(目的)
第一条 この法律は、我が国の水田が農業生産及び食料の供給に果たす役割の重要性にかんがみ、水田の主要な生産物である米穀の新用途への利用を促進するための措置を講ずることにより、米穀の新たな需要の開拓及びその有効な利用の確保を図るとともに、水田の有効活用に寄与し、もって国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「新用途米穀加工品」とは、米穀粉、飼料その他の米穀の加工品であって、その普及により米穀の新用途への利用が促進されるものとして農林水産省令で定めるものをいう。
2 この法律において「新用途米穀」とは、新用途米穀加工品の原材料として用いられる米穀をいう。
3 この法律において「生産者」とは、新用途米穀の生産の事業を行う者又は農業協同組合その他の政令で定める法人で当該生産の事業を行う者を直接若しくは間接の構成員(以下単に「構成員」という。)とするもの(以下「農業協同組合等」という。)をいう。
4 この法律において「製造事業者」とは、新用途米穀加工品の製造の事業を行う者又は事業協同組合その他の政令で定める法人で当該製造の事業を行う者を構成員とするもの(以下「事業協同組合等」という。)をいう。
5 この法律において「特定畜産物等」とは、新用途米穀加工品である飼料の利用により生産された畜産物及び当該畜産物を原材料とする加工品であって、農林水産省令で定めるものをいう。
6 この法律において「促進事業者」とは、次に掲げる者又は事業協同組合その他の政令で定める法人でこれらの者を構成員とするもの(以下「促進事業協同組合等」という。)をいう。
一 新用途米穀加工品を原材料とする加工品の製造又は販売の事業を行う者
7 この法律において「生産製造連携事業」とは、生産者及び製造事業者(促進事業者が第二号ハに掲げる措置を行う場合にあっては、生産者、製造事業者及び促進事業者)が、第一号並びに第二号イ及びロに掲げる措置のすべて(促進事業者が同号ハに掲げる措置を行う場合にあっては、第一号並びに第二号イ、ロ及びハに掲げる措置のすべて)を行うことにより新用途米穀の生産から新用途米穀加工品の製造までの一連の行程(促進事業者が同号ハに掲げる措置を行う場合にあっては、新用途米穀加工品を原材料とする加工品又は特定畜産物等の製造若しくは生産又は販売の行程を含む。)の総合的な改善を図る事業をいう。
一 生産者と製造事業者との間における新用途米穀の安定的な取引関係の確立
二 前号に掲げる措置を行うために必要な次に掲げる措置
イ 新用途米穀加工品の原材料に適する新たな稲の品種の導入、新用途米穀の生産に要する費用の低減に資する生産の方式の導入その他の製造事業者の需要に適確に対応した新用途米穀の生産を図るための措置
ロ 新用途米穀加工品の製造に要する費用の低減に資する製造の方式の導入又は施設の整備その他の新用途米穀加工品の製造の高度化を図るための措置
ハ 新用途米穀加工品を原材料とする加工品又は特定畜産物等の製造若しくは生産の高度化又は需要の開拓を図るための措置であって、米穀の新用途への利用の促進に特に資するもの
8 この法律において「新品種育成事業」とは、新用途米穀加工品の原材料に適する稲の新品種の育成をする事業であって、米穀の新用途への利用の促進に特に資するものをいう。
(基本方針)
第三条 農林水産大臣は、政令で定めるところにより、米穀の新用途への利用の促進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 米穀の新用途への利用の促進の意義及び基本的な方向
二 生産製造連携事業及び新品種育成事業の実施に関する基本的な事項
三 前二号に掲げるもののほか、米穀の新用途への利用の促進に関する重要事項
四 水田の有効活用、新用途米穀の適正な流通の確保その他の米穀の新用途への利用の促進に際し配慮すべき重要事項
3 基本方針は、新用途米穀の生産及び新用途米穀加工品の製造に関する技術水準、食料需給の長期見通しその他の事情を勘案して定めるものとする。
4 農林水産大臣は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
5 農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。
6 農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(生産製造連携事業計画の認定)
第四条 生産者及び製造事業者(促進事業者が第二条第七項第二号ハに掲げる措置を行おうとする場合にあっては、生産者、製造事業者及び促進事業者)は、共同して、生産製造連携事業に関する計画(農業協同組合等、事業協同組合等又は促進事業協同組合等にあっては、その構成員の行う生産製造連携事業に関するものを含む。以下「生産製造連携事業計画」という。)を作成し、農林水産省令で定めるところにより、これを農林水産大臣に提出して、その生産製造連携事業計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 生産製造連携事業計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 生産製造連携事業計画を作成する者の商号、名称又は氏名、住所及び主たる事務所の所在地並びに法人にあっては、その代表者の氏名
