犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律
法令番号: 法律第九十五号
公布年月日: 平成19年6月27日
法令の形式: 法律
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十九年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍晋三
法律第九十五号
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律
(刑事訴訟法の一部改正)
第一条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
目次中「第一節の二」を「第二節」に、
第二節
証拠(第三百十七条―第三百二十八条)
第三節
公判の裁判(第三百二十九条―第三百五十条)
第三節
被害者参加(第三百十六条の三十三―第三百十六条の三十九)
第四節
証拠(第三百十七条―第三百二十八条)
第五節
公判の裁判(第三百二十九条―第三百五十条)
に改める。
第二百九十条の次に次の一条を加える。
第二百九十条の二 裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
一 刑法第百七十六条から第百七十八条の二まで若しくは第百八十一条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項(第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)若しくは第二百四十一条の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
二 児童福祉法第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪に係る事件
三 前二号に掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件
前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
裁判所は、第一項に定めるもののほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件を取り扱う場合において、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
裁判所は、第一項又は前項の決定をした事件について、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至つたとき、第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第一項第一号若しくは第二号に掲げる事件に該当しなくなつたとき又は同項第三号に掲げる事件若しくは前項に規定する事件に該当しないと認めるに至つたときは、決定で、第一項又は前項の決定を取り消さなければならない。
第二百九十一条第一項の次に次の一項を加える。
前条第一項又は第三項の決定があつたときは、前項の起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。
第二百九十一条の二中「前条第二項」を「前条第三項」に改め、同条ただし書中「但し」を「ただし」に、「あたる」を「当たる」に改める。
第二百九十二条の二第一項中「被害者又はその」を「被害者等又は当該被害者の」に改め、「(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹。以下この条において「被害者等」という。)」を削り、同条第三項及び第四項中「被害者等が」を「被害者等又は当該被害者の法定代理人が」に、「当該被害者等」を「これらの者」に改め、同条第五項中「被害者等」の下に「若しくは当該被害者の法定代理人」を加える。
第二百九十五条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同条第二項の次に次の一項を加える。
裁判長は、第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつた場合において、訴訟関係人のする尋問又は陳述が被害者特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問又は陳述を制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、同様とする。
第二百九十九条の二の次に次の一条を加える。
第二百九十九条の三 検察官は、第二百九十九条第一項の規定により証人の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認めるとき、又は被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、被害者特定事項が、被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができる。ただし、被告人に知られないようにすることを求めることについては、被害者特定事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限る。
第三百五条第三項中「前二項」を「第一項又は第二項の規定」に改め、同条第二項の次に次の一項を加える。
第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前二項の規定による証拠書類の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。
第三百十六条の五中第十一号を第十二号とし、第十号の次に次の一号を加える。
十一 第三百十六条の三十三第一項の規定による被告事件の手続への参加の申出に対する決定又は当該決定を取り消す決定をすること。
第三百十六条の十一中「、第九号及び第十号」を「及び第九号から第十一号まで」に改める。
第三百十六条の二十三中「第二百九十九条の二」の下に「及び第二百九十九条の三」を加える。
第三百二十一条の二第二項中「第三百五条第三項ただし書」を「第三百五条第四項ただし書」に改める。
第二編第三章中第三節を第五節とし、第二節を第四節とし、第一節の二を第二節とし、同節の次に次の一節を加える。
第三節 被害者参加
第三百十六条の三十三 裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
二 刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第二百十一条第一項、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪
三 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
四 前三号に掲げる罪の未遂罪
前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)が当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき、又は第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも、同様とする。
第三百十六条の三十四 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができる。
公判期日は、これを被害者参加人に通知しなければならない。
裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が多数である場合において、必要があると認めるときは、これらの者の全員又はその一部に対し、その中から、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることができる。
