大気汚染防止法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第56号
公布年月日: 平成16年5月26日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

浮遊粒子状物質による大気汚染は、工場等の固定発生源や自動車排出ガスへの規制強化等の施策を実施してきたが、大都市地域を中心に環境基準の達成率が低い状況が続いている。また、光化学オキシダントによる大気汚染も、窒素酸化物の排出規制強化を行ってきたが、約半数の都府県で注意報が発令され、年間延べ200日に及ぶなど深刻な状況が継続している。このような状況を踏まえ、浮遊粒子状物質及び光化学オキシダントの原因物質の一つである揮発性有機化合物について、工場等の固定発生源からの排出規制措置等を講ずるため、本法律案を提出するものである。

参照した発言:
第159回国会 衆議院 環境委員会 第7号

審議経過

第159回国会

衆議院
(平成16年4月13日)
(平成16年4月20日)
(平成16年4月22日)
参議院
(平成16年5月13日)
(平成16年5月18日)
(平成16年5月19日)
大気汚染防止法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十六年五月二十六日
内閣総理大臣 小泉純一郎
法律第五十六号
大気汚染防止法の一部を改正する法律
大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
目次中
第二章の二
粉じんに関する規制(第十八条―第十八条の十九)
第二章の三
有害大気汚染物質対策の推進(第十八条の二十―第十八条の二十四)
第二章の二
揮発性有機化合物の排出の規制等(第十七条の二―第十七条の十四)
第二章の三
粉じんに関する規制(第十八条―第十八条の十九)
第二章の四
有害大気汚染物質対策の推進(第十八条の二十―第十八条の二十四)
に改める。
第一条中「ばい煙並びに」を「ばい煙、揮発性有機化合物及び」に改める。
第二条の見出しを「(定義等)」に改め、同条中第十項を第十四項とし、第四項から第九項までを四項ずつ繰り下げ、第三項の次に次の四項を加える。
4 この法律において「揮発性有機化合物」とは、大気中に排出され、又は飛散した時に気体である有機化合物(浮遊粒子状物質及びオキシダントの生成の原因とならない物質として政令で定める物質を除く。)をいう。
5 この法律において「揮発性有機化合物排出施設」とは、工場又は事業場に設置される施設で揮発性有機化合物を排出するもののうち、その施設から排出される揮発性有機化合物が大気の汚染の原因となるものであつて、揮発性有機化合物の排出量が多いためにその規制を行うことが特に必要なものとして政令で定めるものをいう。
6 前項の政令は、事業者が自主的に行う揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制のための取組が促進されるよう十分配慮して定めるものとする。
7 この法律において「排出口」とは、ばい煙発生施設において発生するばい煙又は揮発性有機化合物排出施設に係る揮発性有機化合物を大気中に排出するために設けられた煙突その他の施設の開口部をいう。
第三条第一項中「排出基準」を「ばい煙に係る排出基準」に改め、同条第二項第一号中「(ばい煙発生施設において発生するばい煙を大気中に排出するために設けられた煙突その他の施設の開口部をいう。以下同じ。)」を削る。
第九条中「単に」を「この章において」に改める。
第二章の三を第二章の四とし、第二章の二を第二章の三とし、第二章の次に次の一章を加える。
第二章の二 揮発性有機化合物の排出の規制等
(施策等の実施の指針)
第十七条の二 揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制に関する施策その他の措置は、この章に規定する揮発性有機化合物の排出の規制と事業者が自主的に行う揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制のための取組とを適切に組み合わせて、効果的な揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制を図ることを旨として、実施されなければならない。
(排出基準)
第十七条の三 揮発性有機化合物に係る排出基準は、揮発性有機化合物排出施設の排出口から大気中に排出される排出物に含まれる揮発性有機化合物の量(以下「揮発性有機化合物濃度」という。)について、施設の種類及び規模ごとの許容限度として、環境省令で定める。