三 生産製造連携事業の内容(当該生産製造連携事業に製造事業者又は促進事業者(当該製造事業者又は促進事業者が事業協同組合等又は促進事業協同組合等である場合にあっては、その構成員を含む。)の行う農業改良資金助成法(昭和三十一年法律第百二号)第二条の農業改良措置(第八条第一項において「農業改良措置」という。)を支援するための措置(農業経営に必要な施設の設置その他の農林水産省令で定めるものに限る。同項において「農業改良支援措置」という。)が含まれる場合にあっては、その措置の内容を含む。)及び実施期間
四 生産製造連携事業の用に供する施設の種類及び規模
六 生産製造連携事業に新用途米穀加工品である飼料の製造に関する措置が含まれる場合にあっては、当該飼料の製造を行う事業場の名称及び所在地並びに当該飼料を保管する施設及び当該飼料を販売する事業場の所在地
七 生産製造連携事業を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
3 農林水産大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その生産製造連携事業計画が基本方針に照らし適切なものであり、かつ、生産製造連携事業を確実に遂行するため適切なものであると認めるときは、その認定をするものとする。
(生産製造連携事業計画の変更等)
第五条 前条第一項の認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)は、当該認定に係る生産製造連携事業計画を変更しようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、共同して、農林水産大臣の認定を受けなければならない。ただし、農林水産省令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 認定事業者は、前項ただし書の農林水産省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。
3 農林水産大臣は、認定事業者が前条第一項の認定に係る生産製造連携事業計画(第一項の規定による変更の認定又は前項の規定による変更の届出があったときは、その変更後のもの。以下「認定生産製造連携事業計画」という。)に従って生産製造連携事業を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
4 前条第三項の規定は、第一項の認定について準用する。
(新品種育成計画の認定)
第六条 新品種育成事業を行おうとする者は、新品種育成事業に関する計画(以下「新品種育成計画」という。)を作成し、農林水産省令で定めるところにより、これを農林水産大臣に提出して、その新品種育成計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 新品種育成計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
三 新品種育成事業を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
3 農林水産大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その新品種育成計画が基本方針に照らし適切なものであり、かつ、新品種育成事業を確実に遂行するため適切なものであると認めるときは、その認定をするものとする。
(新品種育成計画の変更等)
第七条 前条第一項の認定を受けた者(以下「認定育成事業者」という。)は、当該認定に係る新品種育成計画を変更しようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、農林水産大臣の認定を受けなければならない。ただし、農林水産省令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 認定育成事業者は、前項ただし書の農林水産省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。
3 農林水産大臣は、認定育成事業者が前条第一項の認定に係る新品種育成計画(第一項の規定による変更の認定又は前項の規定による変更の届出があったときは、その変更後のもの。以下「認定新品種育成計画」という。)に従って新品種育成事業を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
4 前条第三項の規定は、第一項の認定について準用する。
(農業改良資金助成法の特例)
