号: 法律第98号
公布年月日: 平成21年12月4日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

今般発生している新型インフルエンザは、基礎疾患保有者や妊婦等で重症化の可能性が高く、国民の大多数に免疫がないため、季節性インフルエンザを上回る感染者が発生し、社会経済に深刻な影響を与えるおそれがある。このため政府は、予防接種を臨時応急的に実施することとしているが、その円滑な実施を図るため、予防接種による健康被害を救済するための給付を行うとともに、特例承認を受けた新型インフルエンザワクチンの製造販売業者等に生ずる損失を政府が補償する必要があることから、本法案を提出するものである。

参照した発言:
第173回国会 衆議院 本会議 第4号

審議経過

第173回国会

衆議院
(平成21年11月17日)
(平成21年11月18日)
(平成21年11月20日)
(平成21年11月26日)
参議院
(平成21年11月27日)
(平成21年11月30日)
新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法をここに公布する。
御名御璽
平成二十一年十二月四日
内閣総理大臣 鳩山由紀夫
法律第九十八号
新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済措置(第三条―第十条)
第三章
特例承認新型インフルエンザワクチン製造販売業者との補償契約(第十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、厚生労働大臣が行う新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済に関する特別の措置を講ずるとともに、新型インフルエンザワクチンの使用による健康被害に係る損害を賠償すること等により特例承認新型インフルエンザワクチン製造販売業者等に生ずる損失について政府が補償することにより、新型インフルエンザ予防接種の円滑な実施を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「新型インフルエンザ」とは、インフルエンザであって、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第七項第一号に掲げる新型インフルエンザに該当するものとして同法第四十四条の二第一項の規定により厚生労働大臣が平成二十一年四月二十八日にその発生に係る情報を公表したものをいう。
2 この法律において「新型インフルエンザワクチン」とは、新型インフルエンザに係るワクチンをいう。
3 この法律において「新型インフルエンザ予防接種」とは、新型インフルエンザに対して免疫の効果を得させるため、新型インフルエンザワクチンを、人体に注射し、又は接種することをいう。
4 この法律において「特例承認新型インフルエンザワクチン製造販売業者」とは、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第十二条第一項の医薬品の製造販売業の許可を受けた者であって、新型インフルエンザワクチンの製造販売(同法第二条第十二項に規定する製造販売をいう。)について、同法第十四条の三第一項の規定により同法第十四条の承認を受けているもの(当該承認を受けようとするものを含む。)をいう。
第二章 新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済措置
(新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済のための給付)
第三条 厚生労働大臣は、自らが行う新型インフルエンザ予防接種を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該新型インフルエンザ予防接種を受けたことによるものであると認定したときは、次条及び第五条に定めるところにより、給付を行う。
2 厚生労働大臣は、前項の認定を行うに当たっては、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。
(給付の範囲)
第四条 前条第一項の規定による給付(以下この章において「給付」という。)は、次の各号に掲げるとおりとし、それぞれ当該各号に定める者に対して行う。
一 医療費及び医療手当 新型インフルエンザ予防接種を受けたことによる疾病について政令で定める程度の医療を受ける者
二 障害児養育年金 新型インフルエンザ予防接種を受けたことにより政令で定める程度の障害の状態にある十八歳未満の者を養育する者
三 障害年金 新型インフルエンザ予防接種を受けたことにより政令で定める程度の障害の状態にある十八歳以上の者
四 遺族年金又は遺族一時金 新型インフルエンザ予防接種を受けたことにより死亡した者の政令で定める遺族
五 葬祭料 新型インフルエンザ予防接種を受けたことにより死亡した者の葬祭を行う者
(政令への委任)
第五条 前条に定めるもののほか、給付の額、支給方法その他給付に関して必要な事項は、政令で定める。
2 前条第一号から第四号までの政令及び前項の規定に基づく政令は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成十四年法律第百九十二号)第十五条第一項第一号イに規定する副作用救済給付に係る同法第十六条第一項第一号から第四号までの政令及び同条第三項の規定に基づく政令の規定を参酌して定めるものとする。
(損害賠償との調整)
第六条 厚生労働大臣は、給付を受けるべき者が同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度において、給付を行わないことができる。
2 厚生労働大臣は、給付を受けた者が同一の事由について損害賠償を受けたときは、その価額の限度において、その受けた給付の額に相当する金額を返還させることができる。
(不正利得の徴収)
第七条 厚生労働大臣は、偽りその他不正の手段により給付を受けた者があるときは、国税徴収の例により、その者から、その受けた給付の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
