国民生活研究所法
法令番号: 法律第80号
公布年月日: 昭和37年4月16日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

戦後の経済成長に伴い国民生活は向上したが、生活環境施設の整備の遅れなど、消費生活の進んだ面と立ち遅れた面が併存している。これら不均衡の是正のため、国民生活の実情把握が不可欠である。また、個人消費支出が国民総支出で大きな比重を占めることから、消費動向の把握は民間企業にとっても重要である。しかし、国民生活に関する調査研究は本格的な体制が整っていない。昭和34年に社団法人「国民生活研究所」が設立されたが、民間機関では制約があるため、新たに特殊法人として国民生活研究所を設立し、国民生活に関する基礎的・総合的な調査研究とその成果の普及を行うことを目的とする。

参照した発言:
第40回国会 衆議院 商工委員会 第7号

審議経過

第40回国会

衆議院
(昭和37年2月13日)
参議院
(昭和37年2月20日)
衆議院
(昭和37年2月27日)
(昭和37年3月2日)
(昭和37年3月6日)
(昭和37年3月7日)
(昭和37年3月8日)
参議院
(昭和37年3月29日)
(昭和37年4月10日)
(昭和37年4月13日)
国民生活研究所法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十七年四月十六日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第八十号
国民生活研究所法
目次
第一章
総則(第一条―第十条)
第二章
役員等(第十一条―第二十一条)
第三章
業務(第二十二条・第二十三条)
第四章
財務及び会計(第二十四条―第三十三条)
第五章
監督(第三十四条・第三十五条)
第六章
雑則(第三十六条―第三十八条)
第七章
罰則(第三十九条―第四十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 国民生活研究所は、国民生活に関する基礎的かつ総合的な調査研究を行ない、及びその成果を普及し、もつて国民生活の安定及び向上に寄与することを目的とする。
(法人格)
第二条 国民生活研究所(以下「研究所」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 研究所の事務所は、東京都に置く。
(資本金)
第四条 研究所の資本金は、一億円と研究所の設立に際し政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 政府は、研究所の設立に際し、前項の一億円を出資するものとする。
3 研究所は、必要があるときは、経済企画庁長官の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
4 政府は、前項の規定により研究所がその資本金を増加するときは、予算で定める金額の範囲内において、研究所に出資することができる。
(持分の払戻し等の禁止)
第五条 研究所は、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。
2 研究所は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。
(持分の譲渡等)
第六条 政府以外の出資者(第三十六条第二項並びに第三十七条第一項及び第二項を除き、以下「出資者」という。)は、その持分を譲渡することができる。
2 出資者の持分の移転は、取得者の氏名又は名称及びその住所を出資者原簿に記載した後でなければ、研究所その他の第三者に対抗することができない。
(定款)
第七条 研究所は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金、出資及び資産に関する事項
五 役員、参与及び会議に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告に関する事項
九 定款の変更に関する事項
2 定款の変更は、経済企画庁長官の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第八条 研究所は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第九条 研究所でない者は、国民生活研究所という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第十条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、研究所に準用する。
第二章 役員等
(役員)
第十一条 研究所に、役員として、会長一人、所長一人、理事二人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第十二条 会長は、研究所を代表し、その業務を総理する。
2 所長は、研究所を代表し、定款で定めるところにより、会長を補佐して研究所の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
3 理事は、定款で定めるところにより、会長及び所長を補佐して研究所の業務を掌理し、会長及び所長に事故があるときはその職務を代理し、会長及び所長が欠員のときはその職務を行なう。
4 監事は、研究所の業務を監査する。
(役員の任命)
第十三条 会長、所長及び監事は、経済企画庁長官が任命する。
2 理事は、経済企画庁長官の認可を受けて、会長が任命する。
(役員の任期)
第十四条 会長、所長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十五条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長
二 政府又は地方公共団体の職員(教育公務員で政令で定める者及び非常勤の者を除く。)
(役員の解任)
第十六条 経済企画庁長官又は会長は、それぞれの任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 経済企画庁長官又は会長は、それぞれの任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 会長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、経済企画庁長官の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第十七条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、経済企画庁長官の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十八条 研究所と会長又は所長との利益が相反する事項については、会長及び所長は、代表権を有しない。この場合には、監事が研究所を代表する。
(参与会)
第十九条 研究所に、参与会を置く。
2 参与会は、会長の諮問に応じ、研究所の業務の運営に関する重要事項を審議する。
3 参与会は、前項の事項に関し、会長に意見を述べることができる。
4 参与会は、参与二十人以内で組織する。
5 参与は、研究所の業務に関し学識経験を有する者のうちから、経済企画庁長官の認可を受けて、会長が任命する。
6 参与の任期は、二年とする。
7 参与は、再任されることができる。
(職員の任命)
第二十条 研究所の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の地位)
第二十一条 研究所の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務)
第二十二条 研究所は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 国民生活の実情及び動向に関する基礎的かつ総合的な調査研究を行なうこと。
二 国民生活に関する情報及び資料を収集すること。
三 前各号に掲げる業務に係る成果を普及すること。
四 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務
2 研究所は、前項第四号に掲げる業務を行なおうとするときは、経済企画庁長官の認可を受けなければならない。
第二十三条 研究所は、委託に基づいて前条第一項各号に掲げる業務を行なうことができる。この場合においては、あらかじめ経済企画庁長官の認可を受けなければならない。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第二十四条 研究所の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第二十五条 研究所は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、経済企画庁長官の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第二十六条 研究所は、毎事業年度、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後二月以内に経済企画庁長官に提出して、その承認を受けなければならない。
2 研究所は、前項の規定により財務諸表を経済企画庁長官に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(書類の送付)
