日本国有鉄道清算事業団法
法令番号: 法律第九十号
公布年月日: 昭和61年12月4日
法令の形式: 法律
日本国有鉄道清算事業団法をここに公布する。
御名御璽
昭和六十一年十二月四日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第九十号
日本国有鉄道清算事業団法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
役員及び職員(第八条―第十九条)
第三章
資産処分審議会(第二十条―第二十五条)
第四章
業務(第二十六条―第三十条)
第五章
事業団の債務の償還等に関する措置(第三十一条―第三十五条)
第六章
財務及び会計(第三十六条―第四十四条)
第七章
監督(第四十五条・第四十六条)
第八章
雑則(第四十七条―第五十条)
第九章
罰則(第五十一条―第五十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本国有鉄道清算事業団は、日本国有鉄道改革法(昭和六十一年法律第八十七号。以下「改革法」という。)に定める日本国有鉄道の改革の実施に伴い、旅客鉄道株式会社等による日本国有鉄道からの事業等の引継ぎ並びにその権利及び義務の承継等の後において、日本国有鉄道の長期借入金及び鉄道債券に係る債務(以下「国鉄長期債務」という。)その他の債務の償還、日本国有鉄道の土地その他の資産の処分等を適切に行い、もつて改革法に基づく施策の円滑な遂行に資することを目的とする。
2 日本国有鉄道清算事業団は、前項に定めるもののほか、臨時に、その職員のうち再就職を必要とする者についての再就職の促進を図るための業務を行うことを目的とする。
(法人格)
第二条 日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 事業団は、主たる事務所を東京都に置く。
2 事業団は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第四条 事業団の資本金は、改革法附則第二項の規定の施行の際現に同項の規定による廃止前の日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)第五条の規定により政府から日本国有鉄道に対し出資されている金額とする。
(登記)
第五条 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 事業団でない者は、日本国有鉄道清算事業団又は日本国有鉄道という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、事業団について準用する。
第二章 役員及び職員
(役員)
第八条 事業団に、役員として、理事長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置く。
2 事業団に、役員として、前項の役員のほか、臨時に、副理事長一人及び理事三人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第九条 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
2 副理事長は、事業団を代表し、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 理事は、理事長の定めるところにより、理事長及び副理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長及び副理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長及び副理事長が欠員のときはその職務を行う。
4 監事は、事業団の業務を監査する。
5 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は主務大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十条 理事長及び監事は、運輸大臣が任命する。
2 副理事長及び理事は、運輸大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第十一条 理事長及び副理事長の任期は三年とし、理事及び監事の任期は二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十二条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)
二 物品の製造若しくは販売、土地の売買若しくは工事の請負を業とする者であつて事業団と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)
三 前号に掲げる事業者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)
(役員の解任)
第十三条 運輸大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 運輸大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定によりその任命に係る役員を解任しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第十四条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
(代表権の制限)
第十五条 事業団と理事長又は副理事長との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が事業団を代表する。
(代理人の選任)
第十六条 理事長及び副理事長は、事業団の理事又は職員のうちから、事業団の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第十七条 事業団の職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の秘密保持義務)
第十八条 役員若しくは資産処分業務(第二十六条第一項第二号及び第三号の業務をいう。以下同じ。)に従事する職員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第十九条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 資産処分審議会
(設置)
第二十条 事業団に、資産処分審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(権限)
第二十一条 理事長は、次に掲げる場合には、審議会の意見を聴かなければならない。
一 資産処分業務に関する基本的な方針を定めようとするとき。
二 資産処分業務に係る業務方法書を作成し、又は変更しようとするとき。
三 運輸省令で定める重要な資産に係る資産処分業務を行おうとするとき。