(受給権の保護)
第八条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
(公課の禁止)
第九条 租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。
(保健福祉事業の推進)
第十条 国は、第四条第一号から第三号までに掲げる給付の支給に係る者であって居宅において介護を受けるものの医療、介護等に関し、その家庭からの相談に応ずる事業その他の保健福祉事業の推進を図るものとする。
第三章 特例承認新型インフルエンザワクチン製造販売業者との補償契約
第十一条 政府は、厚生労働大臣が新型インフルエンザワクチンの購入契約を締結する特例承認新型インフルエンザワクチン製造販売業者を相手方として、当該購入契約に係る新型インフルエンザワクチンの国内における使用による健康被害に係る損害を賠償することその他当該購入契約に係る新型インフルエンザワクチンに関して行われる請求に応ずることにより当該相手方及びその関係者に生ずる損失を政府が補償することを約する契約を締結することができる。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(施行前に新型インフルエンザ予防接種を受けた者についての適用等)
第二条 第二章の規定は、次条に規定する場合を除き、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に厚生労働大臣が行った新型インフルエンザ予防接種を受けた者についても適用する。
2 前項の場合において、同項に規定する者に係る当該新型インフルエンザ予防接種を受けたことによる疾病、障害又は死亡について、この法律の施行の際現に独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対してされている副作用救済給付(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第十五条第一項第一号イに規定する副作用救済給付をいう。以下同じ。)又は感染救済給付(同条第一項第二号イに規定する感染救済給付をいう。以下同じ。)の請求は、厚生労働大臣に対してされた第三条第一項の規定による給付の請求とみなす。
3 第一項の場合において、同項に規定する者に係る当該新型インフルエンザ予防接種を受けたことによる疾病、障害又は死亡について、施行日前に副作用救済給付又は感染救済給付を支給しない旨の決定がされている場合における当該新型インフルエンザ予防接種を受けた者についての第三条第一項の規定の適用については、同項中「受けたことによるもの」とあるのは、「受けたことによるもの(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第四条第六項に規定する医薬品の副作用又は同条第九項に規定する生物由来製品を介した感染等による疾病、障害又は死亡に該当するものを除く。)」とする。
第三条 施行日前に厚生労働大臣が行った新型インフルエンザ予防接種を受けた者に係る当該新型インフルエンザ予防接種を受けたことによる疾病、障害又は死亡について、施行日前に副作用救済給付又は感染救済給付を支給する旨の決定がされている場合における当該新型インフルエンザ予防接種を受けた者については、第三条第一項の規定は、適用しない。
(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法の一部改正)
第四条 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法の一部を次のように改正する。
附則第十九条の次に次の一条を加える。
(新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法との適用関係の調整)
第十九条の二 副作用救済給付又は感染救済給付は、第十六条第二項(第二十条第二項において準用する場合を含む。)に定めるもののほか、その者の医薬品の副作用又は生物由来製品を介した感染等による疾病、障害又は死亡が新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法(平成二十一年法律第九十八号)の施行の日以後に厚生労働大臣が行う同法第二条第三項に規定する新型インフルエンザ予防接種(以下この条において「新型インフルエンザ予防接種」という。)を受けたことによるものである場合及び当該疾病、障害又は死亡が同日前に厚生労働大臣が行った新型インフルエンザ予防接種を受けたことによるものであり、かつ、当該疾病、障害又は死亡について同法第三条第一項の規定の適用がある場合は、行わない。
(住民基本台帳法の一部改正)
第五条 住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)の一部を次のように改正する。
別表第一の五十七の項の次に次のように加える。
五十七の二 厚生労働省
新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法(平成二十一年法律第九十八号)による同法第三条第一項の給付の支給に関する事務であつて総務省令で定めるもの
(検討)
第六条 政府は、厚生労働大臣が行う新型インフルエンザ予防接種の実施状況、新型インフルエンザ予防接種の有効性及び安全性に関する調査研究の結果等を勘案し、将来発生が見込まれる新型インフルエンザ等感染症(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第六条第七項に規定する新型インフルエンザ等感染症をいう。)に係る予防接種の在り方、当該予防接種に係る健康被害の救済措置の在り方等について、速やかに検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(政令への委任)
第七条 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
総務大臣 原口一博
厚生労働大臣 長妻昭
内閣総理大臣 鳩山由紀夫