農地開発法
法令番号: 法律第六十五號
公布年月日: 昭和16年3月13日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル農地開發法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十二日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
內務大臣 男爵 平沼騏一郞
大藏大臣 河田烈
農林大臣 石黑忠篤
法律第六十五號
農地開發法
第一條 本法ハ食糧自給ノ强化ヲ圖ル爲農地ノ造成及改良ヲ促進スルヲ以テ目的トス
第二條 政府ハ農地ノ造成又ハ改良ヲ行フ者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ每年度豫算ノ範圍內ニ於テ助成金ヲ交付スルコトヲ得
第三條 勅令ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ主務大臣ハ前條ノ助成金ノ交付ヲ受クル者ニ對シ助成金ノ交付ヲ停止若ハ廢止シ又ハ助成金ノ全部若ハ一部ノ返還ヲ命ズルコトヲ得
助成金ノ返還ニ付テハ公共團體ニ對スルモノヲ除クノ外國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次グモノトス
第四條 農地開發營團ハ重要農產物ノ增產ヲ圖ル爲必要ナル農地ノ開發ニ關スル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル法人トス
第五條 農地開發營團ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
農地開發營團ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第六條 農地開發營團ノ資本金ハ三千萬圓トシ之ヲ三十萬口ニ分チ一口ノ出資金額ヲ百圓トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第七條 農地開發營團ノ出資者ハ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ外國法人ニ屬セザルモノタルコトヲ要ス
第八條 農地開發營團ハ出資ニ對シ出資證券ヲ發行ス
出資證券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ定ム
第九條 政府ハ千五百萬圓ヲ限リ農地開發營團ニ出資スルコトヲ得
政府ノ引受ケタル出資ノ出資金拂込ハ其ノ他ノ出資ノ出資金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第十條 農地開發營團ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ農地開發營團ニ拂込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十一條 出資者ハ農地開發營團ノ承認ヲ經テ其ノ持分ヲ讓渡スコトヲ得
第十二條 拂込ヲ怠リタル出資者ニ對シ農地開發營團ガ一月以上ノ相當ノ期間ヲ定メ拂込ノ請求ヲ爲シタルニ拘ラズ出資者ガ拂込ヲ爲サザルトキハ農地開發營團ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ出資者ノ持分ヲ處分スルコトヲ得
農地開發營團ハ持分ノ處分ニ依リテ得タル金額ヨリ滯納金額及定款ヲ以テ定メタル違約金ノ額ヲ控除シタル金額ヲ從前ノ出資者ニ拂戾スコトヲ要ス
持分ノ處分ニ依リテ得タル金額ガ滯納金額ニ滿タザル場合ニ於テハ農地開發營團ハ從前ノ出資者ニ對シ不足額ノ辨濟ヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ハ農地開發營團ガ損害賠償及定款ヲ以テ定メタル違約金ノ請求ヲ爲スコトヲ妨ゲズ
出資者ガ第一項ノ期間內ニ拂込ヲ爲サザルトキハ農地開發營團ハ其ノ出資者ニ對シ二週間內ニ出資證券ヲ農地開發營團ニ提出スベキ旨ヲ通知スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ提出ナキ出資證券ハ其ノ效力ヲ失フ
前項ノ場合ニ於テハ農地開發營團ハ遲滯ナク失效シタル出資證券ノ番號竝ニ其ノ出資者ノ氏名及住所ヲ公吿スルコトヲ要ス
第十三條 農地開發營團ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 資本金額、出資及資產ニ關スル事項
五 役員及會議ニ關スル事項
六 業務及其ノ執行ニ關スル事項
七 農地開發債券ノ發行ニ關スル事項
八 會計ニ關スル事項
九 公吿ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ變更スルコトヲ得
第十四條 農地開發營團ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十五條 農地開發營團ニ付解散ヲ必要トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 農地開發營團ニ非ザル者ハ農地開發營團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第十七條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及第五十七條竝ニ非訟事件手續法第三十五條第一項ノ規定ハ農地開發營團ニ之ヲ準用ス
