第一條 この法律は、財產税法に基いて國庫に納付せられる有價証券、戰後経済の民主化を図るため処分せらるべき有價証券等多額の有價証券の処分を、円滑且つ公正ならしめるため、有價証券市場の状況に應じて、その処分に関する時期、價額、数量等に所要の調整を加えるとともに、廣く國民の間に有價証券の分散を図ることを目的とする。
第二條 この法律において指定証券とは、左に掲げるものをいう。
二 持株会社整理委員会が、持株会社整理委員会令第一條の規定により指定を受けた会社又は個人から讓渡を受けて所有する有價証券
三 昭和二十年大藏外務内務司法省令第一号(外地銀行、外國銀行及び特別戰時機関の閉鎖に関する件)第一條に規定する指定機関の所有する有價証券
四 昭和二十一年大藏司法省令第四号(日本証券取引所の有價証券賣買取引事業特別会計に属する財產に関する件)第一條の規定により、閉鎖機関保管人委員会委員長の管理する有價証券
五 昭和二十一年勅令第五百六十七号(会社の証券保有制限等に関する件)の規定に基いて、同令第一條に規定する指定会社、從属会社若しくは関係会社又は同令第五條第一項(同令第十七條において準用する場合を含む。)の規定に該当する者が讓渡すべき株券及び出資証券(同令第六條第一項第一号に掲げる者に対し讓渡する株式を除く。)
六 企業再建整備法に規定する特別経理株式会社(以下特別経理株式会社という。)が同法に規定する決定整備計画の定めるところに從つて讓渡すべき有價証券及び同法第五十二條に規定する者が、同法の規定の準用の結果讓渡することとなる有價証券
前項において有價証券とは、國債証券、地方債証券、株券、出資証券、社債券その他命令で定めるもの(明治三十九年法律第三十四号國債に関する法律又は社債等登録法の規定により登録されたものを含む。)をいう。
第三條 指定証券の讓渡については、その讓渡の計画に関し、予め証券処理調整協議会(以下協議会という。)の承認を経なければならない。
協議員は、左の各号に掲げる者の代表者(第三号に掲げる者及び第五号の規定に基く命令により指定された個人については、その者)を以てこれに充てる。
五 前各号に掲げるものの外、命令で指定する者があるときは、その者
議長の選任及び解任は、協議員の過半数を以てこれを決する。
第六條 協議会の決議は、議長の選任及び解任の場合を除く外、協議員全員の意見の一致による。
前項に規定するものを除く外、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会の規約(以下規約という。)を以てこれを定める。
第七條 指定証券(第二條第一項第五号の指定証券を除く。)を讓渡しようとする者は、規約の定めるところにより、讓渡の時期、價額、数量その他讓渡に関し必要な事項を記載した計画書を作成し、これを協議会に提出しなければならない。但し、命令の定める場合はこの限りでない。
前項の規約を決定したときは、協議会は、命令の定めるところにより、これを公告しなければならない。これを改正したときも、また同樣とする。
第八條 前條第一項の規定による計画書の提出があつたときは、協議会は、これを檢討し、有價証券市場の状況を勘案し、指定証券の讓渡を円滑且つ公正に行い、その証券の分散を図るに適当であると認めたときは、これを承認する。
前項の場合において、計画書に記載された事項のうち、同項に掲げる趣旨に照し、協議会が不適当と認めるものがあるときは、協議会は、計画書の承認をなさず、又は所要の変更を加えて計画書を承認することができる。
前二項の規定による処分をしたときは、協議会は、計画書の提出者に対し、これを通知する。
前條第一項の規定による計画書の提出があつた場合において、その提出があつた日から三十日以内に第三項の規定による処分の通知又は特別の指示がなかつたときは、その期間満了の日において、その計画書は、協議会が、これを承認したものとみなす。
第九條 第二條第一項第五号の指定証券については、持株会社整理委員会において、命令の定めるところにより、昭和二十一年勅令第五百六十七号第四條又は第五條の規定により持株会社整理委員会に対し提出された株式処分計画書(同令第六條第一項第一号に掲げる者に讓渡すべき株式に関するものを除く。以下同じ。)に記載する計画を綜合し、その綜合計画について、協議会の承認を受けるものとする。
前條の規定は、前項の場合について、これを準用する。
持株会社整理委員会は、第一項の規定による承認を受けた綜合計画に基かなければ、昭和二十一年勅令第五百六十七号第八條の規定による株式処分計画書の承認をしてはならない。
第十條 第八條の規定により指定証券の讓渡に関する計画書の承認を受けた者又は第二條第一項第五号の指定証券について昭和二十一年勅令第五百六十七号第八條の規定により株式処分計画書の承認を受けた者は、当該計画書の定めるところに從つて、指定証券の讓渡を協議会に委託しなければならない。但し、特別経理株式会社及び企業再建整備法第五十二條に規定する者(以下特別経理会社等という。)が第二條第一項第六号の指定証券を讓渡しようとする場合及び命令で定める場合はこの限りでない。
前項の規定による委託があつたときは、協議会は、委託者の代理人として、その承認した計画に從つて指定証券を讓渡しなければならない。
前項の場合において、市況の変化その他やむを得ない事情により、その承認した計画に從つて指定証券の讓渡をすることができなかつたときは、協議会は、その計画を変更することができる。