2 審議会は、前項に掲げる場合のほか、理事長の諮問に応じ、資産処分業務に関する重要事項を審議する。
(組織)
第二十二条 審議会は、委員十人以内をもつて組織する。
2 審議会に会長一人を置き、委員の互選により選任する。
3 会長は、会務を総理する。
4 審議会は、あらかじめ、委員のうちから、会長に事故がある場合にその職務を代理する者を定めておかなければならない。
(委員の任命)
第二十三条 委員は、資産処分業務に関し学識経験を有する者のうちから、運輸大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(委員の任期)
第二十四条 委員の任期は、二年とする。
2 委員は、再任されることができる。
(準用規定)
第二十五条 第十二条、第十三条及び第十八条の規定は、委員について準用する。
第四章 業務
(業務の範囲)
第二十六条 事業団は、第一条第一項の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 国鉄長期債務その他の債務の償還及び当該債務に係る利子の支払を行うこと。
二 前号の業務その他業務の遂行に必要な資金に充てるために土地その他の資産の処分を行うこと。
三 前号の業務を効果的に推進するため事業団の所有する土地に係る宅地の造成及びこれに関連する施設の整備並びに当該宅地及び施設の管理及び譲渡を行うこと。
四 前三号に掲げるもののほか、日本国有鉄道の改革の実施に伴い事業団に帰属した権利及び義務の行使及び履行のために必要な義務を行うこと。
五 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。
六 前各号に掲げるもののほか、第一条第一項の目的を達成するために必要な業務を行うこと。
2 事業団は、前項に規定する業務のほか、これらの業務の遂行に支障のない範囲内で、委託を受けて、宅地の造成及びこれに関連する施設の整備並びに当該宅地及び施設の管理及び譲渡に関する業務(同項第三号の業務に関連して行うものに限る。)を行うことができる。
3 事業団は、前二項に規定する業務のほか、第一条第二項の目的を達成するため、臨時に、その職員のうち再就職を必要とする者についての再就職の促進のために必要な業務を行う。
4 事業団は、第一項第六号の業務又は第二項に規定する業務を行おうとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(投資)
第二十七条 事業団は、主務大臣の認可を受けて、事業団の委託によりその業務の一部を行う事業及び事業団の業務と密接に関連する事業でその業務の円滑な遂行に資するものに投資することができる。
2 前項の規定により事業団が投資することができる事業の範囲は、政令で定める。
(業務の委託)
第二十八条 事業団は、主務大臣の認可を受けて定める基準に従つてその業務の一部を委託することができる。
(業務方法書)
第二十九条 事業団は、業務開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、主務省令で定める。
(土地の処分の方法)
第三十条 事業団は、その所有する土地の譲渡、貸付けその他の処分に関する契約を締結しようとする場合には、その処分の公正かつ適切な実施を確保するため、一般競争入札の方法に準じた方法その他の運輸省令で定める方法によらなければならない。
第五章 事業団の債務の償還等に関する措置
(償還基本方針)
第三十一条 政府は、事業団の債務の償還等(債務の償還及び当該債務に係る利子の支払をいう。以下この章において同じ。)の確実かつ円滑な実施を図るものとし、このため、事業団の債務の償還等に関する基本的な方針(以下「償還基本方針」という。)を定めるものとする。
2 償還基本方針は、事業団において行う債務の償還等の予定額を明らかにするとともに、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 事業団が債務の償還等のために行う資産の処分その他の業務に関する事項
二 事業団の債務の償還等について政府が講ずる施策に関する事項
(事業団の償還実施方針)
第三十二条 事業団は、その債務の償還等を確実かつ円滑に実施するため、運輸省令で定めるところにより、その債務の償還等のために行う資産の処分、資金の確保その他の事項についての実施方針(以下「償還実施方針」という。)を定めなければならない。
2 事業団は、償還実施方針を定めようとするときは、運輸大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(償還計画)
第三十三条 事業団は、毎事業年度、その債務の償還計画を立てて、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(事業団による資金の確保)
第三十四条 事業団は、その債務の償還等を確実かつ円滑に実施するため、その資金の効果的な処分その他の措置により必要な資金の確保に努めなければならない。
(政府による助成等)
第三十五条 政府は、償還基本方針に従い、事業団の債務の償還等の確実かつ円滑な実施を図るため、予算の範囲内において、事業団に対し、補助金等を交付し、又はその他の援助をするものとする。
2 政府は、前項に定めるもののほか、事業団に対する必要な資金の融通及びあつせんその他の措置を講ずるものとする。
第六章 財務及び会計
(事業年度)
第三十六条 事業団の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(事業計画等の認可)
第三十七条 事業団は、毎事業年度、事業計画、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第三十八条 事業団は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 事業団は、前項の規定により財務諸表を主務大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書を添え、並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見を付けなければならない。
3 事業団は、第一項の規定による主務大臣の承認を受けたときは、遅帯なく、財務諸表を官報に公告し、かつ、各事務所に備えて置かなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十九条 事業団は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめなければならない。
2 事業団は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金及び日本国有鉄道清算事業団債券)
第四十条 事業団は、運輸大臣の認可を受けて、長期借入金若しくは短期借入金をし、又は日本国有鉄道清算事業団債券(以下「債券」という。)を発行することができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、運輸大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
