検疫法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第66号
公布年月日: 昭和31年4月11日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

昭和26年に制定された検疫法について、世界保健機関の国際衛生規則との整合性を図り、国際的な検疫制度に対応させる必要が生じたため改正を行う。主な改正点は、①回帰熱を検疫伝染病に追加、②検疫伝染病患者の委託収容範囲の拡大、③検疫港以外の港でも検疫を実施可能とする制度の新設、④検疫所長による検疫伝染病予防のための調査権限の追加である。これらの改正により、国際間の交通の円滑化と検疫業務の簡易化・効率化を図るものである。

参照した発言:
第24回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号

審議経過

第24回国会

参議院
(昭和31年2月7日)
衆議院
(昭和31年2月9日)
(昭和31年2月18日)
(昭和31年2月21日)
参議院
(昭和31年3月1日)
(昭和31年3月27日)
(昭和31年3月30日)
衆議院
(昭和31年6月3日)
参議院
(昭和31年6月3日)
検疫法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十一年四月十一日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第六十六号
検疫法の一部を改正する法律
検疫法(昭和二十六年法律第二百一号)の一部を次のように改正する。
第二条中「及び黄熱」を「、黄熱及び回帰熱」に改める。
第三条を次のように改める。
(検疫港等)
第三条 この法律において「検疫港」又は「検疫飛行場」とは、それぞれ政令で定める港又は飛行場をいう。
第四条を次のように改める。
(入港等の禁止)
第四条 次に掲げる船舶又は航空機(以下それぞれ「外国から来航した船舶」又は「外国から来航した航空機」という。)の長(長に代つてその職務を行う者を含む。以下同じ。)は、検疫済証又は仮検疫済証の交付を受けた後でなければ、当該船舶を国内(本州、北海道、四国及び九州並びに厚生省令で定めるこれらに附属する島の区域内をいう。以下同じ。)の港に入れ、又は当該航空機を検疫飛行場以外の国内の場所(港の水面を含む。)に着陸させ、若しくは着水させてはならない。ただし、外国から来航した船舶の長が、検疫を受けるため、当該船舶を第八条第一項に規定する検疫区域若しくは同条第三項の規定により指示された場所に入れる場合又は外国から来航した航空機の長が、検疫所長(検疫所の支所又は出張所の長を含む。以下同じ。)の許可を受けて当該航空機を着陸させ、若しくは着水させる場合は、この限りでない。
一 外国を発航し、又は外国に寄航して来航した船舶又は航空機
二 航行中に、外国を発航し又は外国に寄航した他の船舶又は航空機(検疫済証又は仮検疫済証の交付を受けている船舶又は航空機を除く。)から人を乗り移らせ、又は物を運び込んだ船舶又は航空機
第五条中「当該航空機」の下に「及び検疫飛行場ごとに検疫所長が指定する場所」を加える。
第六条中「出張所を含む。」の下に「以下同じ。」を加える。
第七条を次のように改める。
第七条 削除
第八条第三項中「(検疫所の支所又は出張所の長を含む。)」を削る。
第十二条中「船舶等の長その他船舶等に乗つている者」を「船舶等に乗つて来た者及び水先人その他船舶等が来航した後これに乗り込んだ者」に改める。
第十三条第一項中「船舶等に乗つている者」を「前条に規定する者」に改め、同条第二項を次のように改める。
2 検疫所長は、前項の検査について必要があると認めるときは、死体の解剖を行い、又は検疫官をしてこれを行わせることができる。この場合において、その死因を明らかにするため解剖を行う必要があり、かつ、その遺族の所在が不明であるか、又は遺族が遠隔の地に居住する等の理由により遺族の諾否が判明するのを待つていてはその解剖の目約がほとんど達せられないことが明らかであるときは、遺族の承諾を受けることを要しない。
第十四条第一項中「第四条第一項第二号の規定に基く政令で指定する地域」を「検疫伝染病が流行している地域」に改め、同項第七号中「その他適当と認める者」を削る。
第十五条第一項ただし書を次のように改める。
ただし、やむを得ない場合には、当該検疫伝染病患者を収容する施設を有する病院にその収容を委託して行うことができる。
第十六条第二項に次の一号を加える。
六 回帰熱については、百九十二時間
第十九条第一項中「(検疫所の支所又は出張所の長を含む。以下第三項において同じ。)」を削り、同条第三項中「当該船舶等が港内又は飛行場内に停泊中であるとき」を「当該船舶が港内に停泊中であり、又は当該航空機が国内の場所(港の水面を含む。)に停止中であるとき」に、「港外若しくは飛行場外に退去させる」を「当該船舶を港外に退去させ、若しくは当該航空機をその場所から離陸させ、若しくは離水させる」に改める。
