(所掌事務)
第一條 海上公安局は、左に掲げる事務を行う機関とする。
一 海上(別に法律で定める港の区域を含む。以下同じ。)における法令の違反の防止
二 海難の際の人命、積荷及び船舶の救助に関すること(運輸省の所掌に属するものを除く。)。
三 天災事変その他救済を必要とする場合における船舶又は航空機による人命及び財産の保護
四 港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)の施行に関すること(運輸省の所掌に属するものを除く。)。
五 海上の航路障害物及び危険物の除去及び処理に関すること(機雷その他の爆発性の危険物の除去及び処理を除く。)。
六 前二号に掲げるものの外、船舶交通の安全に関すること(運輸省の所掌に属するものを除く。)。
七 海上における犯罪を捜査し、及びこれに係る犯人又は被疑者を逮捕すること並びに海上において犯人又は被疑者を逮捕すること。
八 前各号に掲げるものの外、海上における公共の秩序の維持
(海上公安局の長)
第三條 海上公安局の長は、第七條第一項の海上保安官のうちから、保安庁長官が命ずる。
2 海上公安局の長は、保安庁長官の指揮監督を受け、部務を掌理する。但し、第一條第一号の事務については、その事務を管理する主任の大臣の指揮監督を受ける。
(海上公安大学校等)
第四條 海上公安局に、海上公安大学校、海上公安学校及び海上公安訓練所を置く。
2 海上公安大学校、海上公安学校及び海上公安訓練所は、海上公安局の職員の訓練を行うための機関とする。
3 海上公安大学校、海上公安学校及び海上公安訓練所の名称、位置及び内部組織は、総理府令で定める。
(海上公安審議会)
第五條 海上公安局の長の諮問に応じ、第一條各号に掲げる事務に関する重要事項を調査審議するため、海上公安局に、海上公安審議会を置く。
2 海上公安審議会の組織及び運営の方法は、政令で定める。
(地方機関)
第六條 海上公安局に、その事務を分掌させるため、地方海上公安局、地方海上公安部、港長事務所その他の事務所を置く。
2 地方海上公安局の名称及び位置は、別表の通りとする。
3 地方海上公安局の所掌事務の範囲及び内部組織は、総理府令で定める。
4 地方海上公安部、港長事務所その他の事務所の名称、位置、所掌事務の範囲及び内部組織は、総理府令で定める。
(海上公安局に置かれる職員)
第七條 海上公安局に、海上公安官、海上公安官補その他の職員を置く。
2 海上公安官及び海上公安官補は、第一條各号に掲げる事務を行う。
3 海上公安局の職員(海上公安局の長を除く。)の任用、免職その他の人事に関する事項は、海上公安局の長が行う。
(船舶)
第九條 海上公安局の船舶は、海上公安局の事務を遂行するために必要な限度内において、武器を装備することができる。
(共助)
第十條 海上公安局と国家地方警察、自治体警察、税関、水産庁その他の関係行政庁とは、情報の交換その他の方法により、緊密な連絡を保たなければならず、また、犯罪の予防、鎮圧若しくは捜査又は犯人若しくは被疑者の逮捕並びに人命又は財産の保護のため必要があると認めるときは、相互に、関係職員の派遣その他必要な協力を求めることができる。
2 前項の規定により協力を求められた海上公安局その他の関係行政庁は、できるだけその求めに応じなければならない。
3 第一項の規定により派遣された職員は、その派遣を求めた行政庁の指揮を受けなければならない。
(協力の請求)
第十一條 海上公安官は、人命又は財産の保護のための措置をとるに際し緊急の必要があるときは、現場の附近にある人又は船舶に対し、労務の提供その他必要な協力を求めることができる。
(立入等)
第十二條 海上公安官は、法令の違反を防止し、又は人命若しくは財産を保護するため特に必要があるときは、船舶に立ち入り、船舶、書類、積荷その他の物件を検査し、且つ、乗組員に対し、その業務に関し必要な質問をすることができる。
2 海上公安官は、前項の場合において真にやむを得ないときは、船長又は船長に代つてその職務を行う者に対し、一時、船舶の進行を停止し、又はその出発を中止すべきことを命ずることができる。
3 海上公安官は、船内にある者であつて、異常な挙動その他の事情から判断して、犯罪を犯し若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当の理由のあるもの又は犯罪について知つていると認められるものに対し、必要な質問をすることができる。
4 海上公安官は、前三項に規定する権限を行おうとするときは、その身分を示す証票を携帯し、関係人の要求があるときは、これを呈示しなければならず、且つ、なるべく制服を着用しなければならない。
(停船命令等)
第十三條 海上公安官は、海上において犯罪を捜査し、又は犯人若しくは被疑者を逮捕するため真にやむを得ないときは、必要な限度内において、左に掲げる処分をすることができる。
一 船長又は船長に代つてその職務を行う者に対し、一時、船舶の進行を停止し、又はその出発を中止すべきことを命ずること。
二 船長又は船長に代つてその職務を行う者に対し、指定する場所に船舶を回航すべきことを命ずること。
三 乗組員その他の者の下船又は乗船を制限すること。
四 船長又は船長に代つてその職務を行う者に対し、積荷の陸揚を命じ、又は積荷の陸揚を制限すること。
(司法警察権)
第十四條 海上公安官及び海上公安官補は、海上において、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)に規定する司法警察職員として職務を行う。
2 海上公安官及び海上公安官補は、陸上においても、海上における犯罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察職員として職務を行う。
3 前項の権限は、海上において捜査(刑事訴訟法第二百十二條に規定する犯人の追跡を含む。)に着手した犯罪に限り行使することができる。
4 前項の場合において、令状による逮捕、差押、捜索及び検証は、できるだけ、警察官又は警察吏員に嘱託して行わなければならない。但し、これらの令状の請求は、この限りでない。
5 前四項の規定により司法警察職員として職務を行う者のうち、海上公安局の長が指定する海上公安官は、司法警察員とし、その他の海上公安官及び海上公安官補は、司法巡査とする。
(武器の所持)
第十五條 海上公安官及び海上公安官補は、その職務を行うために必要な武器を所持することができる。
(武器の使用)
第十六條 海上公安官及び海上公安官補の第九條及び前條の武器の使用については、警察官等職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第七條を準用する。
(国家公務員共済組合法の適用)
第十七條 海上公安局の職員についての国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)の適用については、同法第二條第二項の規定にかかわらず、海上公安局に属する職員を単位として、総理府に一組合を設ける。
(解釈規定)
第十八條 この法律の規定は、警察官又は警察吏員が海上において、犯罪の予防、鎮圧及び捜査並びに犯人又は被疑者の逮捕の権限を行使することを排除するものと解釈してはならない。