中小漁業振興特別措置法
法令番号: 法律第59号
公布年月日: 昭和42年7月14日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

中小漁業は総漁獲金額の約半分を占め、日本漁業において主要な地位にあるが、近年、漁業経費の増大や国際的な漁業規制の強化により、近代化と合理化が急務となっている。このため、沿岸漁業等振興法に基づく国の基本施策に沿って、中小漁業の生産性向上と経営近代化を促進する施策を計画的に推進する必要がある。具体的には、農林大臣が業種ごとに振興計画を策定し、農林漁業金融公庫による低利融資、合併・現物出資等への税制優遇措置を実施することで、中小漁業の健全な発展を図ることを目的としている。

参照した発言:
第55回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号

審議経過

第55回国会

参議院
(昭和42年4月18日)
衆議院
(昭和42年4月19日)
(昭和42年5月25日)
(昭和42年5月30日)
(昭和42年5月31日)
(昭和42年6月1日)
(昭和42年6月6日)
(昭和42年6月7日)
(昭和42年6月13日)
(昭和42年6月13日)
参議院
(昭和42年6月15日)
(昭和42年6月30日)
(昭和42年7月4日)
(昭和42年7月6日)
(昭和42年7月10日)
(昭和42年7月21日)
中小漁業振興特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十二年七月十四日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第五十九号
中小漁業振興特別措置法
(目的)
第一条 この法律は、生産性の向上その他経営の近代化を促進してその振興を図ることが特に必要であると認められる業種に係る中小漁業につき、その振興に関する施策を計画的に推進するための措置を講ずること等により、漁業の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「中小漁業者」とは、次に掲げる者をいう。
一 漁業を営む個人又は会社であつて、その常時使用する従業者の数が三百人以下であり、かつ、その使用する漁船(漁船法(昭和二十五年法律第百七十八号)第二条第一項に規定する漁船をいう。)の合計総トン数が二千トンをこえない範囲内において政令で定めるトン数以下であるもの
二 漁業を営む漁業協同組合
三 漁業生産組合
2 この法律において「指定業種」とは、沿岸漁業等振興法(昭和三十八年法律第百六十五号)第二条第一項に規定する沿岸漁業以外の漁業の業種であつて、次の各号のすべてに該当するものとして政令で定めるものをいう。
一 当該業種に係る漁業生産活動の相当部分が中小漁業者によつて行なわれていること。
二 当該業種に係る漁獲量の変動、漁業経費の増大等により当該業種に係る漁業を営む中小漁業者の相当部分の経営が不安定となつており又は不安定となるおそれがあるため、当該業種に係る中小漁業につき、沿岸漁業等振興法第九条各号に掲げる事項に関し改善を行なつてその生産性の向上その他経営の近代化を促進することにより、その振興を図ることが特に必要であると認められること。
(中小漁業振興計画)
第三条 農林大臣は、政令で定めるところにより、指定業種ごとに、当該指定業種に係る中小漁業について中小漁業振興計画(以下「振興計画」という。)を定めなければならない。
2 振興計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 経営規模の拡大、生産行程についての協業化、資本装備の高度化等経営の近代化の目標
二 沿岸漁業等振興法第九条各号に掲げる事項の改善に関する基本的事項
3 農林大臣は、経済事情の著しい変動のため特に必要があると認めるときは、振興計画を変更するものとする。
4 農林大臣は、振興計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、沿岸漁業等振興審議会の意見をきかなければならない。
5 沿岸漁業等振興審議会は、沿岸漁業等振興法第十三条第一項に規定するもののほか、前項の規定によりその権限に属させられた事項を調査審議する。
6 沿岸漁業等振興審議会は、沿岸漁業等振興法第十三条第二項に規定するもののほか、前項に規定する事項に関し農林大臣に意見を述べることができる。