4 第一項の規定による債券の債権者は、事業団の財産について他の債権者に先立つて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
5 前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
6 事業団は、運輸大臣の認可を受けて、債券の発行に関する事務の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。
7 商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百九条から第三百十一条までの規定は、前項の規定により委託を受けた銀行又は信託会社について準用する。
8 第一項及び第四項から前項までに定めるもののほか、債券に関し必要な事項は、政令で定める。
(債務保証)
第四十一条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、事業団の長期借入金又は債券に係る債務(国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する特別措置に関する法律(昭和二十八年法律第五十一号)第二条の規定に基づき政府が保証契約をすることができる債務を除く。)について保証することができる。
(余裕金の運用)
第四十二条 事業団は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債、地方債その他運輸大臣の指定する有価証券の取得
二 資金運用部への預託
三 銀行その他運輸大臣の指定する金融機関への預金又は郵便貯金
四 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託
(給与及び退職手当の支給の基準)
第四十三条 事業団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、運輸大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(主務省令への委任)
第四十四条 この法律及びこれに基づく政令に規定するもののほか、事業団の財務及び会計に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第七章 監督
(監督)
第四十五条 事業団は、主務大臣が監督する。
2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十六条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務並びに資産及び債務の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、事業団の事務所その他の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第八章 雑則
(解散)
第四十七条 事業団の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第四十八条 運輸大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十一条第一項第三号又は第三十条の規定により運輸省令を定めようとするとき。
二 第二十六条第四項、第三十三条又は第四十条第一項、第二項ただし書若しくは第六項の規定による認可をしようとするとき。
三 第三十二条第二項又は第四十三条の規定による承認をしようとするとき。
四 第四十二条第一号又は第三号の規定による指定をしようとするとき。
2 主務大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十七条第一項、第二十九条第一項又は第三十七条の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十九条第二項又は第四十四条の規定により主務省令を定めようとするとき。
三 第三十八条第一項の規定による承認をしようとするとき。
(主務大臣等)
第四十九条 この法律における主務大臣は、次のとおりとする。
一 役員及び職員並びに財務及び会計その他管理業務に関する事項(次号及び第三号に掲げる事項を除く。)については、運輸大臣
二 第二十六条第一項及び第二項に規定する業務に関する事項(当該事項に係る第三十七条の規定による認可及び第三十八条第一項の規定による承認を含む。)については、運輸大臣
三 第二十六条第三項に規定する業務に関する事項(当該事項に係る第三十七条の規定による認可及び第三十八条第一項の規定による承認を含む。)については、内閣総理大臣、運輸大臣、労働大臣及び自治大臣
2 この法律における主務省令は、前項各号に掲げる事項に関し、それぞれ同項各号に定める主務大臣の発する命令とする。
(他の法令の準用)
第五十条 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)及び政令で定めるその他の法令については、政令で定めるところにより、事業団を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する。
第九章 罰則
(罰則)
第五十一条 第十八条(第二十五条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第五十二条 第四十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、二十万円以下の罰金に処する。
第五十三条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、十万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により運輸大臣又は主務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の政令の規定に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十六条第一項から第三項までに規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第四十二条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第四十五条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。
第五十四条 第六条の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第六条(日本国有鉄道という名称に係る部分に限る。)の規定は、改革法附則第二項の規定の施行の日(昭和六十二年四月一日)から施行する。
(事業団への移行)
