水防法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第61号
公布年月日: 昭和30年7月11日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

毎年の災害による甚大な被害への対策として、水防活動の強化を図るため、水防法の改正を提案する。主な改正点は、建設省と中央気象台による洪水予報の法的整備、建設大臣・都道府県知事による水防警報の実施、水防団員等の公務災害補償制度の確立、功労者への報賞制度の創設、水防により利益を受ける市町村の費用負担義務の法定化、水防施設整備に対する国庫補助の法定化である。また気象業務法等の関連法令も改正し、洪水予報や水防警報に関する制度的根拠を明確化する。

参照した発言:
第22回国会 衆議院 建設委員会 第17号

審議経過

第22回国会

衆議院
(昭和30年6月7日)
参議院
(昭和30年6月7日)
衆議院
(昭和30年6月9日)
(昭和30年6月14日)
(昭和30年6月14日)
参議院
(昭和30年6月14日)
(昭和30年6月16日)
(昭和30年6月21日)
(昭和30年6月22日)
(昭和30年7月30日)
衆議院
(昭和30年7月25日)
水防法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年七月十一日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第六十一号
水防法の一部を改正する法律
水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)の一部を次のように改正する。
目次中「第五章 費用負担(第三十二条・第三十三条)」を「第五章 費用の負担及び補助(第三十二条―第三十三条の二)」に改める。
第二条第五項中「水こう門」を「ダム又は水門若しくは閘門」に改め、同条に次の二項を加える。
6 この法律において「量水標等」とは、量水標、験潮儀その他の水位観測施設をいう。
7 この法律において「水防警報」とは、洪水又は高潮によつて災害が起るおそれがあるとき、水防を行う必要がある旨を警告して行う発表をいう。
第六条第二項中「、扶助」を削り、同条の次に次の一条を加える。
(公務災害補償)
第六条の二 水防団長又は水防団員が公務により死亡し、負傷し、若しくは病気にかかり、又は公務による負傷若しくは病気により死亡し、若しくは廃疾となつたときは、当該水防団長又は水防団員の属する水防管理団体は、水害予防組合にあつては組合会の議決で、市町村組合又は市町村にあつては条例で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によって受ける損害を補償しなければならない。
第十条の見出しを「(洪水予報)」に改め、同条中「中央気象台長、管区気象台長又は測候所長」を「中央気象台」に、「気象」を「気象等」に、「虞があると認めるときは、」を「おそれがあると認められるときは、」に改め、「報道機関」の下に「(以下「報道機関」という。)」を加え、同条に次の二項を加える。
2 建設大臣は、二以上の都府県の区域にわたる河川又は流域面積が大きい河川で洪水により国民経済上重大な損害を生ずるおそれがあるものについて、洪水のおそれがあると認められるときは、中央気象台と共同して、その状況を水位又は流量を示して関係都道府県知事に通知するとともに、必要に応じ報道機関の協力を求めて、これを一般に周知させなければならない。
3 前項の河川は、建設大臣が運輸大臣に協議して定める。
第十条の次に次の四条を加える。
(洪水予報の通知)
第十条の二 都道府県知事は、前条第一項又は第二項の規定による通知を受けた場合においては、直ちに都道府県の水防計画で定める水防管理者及び量水標管理者(量水標等の管理者をいう。以下同じ。)に、その受けた通知に係る事項を通知しなければならない。
(水位の通報)
第十条の三 前条に規定する水防管理者又は量水標管理者は、洪水又は高潮のおそれがあることを自ら知り、又は前条の規定による通知を受けた場合において、量水標等の示す水位が都道府県知事の定める通報水位をこえるときは、その水位の状況を、都道府県の水防計画で定めるところにより、関係者に通報しなければならない。
(水防警報)
第十条の四 建設大臣は、洪水又は高潮により国民経済上重大な損害を生ずるおそれがあると認めて指定した河川、湖沼又は海岸について、都道府県知事は、建設大臣が指定した河川、湖沼又は海岸以外の河川、湖沼又は海岸で洪水又は高潮により相当な損害を生ずるおそれがあると認めて指定したものについて、水防警報をしなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定により水防警報をしたときは、直ちにその警報事項を関係都道府県知事に通知しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定により水防警報をしたとき、又は前項の規定により通知を受けたときは、都道府県の水防計画で定めるところにより、直ちにその警報事項又はその受けた通知に係る事項を関係水防管理者その他水防に関係のある機関に通知しなければならない。
4 建設大臣又は都道府県知事は、第一項の規定により河川、湖沼又は海岸を指定したときは、その旨を公示しなければならない。
(水防団及び消防機関の出動)
第十条の五 水防管理者は、水防警報が発せられたとき、水位が都道府県知事の定める警戒水位に達したときその他水防上必要があると認めるときは、都道府県の水防計画で定めるところにより、水防団及び消防機関を出動させ、又は出動の準備をさせなければならない。
第十六条第一項中「他の水防管理者、市町村長又は消防長」を「他の水防管理者又は市町村長若しくは消防長」に改め、同条第三項を次のように改める。