裁判所は、審理の状況、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の数その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができる。
前各項の規定は、公判準備において証人の尋問又は検証が行われる場合について準用する。
第三百十六条の三十五 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についてのこの法律の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができる。この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない。
第三百十六条の三十六 裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする。
前項の申出は、検察官の尋問が終わつた後(検察官の尋問がないときは、被告人又は弁護人の尋問が終わつた後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
裁判長は、第二百九十五条第一項から第三項までに規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする尋問が第一項に規定する事項以外の事項にわたるときは、これを制限することができる。
第三百十六条の三十七 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して第三百十一条第二項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする。
前項の申出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら供述を求める場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
裁判長は、第二百九十五条第一項及び第三項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする質問が第一項に規定する意見の陳述をするために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる。
第三百十六条の三十八 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。
前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
裁判長は、第二百九十五条第一項及び第三項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述が第一項に規定する範囲を超えるときは、これを制限することができる。
第一項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。
第三百十六条の三十九 裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項(同条第五項において準用する場合を含む。第四項において同じ。)の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、被害者参加人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、被害者参加人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、被害者参加人に付き添わせることができる。
前項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者は、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
裁判所は、第一項の規定により被害者参加人に付き添うこととされた者が、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは被告人に対する供述を求める行為若しくは訴訟関係人がする陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがあると認めるに至つたときその他その者を被害者参加人に付き添わせることが相当でないと認めるに至つたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。
裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日又は公判準備に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、被害者参加人が被告人の面前において在席、尋問、質問又は陳述をするときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、弁護人が出頭している場合に限り、被告人とその被害者参加人との間で、被告人から被害者参加人の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。
裁判所は、被害者参加人が第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日に出席する場合において、犯罪の性質、被害者参加人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその被害者参加人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。
第三百五十条の八中「第二百九十一条第二項」を「第二百九十一条第三項」に改める。
(民事訴訟法の一部改正)
第二条 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の一部を次のように改正する。
第二百三条の次に次の二条を加える。
(付添い)
第二百三条の二 裁判長は、証人の年齢又は心身の状態その他の事情を考慮し、証人が尋問を受ける場合に著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判長若しくは当事者の尋問若しくは証人の陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の陳述中、証人に付き添わせることができる。
2 前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の陳述中、裁判長若しくは当事者の尋問若しくは証人の陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
3 当事者が、第一項の規定による裁判長の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
(遮へいの措置)
第二百三条の三 裁判長は、事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係(証人がこれらの者が行った犯罪により害を被った者であることを含む。次条第二号において同じ。)その他の事情により、証人が当事者本人又はその法定代理人の面前(同条に規定する方法による場合を含む。)において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その当事者本人又は法定代理人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。
2 裁判長は、事案の性質、証人が犯罪により害を被った者であること、証人の年齢、心身の状態又は名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。