第二条 日本国有鉄道は、改革法附則第二項の規定の施行の時において、事業団となるものとする。この場合において、他の法令の適用については、政令で定めるところにより、事業団を特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人又はこれに類する法人とみなす。
(日本国有鉄道の役員に関する経過措置)
第三条 改革法附則第二項の規定の施行の日の前日において日本国有鉄道の総裁、副総裁、理事又は監査委員会の委員である者の任期は、同項の規定による廃止前の日本国有鉄道法第十九条第五項の規定にかかわらず、その日に満了する。
(名称に関する経過措置)
第四条 この法律の施行の際現に日本国有鉄道清算事業団という名称を用いている者については、第六条(日本国有鉄道清算事業団という名称に係る部分に限る。)の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
(役員に関する特例)
第五条 第八条第二項の規定により置かれる役員は、昭和六十五年四月一日までの間に限り置くことができる。
2 第八条第二項の規定により置かれる役員の任期については、第十一条第一項の規定にかかわらず、昭和六十五年四月一日までとすることができる。
(業務に関する特例)
第六条 事業団は、昭和六十五年四月一日までの間に限り、第二十六条第一項から第三項までに定めるもののほか、次の業務を行うことができる。
一 第二十六条第一項から第三項までに規定する業務の遂行に支障のない範囲内で、旅客会社(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和六十一年法律第八十八号)第一条第一項に規定する旅客会社をいう。以下同じ。)又は日本貨物鉄道株式会社の委託を受けて、旅客又は貨物の取扱い、鉄道施設の保守その他の業務を行うこと。
二 改革法附則第二項の規定の施行前に日本国有鉄道が委託を受けた工事であつて事業団が引き続き行うものとされたものを施行すること。
2 前項の場合には、第五十三条第三号中「第二十六条第一項から第三項まで」とあるのは、「第二十六条第一項から第三項まで及び附則第六条第一項」とする。
(職員の再就職の促進に関する業務の実施)
第七条 事業団は、第二十六条第三項に規定する業務については、日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(昭和六十一年法律第九十一号)の定めるところにより行う。
(事業計画等に関する経過措置)
第八条 事業団の最初の事業年度の事業計画、予算及び資金計画については、第三十七条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「事業団となつた後遅滞なく」とする。
(日本鉄道建設公団の鉄道施設に係る資産及び債務の承継等)
第九条 事業団は、地域における輸送の確保のため特に必要であると認めて運輸大臣が行うその建設に係る指示を受けて日本鉄道建設公団により建設されるものとして運輸大臣が定める鉄道施設について、当該鉄道施設が鉄道事業の用に供されることとなつたとき又は当該鉄道施設が建設されないこととなつたときは、当該鉄道施設に係る資産であつて日本鉄道建設公団が所有するものを承継するものとする。
2 事業団は、次に掲げる場合には、日本鉄道建設公団の長期借入金及び鉄道建設債券に係る債務のうち、当該鉄道施設の建設に係る部分として運輸大臣が定めるものを承継するものとする。
一 本州と北海道を連絡する鉄道に係る鉄道施設であつて運輸大臣が定めるものが鉄道事業の用に供されることとなつたとき。
二 前項に規定する鉄道施設であつて運輸大臣が定めるものが鉄道事業の用に供されることとなつたとき。
三 前号に規定する鉄道施設が建設されないこととなつたとき。
3 事業団は、第一項の規定により資産を承継するときは、当該資産に係る日本鉄道建設公団のその他の権利及び義務を承継するものとする。
4 前三項の規定により事業団が承継する日本鉄道建設公団の資産、債務並びにその他の権利及び義務の細目並びに当該承継の実施については、日本鉄道建設公団が事業団と協議して定めるものとする。
(鉄道建設債券に係る債務に関する連帯債務)
第十条 前条第二項の規定により事業団が日本鉄道建設公団の鉄道建設債券に係る債務を承継したときは、当該承継の時において発行されているすべての鉄道建設債券に係る債務のうち、改革法第二十六条第三項の規定により改革法第十一条第二項に規定する承継法人、事業団及び日本鉄道建設公団が連帯して弁済の責めに任ずるものとされたもの以外のものについては、事業団及び日本鉄道建設公団が連帯して弁済の責めに任ずる。
2 前項の規定により事業団及び日本鉄道建設公団が連帯して弁済の責めに任ずるものとされる債務に係る鉄道建設債券の債権者は、事業団及び日本鉄道建設公団の財産について他の債権者に先立つて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
3 前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
(本州四国連絡橋公団の鉄道施設の建設に関する業務に係る債務の負担等)
第十一条 本州四国連絡橋公団が改革法附則第二項の規定の施行後においても引き続きその建設に関する業務を行うものとして運輸大臣が定める鉄道施設を旅客会社に利用させるときは、事業団は、本州四国連絡橋公団に対し、当該鉄道施設の建設に要した費用のうち借入れに係る部分として運輸大臣が定める本州四国連絡橋公団の債務に相当する額の債務を負担するものとする。
2 事業団は、本州四国連絡橋公団に対し、前項に規定する本州四国連絡橋公団の債務の償還等に係る業務に要する費用の額に相当する金額を支払うものとする。
3 第一項の規定により負担する債務の償還、当該債務に係る利子の支払その他の同項の規定による債務の負担に関し必要な事項及び前項に規定する費用の範囲その他の同項の規定による支払に関し必要な事項は、政令で定める。
(大蔵大臣との協議)
第十二条 運輸大臣は、附則第九条第二項又は前条第一項の規定により債務を定めようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
(鉄道施設の無償譲渡及び貸付け)
第十三条 事業団は、その所有する次に掲げる鉄道施設を地域における輸送の確保のために鉄道事業者に対し譲渡する場合には、当分の間、これを無償で行うことができる。
一 改革法附則第二項の規定の施行の際現に日本国有鉄道がその鉄道の営業線の廃止に伴いこれに代わる輸送を確保するため鉄道事業者に無償で貸し付けている鉄道施設
二 改革法第二十四条第一項第七号に掲げる鉄道施設
三 附則第九条第一項に規定する鉄道施設であつて当該鉄道施設が鉄道事業の用に供されるもの
2 事業団は、前項の規定による譲渡を行うまでの間は、同項に掲げる鉄道施設を鉄道事業者に対し無償で貸し付けることができる。
(政令への委任)
第十四条 附則第三条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