3 第一項の規定による応援のために要する費用は、当該応援を求めた水防管理団体が負担するものとする。
4 前項の規定により負担する費用の額及び負担の方法は、当該応援を求めた水防管理団体と当該応援を求められた水防管理団体又は市町村とが協議して定める。
第二十条第二項中「日本発送電株式会社通信施設」を「電気事業通信施設」に改める。
第二十九条から第三十一条までを次のように改める。
第二十九条から第三十一条まで 削除
「第五章 費用負担」を「第五章 費用の負担及び補助」に改める。
第三十二条の次に次の一条を加える。
(利益を受ける市町村の費用負担)
第三十二条の二 水防管理団体の水防によつて当該水防管理団体の区域の関係市町村以外の市町村が著しく利益を受けるときは、前条の規定にかかわらず、当該水防に要する費用の一部は、当該水防により著しく利益を受ける市町村が負担するものとする。
2 前項の規定により負担する費用の額及び負担の方法は、当該水防を行う水防管理団体と当該水防により著しく利益を受ける市町村とが協議して定める。
3 前項の規定による協議が成立しないときは、水防管理団体又は市町村は、その区域の属する都道府県の知事にあつせんを申請することができる。
4 都道府県知事は、前項の規定による申請に基いてあつせんをしようとする場合において、当事者のうちにその区域が他の都府県に属する水防管理団体又は市町村があるときは、当該他の都府県の知事と協議しなければならない。
第五章中第三十三条の次に次の一条を加える。
(費用の補助)
第三十三条の二 都道府県は、第三十二条の規定により水防管理団体が負担する費用について、当該水防管理団体に対して補助することができる。
2 国は、前項の規定により都道府県が水防管理団体に対して補助するときは、当該補助金額のうち、二以上の都府県の区域にわたる河川又は流域面積が大きい河川で洪水による国民経済に与える影響が重大なものの政令で定める水防施設の設置に係る金額の二分の一以内を、予算の範囲内において、当該都道府県に対して補助することができる。
3 前項の規定により国が都道府県に対して補助する金額は、当該水防施設の設置に要する費用の三分の一に相当する額以内とする。
第三十四条を次のように改める。
(第十七条の規定により水防に従事した者に対する災害補償)
第三十四条 第十七条の規定により水防に従事した者が水防に従事したことにより死亡し、負傷し、若しくは病気にかかり、又は水防に従事したことによる負傷若しくは病気により死亡し、若しくは廃疾となつたときは、当該水防管理団体は、水害予防組合にあつては組合会の議決で、市町村組合又は市町村にあつては条例で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
第三十四条の次に次の一条を加える。
(報賞)
第三十四条の二 建設大臣は、水防管理者の所轄の下に水防に従事した者で当該水防に関し著しい功労があると認められるものに対し、建設省令で定めるところにより、報賞を行うことができる。
第三十五条の次に次の一条を加える。
(勧告及び助言)
第三十五条の二 建設大臣は都道府県又は水防管理団体に対し、都道府県知事は都道府県の区域内における水防管理団体に対し、水防に関し必要な勧告又は助言をすることができる。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 気象業務法(昭和二十七年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
第十三条第一項及び第二項中「高潮及び波浪」を「高潮、波浪及び洪水」に改める。
第十四条の次に次の一条を加える。
第十四条の二 中央気象台は、政令の定めるところにより、気象、高潮及び洪水についての水防活動の利用に適合する予報及び警報をしなければならない。
2 中央気象台は、水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第十条第三項の規定により定められた河川について、建設大臣と共同して、水位又は流量を示して洪水についての水防活動の利用に適合する予報及び警報をしなければならない。
3 第十三条第三項の規定は、前二項の予報及び警報をする場合に準用する。この場合において、第十三条第三項中「中央気象台は、前二項の予報及び警報をする場合は、」とあるのは、「中央気象台又は中央気象台及び建設大臣は、それぞれ第十四条の二第一項又は第二項の予報及び警報をする場合は、」と読み替えるものとする。
4 第二項の規定により中央気象台が建設大臣と共同して予報及び警報をする場合における建設大臣については、第十七条及び第二十三条の規定は、適用しない。
第十五条第一項中「又は前条第一項」を「、第十四条第一項又は前条第一項若しくは第二項」に、「高潮及び波浪」を「高潮、波浪及び洪水」に、「又は日本放送協会」を「、日本放送協会、建設省又は都道府県」に改める。
第十七条第一項中「高潮又は波浪」を「高潮、波浪又は洪水」に改める。
第二十三条中「高潮及び波浪」を「高潮、波浪及び洪水」に改める。
第二十四条第一項中「高潮又は波浪」を「高潮、波浪又は洪水」に改める。
第三十七条中「高潮若しくは波浪」を「高潮、波浪若しくは洪水」に改める。
3 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第十二号中「水防の」を「洪水予報及び水防警報に関する事務を管理し、水防の」に改める。
第十二条に次の一号を加える。
四 洪水予報及び水防警報の実施に関すること。
4 北海道開発法(昭和二十五年法律第百二十六号)の一部を次のように改正する。
第十二条第一項に次の一号を加える。
四 建設省の所掌に係る洪水予報及び水防警報の実施に関すること。
内閣総理大臣 鳩山一郎
大蔵大臣 一万田尚登
運輸大臣 三木武夫
建設大臣 竹山祐太郎