3 前条第三項の規定は、前二項の規定による裁判長の処置について準用する。
第二百四条中「遠隔の地に居住する証人の尋問をする」を「次に掲げる」に改め、「隔地者が」を削り、「よって、」の下に「証人の」を加え、同条に次の各号を加える。
一 証人が遠隔の地に居住するとき。
二 事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき。
(犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律の一部改正)
第三条 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成十二年法律第七十五号)の一部を次のように改正する。
第三条の見出し中「公判記録」を「被害者等による公判記録」に改め、同条第一項中「当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由がある場合であって、」を「閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び」に、「相当と認めるときは」を「閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き」に、「ことができる」を「ものとする」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(同種余罪の被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)
第三条の二 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、次に掲げる者から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、第一号又は第二号に掲げる者の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって、犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。
一 被告人又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一又は同種の罪の犯罪行為の被害者
二 前号に掲げる者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹
三 第一号に掲げる者の法定代理人
四 前三号に掲げる者から委託を受けた弁護士
2 前項の申出は、検察官を経由してしなければならない。この場合においては、その申出をする者は、同項各号のいずれかに該当する者であることを疎明する資料を提出しなければならない。
3 検察官は、第一項の申出があったときは、裁判所に対し、意見を付してこれを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた資料があるときは、これを送付するものとする。
4 前条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定による訴訟記録の閲覧又は謄写について準用する。
第五条第一項中「第三条及び」の下に「第三条の二並びに」を加える。
第八条第一項中「第三条第一項」の下に「又は第三条の二第一項」を加える。
第四条 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
題名の次に次の目次及び章名を付する。
目次
第一章
総則(第一条)
第二章
公判手続の傍聴(第二条)
第三章
公判記録の閲覧及び謄写(第三条・第四条)
第四章
民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解(第五条―第八条)
第五章
刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例
第一節
損害賠償命令の申立て等(第九条―第十四条)
第二節
審理及び裁判等(第十五条―第十八条)
第三節
異議等(第十九条―第二十三条)
第四節
民事訴訟手続への移行(第二十四条)
第五節
補則(第二十五条・第二十六条)
第六章
雑則(第二十七条―第二十九条)
附則
第一章 総則
第一条中「もってその」を「並びにこれらの者による損害賠償請求に係る紛争を簡易かつ迅速に解決することに資するための裁判手続の特例を定め、もってその権利利益の」に改め、同条の次に次の章名を付する。
第二章 公判手続の傍聴
第二条の見出しを削り、同条の次に次の章名を付する。
第三章 公判記録の閲覧及び謄写
第九条中「公判記録の閲覧及び謄写並びに」を「第三章に規定する訴訟記録の閲覧又は謄写、第四章に規定する」に改め、「和解」の下に「及び損害賠償命令事件に関する手続」を加え、同条を第二十九条とする。
第八条の見出しを「(公判記録の閲覧及び謄写等の手数料)」に改め、同条第一項中「第三条の二第一項」を「第四条第一項」に改め、「及び第五条第一項の規定による和解記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は和解に関する事項の証明書の交付の手数料」を削り、「別表第二の一から三までの項」を「別表第二の一の項から三の項まで」に、「(別表第二の」を「(同表」に改め、同条第二項中「第四条及び第五条」を「第四章」に、「民事訴訟法第二百七十五条の規定による訴え提起前の和解の例による」を「その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項及び第七条から第十条まで並びに別表第一の九の項、一七の項及び一八の項(上欄(4)に係る部分に限る。)並びに別表第二の一の項から三の項までの規定(同表一の項上欄中「(事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。)」とある部分を除く。)を準用する」に改め、同条を第二十七条とし、同条の次に次の一条を加える。
(損害賠償命令事件に関する手続の手数料等)
第二十八条 損害賠償命令の申立てをするには、二千円の手数料を納めなければならない。
2 民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項及び別表第一の一七の項の規定は、第十九条第一項の規定による異議の申立ての手数料について準用する。
3 損害賠償命令の申立てをした者は、第二十条第一項(第二十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、速やかに、民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項及び別表第一の一の項の規定により納めるべき手数料の額から損害賠償命令の申立てについて納めた手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。
4 前三項に規定するもののほか、損害賠償命令事件に関する手続の費用については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律の規定を準用する。
第七条中「第四条」を「第五条」に改め、同条を第八条とし、同条の次に次の一章及び章名を加える。
第五章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例
第一節 損害賠償命令の申立て等
(損害賠償命令の申立て)
第九条 次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。
一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪
二 次に掲げる罪又はその未遂罪