大蔵大臣 宮澤喜一
運輸大臣 橋本龍太郎
労働大臣 平井卓志
自治大臣 葉梨信行
内閣総理大臣 中曽根康弘
日本国有鉄道清算事業団法をここに公布する。
御名御璽
昭和六十一年十二月四日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第九十号
日本国有鉄道清算事業団法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
役員及び職員(第八条―第十九条)
第三章
資産処分審議会(第二十条―第二十五条)
第四章
業務(第二十六条―第三十条)
第五章
事業団の債務の償還等に関する措置(第三十一条―第三十五条)
第六章
財務及び会計(第三十六条―第四十四条)
第七章
監督(第四十五条・第四十六条)
第八章
雑則(第四十七条―第五十条)
第九章
罰則(第五十一条―第五十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本国有鉄道清算事業団は、日本国有鉄道改革法(昭和六十一年法律第八十七号。以下「改革法」という。)に定める日本国有鉄道の改革の実施に伴い、旅客鉄道株式会社等による日本国有鉄道からの事業等の引継ぎ並びにその権利及び義務の承継等の後において、日本国有鉄道の長期借入金及び鉄道債券に係る債務(以下「国鉄長期債務」という。)その他の債務の償還、日本国有鉄道の土地その他の資産の処分等を適切に行い、もつて改革法に基づく施策の円滑な遂行に資することを目的とする。
2 日本国有鉄道清算事業団は、前項に定めるもののほか、臨時に、その職員のうち再就職を必要とする者についての再就職の促進を図るための業務を行うことを目的とする。
(法人格)
第二条 日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 事業団は、主たる事務所を東京都に置く。
2 事業団は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第四条 事業団の資本金は、改革法附則第二項の規定の施行の際現に同項の規定による廃止前の日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)第五条の規定により政府から日本国有鉄道に対し出資されている金額とする。
(登記)
第五条 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 事業団でない者は、日本国有鉄道清算事業団又は日本国有鉄道という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条及び第五十条の規定は、事業団について準用する。
第二章 役員及び職員
(役員)
第八条 事業団に、役員として、理事長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置く。
2 事業団に、役員として、前項の役員のほか、臨時に、副理事長一人及び理事三人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第九条 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
2 副理事長は、事業団を代表し、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 理事は、理事長の定めるところにより、理事長及び副理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長及び副理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長及び副理事長が欠員のときはその職務を行う。
4 監事は、事業団の業務を監査する。
5 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は主務大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十条 理事長及び監事は、運輸大臣が任命する。
2 副理事長及び理事は、運輸大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(役員の任期)
第十一条 理事長及び副理事長の任期は三年とし、理事及び監事の任期は二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十二条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)
二 物品の製造若しくは販売、土地の売買若しくは工事の請負を業とする者であつて事業団と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)
三 前号に掲げる事業者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)
(役員の解任)
第十三条 運輸大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 運輸大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 理事長は、前項の規定によりその任命に係る役員を解任しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第十四条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
(代表権の制限)
第十五条 事業団と理事長又は副理事長との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が事業団を代表する。
(代理人の選任)
第十六条 理事長及び副理事長は、事業団の理事又は職員のうちから、事業団の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の任命)
第十七条 事業団の職員は、理事長が任命する。
(役員及び職員の秘密保持義務)
第十八条 役員若しくは資産処分業務(第二十六条第一項第二号及び第三号の業務をいう。以下同じ。)に従事する職員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第十九条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 資産処分審議会
(設置)
第二十条 事業団に、資産処分審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(権限)
第二十一条 理事長は、次に掲げる場合には、審議会の意見を聴かなければならない。
一 資産処分業務に関する基本的な方針を定めようとするとき。
二 資産処分業務に係る業務方法書を作成し、又は変更しようとするとき。
三 運輸省令で定める重要な資産に係る資産処分業務を行おうとするとき。
