刑法等の一部を改正する法律
法令番号: 法律第195号
公布年月日: 昭和28年8月10日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

刑法、刑事訴訟法、犯罪者予防更生法及び更生緊急保護法の一部を改正し、犯罪対策の強化を図るものである。主な改正点は、執行猶予制度の見直しである。現行制度では執行猶予中の者への保護指導ができず、要件も厳格で前科がある場合は7年経過が必要だった。そこで執行猶予の要件を緩和し、期間を5年に短縮。また執行猶予中の軽微な犯罪に対して情状により再度の執行猶予を可能とし、その場合は必ず保護観察に付すこととした。さらに通常の執行猶予者も必要に応じて保護観察に付すことができるようにした。これにより、できる限り実刑を避けて保護観察による改善更生を図ることを目指している。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 法務委員会 第4号

審議経過

第16回国会

参議院
(昭和28年6月24日)
衆議院
(昭和28年6月26日)
参議院
(昭和28年6月26日)
(昭和28年6月30日)
衆議院
(昭和28年7月13日)
参議院
(昭和28年7月16日)
衆議院
(昭和28年7月17日)
(昭和28年7月25日)
(昭和28年7月28日)
(昭和28年7月30日)
参議院
(昭和28年7月30日)
(昭和28年7月31日)
衆議院
(昭和28年8月3日)
参議院
(昭和28年8月4日)
(昭和28年8月6日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
刑法等の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百九十五号
刑法等の一部を改正する法律
目次
第一条 刑法の一部改正
第二条 刑事訴訟法の一部改正
第三条 犯罪者予防更生法の一部改正
第四条 更生緊急保護法の一部改正
附則
(刑法の一部改正)
第一条 刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
第二十五条第二号中「七年以内」を「五年以内」に改め、同条に次の一項を加える。
前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトアルモ其執行ヲ猶予セラレタル者一年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ケ情状特ニ憫諒ス可キモノアルトキ亦前項ニ同ジ但第二十五条ノ二ノ保護観察ニ付セラレ其期間内更ニ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此限ニ在ラズ
第二十五条の次に次の一条を加える。
第二十五条ノ二 前条第二項ノ場合ニ於テハ猶予ノ期間中保護観察ニ付ス
保護観察ニ付テハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条を次のように改める。
第二十六条 左ニ記載シタル場合ニ於テハ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消ス可シ
一 猶予ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ其刑ニ付キ執行猶予ノ言渡ナキトキ
二 猶予ノ言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ其刑ニ付キ執行猶予ノ言渡ナキトキ
三 第二十五条第一項第二号ニ記載シタル者及ビ第二十六条ノ二第三号ニ該ル者ヲ除ク外猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ
第二十六条の次に次の二条を加える。
第二十六条ノ二 左ニ記載シタル場合ニ於テハ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消スコトヲ得
一 猶予ノ期間内更ニ罪ヲ犯シ罰金ニ処セラレタルトキ
二 第二十五条ノ二ノ保護観察ニ付セラレタル者遵守ス可キ事項ヲ遵守セザリシトキ
三 猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ其執行ヲ猶予セラレタルコト発覚シタルトキ
第二十六条ノ三 前二条ノ規定ニ依リ禁錮以上ノ刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消シタルトキハ執行猶予中ノ他ノ禁錮以上ノ刑ニ付テモ其猶予ノ言渡ヲ取消ス可シ
第二十九条第一項第四号を次のように改める。
四 仮出獄中遵守ス可キ事項ヲ遵守セザリシトキ
(刑事訴訟法の一部改正)
第二条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
第三百三十三条第二項に次の後段を加える。
刑法第二十五条ノ二第一項の規定により保護観察に付する場合も、同様である。
第三百四十九条第二項を次のように改める。
刑法第二十六条ノ二第二号の規定により刑の執行猶予の言渡を取り消すべき場合には、前項の請求は、保護観察所の長の申出に基いてこれをしなければならない。
第三百四十九条の次に次の一条を加える。
第三百四十九条の二 前条の請求があつたときは、裁判所は、猶予の言渡を受けた者又はその代理人の意見を聴いて決定をしなければならない。
前項の場合において、その請求が刑法第二十六条ノ二第二号の規定による猶予の言渡の取消を求めるものであつて、猶予の言渡を受けた者の請求があるときは、口頭弁論を経なければならない。
第一項の決定をするについて口頭弁論を経る場合には、猶予の言渡を受けた者は、弁護人を選任することができる。
第一項の決定をするについて口頭弁論を経る場合には、検察官は、裁判所の許可を得て、保護観察官に意見を述べさせることができる。
第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第三百五十条中「前条第二項」を「前条第一項及び第五項」に改める。
(犯罪者予防更生法の一部改正)
第三条 犯罪者予防更生法(昭和二十四年法律第百四十二号)の一部を次のように改正する。
第三十三条第一項中「左に掲げる者は、」の下に「この法律の定めるところにより、」を加え、同項第四号を次のように改める。
四 刑法第二十五条ノ二第一項の規定により保護観察に付された者
第四十一条第二項及び第三項中「地方委員会」を「地方委員会又は保護観察所の長」に改める。
第四十五条第一項中「地方委員会」を「地方委員会又は保護観察所の長」に、「第四十三条の申請又は仮出獄の取消」を「第四十三条の申請、仮出獄の取消又は第四十六条の申出」に改め、同条第三項を次のように改める。
3 仮退院中の者又は刑の執行を猶予されている者につき、前項の期間内に第四十三条の申請又は刑事訴訟法第三百四十九条の請求がなされたときは、同項本文の規定にかかわらず、その申請又は請求につき裁判所の決定があるまで、継続して留置することができる。但し、留置の期間は、通じて二十日を越えることができない。
第四十五条第五項中「第一項の決定」を「地方委員会のする第一項の決定」に改め、同項を同条第八項とし、同条中第四項を第六項とし、同項の次に次の一項を加える。
7 刑の執行猶予中の者が、第二項から第五項までの規定により留置されたときは、その留置の日数は、刑の執行猶予が取り消された場合においては、刑期に算入する。
第四十五条第三項の次に次の二項を加える。
4 刑事訴訟法第三百四十九条の二第二項の規定による口頭弁論の請求があつたときは、裁判所は、決定で、十日間に限り、前項但書の期間を延長することができる。
5 第三項の決定が刑の執行猶予の言渡を取り消すものであるときは、同項但書及び前項の規定にかかわらず、その決定が確定するまで、継続して留置することができる。
第四十六条の見出しを「(検察官への申出)」に、同条中「地方裁判所」を「地方裁判所又は簡易裁判所」に、「これを通告しなければならない。」を「書面で、刑事訴訟法第三百四十九条第二項の規定による申出をしなければならない。」に改める。
(更生緊急保護法の一部改正)
第四条 更生緊急保護法(昭和二十五年法律第二百三号)の一部を次のように改正する。
第一条第一項第三号を次のように改める。
三 懲役又は禁こにつき刑の執行猶予の言渡を受け、保護観察に付されなかつた者
附 則
1 この法律の施行期日は、昭和二十八年十二月三十一日までの間において政令で定める。
2 この法律の施行の際、この法律による改正前の犯罪者予防更生法第三十三条第一項第四号の規定により保護観察に付されている者の保護観察については、この法律の施行後も、なお従前の例による。
法務大臣 犬養健
内閣総理大臣 吉田茂