第十八條 農地開發營團ニ理事長副理事長各一人、理事五人以上及監事三人以上ヲ置ク
第十九條 理事長ハ農地開發營團ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ理事長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副理事長及理事ハ理事長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ農地開發營團ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ農地開發營團ノ業務ヲ監査ス
第二十條 理事長、副理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ジ理事長及副理事長ノ任期ハ四年、理事ノ任期ハ三年、監事ノ任期ハ二年トス
第二十一條 理事長、副理事長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十二條 農地開發營團ニ評議員若干人ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ事業經營ニ關スル重要事項ニ付理事長ノ諮問ニ應ジ必要アルトキハ之ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ二年トス
第二十三條 農地開發營團ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一 農地ノ造成及改良ニ關スル事業
二 前號ノ事業ニ附帶スル事業
三 其ノ他農地開發營團ノ目的達成上必要ナル事業
農地開發營團前項第二號又ハ第三號ノ事業ヲ營マントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十四條 農地開發營團ハ拂込資本金額ノ五倍ヲ限リ農地開發債券ヲ發行スルコトヲ得
第二十五條 農地開發債券ハ額面金額五十圓以上トシ無記名利札附トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名式ト爲スコトヲ得
第二十六條 農地開發營團ハ農地開發債券借換ノ爲一時第二十四條ノ制限ニ依ラズ農地開發債券ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ農地開發債券ヲ發行シタルトキハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金額ニ相當スル舊農地開發債券ヲ償還スベシ
第二十七條 農地開發債券ヲ發行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十八條 政府ハ農地開發債券ノ元利支拂ヲ保證スルコトヲ得
第二十九條 農地開發債券ノ消滅時效ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第三十條 農地開發債券ノ所有者ハ農地開發營團ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特權ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第三十一條 所得稅法及有價證券移轉稅法中國債以外ノ公債ニ關スル規定ハ農地開發債券ニ之ヲ準用ス
第三十二條 第二十四條乃至前條ニ規定スルモノノ外農地開發債券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三條 農地開發營團ノ事業年度ハ四月ヨリ翌年三月迄トス
第三十四條 農地開發營團ハ設立ノ時及每事業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
第三十五條 利益金ノ處分ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生セズ
第三十六條 農地開發營團ハ其ノ資本金ノ四分ノ一ニ達スル迄ハ每事業年度ニ於テ準備金トシテ利益金ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
前項ノ準備金ハ勅令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ
第三十七條 農地開發營團ハ拂込ミタル出資金額ニ對シ勅令ヲ以テ定ムル割合ヲ超エテ利益金ノ配當ヲ爲スコトヲ得ズ
農地開發營團ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ政府ノ出資ニ對シ利益金ノ配當ヲ減額シ又ハ之ヲ爲サザルコトヲ得
第三十八條 農地開發營團ハ主務大臣之ヲ監督ス
第三十九條 主務大臣ハ農地開發營團ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十條 主務大臣ハ農地開發營團監理官ヲ置キ農地開發營團ノ業務ヲ監視セシム
農地開發營團監理官ハ何時ニテモ農地開發營團ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
農地開發營團監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ農地開發營團ニ命ジテ業務及財產ノ狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