2 審議会は、前項に掲げる場合のほか、理事長の諮問に応じ、資産処分業務に関する重要事項を審議する。
(組織)
第二十二条 審議会は、委員十人以内をもつて組織する。
2 審議会に会長一人を置き、委員の互選により選任する。
3 会長は、会務を総理する。
4 審議会は、あらかじめ、委員のうちから、会長に事故がある場合にその職務を代理する者を定めておかなければならない。
(委員の任命)
第二十三条 委員は、資産処分業務に関し学識経験を有する者のうちから、運輸大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
(委員の任期)
第二十四条 委員の任期は、二年とする。
2 委員は、再任されることができる。
(準用規定)
第二十五条 第十二条、第十三条及び第十八条の規定は、委員について準用する。
第四章 業務
(業務の範囲)
第二十六条 事業団は、第一条第一項の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 国鉄長期債務その他の債務の償還及び当該債務に係る利子の支払を行うこと。
二 前号の業務その他業務の遂行に必要な資金に充てるために土地その他の資産の処分を行うこと。
三 前号の業務を効果的に推進するため事業団の所有する土地に係る宅地の造成及びこれに関連する施設の整備並びに当該宅地及び施設の管理及び譲渡を行うこと。
四 前三号に掲げるもののほか、日本国有鉄道の改革の実施に伴い事業団に帰属した権利及び義務の行使及び履行のために必要な義務を行うこと。
五 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。
六 前各号に掲げるもののほか、第一条第一項の目的を達成するために必要な業務を行うこと。
2 事業団は、前項に規定する業務のほか、これらの業務の遂行に支障のない範囲内で、委託を受けて、宅地の造成及びこれに関連する施設の整備並びに当該宅地及び施設の管理及び譲渡に関する業務(同項第三号の業務に関連して行うものに限る。)を行うことができる。
3 事業団は、前二項に規定する業務のほか、第一条第二項の目的を達成するため、臨時に、その職員のうち再就職を必要とする者についての再就職の促進のために必要な業務を行う。
4 事業団は、第一項第六号の業務又は第二項に規定する業務を行おうとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(投資)
第二十七条 事業団は、主務大臣の認可を受けて、事業団の委託によりその業務の一部を行う事業及び事業団の業務と密接に関連する事業でその業務の円滑な遂行に資するものに投資することができる。
2 前項の規定により事業団が投資することができる事業の範囲は、政令で定める。
(業務の委託)
第二十八条 事業団は、主務大臣の認可を受けて定める基準に従つてその業務の一部を委託することができる。
(業務方法書)
第二十九条 事業団は、業務開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、主務省令で定める。
(土地の処分の方法)
第三十条 事業団は、その所有する土地の譲渡、貸付けその他の処分に関する契約を締結しようとする場合には、その処分の公正かつ適切な実施を確保するため、一般競争入札の方法に準じた方法その他の運輸省令で定める方法によらなければならない。
第五章 事業団の債務の償還等に関する措置
(償還基本方針)
第三十一条 政府は、事業団の債務の償還等(債務の償還及び当該債務に係る利子の支払をいう。以下この章において同じ。)の確実かつ円滑な実施を図るものとし、このため、事業団の債務の償還等に関する基本的な方針(以下「償還基本方針」という。)を定めるものとする。
2 償還基本方針は、事業団において行う債務の償還等の予定額を明らかにするとともに、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 事業団が債務の償還等のために行う資産の処分その他の業務に関する事項
二 事業団の債務の償還等について政府が講ずる施策に関する事項
(事業団の償還実施方針)
第三十二条 事業団は、その債務の償還等を確実かつ円滑に実施するため、運輸省令で定めるところにより、その債務の償還等のために行う資産の処分、資金の確保その他の事項についての実施方針(以下「償還実施方針」という。)を定めなければならない。
2 事業団は、償還実施方針を定めようとするときは、運輸大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(償還計画)
第三十三条 事業団は、毎事業年度、その債務の償還計画を立てて、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(事業団による資金の確保)
第三十四条 事業団は、その債務の償還等を確実かつ円滑に実施するため、その資金の効果的な処分その他の措置により必要な資金の確保に努めなければならない。
(政府による助成等)
第三十五条 政府は、償還基本方針に従い、事業団の債務の償還等の確実かつ円滑な実施を図るため、予算の範囲内において、事業団に対し、補助金等を交付し、又はその他の援助をするものとする。
2 政府は、前項に定めるもののほか、事業団に対する必要な資金の融通及びあつせんその他の措置を講ずるものとする。
第六章 財務及び会計
(事業年度)
第三十六条 事業団の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(事業計画等の認可)
第三十七条 事業団は、毎事業年度、事業計画、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第三十八条 事業団は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 事業団は、前項の規定により財務諸表を主務大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書を添え、並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見を付けなければならない。
3 事業団は、第一項の規定による主務大臣の承認を受けたときは、遅帯なく、財務諸表を官報に公告し、かつ、各事務所に備えて置かなければならない。
(利益及び損失の処理)
第三十九条 事業団は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめなければならない。
2 事業団は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金及び日本国有鉄道清算事業団債券)
第四十条 事業団は、運輸大臣の認可を受けて、長期借入金若しくは短期借入金をし、又は日本国有鉄道清算事業団債券(以下「債券」という。)を発行することができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、運輸大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