第八条 認定生産製造連携事業計画に従って行う生産製造連携事業(以下「認定生産製造連携事業」という。)に農業改良支援措置が含まれる場合において、当該認定生産製造連携事業を行う認定製造事業者等(第四条第一項の認定を受けた製造事業者又は促進事業者をいう。以下この項において同じ。)又は認定製造事業者等が事業協同組合等若しくは促進事業協同組合等である場合におけるその構成員が当該農業改良支援措置を行うときは、当該農業改良支援措置を農業改良措置とみなして、農業改良資金助成法の規定を適用する。この場合において、同法第三条第一項中「この法律」とあるのは「この法律及び米穀の新用途への利用の促進に関する法律」と、「農業者又はその組織する団体(以下「農業者等」という。)」とあるのは「同法第四条第二項第三号の農業改良支援措置を行う認定製造事業者等(同法第八条第一項の認定製造事業者等をいい、当該認定製造事業者等が同法第二条第四項の事業協同組合等又は同条第六項の促進事業協同組合等である場合には、その直接又は間接の構成員を含む。以下同じ。)」と、同条第二項中「この法律」とあるのは「この法律及び米穀の新用途への利用の促進に関する法律」と、「農業者等」とあるのは「認定製造事業者等」と、同法第四条中「一農業者等」とあるのは「一認定製造事業者等」と、同法第八条中「その申請者(その者が団体である場合には、その団体を構成する農業者)」とあるのは「その申請者」と、「その経営」とあるのは「その申請者と共同で米穀の新用途への利用の促進に関する法律第八条第一項の認定生産製造連携事業を実施する農業者の経営」と、「同項」とあるのは「前条第一項」とする。
2 農業改良資金助成法第二条(前項の規定により適用される場合を含む。)の農業改良資金(同法第五条第一項の特定地域資金を除く。)であって、認定事業者(認定事業者が農業協同組合等、事業協同組合等又は促進事業協同組合等である場合にあっては、その構成員を含む。)が認定生産製造連携事業を実施するのに必要なものの償還期間(据置期間を含む。)は、同項の規定にかかわらず、十二年を超えない範囲内で政令で定める期間とする。
(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の特例)
第九条 生産者がその生産製造連携事業計画について第四条第一項の認定を受けたときは、当該生産製造連携事業計画に記載された事業のうち、米穀の出荷又は販売の事業についての主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成六年法律第百十三号)第四十七条第一項又は第二項の規定による届出をしなければならないものについては、これらの規定による届出をしたものとみなす。
2 認定事業者がその認定生産製造連携事業計画の変更について第五条第一項の認定を受け、又は同条第二項の届出をしたときは、当該認定生産製造連携事業計画に記載された事業のうち、米穀の出荷又は販売の事業についての主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律第四十七条第一項又は第二項の規定による届出をしなければならないものについては、これらの規定による届出をしたものとみなす。
(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の特例)
第十条 製造事業者がその生産製造連携事業計画について第四条第一項の認定を受けたときは、当該生産製造連携事業計画に記載された事業のうち、飼料の製造の事業についての飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和二十八年法律第三十五号)第五十条第一項又は第四項の規定による届出をしなければならないものについては、これらの規定による届出をしたものとみなす。
2 認定事業者がその認定生産製造連携事業計画の変更について第五条第一項の認定を受け、又は同条第二項の届出をしたときは、当該認定生産製造連携事業計画に記載された事業のうち、飼料の製造の事業についての飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律第五十条第一項又は第四項の規定による届出をしなければならないものについては、これらの規定による届出をしたものとみなす。
(食品流通構造改善促進法の特例)
第十一条 食品流通構造改善促進法(平成三年法律第五十九号)第十一条第一項の規定により指定された食品流通構造改善促進機構は、同法第十二条各号に掲げる業務のほか、次に掲げる業務を行うことができる。
一 食品(食品流通構造改善促進法第二条第一項に規定する食品をいう。)の生産、製造、加工又は販売の事業を行う者(以下この項において「食品製造業者等」という。)が実施する認定生産製造連携事業に必要な資金の借入れに係る債務を保証すること。
二 食品製造業者等が実施する認定生産製造連携事業について、その実施に要する費用の一部を負担して当該認定生産製造連携事業に参加すること。
三 認定生産製造連携事業を実施する食品製造業者等の委託を受けて、認定生産製造連携事業計画に従って施設の整備を行うこと。
四 認定生産製造連携事業を実施する食品製造業者等に対し、必要な資金のあっせんを行うこと。