第二十条を次のように改める。
(証明書の交付)
第二十条 検疫所長は、第十四条第一項各号の一に掲げる措置又は同条第二項の指示をした場合において、当該船舶等の長その他の関係者から求められたときは、その旨の証明書を交付しなければならない。
第二十二条及び第二十三条を削り、第二十一条第一項中「検疫飛行場以外の飛行場」を「検疫飛行場以外の国内の場所(港の水面を含む。)」に改め、「(検疫所の支所又は出張所の長を含む。)」を削り、「飛行場外に退去させなければならない。」を「その場所から離陸させ、若しくは離水させなければならない。」に改め、同条第二項中「飛行場外に退去させる」を「その場所から離陸させ、若しくは離水させる」に改め、同条中第六項を第七項とし、第五項中「前三項」を「前四項」に改め、「又は飛行場以外の場所」を削り、同項を第六項とし、第四項を第五項とし、第三項の次に次の一項を加え、同条を第二十三条とする。
4 第二項の船舶等については、第五条ただし書に規定する許可は、保健所長もすることができる。
第二十条の次に次の二条を加える。
(検疫港以外の港における検疫)
第二十一条 次の各号に掲げる要件を具備している船舶の長は、第四条の規定にかかわらず、検疫を受けるため、当該船舶を検疫港以外の港に入れることができる。ただし、あらかじめその港のもよりの検疫所の長の許可を受けた場合に限る。
一 検疫伝染病が現に流行し、又は流行するおそれのある地域として厚生省令で指定する外国の地域を発航し、又はその地域に寄航して来航したものでないこと。
二 航行中に、前号に規定する外国の地域を発航し又はその地域に寄航した他の船舶又は航空機(検疫済証又は仮検疫済証の交付を受けている船舶又は航空機を除く。)から人を乗り移らせ、又は物を運び込んだものでないこと。
三 航行中に検疫伝染病患者が発生しなかつたこと。
四 医師又は外国の法令によりこれに相当する資格を有する者が船医として乗り組んでいること。
五 ねずみ族の駆除が十分に行われた旨又はねずみ族の駆除を行う必要がない状態にあることを確認した旨を証する証明書(検疫所長又は外国のこれに相当する機関が六箇月内に発行したものに限る。)を有すること。
2 船舶の長は、前項ただし書の許可を受けようとするときは、厚生省令で定めるところにより、同項各号に掲げる事項その他厚生省令で定める事項を通報して申請しなければならない。
3 検疫所長は、第一項ただし書の許可の申請を受けたときは、すみやかに、許可するかどうかを決定し、これを当該船舶の長に通知しなければならない。
4 第一項の船舶の長は、当該船舶を検疫港以外の港に入れたときは、直ちに、当該船舶をその港の区域内の検疫所長が指示する場所に入れなければならない。
5 第九条及び第十条の規定は、第一項の船舶が前項の規定により指示された場所に入つた場合に準用する。
6 検疫所長は、第一項の船舶が検疫伝染病の病原体に汚染し、若しくは汚染したおそれがあると認めるとき、又は当該船舶を検疫港に回航させた上さらに第十三条に規定する診察若しくは検査を行う必要があると認めるときは、当該船舶の長に対し、その理由を示して、その港における検疫を打ち切ることができる。
7 前項の規定により検疫港以外の港における検疫が打ち切られたときは、当該船舶の長は、直ちに、当該船舶を港外に退去させなければならない。
8 第二十条の規定は、検疫所長が第六項の規定により検疫を打ち切つた場合に準用する。
(第四条第二号に該当する船舶等に関する特例)
第二十二条 第四条第二号に該当する船舶又は航空機(同時に同条第一号にも該当する船舶又は航空機を除く。)の長は、当該船舶又は航空機の性能が長距離の航行に堪えないため、又はその他の理由により、検疫港又は検疫飛行場に至ることが困難であるときは、第四条の規定にかかわらず、検疫を受けるため、当該船舶を検疫港以外の港に入れ、又は当該航空機を検疫飛行場以外の国内の場所(港の水面を含む。)に着陸させ、若しくは着水させることができる。
2 前項の船舶又は航空機の長は、当該船舶を検疫港以外の港に入れ、又は当該航空機を検疫飛行場以外の国内の場所(港の水面を含む。)に着陸させ、若しくは着水させたときは、直ちに、もよりの保健所長に、検疫伝染病患者の有無、第四条第二号に該当するに至つた日時及び場所その他厚生省令で定める事項を通報しなければならない。
3 前項の通報を受けた保健所長は、当該船舶又は航空機について、検査、消毒その他検疫伝染病の予防上必要な措置をとることができる。
4 第一項の船舶又は航空機については、第五条ただし書に規定する許可は、保健所長もすることができる。
5 第一項の船舶又は航空機であつて、当該船舶又は航空機を介して検疫伝染病の病原体が国内に侵入するおそれがない旨の保健所長の確認を受けたものについては、第四条及び第五条の規定を適用しない。
