海運業の再建整備に関する臨時措置法
法令番号: 法律第百十八号
公布年月日: 昭和38年7月1日
法令の形式: 法律
海運業の再建整備に関する臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十八年七月一日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百十八号
海運業の再建整備に関する臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、将来にわたり国民経済における海運の使命を遂行させるため、海運業の再建整備を図ることを目的とする。
(利子の支払の猶予)
第二条 日本開発銀行は、船舶(昭和三十七年四月三十日以前に建造の契約が締結された貨物船及び油送船(運輸大臣が告示で定めるものを除く。)並びに総トン数三千トン以上の旅客船に限る。)の建造に要した資金の融通を行なつている会社であつて運輸大臣の推薦を受けたものが整備計画(第四条第一項第一号に掲げる事項に係る部分に限る。)を実施したときは、当該会社(当該会社が合併し、合併によつて会社が設立された場合にあつては、その設立された会社)に対し、当該融資契約による利子の支払を猶予することができる。
2 前項の規定による利子の支払の猶予(以下「支払猶予」という。)は、第五条第二項の運輸大臣の確認を受けた日(以下「確認日」という。)から五年の期間内に支払期日の到来する利子について行なうものとする。
(交付金の交付)
第三条 政府は、日本開発銀行が支払猶予をしたときは、支払猶予に係る利子(以下「猶予利子」という。)の額に相当する金額の交付金を日本開発銀行に交付するものとする。
2 前項の交付金の交付の時期その他その交付に関し必要な事項は、政令で定める。
(整備計画の提出)
第四条 第二条第一項の推薦を受けようとする会社は、運輸省令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項について定めた整備計画を作成し、運輸大臣に提出しなければならない。
一 当該会社が次のいずれかの企業の集約を行なうこと。
イ 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)に規定する船舶運航事業を営む会社と合併し、合併会社(当該合併の後に存続する会社又は当該合併によつて設立される会社をいう。以下同じ。)の所有する外航船舶(船舶安全法(昭和八年法律第十一号)にいう遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶であつて、もつぱら外国航路に就航するものをいう。以下同じ。)の量が五十万重量トンをこえ、かつ、その所有する外航船舶の量及びその系列会社(海上運送法に規定する船舶運航事業又は船舶貸渡業を営む会社であつて、合併会社が、発行済株式の総数に対し運輸省令で定める率を乗じて得た数をこえる株式を保有することにより、その事業活動を支配するものをいう。以下同じ。)又は専属会社(合併会社又はその系列会社に対し、所有する外航船舶の全部について、運輸省令で定める期間をこえて貸渡し(期間傭船を含む。)又は運航の委託をする会社であつて、これらの会社と運輸省令で定める密接な関係を有するものをいう。以下同じ。)の所有する外航船舶の量の合計量が百万重量トンをこえること。
ロ イに掲げる企業の集約に係る系列会社となること。
ハ イに掲げる企業の集約に係る専属会社となること。
二 当該会社(当該会社が合併し、合併によつて会社が設立される場合にあつては、その設立される会社)が、前号に掲げる企業の集約の完了を予定する日から起算して五年を経過した日の属する決算期までに、政令で定める方法により計算した減価償却の不足を解消すること。
(整備計画の承認等)
第五条 運輸大臣は、前条の規定により提出された整備計画が海運業の再建整備を図るため適切なものであつて、その実施が確実であり、かつ、その実施について、第二条第一項の船舶の建造に要した資金を融通している日本開発銀行以外の金融機関が、当該融資契約による利子であつて同条第二項の期間内に支払期日の到来するものについて、当該支払期日ごとに当該利子の二分の一以上に相当する金額の支払を猶予することが確実であると認めるときは、当該整備計画を承認し、これを提出した会社を日本開発銀行に推薦しなければならない。
2 前項の規定による承認を受けた会社(当該会社が合併し、合併によつて会社が設立された場合にあつては、その設立された会社)は、同項の規定による承認を受けた日から運輸省令で定める期間内に、整備計画(前条第一項第一号に掲げる事項に係る部分に限る。)を実施し、これを実施したことについて運輸大臣の確認を受けなければならない。
3 運輸大臣は、第一項の規定による承認については、海運企業整備計画審議会に諮問し、その意見を尊重してしなければならない。
(整備計画の変更)
第六条 前条第一項の規定による承認を受けた会社(当該会社が合併し、合併によつて会社が設立された場合にあつては、その設立された会社)は、整備計画を変更しようとするときは、運輸大臣の承認を受けなければならない。
2 前条第三項の規定は、前項の承認について準用する。ただし、運輸省令で定める軽微な事項に係る整備計画の変更については、この限りでない。
(猶予利子の使途)
第七条 支払猶予を受けた会社は、猶予利子に相当する金額を日本開発銀行からの借入金の償還に充てなければならない。
(猶予利子の支払)