イ 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十六条から第百七十八条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦)の罪
ロ 刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)の罪
ハ 刑法第二百二十四条から第二百二十七条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪
ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)
2 損害賠償命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び刑事被告事件に係る訴因として特定された事実その他請求を特定するに足りる事実
3 前項の書面には、同項各号に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項以外の事項を記載してはならない。
(申立書の送達)
第十条 裁判所は、前条第二項の書面の提出を受けたときは、第十三条第一項第一号の規定により損害賠償命令の申立てを却下する場合を除き、遅滞なく、当該書面を申立ての相手方である被告人に送達しなければならない。
(管轄に関する決定の効力)
第十一条 刑事被告事件について刑事訴訟法第七条、第八条、第十一条第二項若しくは第十九条第一項の決定又は同法第十七条若しくは第十八条の規定による管轄移転の請求に対する決定があったときは、これらの決定により当該被告事件の審判を行うこととなった裁判所が、損害賠償命令の申立てについての審理及び裁判を行う。
(終局裁判の告知があるまでの取扱い)
第十二条 損害賠償命令の申立てについての審理(請求の放棄及び認諾並びに和解(第五条の規定による民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解を除く。)のための手続を含む。)及び裁判(次条第一項第一号又は第二号の規定によるものを除く。)は、刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでは、これを行わない。
2 裁判所は、前項に規定する終局裁判の告知があるまでの間、申立人に、当該刑事被告事件の公判期日を通知しなければならない。
(申立ての却下)
第十三条 裁判所は、次に掲げる場合には、決定で、損害賠償命令の申立てを却下しなければならない。
一 損害賠償命令の申立てが不適法であると認めるとき(刑事被告事件に係る罰条が撤回又は変更されたため、当該被告事件が第九条第一項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなったときを除く。)。
二 刑事訴訟法第四条、第五条又は第十条第二項の決定により、刑事被告事件が地方裁判所以外の裁判所に係属することとなったとき。
三 刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百二十九条若しくは第三百三十六条から第三百三十八条までの判決若しくは同法第三百三十九条の決定又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の決定があったとき。
四 刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合において、当該言渡しに係る罪が第九条第一項各号に掲げる罪に該当しないとき。
2 前項第一号に該当することを理由とする同項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 前項の規定による場合のほか、第一項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(時効の中断)
第十四条 損害賠償命令の申立ては、前条第一項の決定(同項第一号に該当することを理由とするものを除く。)の告知を受けたときは、当該告知を受けた時から六月以内に、その申立てに係る請求について、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
第二節 審理及び裁判等
(任意的口頭弁論)
第十五条 損害賠償命令の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
2 前項の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。
(審理)
第十六条 刑事被告事件について刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合(当該言渡しに係る罪が第九条第一項各号に掲げる罪に該当する場合に限る。)には、裁判所は、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理のための期日(以下「審理期日」という。)を開かなければならない。ただし、直ちに審理期日を開くことが相当でないと認めるときは、裁判長は、速やかに、最初の審理期日を定めなければならない。
2 審理期日には、当事者を呼び出さなければならない。
3 損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き、四回以内の審理期日において、審理を終結しなければならない。
4 裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、その取調べをしなければならない。
(審理の終結)
第十七条 裁判所は、審理を終結するときは、審理期日においてその旨を宣言しなければならない。
(損害賠償命令)
第十八条 損害賠償命令の申立てについての裁判(第十三条第一項の決定を除く。以下この条から第二十条までにおいて同じ。)は、次に掲げる事項を記載した決定書を作成して行わなければならない。
一 主文
二 請求の趣旨及び当事者の主張の要旨
三 理由の要旨
四 審理の終結の日
五 当事者及び法定代理人
六 裁判所
2 損害賠償命令については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
3 第一項の決定書は、当事者に送達しなければならない。この場合においては、損害賠償命令の申立てについての裁判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。
4 裁判所は、相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、決定書の作成に代えて、当事者が出頭する審理期日において主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、損害賠償命令の申立てについての裁判を行うことができる。この場合においては、当該裁判の効力は、その告知がされた時に生ずる。
5 裁判所は、前項の規定により損害賠償命令の申立てについての裁判を行った場合には、裁判所書記官に、第一項各号に掲げる事項を調書に記載させなければならない。
第三節 異議等
(異議の申立て等)
第十九条 当事者は、損害賠償命令の申立てについての裁判に対し、前条第三項の規定による送達又は同条第四項の規定による告知を受けた日から二週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。
2 裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。
3 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、仮執行の宣言を付したものを除き、その効力を失う。
5 適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、確定判決と同一の効力を有する。
