(医師の届出等)
第四条 医師は、診察の結果受診者が患者(患者の疑のある者を含む。この条において以下同じ。)であると診断し、又は死亡の診断若しくは死体の検案をした場合において、死亡者が患者であつたことを知つたときは、厚生省令の定めるところにより、患者、その保護者(親権を行う者又は後見人をいう。以下同じ。)若しくは患者と同居している者又は死体のある場所若しくはあつた場所を管理する者若しくはその代理をする者に、消毒その他の予防方法を指示し、且つ、七日以内に、厚生省令で定める事項を、患者の居住地(居住地がないか、又は明らかでないときは、現在地。以下同じ。)又は死体のある場所の都道府県知事に届け出なければならない。
2 医師は、患者が治ゆし、又は死亡したと診断したときは、すみやかに、その旨をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならない。
(指定医の診察)
第五条 都道府県知事は、必要があると認めるときは、その指定する医師をして、患者又は患者と疑うに足りる相当な理由がある者を診察させることができる。
2 前項の医師の指定は、らいの診療に関し、三年以上の経験を有する者のうちから、その同意を得て行うものとする。
3 第一項の医師は、同項の職務の執行に関しては、法令により公務に従事する職員とみなす。
(国立療養所への入所)
第六条 都道府県知事は、らいを伝染させるおそれがある患者について、らい予防上必要があると認めるときは、当該患者又はその保護者に対し、国が設置するらい療養所(以下「国立療養所」という。)に入所し、又は入所させるように勧奨することができる。
2 都道府県知事は、前項の勧奨を受けた者がその勧奨に応じないときは、患者又はその保護者に対し、期限を定めて、国立療養所に入所し、又は入所させることを命ずることができる。
3 都道府県知事は、前項の命令を受けた者がその命令に従わないとき、又は公衆衛生上らい療養所に入所させることが必要であると認める患者について、第二項の手続をとるいとまがないときは、その患者を国立療養所に入所させることができる。
4 第一項の勧奨は、前条に規定する医師が当該患者を診察した結果、その者がらいを伝染させるおそれがあると診断した場合でなければ、行うことができない。
(従業禁止)
第七条 都道府県知事は、らいを伝染させるおそれがある患者に対して、その者がらい療養所に入所するまでの間、接客業その他公衆にらいを伝染させるおそれがある業務であつて、厚生省令で定めるものに従事することを禁止することができる。
2 前条第四項の規定は、前項の従業禁止の処分について準用する。
(汚染場所の消毒)
第八条 都道府県知事は、らいを伝染させるおそれがある患者又はその死体があつた場所を管理する者又はその代理をする者に対して、消毒材料を交付してその場所を消毒すべきことを命ずることができる。
2 都道府県知事は、前項の命令を受けた者がその命令に従わないときは、当該職員にその場所を消毒させることができる。
(物件の消毒廃棄等)
第九条 都道府県知事は、らい予防上必要があると認めるときは、らいを伝染させるおそれがある患者が使用し、又は接触した物件について、その所持者に対し、授与を制限し、若しくは禁止し、消毒材料を交付して消毒を命じ、又は消毒によりがたい場合に廃棄を命ずることができる。
2 都道府県知事は、前項の消毒又は廃棄の命令を受けた者がその命令に従わないときは、当該職員にその物件を消毒し、又は廃棄させることができる。
3 都道府県は、前二項の規定による廃棄によつて通常生ずべき損失を補償しなければならない。
4 前項の規定による補償を受けようとする者は、厚生省令の定める手続に従い、都道府県知事に、これを請求しなければならない。
5 都道府県知事は、前項の規定による請求を受けたときは、補償すべき金額を決定し、当該請求者にこれを通知しなければならない。
6 前項の決定に不服がある者は、その通知を受けた日から六十日以内に、裁判所に訴をもつてその金額の増額を請求することができる。
(質問及び調査)
第十条 都道府県知事は、前二条の規定を実施するため必要があるときは、当該職員をして、患者若しくはその死体がある場所若しくはあつた場所又は患者が使用し、若しくは接触した物がある場所に立ち入り、患者その他の関係者に質問させ、又は必要な調査をさせることができる。
2 前項の職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係者の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。