農地開發營團監理官ハ農地開發營團ノ諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第四十一條 理事長、副理事長、理事又ハ監事ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第四十二條 農地開發營團ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法施行ノ年及其ノ翌年ヨリ十年間其ノ事業ニ付所得ニ對スル法人稅及營業稅ヲ免除ス
農地開發營團ノ所得又ハ純益ガ各事業年度ノ資本金額ニ對シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユルトキハ其ノ超過額ニ相當スル所得又ハ純益ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セズ但シ本法施行ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ資本金額ノ計算方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十三條 道府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前條ノ規定ニ依リ所得ニ對スル法人稅及營業稅ヲ免除セラレタル期間農地開發營團ニハ前條第二項ノ規定ニ依リ賦課セラレタル營業稅ノ附加稅ヲ除クノ外地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
道府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ農地開發營團ガ其ノ事業ノ爲ニスル不動產取得ニ對シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第四十四條 土地ノ農業上ノ利用ヲ增進スル目的ヲ以テ農地開發營團ガ主務大臣ノ定ムル區域及計畫ニ依リ行フ左ノ各號ノ一ニ該當スル事業(以下農地開發事業ト稱ス)ハ第四十五條乃至第六十一條ノ定ムル所ニ依ル
一 耕地整理法第一條第一號ノ耕地整理トシテ行フコトヲ得ル事業
二 他人ノ所有ニ係ル農地ノ改良ヲ目的トスル農業水利施設ノ新設、廢止又ハ變更
第四十五條 主務大臣前條ノ區域及計畫ヲ定メントスルトキハ農林計畫委員會及道府縣農地委員會ノ議ヲ經ベシ
主務大臣前條ノ區域及計畫ヲ定メタルトキハ之ヲ農地開發營團ニ通知スベシ
第四十六條 農地開發營團ハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫メ農地開發事業ノ施行地區及實施計畫ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十四條第二號ノ事業ニ付前項ノ認可ノ申請アリタルトキハ主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ吿示シ二十日以上ノ相當ノ期間ヲ定メ其ノ期間內實施計畫書ノ寫ヲ施行地區內ノ土地ノ所有者及利害關係人ノ縱覽ニ供スベシ
前項ノ土地ノ所有者又ハ利害關係人實施計畫書ニ記載セラレタル事項ニ關シ異議アルトキハ前項ニ揭グル期間內ニ主務大臣ニ之ヲ申出ヅルコトヲ得
主務大臣異議ヲ正當ト認ムルトキハ當該事項ニ付變更ヲ加ヘテ認可ヲ爲スコトヲ得
主務大臣第四十四條第二號ノ事業ニ付認可ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ吿示ス
第四十七條 御料地、國有地及官ノ用ニ供スル土地其ノ他勅令ヲ以テ定ムル土地ハ農地開發事業ノ施行地區ニ之ヲ編入スルコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第四十八條 耕地整理施行地又ハ普通水利組合(水利組合法第九條第二項ノ場合ニ於ケル水害豫防組合ヲ含ム)若ハ北海道土功組合ノ區域內ノ土地ハ農地開發事業ノ施行地區ニ之ヲ編入スルコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十九條 農地開發事業施行ノ準備ノ爲必要アルトキハ農地開發營團ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ職員ヲシテ他人ノ土地ニ立入リ測量又ハ檢査ヲ爲シ障害物ヲ移轉又ハ除却セシムルコトヲ得但シ之ニ因リテ生ジタル損害ハ之ヲ補償スベシ
前項ノ規定ハ主務大臣農地開發事業ニ關スル調査ヲ爲ス爲必要アル場合ニ之ヲ準用ス
第五十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル土地ハ農地開發營團之ヲ收用スルコトヲ得
一 農地ノ造成ニ供スル未墾地
二 前號ノ未墾地附近ノ土地ニシテ當該未墾地ト併セテ耕地整理ヲ施行スルヲ必要トスル土地
左ノ各號ノ一ニ該當スル土地ハ農地開發營團之ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
一 前項ニ揭グル土地ノ開發ノ爲必要ナル土地
二 前號ニ揭グルモノヲ除クノ外農業水利施設ノ新設、廢止及變更ノ爲必要ナル土地
前二項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ニ關シテハ土地收用法ヲ適用ス
第一項第二號ノ規定ニ依リ收用シタル土地ノ管理及處分ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十一條 前條第二項及第三項ノ規定ハ水ノ使用ニ關スル權利、土地ニ定著スル物件又ハ土地ニ屬スル土石砂礫ノ收用又ハ使用ニ之ヲ準用ス