第八条 支払猶予を受けている会社は、その決算(当該会社に係る確認日から起算して五年を経過した日の属する決算期以前の各決算期に係るものに限る。以下次項において同じ。)において計上した利益(第十四条第一項第一号の規定により不当な経理の是正を勧告した場合においては、その勧告に従つて再計算することとしたときの当該決算期の利益とし、これらの利益の範囲は、政令で定めるものに限るものとする。以下同じ。)の額が当該会社の資本金額(発行済額面株式の株金総額及び発行済無額面株式の発行価額の総額をいう。以下同じ。)に政令で定める率を乗じて得た金額をこえるときは、当該決算期に属する期間に係る猶予利子を日本開発銀行に支払わなければならない。
2 支払猶予を受けている会社は、その決算において計上した利益の額が当該会社の資本金額に政令で定める率を乗じて得た金額をこえるときは、その利益の額からその乗じて得た金額を控除した額の二分の一に相当する金額の猶予利子を日本開発銀行に支払わなければならない。
第九条 支払猶予を受けた会社は、その決算(当該会社に係る確認日から起算して五年を経過した日の属する決算期の直後の決算期から当該会社に係る確認日から起算して十年を経過した日の属する決算期までの各決算期に係るものに限る。)において計上した利益の額が当該会社の資本金額に政令で定める率を乗じて得た金額をこえるときは、その利益の額からその乗じて得た金額を控除した額の三分の二に相当する金額の猶予利子を日本開発銀行に支払わなければならない。
第十条 支払猶予を受けた会社は、当該会社に係る確認日から起算して十年を経過した日の属する決算期の末日までに支払わなかつた猶予利子があるときは、政令で定めるところにより、当該会社に係る確認日から起算して二十年を経過した日までに、これを日本開発銀行に支払わなければならない。
(支払猶予を受けた会社の国庫納付金の特例)
第十一条 支払猶予を受けた会社が第八条及び第九条の規定により猶予利子を支払うこととなつた場合において、同時に当該決算期について外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法(昭和二十八年法律第一号)第十二条又は第十三条の規定による納付金を国庫に納付すべきこととなるときについては、これらの規定にかかわらず、その支払う猶予利子の額がこれらの規定により算出した納付金の額に満たない場合に限り、これらの規定による納付の義務を負うものとし、その納付金の額は、これらの差額に相当する金額とする。
(日本開発銀行の国庫納付金)
第十二条 日本開発銀行は、支払猶予を受けた会社から猶予利子の支払を受けることとなつたときは、当該支払を受けることとなつた猶予利子の額に相当する金額の納付金を国庫に納付しなければならない。
2 前項の納付金の納付の時期その他その納付に関し必要な事項は、政令で定める。
(整備計画の実施の確保)
第十三条 運輸大臣は、支払猶予を受けている会社が整備計画を実施していないと認めるときは、日本開発銀行に対してその旨を通知するものとする。ただし、やむを得ない事由に基づくと認める場合は、この限りでない。
2 日本開発銀行は、必要があると認めるときは、運輸大臣に対して支払猶予を受けている会社の整備計画の実施状況に関する調査を求めることができる。
3 日本開発銀行は、第一項の規定による通知を受けたときは、当該会社に対してした支払猶予を取り消すことができる。
4 第五条第三項の規定は、第一項の規定による通知について準用する。
(勧告)
第十四条 運輸大臣は、支払猶予を受けた会社に対し、当該会社の猶予利子の支払が終わるまでの期間に限り、次の各号に掲げる勧告をすることができる。
一 不当な経理の是正その他経理の改善に関する勧告
二 不当な競争の排除についての必要な勧告
2 前条第一項及び第三項の規定は、支払猶予を受けた会社が前項の規定による勧告に従わない場合について準用する。
(報告及び検査)
第十五条 運輸大臣は、整備計画の実施及び猶予利子の支払を確保するため必要な限度において、運輸省令で定めるところにより、支払猶予を受けた会社に対し、整備計画の実施状況その他業務若しくは経理の状況に関し報告をさせ、又はその職員に当該会社の事務所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(合併等の場合の登録税の課税の特例)
第十六条 第五条第一項又は第六条第一項の規定により整備計画の承認を受けた会社(当該会社が合併し、合併によつて会社が設立された場合にあつては、その設立された会社)が整備計画に従つて合併し、資本を増加し、又は事業に必要な資産を譲り受ける場合には、次の事項について受ける登記については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、登録税を軽減する。
一 会社の設立又は資本の増加
二 会社の設立、資本の増加又は事業に必要な資産の譲受けの場合における不動産又は船舶の権利の取得
(大蔵大臣との協議)
第十七条 運輸大臣は、第五条第一項又は第六条第一項の承認をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
(罰則)
第十八条 第十五条第一項の規定による報告を求められて、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、三万円以下の罰金に処する。
2 会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その会社の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その会社に対しても同項の刑を科する。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
大蔵大臣 田中角栄
運輸大臣 綾部健太郎
内閣総理大臣 池田勇人