(目的)
第一條 この法律は、当分の間、国民貯蓄債券の発行により浮動購買力を吸収して国民貯蓄の増強を図り、もつて資源の開発その他経済の再建のために緊要な資金の調達に資することを目的とする。
(国民貯蓄債券の発行権限及び発行限度額)
第二條 政府は、前條に掲げる目的を達成するため、国民貯蓄債券を発行することができる。
2 前項の場合において、第一回の国民貯蓄債券を発行した日の属する会計年度においては、その年度末における国民貯蓄債券のその発行価額による発行現在高が百億円を、その年度後の毎会計年度においては、当該年度末における国民貯蓄債券のその発行価額による発行現在高から前年度末における国民貯蓄債券のその発行価額による発行現在高を控除した残額が百億円を、それぞれこえることとなつてはならない。
(資金運用部資金及び資金運用部特別会計との関係)
第三條 国民貯蓄債券の発行に因る収入金は、資金運用部資金法(昭和二十六年法律第百号)第一條及び第六條第一項の規定にかかわらず、資金運用部資金とし、国民貯蓄債券の償還金及び国民貯蓄債券の買上に必要な資金のうち、当該国民貯蓄債券の発行価額に相当するものは、資金運用部資金をもつて充てる。
2 国民貯蓄債券の発行、償還、買上及び抽せんに関する経費並びに国民貯蓄債券についてその額面金額(当該国民貯蓄債券が買上に係るものであるときは、その買上価額)と発行価額との差額に相当する金額、国民貯蓄債券の割増金及び取扱手数料は、資金運用部特別会計法(昭和二十六年法律第百一号)第三條の規定にかかわらず、資金運用部特別会計の負担とし、同会計の歳出とする。
3 郵便官署が取り扱つた国民貯蓄債券の取扱手数料は、毎会計年度、予算の範囲内で、資金運用部特別会計から郵政事業特別会計に繰り入れるものとする。
(発行の條件)
第四條 国民貯蓄債券は、無記名とし、その額面金額は、一万円以下とする。
3 国民貯蓄債券は、割引の方法によつて売り出すものとする。
4 国民貯蓄債券には、抽せんにより割増金を附することができる。
5 第一項に規定する額面金額の種類、第三項に規定する割引の歩合、前項に規定する抽せん並びに同項に規定する割増金の等級別金額及び当せんの数その他割増金に関し必要な事項は、政令で定める。
6 前項の規定により割引の歩合及び割増金に関し定をする場合においては、発行する各回ごとの国民貯蓄債券の応募者平均利まわりが、一般の金利水準と権衡を失しないように定めなければならない。
(国民貯蓄債券の買上)
第五條 大蔵大臣は、国民貯蓄債券を所持人の請求に応じて買い上げることができる。
(取扱機関)
第六條 郵便官署は、国民貯蓄債券の売りさばき、償還及び買上に関する事務並びにその割増金の支払に関する事務を取り扱うものとする。
2 大蔵大臣は、相互銀行、信用金庫その他政令で定める金融機関又は証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二條第九項に規定する証券業者に国民貯蓄債券の売りさばきに関する事務を委託して取り扱わせることができる。
3 相互銀行、信用金庫その他前項に規定する金融機関は、他の法令の規定にかかわらず、国民貯蓄債券の売りさばきに関する義務を行うことができる。
4 第一項又は第二項の規定による事務の取扱に関し必要な事項は、政令で定める。
(国民貯蓄債券収入金の運用)
第七條 資金運用部資金のうち国民貯蓄債券の発行に因る収入金に相当するものは、資源の開発その他経済の再建に緊要な産業の施設の建設のために必要な資金の供給に資するため、資金運用部資金法の規定により運用するものとする。
(国民貯蓄債券の償還金及び割増金の支払資金並びに国民貯蓄債券の買上資金の交付)
第八條 大蔵大臣は、国民貯蓄債券の償還金及び割増金の支払に必要な資金並びに国民貯蓄債券の買上に必要な資金を郵政大臣の指定する出納官吏に交付することができる。
(国民貯蓄債券の消滅時効)
第九條 国民貯蓄債券の消滅時効は、償還金については十年、割増金については五年をもつて完成する。
(割増金に対する非課税)
第十條 国民貯蓄債券の割増金に対しては、所得税を課さない。
(国債に関する法律等の不適用)
第十一條 民法施行法(明治三十一年法律第十一号)第五十七條、国債に関する法律(明治三十九年法律第三十四号)及び国債関係事務簡捷化に関する法律(昭和十八年法律第百十一号)第二條の規定は、国民貯蓄債券については、適用しない。
2 国債整理基金特別会計法(明治三十九年法律第六号)の適用については、国民貯蓄債券は、国債でないものとみなす。
(国民貯蓄債券に関する事務の委任)
第十二條 大蔵大臣は、国民貯蓄債券に関する事務の一部を日本銀行に取り扱わせることができる。