第五十二條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫算ノ範圍內ニ於テ農地開發營團ニ對シ農地開發事業ノ施行ニ要スル費用ヲ補助スルコトヲ得
第五十三條 主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第四十四條第二號ノ農地開發事業ニ因リ利益ヲ受ケタル者ニ對シ現ニ受クル利益ノ限度ニ於テ其ノ事業ノ施行ニ要シタル費用ノ一部ヲ農地開發營團ニ支拂フベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ヲ受ケタル者之ニ異議アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第五十四條 前條ノ規定ニ依リ費用ノ支拂ヲ命ゼラレタル者其ノ支拂ノ義務ヲ履行セザルトキハ市町村ハ農地開發營團ノ請求ニ因リ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス
前項ノ場合ニ於テハ農地開發營團ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ニ相當スル金額ヲ市町村ニ交付スベシ
第五十五條 農地開發事業ノ施行地區內ノ土地若ハ土地ニ定著スル物件ノ所有者其ノ他之ニ關シ權利ヲ有スル者又ハ漁業權者若ハ入漁權者其ノ他此等ノ權利ニ關シ權利ヲ有スル者ガ農地開發事業ノ施行ニ因リテ受クル損害ハ農地開發營團之ヲ補償スベシ
前項ノ補償金ニ付協議調ハザルトキ又ハ協議ヲ爲スコト能ハザルトキハ主務大臣ノ裁定ヲ求ムベシ
前項ノ決定ニ對シ不服アル者ハ其ノ決定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ第四十九條ノ規定ニ依ル損害ノ補償ニ之ヲ準用ス
耕地整理法第二十五條、第二十五條ノ二及第二十七條ノ二第二項ノ規定ハ第一項及第四十九條ノ規定ニ依ル損害ノ補償ニ之ヲ準用ス
第五十六條 農地開發事業ノ施行地區ニ付漁業權又ハ入漁權アル場合及第四十四條第二號ノ事業ヲ施行スル場合ニ於テハ農地開發營團ハ前條第一項ノ規定ニ依ル損害ノ補償ヲ爲シタル後ニ非ザレバ其ノ工事ニ著手スルコトヲ得ズ但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 損害ノ補償ヲ受クベキ權利者ノ同意ヲ得タルトキ
二 前條第二項ノ規定ニ依ル裁定アリタル金額ヲ供託シタルトキ
第五十七條 農地開發營團農地開發事業ノ工事ヲ竣功シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ニ竣功認可ヲ申請スベシ
第五十八條 第五十條第一項第二號ノ規定ニ依リ收用シタル土地ヲ除クノ外第四十四條第一號ノ農地開發事業ニ因リ造成セラレタル農地ニシテ農地開發營團ノ所有ニ係ルモノニ付農地調整法第四條ノ自作農創設維持ノ事業ヲ行フ者ノ申出アルトキハ農地開發營團ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ事業者ニ讓渡スコトヲ要ス
前項ノ場合ヲ除クノ外前項ニ揭グル農地ノ管理及處分ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第五十九條 農地開發事業ノ施行ニ因リ生ジタル道路、堤塘、溝渠、溜池等ハ農地開發營團勅令ノ定ムル所ニ依リ道府縣、市町村、水利組合其ノ他勅令ヲ以テ定ムル者ニ之ヲ引渡スベシ
前項ノ場合ニ於テハ道府縣、市町村、水利組合其ノ他勅令ヲ以テ定ムル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項ニ揭グル設備ノ引渡ヲ受ケ之ヲ維持管理スベシ
第六十條 耕地整理法第六條、第十八條乃至第二十一條、第二十二條第二項第三項、第二十三條、第二十四條及第二十七條ノ規定ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第四十四條第二號ノ農地開發事業ニ之ヲ準用ス
第六十一條 本法ニ定ムルモノヲ除クノ外農地開發事業ニ付必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二條 農地開發營團ノ理事長、副理事長、理事、監事又ハ使用人其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第六十三條 前條第一項ニ揭グル者ニ賄賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕シ又ハ免除スルコトヲ得
第六十四條 農地開發營團本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ理事長又ハ理事長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副理事長ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副理事長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副理事長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