4 第一項の規定による債券の債権者は、事業団の財産について他の債権者に先立つて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
5 前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
6 事業団は、運輸大臣の認可を受けて、債券の発行に関する事務の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。
7 商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百九条から第三百十一条までの規定は、前項の規定により委託を受けた銀行又は信託会社について準用する。
8 第一項及び第四項から前項までに定めるもののほか、債券に関し必要な事項は、政令で定める。
(債務保証)
第四十一条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、事業団の長期借入金又は債券に係る債務(国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する特別措置に関する法律(昭和二十八年法律第五十一号)第二条の規定に基づき政府が保証契約をすることができる債務を除く。)について保証することができる。
(余裕金の運用)
第四十二条 事業団は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債、地方債その他運輸大臣の指定する有価証券の取得
二 資金運用部への預託
三 銀行その他運輸大臣の指定する金融機関への預金又は郵便貯金
四 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託
(給与及び退職手当の支給の基準)
第四十三条 事業団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、運輸大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(主務省令への委任)
第四十四条 この法律及びこれに基づく政令に規定するもののほか、事業団の財務及び会計に関し必要な事項は、主務省令で定める。
第七章 監督
(監督)
第四十五条 事業団は、主務大臣が監督する。
2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第四十六条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務並びに資産及び債務の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、事業団の事務所その他の事業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第八章 雑則
(解散)
第四十七条 事業団の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第四十八条 運輸大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十一条第一項第三号又は第三十条の規定により運輸省令を定めようとするとき。
二 第二十六条第四項、第三十三条又は第四十条第一項、第二項ただし書若しくは第六項の規定による認可をしようとするとき。
三 第三十二条第二項又は第四十三条の規定による承認をしようとするとき。
四 第四十二条第一号又は第三号の規定による指定をしようとするとき。
2 主務大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十七条第一項、第二十九条第一項又は第三十七条の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十九条第二項又は第四十四条の規定により主務省令を定めようとするとき。
三 第三十八条第一項の規定による承認をしようとするとき。
(主務大臣等)
第四十九条 この法律における主務大臣は、次のとおりとする。
一 役員及び職員並びに財務及び会計その他管理業務に関する事項(次号及び第三号に掲げる事項を除く。)については、運輸大臣
二 第二十六条第一項及び第二項に規定する業務に関する事項(当該事項に係る第三十七条の規定による認可及び第三十八条第一項の規定による承認を含む。)については、運輸大臣
三 第二十六条第三項に規定する業務に関する事項(当該事項に係る第三十七条の規定による認可及び第三十八条第一項の規定による承認を含む。)については、内閣総理大臣、運輸大臣、労働大臣及び自治大臣
2 この法律における主務省令は、前項各号に掲げる事項に関し、それぞれ同項各号に定める主務大臣の発する命令とする。
(他の法令の準用)
第五十条 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)及び政令で定めるその他の法令については、政令で定めるところにより、事業団を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する。
第九章 罰則
(罰則)
第五十一条 第十八条(第二十五条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第五十二条 第四十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、二十万円以下の罰金に処する。
第五十三条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、十万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定により運輸大臣又は主務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の政令の規定に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十六条第一項から第三項までに規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第四十二条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第四十五条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。
第五十四条 第六条の規定に違反した者は、五万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第六条(日本国有鉄道という名称に係る部分に限る。)の規定は、改革法附則第二項の規定の施行の日(昭和六十二年四月一日)から施行する。
(事業団への移行)