6 民事訴訟法第三百五十八条及び第三百六十条の規定は、第一項の異議について準用する。
(訴え提起の擬制等)
第二十条 損害賠償命令の申立てについての裁判に対し適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てに係る請求については、その目的の価額に従い、当該申立ての時に、当該申立てをした者が指定した地(その指定がないときは、当該申立ての相手方である被告人の普通裁判籍の所在地)を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、第九条第二項の書面を訴状と、第十条の規定による送達を訴状の送達とみなす。
2 前項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、損害賠償命令の申立てに係る事件(以下「損害賠償命令事件」という。)に関する手続の費用は、訴訟費用の一部とする。
3 第一項の地方裁判所又は簡易裁判所は、その訴えに係る訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、決定で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。
4 前項の規定による移送の決定及び当該移送の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(記録の送付等)
第二十一条 前条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、第十六条第四項の規定により取り調べた当該被告事件の訴訟記録(以下「刑事関係記録」という。)中、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認めるもの、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認めるものその他前条第一項の地方裁判所又は簡易裁判所に送付することが相当でないと認めるものを特定しなければならない。
2 裁判所書記官は、前条第一項の地方裁判所又は簡易裁判所の裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録(前項の規定により裁判所が特定したものを除く。)を送付しなければならない。
(異議後の民事訴訟手続における書証の申出の特例)
第二十二条 第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における前条第二項の規定により送付された記録についての書証の申出は、民事訴訟法第二百十九条の規定にかかわらず、書証とすべきものを特定することによりすることができる。
(異議後の判決)
第二十三条 仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合において、当該訴えについてすべき判決が損害賠償命令と符合するときは、その判決において、損害賠償命令を認可しなければならない。ただし、損害賠償命令の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償命令を認可する場合を除き、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における当該訴えについてすべき判決においては、損害賠償命令を取り消さなければならない。
3 民事訴訟法第三百六十三条の規定は、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における訴訟費用について準用する。この場合において、同法第三百六十三条第一項中「異議を却下し、又は手形訴訟」とあるのは、「損害賠償命令」と読み替えるものとする。
第四節 民事訴訟手続への移行
第二十四条 裁判所は、最初の審理期日を開いた後、審理に日時を要するため第十六条第三項に規定するところにより審理を終結することが困難であると認めるときは、申立てにより又は職権で、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をすることができる。
2 次に掲げる場合には、裁判所は、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をしなければならない。
一 刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでに、申立人から、損害賠償命令の申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があったとき。
二 損害賠償命令の申立てについての裁判の告知があるまでに、当事者から、当該申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があり、かつ、これについて相手方の同意があったとき。
3 前二項の決定及び第一項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。
4 第二十条から第二十二条までの規定は、第一項又は第二項の規定により損害賠償命令事件が終了した場合について準用する。
第五節 補則
(損害賠償命令事件の記録の閲覧等)
第二十五条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は損害賠償命令事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
2 前項の規定は、損害賠償命令事件の記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
3 前二項の規定にかかわらず、刑事関係記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)の請求については、裁判所が許可したときに限り、することができる。
4 裁判所は、当事者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、不当な目的によるものと認める場合、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認める場合、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認める場合その他相当でないと認める場合を除き、その閲覧等を許可しなければならない。
5 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、正当な理由がある場合であって、関係者の名誉又は生活の平穏を害するおそれの有無、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれの有無その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。
6 損害賠償命令事件の記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、当該記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
7 第四項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第五項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(民事訴訟法の準用)