第六十五條 農地開發營團ノ理事長、副理事長又ハ業務ヲ分掌スル理事第二十一條ノ規定ニ違反シ他ノ職業ニ從事シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第六十六條 第十六條ノ規定ニ違反シ農地開發營團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第六十七條 主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ依ル職權ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
附 則
第六十八條 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十九條 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ農地開發營團ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セシム
第七十條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ出資者ヲ募集スベシ
第七十一條 設立委員ハ出資者ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出資第一囘ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
第七十二條 出資第一囘ノ拂込完了シタルトキハ出資者ノ總會ヲ招集スベシ
前項ノ總會終結シタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ農地開發營團理事長ニ引渡スベシ
理事長前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ理事長、副理事長、理事及監事ノ全員ハ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
農地關發營團ハ設立ノ登記ヲ爲スニ因リテ成立ス
第七十三條 本法ニ規定スルモノノ外農地開發營團ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十四條 開墾助成法ハ昭和十七年三月三十一日限リ之ヲ廢止ス但シ同日以前ニ同法ニ依ル助成金交付ノ指令ヲ受ケタル者ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
第七十五條 
登錄稅法中第五條ヲ左ノ如ク改ム
第五條 農地開發營團カ農地開發債券ニ付登記ヲ受クルトキハ左ノ區別ニ從ヒ登錄稅ヲ納ムヘシ
一 農地開發債券又ハ其ノ第二囘以後ノ拂込
每囘拂込金額 千分ノ二
二 登記事項ノ變更、消滅又ハ廢止
每一件 金十圓
從タル事務所ノ所在地ニ於テ前項各號ノ登記ヲ受クルトキハ每一件金二圓ノ登錄稅ヲ納ムヘシ
第七十六條 
登錄稅法第十九條第七號中「產業組合」ノ上ニ「農地開發營團、」ヲ、「產業組合法」ノ上ニ「農地開發法、」ヲ加ヘ同條第十六號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
十六ノ二 農地開發營團カ農地開發事業ノ爲ニスル土地ノ權利ノ取得又ハ所有權ノ保存ノ登記
第七十七條 
印紙稅法第五條第五號ヲ左ノ如ク改ム
四ノ二 小切手
五 農地開發營團ノ發スル出資證券
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル農地開発法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年三月十二日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
内務大臣 男爵 平沼騏一郎
大蔵大臣 河田烈
農林大臣 石黒忠篤
法律第六十五号
農地開発法
第一条 本法ハ食糧自給ノ強化ヲ図ル為農地ノ造成及改良ヲ促進スルヲ以テ目的トス
第二条 政府ハ農地ノ造成又ハ改良ヲ行フ者ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ毎年度予算ノ範囲内ニ於テ助成金ヲ交付スルコトヲ得
第三条 勅令ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ主務大臣ハ前条ノ助成金ノ交付ヲ受クル者ニ対シ助成金ノ交付ヲ停止若ハ廃止シ又ハ助成金ノ全部若ハ一部ノ返還ヲ命ズルコトヲ得
助成金ノ返還ニ付テハ公共団体ニ対スルモノヲ除クノ外国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ徴収スルコトヲ得但シ先取特権ノ順位ハ国税ニ次グモノトス
第四条 農地開発営団ハ重要農産物ノ増産ヲ図ル為必要ナル農地ノ開発ニ関スル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル法人トス
第五条 農地開発営団ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
農地開発営団ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ従タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第六条 農地開発営団ノ資本金ハ三千万円トシ之ヲ三十万口ニ分チ一口ノ出資金額ヲ百円トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第七条 農地開発営団ノ出資者ハ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上、資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人若ハ外国法人ニ属セザルモノタルコトヲ要ス