第二条 日本国有鉄道は、改革法附則第二項の規定の施行の時において、事業団となるものとする。この場合において、他の法令の適用については、政令で定めるところにより、事業団を特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人又はこれに類する法人とみなす。
(日本国有鉄道の役員に関する経過措置)
第三条 改革法附則第二項の規定の施行の日の前日において日本国有鉄道の総裁、副総裁、理事又は監査委員会の委員である者の任期は、同項の規定による廃止前の日本国有鉄道法第十九条第五項の規定にかかわらず、その日に満了する。
(名称に関する経過措置)
第四条 この法律の施行の際現に日本国有鉄道清算事業団という名称を用いている者については、第六条(日本国有鉄道清算事業団という名称に係る部分に限る。)の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
(役員に関する特例)
第五条 第八条第二項の規定により置かれる役員は、昭和六十五年四月一日までの間に限り置くことができる。
2 第八条第二項の規定により置かれる役員の任期については、第十一条第一項の規定にかかわらず、昭和六十五年四月一日までとすることができる。
(業務に関する特例)
第六条 事業団は、昭和六十五年四月一日までの間に限り、第二十六条第一項から第三項までに定めるもののほか、次の業務を行うことができる。
一 第二十六条第一項から第三項までに規定する業務の遂行に支障のない範囲内で、旅客会社(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(昭和六十一年法律第八十八号)第一条第一項に規定する旅客会社をいう。以下同じ。)又は日本貨物鉄道株式会社の委託を受けて、旅客又は貨物の取扱い、鉄道施設の保守その他の業務を行うこと。
二 改革法附則第二項の規定の施行前に日本国有鉄道が委託を受けた工事であつて事業団が引き続き行うものとされたものを施行すること。
2 前項の場合には、第五十三条第三号中「第二十六条第一項から第三項まで」とあるのは、「第二十六条第一項から第三項まで及び附則第六条第一項」とする。
(職員の再就職の促進に関する業務の実施)
第七条 事業団は、第二十六条第三項に規定する業務については、日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(昭和六十一年法律第九十一号)の定めるところにより行う。
(事業計画等に関する経過措置)
第八条 事業団の最初の事業年度の事業計画、予算及び資金計画については、第三十七条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「事業団となつた後遅滞なく」とする。
(日本鉄道建設公団の鉄道施設に係る資産及び債務の承継等)
第九条 事業団は、地域における輸送の確保のため特に必要であると認めて運輸大臣が行うその建設に係る指示を受けて日本鉄道建設公団により建設されるものとして運輸大臣が定める鉄道施設について、当該鉄道施設が鉄道事業の用に供されることとなつたとき又は当該鉄道施設が建設されないこととなつたときは、当該鉄道施設に係る資産であつて日本鉄道建設公団が所有するものを承継するものとする。
2 事業団は、次に掲げる場合には、日本鉄道建設公団の長期借入金及び鉄道建設債券に係る債務のうち、当該鉄道施設の建設に係る部分として運輸大臣が定めるものを承継するものとする。
一 本州と北海道を連絡する鉄道に係る鉄道施設であつて運輸大臣が定めるものが鉄道事業の用に供されることとなつたとき。
二 前項に規定する鉄道施設であつて運輸大臣が定めるものが鉄道事業の用に供されることとなつたとき。
三 前号に規定する鉄道施設が建設されないこととなつたとき。
3 事業団は、第一項の規定により資産を承継するときは、当該資産に係る日本鉄道建設公団のその他の権利及び義務を承継するものとする。
4 前三項の規定により事業団が承継する日本鉄道建設公団の資産、債務並びにその他の権利及び義務の細目並びに当該承継の実施については、日本鉄道建設公団が事業団と協議して定めるものとする。
(鉄道建設債券に係る債務に関する連帯債務)
第十条 前条第二項の規定により事業団が日本鉄道建設公団の鉄道建設債券に係る債務を承継したときは、当該承継の時において発行されているすべての鉄道建設債券に係る債務のうち、改革法第二十六条第三項の規定により改革法第十一条第二項に規定する承継法人、事業団及び日本鉄道建設公団が連帯して弁済の責めに任ずるものとされたもの以外のものについては、事業団及び日本鉄道建設公団が連帯して弁済の責めに任ずる。
2 前項の規定により事業団及び日本鉄道建設公団が連帯して弁済の責めに任ずるものとされる債務に係る鉄道建設債券の債権者は、事業団及び日本鉄道建設公団の財産について他の債権者に先立つて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
3 前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
(本州四国連絡橋公団の鉄道施設の建設に関する業務に係る債務の負担等)
第十一条 本州四国連絡橋公団が改革法附則第二項の規定の施行後においても引き続きその建設に関する業務を行うものとして運輸大臣が定める鉄道施設を旅客会社に利用させるときは、事業団は、本州四国連絡橋公団に対し、当該鉄道施設の建設に要した費用のうち借入れに係る部分として運輸大臣が定める本州四国連絡橋公団の債務に相当する額の債務を負担するものとする。
2 事業団は、本州四国連絡橋公団に対し、前項に規定する本州四国連絡橋公団の債務の償還等に係る業務に要する費用の額に相当する金額を支払うものとする。
3 第一項の規定により負担する債務の償還、当該債務に係る利子の支払その他の同項の規定による債務の負担に関し必要な事項及び前項に規定する費用の範囲その他の同項の規定による支払に関し必要な事項は、政令で定める。
(大蔵大臣との協議)
第十二条 運輸大臣は、附則第九条第二項又は前条第一項の規定により債務を定めようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
(鉄道施設の無償譲渡及び貸付け)
第十三条 事業団は、その所有する次に掲げる鉄道施設を地域における輸送の確保のために鉄道事業者に対し譲渡する場合には、当分の間、これを無償で行うことができる。
一 改革法附則第二項の規定の施行の際現に日本国有鉄道がその鉄道の営業線の廃止に伴いこれに代わる輸送を確保するため鉄道事業者に無償で貸し付けている鉄道施設
二 改革法第二十四条第一項第七号に掲げる鉄道施設
三 附則第九条第一項に規定する鉄道施設であつて当該鉄道施設が鉄道事業の用に供されるもの
2 事業団は、前項の規定による譲渡を行うまでの間は、同項に掲げる鉄道施設を鉄道事業者に対し無償で貸し付けることができる。
(政令への委任)
第十四条 附則第三条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
大蔵大臣 宮沢喜一
運輸大臣 橋本龍太郎
労働大臣 平井卓志
自治大臣 葉梨信行
内閣総理大臣 中曽根康弘