第二十六条 特別の定めがある場合を除き、損害賠償命令事件に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第二条、第十四条、第一編第二章第二節、第三章(第四十七条から第五十一条までを除く。)、第四章、第五章(第八十七条、第九十一条、第二節第二款、第百十六条及び第百十八条を除く。)、第六章及び第七章、第二編第一章(第百三十三条、第百三十四条、第百三十七条第二項及び第三項、第百三十八条第一項、第百三十九条、第百四十条、第百四十五条並びに第百四十六条を除く。)、第三章(第百五十六条の二、第百五十七条の二、第百五十八条、第百五十九条第三項、第百六十一条第三項及び第三節を除く。)、第四章(第二百三十五条第一項ただし書及び第二百三十六条を除く。)、第五章(第二百四十九条から第二百五十五条まで並びに第二百五十九条第一項及び第二項を除く。)及び第六章(第二百六十二条第二項、第二百六十三条及び第二百六十六条第二項を除く。)、第三編第三章、第四編並びに第八編(第四百三条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号までを除く。)の規定を準用する。
第六章 雑則
第六条を第七条とする。
第五条第一項中「第三条及び第三条の二並びに」を「前章及び」に改め、同条を第六条とする。
第四条を第五条とし、第三条の二を第四条とし、同条の次に次の章名を付する。
第四章 民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
一 第一条(刑事訴訟法第二百九十二条の二の改正規定に限る。)並びに次条及び附則第六条(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号)第五十八条の改正規定に限る。)の規定 公布の日から起算して二十日を経過した日
二 第一条(刑事訴訟法第二百九十条の次に一条を加える改正規定、同法第二百九十一条第一項の次に一項を加える改正規定、同法第二百九十一条の二及び第二百九十五条の改正規定、同法第二百九十九条の二の次に一条を加える改正規定並びに同法第三百五条、第三百十六条の二十三、第三百二十一条の二第二項及び第三百五十条の八の改正規定に限る。)及び第三条の規定 公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日
三 第二条の規定 公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日
(調整規定)
第二条 前条第一号に掲げる規定の施行の日から同条第二号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における第一条の規定による改正後の刑事訴訟法第二百九十二条の二の規定の適用については、同条第一項中「被害者等」とあるのは、「被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)」とする。
(経過措置)
第三条 第一条の規定による改正後の刑事訴訟法第三百十六条の五第十一号、第三百十六条の十一(第三百十六条の五第十一号に係る部分に限る。)及び第二編第三章第三節の規定は、この法律の施行の際現に係属している刑事被告事件については、適用しない。この法律の施行の日前判決が確定した刑事被告事件であってこの法律の施行の日以後再審開始の決定が確定したものについても、同様とする。
2 第四条の規定による改正後の犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第五章及び第二十八条の規定は、この法律の施行の際現に係属している刑事被告事件については、適用しない。
(民事執行法の一部改正)
第四条 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の一部を次のように改正する。
第二十二条第三号の次に次の一号を加える。
三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
第二十三条第一項第三号中「、口頭弁論終結後の承継人」を「口頭弁論終結後の承継人、同条第三号の二に掲げる債務名義又は同条第七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあつては審理終結後の承継人」に改める。
第三十三条第二項第一号中「及び」を「並びに」に改め、「のうち」の下に「次号及び」を加え、同号の次に次の一号を加える。
一の二 第二十二条第三号の二に掲げる債務名義並びに同条第七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令並びに損害賠償命令事件に関する手続における和解及び請求の認諾に係るもの 損害賠償命令事件が係属していた地方裁判所
第三十三条第二項第六号中「係るもの」の下に「(第一号の二に掲げるものを除く。)」を加える。
第三十五条第一項中「第二十二条第二号」の下に「、第三号の二」を加える。
第百七十三条第二項中「第三十三条第二項各号(」の下に「第一号の二及び」を加える。
第百九十七条第一項及び第二百一条第二号中「第二十二条第二号」の下に「、第三号の二」を加える。
(刑事確定訴訟記録法の一部改正)
第五条 刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項中「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」を「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」に、「第五条第一項」を「第六条第一項」に改める。
(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正)
第六条 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を次のように改正する。
第五十八条中「被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹。以下この条において同じ。)」を「被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。)又は当該被害者の法定代理人」に、「当該被害者又はその法定代理人」を「これらの者」に改める。
第六十四条第一項の表第百五十七条の二、第百五十七条の四第一項、第四百三十五条第七号ただし書の項中「第百五十七条の四第一項」の下に「、第三百十六条の三十九第一項から第三項まで」を加える。
(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部改正に伴う調整規定)
第七条 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律(平成十九年法律第六十号)の施行の日がこの法律の施行の日後となる場合には、前条のうち裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第六十四条第一項の表の改正規定中「第六十四条第一項」とあるのは、「第六十四条」とする。
(有限責任事業組合契約に関する法律の一部改正)
第八条 有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
第二十一条第一項第二号中「、口頭弁論終結後の承継人」を「口頭弁論終結後の承継人、同条第三号の二に掲げる債務名義又は同条第七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあっては審理終結後の承継人」に改める。
(検討等)
第九条 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
第十条 政府は、被害者参加人(第一条の規定による改正後の刑事訴訟法第三百十六条の三十三第三項に規定する被害者参加人をいう。以下同じ。)の委託を受けた弁護士の役割の重要性にかんがみ、資力の乏しい被害者参加人も弁護士の法的援助を受けられるようにするため、必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
法務大臣 長勢甚遠
経済産業大臣 甘利明
内閣総理大臣 安倍晋三