第八条 農地開発営団ハ出資ニ対シ出資証券ヲ発行ス
出資証券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ定ム
第九条 政府ハ千五百万円ヲ限リ農地開発営団ニ出資スルコトヲ得
政府ノ引受ケタル出資ノ出資金払込ハ其ノ他ノ出資ノ出資金払込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第十条 農地開発営団ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ農地開発営団ニ払込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十一条 出資者ハ農地開発営団ノ承認ヲ経テ其ノ持分ヲ譲渡スコトヲ得
第十二条 払込ヲ怠リタル出資者ニ対シ農地開発営団ガ一月以上ノ相当ノ期間ヲ定メ払込ノ請求ヲ為シタルニ拘ラズ出資者ガ払込ヲ為サザルトキハ農地開発営団ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ出資者ノ持分ヲ処分スルコトヲ得
農地開発営団ハ持分ノ処分ニ依リテ得タル金額ヨリ滞納金額及定款ヲ以テ定メタル違約金ノ額ヲ控除シタル金額ヲ従前ノ出資者ニ払戻スコトヲ要ス
持分ノ処分ニ依リテ得タル金額ガ滞納金額ニ満タザル場合ニ於テハ農地開発営団ハ従前ノ出資者ニ対シ不足額ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ハ農地開発営団ガ損害賠償及定款ヲ以テ定メタル違約金ノ請求ヲ為スコトヲ妨ゲズ
出資者ガ第一項ノ期間内ニ払込ヲ為サザルトキハ農地開発営団ハ其ノ出資者ニ対シ二週間内ニ出資証券ヲ農地開発営団ニ提出スベキ旨ヲ通知スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ提出ナキ出資証券ハ其ノ効力ヲ失フ
前項ノ場合ニ於テハ農地開発営団ハ遅滞ナク失効シタル出資証券ノ番号並ニ其ノ出資者ノ氏名及住所ヲ公告スルコトヲ要ス
第十三条 農地開発営団ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 資本金額、出資及資産ニ関スル事項
五 役員及会議ニ関スル事項
六 業務及其ノ執行ニ関スル事項
七 農地開発債券ノ発行ニ関スル事項
八 会計ニ関スル事項
九 公告ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ変更スルコトヲ得
第十四条 農地開発営団ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十五条 農地開発営団ニ付解散ヲ必要トスル事由発生シタル場合ニ於テ其ノ処置ニ関シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 農地開発営団ニ非ザル者ハ農地開発営団又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第十七条 民法第四十四条、第五十条、第五十四条及第五十七条並ニ非訟事件手続法第三十五条第一項ノ規定ハ農地開発営団ニ之ヲ準用ス
第十八条 農地開発営団ニ理事長副理事長各一人、理事五人以上及監事三人以上ヲ置ク
第十九条 理事長ハ農地開発営団ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ理事長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副理事長及理事ハ理事長ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ農地開発営団ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
監事ハ農地開発営団ノ業務ヲ監査ス
第二十条 理事長、副理事長、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ジ理事長及副理事長ノ任期ハ四年、理事ノ任期ハ三年、監事ノ任期ハ二年トス
第二十一条 理事長、副理事長及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十二条 農地開発営団ニ評議員若干人ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ事業経営ニ関スル重要事項ニ付理事長ノ諮問ニ応ジ必要アルトキハ之ニ対シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ二年トス
第二十三条 農地開発営団ハ左ノ事業ヲ営ムモノトス
一 農地ノ造成及改良ニ関スル事業
二 前号ノ事業ニ附帯スル事業
三 其ノ他農地開発営団ノ目的達成上必要ナル事業
農地開発営団前項第二号又ハ第三号ノ事業ヲ営マントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十四条 農地開発営団ハ払込資本金額ノ五倍ヲ限リ農地開発債券ヲ発行スルコトヲ得
第二十五条 農地開発債券ハ額面金額五十円以上トシ無記名利札附トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名式ト為スコトヲ得