(公表及び助言、指導等)
第四条 農林大臣は、前条の規定により振興計画を定め、又はこれを変更したときは、その要旨を公表するとともに、その公表に係る振興計画の達成のために必要な助言、指導及び資金の融通のあつせんを行なうものとする。
(農林漁業金融公庫からの資金の貸付け)
第五条 農林漁業金融公庫は、指定業種に係る漁業(以下「指定業種漁業」という。)を営む中小漁業者に対し、その者の申請に基づき、農林漁業金融公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)で定めるところにより、その者が当該指定業種に係る振興計画において定められた経営の近代化の目標に達することとなるように漁船の改造、建造若しくは取得又は漁具その他の設備の改良、造成若しくは取得をするのに必要な資金の貸付けを行なうものとする。
(合併等の場合の課税の特例)
第六条 農林大臣は、政令で定めるところにより、指定業種漁業を営む中小漁業者(漁業協同組合及び法人税法(昭和四十年法律第三十四号)別表第三に掲げる漁業生産組合を除く。以下この条及び次条において同じ。)に対し、その者が指定業種漁業を営む他の法人である中小漁業者と合併し、又は指定業種漁業を営む他の法人である中小漁業者に対して出資をし、若しくは指定業種漁業を営む他の中小漁業者とともに出資をして指定業種漁業を営む法人(会社及び同表に掲げる漁業生産組合以外の漁業生産組合に限る。)を設立することにより、当該指定業種漁業を営む中小漁業者のその漁業の生産性が著しく向上し、かつ、当該中小漁業者が当該指定業種に係る振興計画において定められた経営の近代化の目標に達することとなると認められる旨の認定をすることができる。
2 農林大臣は、前項に規定する出資をする指定業種漁業を営む中小漁業者であつて法人であるものに対し同項の認定をする場合には、政令で定めるところにより、その者に対し、当該出資に係る資産が当該出資を受ける法人又は当該出資に基づいて設立される法人の営む指定業種漁業の用に供するため必要なものである旨の認定をあわせてすることができる。
3 第一項若しくは前項の認定を受けた中小漁業者、第一項の認定に係る合併後存続する法人若しくは当該合併により設立した法人又は同項の認定に係る出資を受けた法人若しくは当該出資に基づいて設立された法人については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、法人税又は登録免許税を軽減する。
(減価償却の特例)
第七条 指定業種漁業を営む中小漁業者は、租税特別措置法で定めるところにより、その有する固定資産について特別償却をすることができる。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 農林漁業金融公庫法の一部を次のように改正する。
第十八条第三項中「若しくは林業経営の改善」を「、林業経営の改善若しくは中小漁業の経営の近代化」に改める。
別表第二中
七 沿岸漁業者の経営の近代化を図るため漁船の改造、建造若しくは取得又は沿岸漁業に係る生産行程の協業化を計画的に実施するのに必要な資金であつて第十八条第一項第五号の二又は第八号に掲げるもののうち主務大臣の指定するもの
 (一) 漁船の改造、建造又は取得に係るもの
年 六分五厘
十年
三年
 (二) 生産行程の協業化に係るもの
年 六分五厘
十五年
三年
七 沿岸漁業者の経営の近代化を図るため漁船の改造、建造若しくは取得又は沿岸漁業に係る生産行程の協業化を計画的に実施するのに必要な資金であつて第十八条第一項第五号の二又は第八号に掲げるもののうち主務大臣の指定するもの
 (一) 漁船の改造、建造又は取得に係るもの
年 六分五厘
十年
三年
 (二) 生産行程の協業化に係るもの
年 六分五厘
十五年
三年
八 中小漁業振興特別措置法(昭和四十二年法律第五十九号)第五条に規定する資金に該当する資金であつて第十八条第一項第五号の二又は第八号に掲げるもののうち主務大臣の指定するもの
年 六分五厘
十八年
三年
に改める。
3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項の表沿岸漁業等振興審議会の項中「沿岸漁業等振興法(昭和三十八年法律第百六十五号)」の下に「及び中小漁業振興特別措置法(昭和四十二年法律第五十九号)」を加える。
内閣総理大臣 佐藤栄作
大蔵大臣 水田三喜男
農林大臣 倉石忠雄