第二十七条 研究所は、第二十五条の認可又は前条第一項の承認を受けたときは、当該認可又は承認に係る予算、事業計画及び資金計画に関する書類又は財務諸表を出資者に送付しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十八条 研究所は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 研究所は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第二十九条 研究所は、経済企画庁長官の認可を受けて、短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、経済企画庁長官の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第三十条 研究所は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債、地方債その他経済企画庁長官の指定する有価証券の取得
二 銀行への預金又は郵便貯金
三 信託会社又は信託業務を行なう銀行への金銭信託
(財産の処分等の制限)
第三十一条 研究所は、総理府令で定める重要な財産を譲渡し、交換し、又は担保に供しようとするときは、経済企画庁長官の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十二条 研究所は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、経済企画庁長官の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(総理府令への委任)
第三十三条 この法律に規定するもののほか、研究所の財務及び会計に関し必要な事項は、総理府令で定める。
第五章 監督
(監督)
第三十四条 研究所は、経済企画庁長官が監督する。
2 経済企画庁長官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十五条 経済企画庁長官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して報告を求め、又はその職員に研究所の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(出資者原簿)
第三十六条 研究所は、出資者原簿を備えて置かなければならない。
2 出資者原簿には、各出資者について次の事項を記載しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 出資の引受け及び払込みの年月日
三 出資額
3 出資者は、出資者原簿の閲覧を求めることができる。
(解散)
第三十七条 研究所は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額に応じて分配しなければならない。
2 前項の規定により各出資者に分配することができる額は、その出資額を限度とする。
3 前二項に規定するもののほか、研究所の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第三十八条 内閣総理大臣は、第三十一条又は第三十三条の総理府令を定めようとするときは、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
2 経済企画庁長官は、次の場合には、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第四条第三項、第七条第二項、第二十五条、第二十九条第一項若しくは第二項又は第三十一条の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十六条第一項又は第三十二条の規定による承認をしようとするとき。
三 第三十条第一号の規定による指定をしようとするとき。
第七章 罰則
(罰則)
第三十九条 第三十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした研究所の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第四十条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした研究所の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により経済企画庁長官の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第八条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十二条第一項に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第三十条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十四条第二項の規定による経済企画庁長官の命令に違反したとき。
第四十一条 第九条の規定に違反して国民生活研究所という名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(研究所の設立)
第二条 経済企画庁長官は、研究所の会長、所長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長、所長又は監事となるべき者は、研究所の成立の時において、この法律の規定によりそれぞれ会長、所長又は監事に任命されたものとする。
第三条 経済企画庁長官は、設立委員を命じて、研究所の設立に関する事務を処理させる。
2 設立委員は、定款を作成して、経済企画庁長官の認可を受けなければならない。この場合において、経済企画庁長官が認可をしようとするときは、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
第四条 設立委員は、前条第二項の認可を受けたときは、政府以外の者に対し研究所に対する出資を募集しなければならない。
2 設立委員は、前項の募集が終わつたときは、経済企画庁長官に対し設立の認可を申請しなければならない。
第五条 設立委員は、前条第二項の認可を受けたときは、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
2 設立委員は、出資金の払込みがあつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第六条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第二項の事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第七条 研究所は、設立の登記をすることによつて成立する。
(社団法人国民生活研究所からの引継ぎ)
第八条 昭和三十四年九月四日に設立を許可された社団法人国民生活研究所(以下この条において「社団法人国民生活研究所」という。)は、定款で定めるところにより、設立委員に対して、研究所においてその一切の権利及び義務を承継すべき旨を申し出ることができる。
2 設立委員は、前項の規定による申出があつたときは、遅滞なく、経済企画庁長官の認可を申請しなければならない。
3 前項の認可があつたときは、社団法人国民生活研究所の一切の権利及び義務は、研究所の成立の時において研究所に承継されるものとし、社団法人国民生活研究所は、その時において解散するものとする。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
4 前項の規定により社団法人国民生活研究所が解散した場合における解散の登記については、政令で定める。
(経過規定)
第九条 この法律の施行の際現に国民生活研究所という名称を使用している者は、この法律施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第九条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第十条 研究所の最初の事業年度は、第二十四条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十八年三月三十一日に終わるものとする。
第十一条 研究所の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第二十五条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「研究所の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の一部改正)
第十二条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「理化学研究所」の下に「、国民生活研究所」を、「理化学研究所法」の下に「、国民生活研究所法」を加える。
(所得税法の一部改正)
第十三条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「日本観光協会」の下に「、国民生活研究所」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十四条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第六号中「日本観光協会」の下に「、国民生活研究所」を加える。
(地方税法の一部改正)
第十五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「日本観光協会」の下に「、国民生活研究所」を加える。
(経済企画庁設置法の一部改正)
第十六条 経済企画庁設置法(昭和二十七年法律第二百六十三号)の一部を次のように改正する。
第七条第七号の次に次の一号を加える。
七の二 国民生活研究所に関すること。
内閣総理大臣 池田勇人
法務大臣 植木庚子郎
大蔵大臣 水田三喜男
自治大臣 安井謙