2 前項の規定により食品流通構造改善促進機構の業務が行われる場合には、次の表の上欄に掲げる食品流通構造改善促進法の規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。
第十三条第一項 |
前条第一号に掲げる業務 |
前条第一号に掲げる業務及び米穀の新用途への利用の促進に関する法律(以下「利用促進法」という。)第十一条第一項第一号に掲げる業務 |
第十四条第一項 |
第十二条第一号に掲げる業務 |
第十二条第一号に掲げる業務及び利用促進法第十一条第一項第一号に掲げる業務 |
第十八条第一項、第十九条及び第二十条第一項第一号 |
第十二条各号に掲げる業務 |
第十二条各号に掲げる業務又は利用促進法第十一条第一項各号に掲げる業務 |
第二十条第一項第三号 |
この章 |
この章若しくは利用促進法 |
第二十条第一項第四号 |
第十四条第一項 |
第十四条第一項(利用促進法第十一条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。) |
第二十一条第一号 |
第十三条第一項、第十四条第一項 |
第十三条第一項若しくは第十四条第一項(これらの規定を利用促進法第十一条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。) |
第二十三条第一号 |
第十八条第一項 |
第十八条第一項(利用促進法第十一条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この号において同じ。) |
|
同項 |
第十八条第一項 |
第二十三条第二号 |
第十九条 |
第十九条(利用促進法第十一条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。) |
(種苗法の特例)
第十二条 農林水産大臣は、認定新品種育成計画に従って行われる新品種育成事業の成果に係る出願品種(種苗法(平成十年法律第八十三号)第四条第一項に規定する出願品種をいい、当該認定新品種育成計画における新品種育成事業の実施期間の終了日から起算して二年以内に品種登録出願されたものに限る。以下この項において同じ。)に関する品種登録出願について、その出願者が次に掲げる者であって当該新品種育成事業を行う認定育成事業者であるときは、政令で定めるところにより、同法第六条第一項の規定により納付すべき出願料を軽減し、又は免除することができる。
一 その出願品種の育成(種苗法第三条第一項に規定する育成をいう。次項第一号において同じ。)をした者
二 その出願品種が種苗法第八条第一項に規定する従業者等(次項第二号において「従業者等」という。)が育成した同条第一項に規定する職務育成品種(同号において「職務育成品種」という。)であって、契約、勤務規則その他の定めによりあらかじめ同項に規定する使用者等(以下この条において「使用者等」という。)が品種登録出願をすることが定められている場合において、その品種登録出願をした使用者等
2 農林水産大臣は、認定新品種育成計画に従って行われる新品種育成事業の成果に係る登録品種(種苗法第二十条第一項に規定する登録品種をいい、当該認定新品種育成計画における新品種育成事業の実施期間の終了日から起算して二年以内に品種登録出願されたものに限る。以下この項において同じ。)について、同法第四十五条第一項の規定による第一年から第六年までの各年分の登録料を納付すべき者が次に掲げる者であって当該新品種育成事業を行う認定育成事業者であるときは、政令で定めるところにより、登録料を軽減し、又は免除することができる。
二 その登録品種が従業者等が育成した職務育成品種であって、契約、勤務規則その他の定めによりあらかじめ使用者等が品種登録出願をすること又は従業者等がした品種登録出願の出願者の名義を使用者等に変更することが定められている場合において、その品種登録出願をした使用者等又はその従業者等がした品種登録出願の出願者の名義の変更を受けた使用者等
(国の施策)
第十三条 国は、米穀の新用途への利用を促進するため、情報の提供、研究開発の推進及びその成果の普及その他の必要な施策を講ずるとともに、米穀の新用途への利用の促進の意義に対する国民の関心及び理解の増進に努めるものとする。
(資金の確保)
第十四条 国は、認定生産製造連携事業計画又は認定新品種育成計画に従って行われる生産製造連携事業又は新品種育成事業に必要な資金の確保に努めるものとする。
(指導及び助言)
第十五条 国は、認定生産製造連携事業計画又は認定新品種育成計画に従って行われる生産製造連携事業又は新品種育成事業の適確な実施に必要な指導及び助言を行うものとする。
(報告の徴収)
第十六条 農林水産大臣は、認定事業者又は認定育成事業者に対し、認定生産製造連携事業計画又は認定新品種育成計画の実施状況について報告を求めることができる。
(権限の委任)
第十七条 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を地方農政局長に委任することができる。
(罰則)
第十八条 第十六条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。