(揮発性有機化合物排出施設の設置の届出)
第十七条の四 揮発性有機化合物を大気中に排出する者は、揮発性有機化合物排出施設を設置しようとするときは、環境省令で定めるところにより、次の事項を都道府県知事に届け出なければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 工場又は事業場の名称及び所在地
三 揮発性有機化合物排出施設の種類
四 揮発性有機化合物排出施設の構造
五 揮発性有機化合物排出施設の使用の方法
六 揮発性有機化合物の処理の方法
2 前項の規定による届出には、揮発性有機化合物濃度及び揮発性有機化合物の排出の方法その他の環境省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。
(経過措置)
第十七条の五 一の施設が揮発性有機化合物排出施設となつた際現にその施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。)であつて揮発性有機化合物を大気中に排出するものは、当該施設が揮発性有機化合物排出施設となつた日から三十日以内に、環境省令で定めるところにより、前条第一項各号に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
2 前条第二項の規定は、前項の規定による届出について準用する。
(揮発性有機化合物排出施設の構造等の変更の届出)
第十七条の六 第十七条の四第一項又は前条第一項の規定による届出をした者は、その届出に係る第十七条の四第一項第四号から第六号までに掲げる事項の変更をしようとするときは、環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 第十七条の四第二項の規定は、前項の規定による届出について準用する。
(計画変更命令等)
第十七条の七 都道府県知事は、第十七条の四第一項又は前条第一項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る揮発性有機化合物排出施設に係る揮発性有機化合物濃度がその揮発性有機化合物排出施設に係る排出基準(第十七条の三の排出基準をいう。以下この章において「排出基準」という。)に適合しないと認めるときは、その届出を受理した日から六十日以内に限り、その届出をした者に対し、その届出に係る揮発性有機化合物排出施設の構造若しくは使用の方法若しくは揮発性有機化合物の処理の方法に関する計画の変更(前条第一項の規定による届出に係る計画の廃止を含む。)又は第十七条の四第一項の規定による届出に係る揮発性有機化合物排出施設の設置に関する計画の廃止を命ずることができる。
(実施の制限)
第十七条の八 第十七条の四第一項の規定による届出をした者又は第十七条の六第一項の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から六十日を経過した後でなければ、それぞれ、その届出に係る揮発性有機化合物排出施設を設置し、又はその届出に係る揮発性有機化合物排出施設の構造若しくは使用の方法若しくは揮発性有機化合物の処理の方法の変更をしてはならない。
(排出基準の遵守義務)
第十七条の九 揮発性有機化合物排出施設から揮発性有機化合物を大気中に排出する者(以下「揮発性有機化合物排出者」という。)は、その揮発性有機化合物排出施設に係る排出基準を遵守しなければならない。
(改善命令等)
第十七条の十 都道府県知事は、揮発性有機化合物排出者が排出する揮発性有機化合物の排出口における揮発性有機化合物濃度が排出基準に適合しないと認めるときは、当該揮発性有機化合物排出者に対し、期限を定めて当該揮発性有機化合物排出施設の構造若しくは使用の方法若しくは当該揮発性有機化合物排出施設に係る揮発性有機化合物の処理の方法の改善を命じ、又は当該揮発性有機化合物排出施設の使用の一時停止を命ずることができる。
(揮発性有機化合物濃度の測定)
第十七条の十一 揮発性有機化合物排出者は、環境省令で定めるところにより、当該揮発性有機化合物排出施設に係る揮発性有機化合物濃度を測定し、その結果を記録しておかなければならない。
(準用)
第十七条の十二 第十条第二項の規定は、第十七条の八の規定による実施の制限について準用する。
2 第十一条及び第十二条の規定は、第十七条の四第一項又は第十七条の五第一項の規定による届出をした者について準用する。