第二十四条中「発見したとき、」を「発見した場合」に、「認めたとき」を「認めた場合において、緊急の必要があるとき」に、「検疫官その他適当と認める者をして、診察、消毒、ねずみ族又は虫類の駆除等その予防に必要な応急措置を行わせなければならない。」を「診察、消毒等その予防に必要な応急措置を行い、又は検疫官をしてこれを行わせなければならない。」に改める。
第二十五条第一項に次のただし書を加え、同条第二項を削る。
ただし、当該船舶の長が、ねずみ族の駆除が十分に行われた旨又はねずみ族の駆除を行う必要がない状態にあることを確認した旨を証する証明書(検疫所長又は外国のこれに相当する機関が六箇月内に発行したものに限る。)を呈示したときは、この限りでない。
第二十六条に次の一項を加える。
3 検疫所長は、貨物を輸出しようとする者が、政令の定めるところにより手数料を納めて、輸出しようとする貨物に対する検疫伝染病の病原体の有無に関する検査、消毒若しくは虫類の駆除又はこれらの事項に関する証明書の交付を求めたときは、当該検疫所における検疫業務に支障のない限り、これに応ずることができる。
第二十七条の見出しを「(検疫所長の行う調査及び衛生措置)」に改め、同条中第二項を第三項とし、第一項中「伝染病予防法第一条第一項に規定する伝染病又は同条第二項の規定により厚生大臣が指定した伝染病」を「検疫伝染病」に、「検疫港又は検疫飛行場ごとに政令で定める区域」を「前項の規定に基く政令で定める区域」に改め、「検疫官その他適当と認める者をして、」を削り、「航空機又は」を「航空機若しくは」に、「消毒を行わせ、又は」を「消毒を行い、若しくは」に、「行わせる」を「行い、又は検疫官その他適当と認める者をしてこれを行わせる」に改め、同項を第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
検疫所長は、検疫伝染病の病原体を媒介する虫類の有無その他検疫伝染病に関する当該港又は飛行場の衛生状態を明らかにするため、検疫港又は検疫飛行場ごとに政令で定める区域内に限り、当該区域内にある船舶若しくは航空機若しくは当該区域内に設けられている施設、建築物その他の場所について、飲料水、海水、汚物、汚水、ねずみ族及び虫類の調査を行い、又は検疫官をしてこれを行わせることができる。
第二十九条中「第二十七条第一項」を「第二十七条第一項及び第二項」に改める。
第三十二条第二項中「船舶等に乗つている者で乗組員以外のもの」を「船舶等の乗組員以外の者」に改める。
第三十二条第四項及び第三十三条中「第二十一条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)」を「第二十二条第三項又は第二十三条第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)」に改め、第三十三条後段を削る。
第三十六条第七号中「検疫官」を「検疫所長又は検疫官」に改める。
第三十七条第一号中「第一項又は第二項」を削り、同条中第四号を第七号とし、同号を次のように改める。
七 第二十三条第一項若しくは第二項(同条第六項において準用する場合を含む。)又は同条第七項の規定に違反した者
第三十七条中第三号の次に次の三号を加える。
四 第二十一条第一項ただし書の許可を申請するに際し、同項各号に掲げる事項に関し虚偽の通報をしてその許可を受けた者
五 第二十一条第七項の規定に違反した者
六 第二十二条第二項の規定に違反した者
第三十八条第一号中「第九条」の下に「(第二十一条第五項において準用する場合を含む。)」を加え、同条第二号中「第二十五条第一項」を「第二十五条」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して九十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(外国軍用艦船等に関する検疫法特例の一部改正)
2 外国軍用艦船等に関する検疫法特例(昭和二十七年法律第二百一号)の一部を次のように改正する。
第八条中「第二十一条第一項から第五項まで、」を削る。
(伝染病予防法の一部改正)
3 伝染病予防法(明治三十年法律第三十六号)の一部を次のように改正する。
第三条ノ二中「又ハ「フイラリア」病」を「、「フイラリア」病、黄熱又ハ回帰熱」に改める。
(死体解剖保存法の一部改正)
4 死体解剖保存法(昭和二十四年法律第二百四号)の一部を次のように改正する。
第七条に次の一号を加える。
五 検疫法第十三条第二項後段の規定に該当する場合
(罰則に関する経過規定)
5 この法律の施行前にした違反行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
厚生大臣 小林英三
内閣総理大臣 鳩山一郎