第八條第三項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第十一條 特別経理会社等は、第八條第三項(第二項において準用する場合を含む。)の規定による計画書の承認の通知を受けた場合において、市況の変化その他やむを得ない事情があるときは、命令の定める期間内に、協議会に対し承認のあつた計画書について、その承認の変更を申請することができる。この場合において、その承認は、その申請に対する協議会の処分のある日まで、その効力を停止される。
第八條の規定は、前項の申請のあつた場合に、これを準用する。
特別経理会社等は、協議会の承認を受けた計画に從つて指定証券を讓渡しなければならない。
特別経理会社等は、指定証券の讓渡を協議会に委託することができる。
特別経理会社等が、第八條(第二項において準用する場合を含む。)の規定による承認を受けた後、協議会の指示する期間内に指定証券を讓渡しなかつた場合には、その讓渡のなかつた範囲内において、承認は、その効力を失う。
第十二條 第十條第一項又は前條第四項の規定により、協議会に対し、指定証券の讓渡の委託をする者は、命令の定めるところにより、協議会に対し手数料を支拂はなければならない。
第十三條 協議会は、指定証券の円滑且つ公正な処分を図るため必要があると認めるときは、命令の定めるところにより、関係各廳官吏、指定証券を所有する者又は証券の取引に関し特別の知識経驗を有すると認められる者に対し、協議会の会議に出席して意見を述べるべき旨を要求し、又は有價証券市場の状況その他協議会の職務を執行するについて参考となるべき事項に関し、報告、情報又は資料の提出を求めることができる。
前項の規定により、会議に出席すべきことを要求された者に支給すべき旅費、報告、情報又は資料の提出を求められた者に対する費用の弁償その他前項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第十四條 政府の指定する会社その他の法人(以下指定法人という。)は、命令の定める日において株主名簿又は出資者名簿は記載された株主又は出資者の住所及び氏名又は名称並びに各株主の有する株式の種類及び数又は各出資者の有する出資の口数を、協議会に報告しなければならない。
前項の規定により報告をした後、その報告に係る事項に異動を生じたときは、指定法人は、命令の定めるところにより、異動に係る事項を協議会に報告しなければならない。
指定法人が解散したとき、又は指定法人でなくなつたときは、命令で定める者は、遅滯なくその旨を協議会に報告しなければならない。
第十五條 指定法人は、商法第二百二十七條第一項の規定にかかわらず、無記名式の株券を発行することができない。
指定法人の株主で無記名式の株券を有する者は、命令の定めるところにより、その株券を無記名式とした後でなければ、その権利を行使することができない。
第十六條 協議会の経費は、規約の定めるところにより、第四條第二項各号に掲げる者において、これを負担しなければならない。
第十七條 協議会の事務を処理させるため、協議会に事務局を附置し、これに所要の職員を置く。
協議会は、命令の定めるところにより、事務局の所在、議長の住所及び氏名その他必要な事項を公告しなければならない。
第十八條 協議員その他協議会の職員は、これを法令により公務に從事する職員とみなす。
前項に掲げる者は、株券、出資証券又は社債券若しくは特別の法令により設立された法人の発行する債券(社債等登録法の規定により登録されたものを含む。)を賣買し、又は他人の行うこれ等の証券の賣買に関與してはならない。但し、法令による職務の執行としてなす場合、又は協議会の承認を受けた場合は、この限りでない。
第十九條 この法律によりなすべき公告に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第十條第一項の規定に違反し協議会に対する讓渡の委託をなさずして指定証券を讓渡した者
二 第十一條第三項の規定に違反し指定証券を讓渡した者
三 第十四條第一項又は第二項の規定に違反し報告を怠り、又は虚僞の報告をした者
第二十一條 協議員その他協議会の職員が、第十八條第二項の規定に違反し同項に掲げる行爲をしたときは、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十二條 協議員その他協議会の職員又は職員であつた者は、その職務に関し知り得た秘密を漏し又は窃用したときは、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第二十三條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財產に関して第二十條の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、同條の罰金刑を科する。
第二十四條 左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の過料に処する。
一 第十三條の規定により協議会の会議に出席を要求された場合において、正当の理由なくして出席しない者
二 同條の規定による報告、情報又は資料の提出を求められた場合において、その提出を怠り、又は虚僞の報告、情報若しくは資料の提出をした者