3 第十三条第二項の規定は、第十七条の十の規定による命令について準用する。
(事業者の責務)
第十七条の十三 事業者は、その事業活動に伴う揮発性有機化合物の大気中への排出又は飛散の状況を把握するとともに、当該排出又は飛散を抑制するために必要な措置を講ずるようにしなければならない。
(国民の努力)
第十七条の十四 何人も、その日常生活に伴う揮発性有機化合物の大気中への排出又は飛散を抑制するように努めるとともに、製品の購入に当たつて揮発性有機化合物の使用量の少ない製品を選択すること等により揮発性有機化合物の排出又は飛散の抑制を促進するよう努めなければならない。
第二十三条第一項中「排出する者」の下に「、揮発性有機化合物を排出し、若しくは飛散させる者」を、「排出量」の下に「若しくは揮発性有機化合物の排出量若しくは飛散の量」を加え、同条第二項中「がばい煙」の下に「又は揮発性有機化合物」を、「ばい煙排出者」の下に「又は揮発性有機化合物排出者」を加え、「又はばい煙濃度」を「若しくはばい煙濃度又は揮発性有機化合物濃度」に改め、「ばい煙発生施設」の下に「又は揮発性有機化合物排出施設」を加える。
第二十六条第一項中「に設置している者」の下に「、揮発性有機化合物排出施設を設置している者」を、「事故の状況」の下に「、揮発性有機化合物排出施設の状況」を、「ばい煙処理施設、特定施設」の下に「、揮発性有機化合物排出施設」を加える。
第二十七条第二項中「特定施設」の下に「、揮発性有機化合物排出施設」を、「特定物質」の下に「、揮発性有機化合物」を、「あつては、」の下に「第十七条の十二第一項又は」を、「これらの規定を」の下に「第十七条の十二第二項又は」を、「及び第三項」の下に「、第十七条の四から第十七条の八まで」を加え、同条第三項中「規定を」の下に「第十七条の十二第二項又は」を、「含む。)」の下に「、第十七条の四、第十七条の六」を加え、同条第四項中「第九条の二」の下に「、第十七条の七」を加え、同条第六項中「第三項」の下に「、第十七条の十」を加える。
第二十八条第二項中「ばい煙発生施設」の下に「、揮発性有機化合物排出施設」を、「又はばい煙」の下に「、揮発性有機化合物」を加える。
第二十八条の二第一号中「第十七条第三項」の下に「、第十七条の七、第十七条の十」を加え、同条第四号中「第二十一条第二項」を「第二十一条第三項」に改める。
第二十九条中「ばい煙」の下に「、揮発性有機化合物」を加える。
第三十条中「特定物質」の下に「、揮発性有機化合物」を加える。
第三十二条中「ばい煙の大気中への排出に関し」の下に「、揮発性有機化合物排出施設について、その揮発性有機化合物排出施設に係る揮発性有機化合物以外の物質の大気中への排出に関し、揮発性有機化合物排出施設以外の揮発性有機化合物を排出する施設について、その施設に係る揮発性有機化合物の大気中への排出に関し」を加える。
第三十三条中「第三項」の下に「、第十七条の七、第十七条の十」を加える。
第三十四条第一号中「第八条第一項」の下に「、第十七条の四第一項、第十七条の六第一項」を加える。
第三十五条第一号中「第七条第一項」の下に「、第十七条の五第一項」を加え、同条第二号中「第十条第一項」の下に「、第十七条の八」を加える。
第三十七条中「規定を」の下に「第十七条の十二第二項又は」を加える。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第二十八条の二第四号の改正規定は、公布の日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(地方税法の一部改正)
第三条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
附則第三十二条第四項中「第二条第十項」を「第二条第十四項」に改める。
(小規模企業者等設備導入資金助成法の一部改正)
第四条 小規模企業者等設備導入資金助成法(昭和三十一年法律第百十五号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項ただし書中「同条第六項」を「同条第十項」に、「同条第七項」を「同条第十一項」に改める。
(特定工場における公害防止組織の整備に関する法律の一部改正)
第五条 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和四十六年法律第百七号)の一部を次のように改正する。
第二条第四号及び第五号中「第二条第五項」を「第二条第九項」に改める。
総務大臣 麻生太郎
経済産業大臣 中川昭一
環境大臣 小池百合子
内閣総理大臣 小泉純一郎