第二十六条 農地開発営団ハ農地開発債券借換ノ為一時第二十四条ノ制限ニ依ラズ農地開発債券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ農地開発債券ヲ発行シタルトキハ発行後一月内ニ其ノ発行額面金額ニ相当スル旧農地開発債券ヲ償還スベシ
第二十七条 農地開発債券ヲ発行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十八条 政府ハ農地開発債券ノ元利支払ヲ保証スルコトヲ得
第二十九条 農地開発債券ノ消滅時効ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第三十条 農地開発債券ノ所有者ハ農地開発営団ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特権ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第三十一条 所得税法及有価証券移転税法中国債以外ノ公債ニ関スル規定ハ農地開発債券ニ之ヲ準用ス
第三十二条 第二十四条乃至前条ニ規定スルモノノ外農地開発債券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三条 農地開発営団ノ事業年度ハ四月ヨリ翌年三月迄トス
第三十四条 農地開発営団ハ設立ノ時及毎事業年度ノ初ニ於テ財産目録、貸借対照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
第三十五条 利益金ノ処分ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生セズ
第三十六条 農地開発営団ハ其ノ資本金ノ四分ノ一ニ達スル迄ハ毎事業年度ニ於テ準備金トシテ利益金ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
前項ノ準備金ハ勅令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ
第三十七条 農地開発営団ハ払込ミタル出資金額ニ対シ勅令ヲ以テ定ムル割合ヲ超エテ利益金ノ配当ヲ為スコトヲ得ズ
農地開発営団ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ政府ノ出資ニ対シ利益金ノ配当ヲ減額シ又ハ之ヲ為サザルコトヲ得
第三十八条 農地開発営団ハ主務大臣之ヲ監督ス
第三十九条 主務大臣ハ農地開発営団ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第四十条 主務大臣ハ農地開発営団監理官ヲ置キ農地開発営団ノ業務ヲ監視セシム
農地開発営団監理官ハ何時ニテモ農地開発営団ノ業務及財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
農地開発営団監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ農地開発営団ニ命ジテ業務及財産ノ状況ヲ報告セシムルコトヲ得
農地開発営団監理官ハ農地開発営団ノ諸般ノ会議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第四十一条 理事長、副理事長、理事又ハ監事ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第四十二条 農地開発営団ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法施行ノ年及其ノ翌年ヨリ十年間其ノ事業ニ付所得ニ対スル法人税及営業税ヲ免除ス
農地開発営団ノ所得又ハ純益ガ各事業年度ノ資本金額ニ対シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユルトキハ其ノ超過額ニ相当スル所得又ハ純益ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セズ但シ本法施行ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ資本金額ノ計算方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十三条 道府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前条ノ規定ニ依リ所得ニ対スル法人税及営業税ヲ免除セラレタル期間農地開発営団ニハ前条第二項ノ規定ニ依リ賦課セラレタル営業税ノ附加税ヲ除クノ外地方税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
道府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ農地開発営団ガ其ノ事業ノ為ニスル不動産取得ニ対シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ
第四十四条 土地ノ農業上ノ利用ヲ増進スル目的ヲ以テ農地開発営団ガ主務大臣ノ定ムル区域及計画ニ依リ行フ左ノ各号ノ一ニ該当スル事業(以下農地開発事業ト称ス)ハ第四十五条乃至第六十一条ノ定ムル所ニ依ル
一 耕地整理法第一条第一号ノ耕地整理トシテ行フコトヲ得ル事業
二 他人ノ所有ニ係ル農地ノ改良ヲ目的トスル農業水利施設ノ新設、廃止又ハ変更
第四十五条 主務大臣前条ノ区域及計画ヲ定メントスルトキハ農林計画委員会及道府県農地委員会ノ議ヲ経ベシ
主務大臣前条ノ区域及計画ヲ定メタルトキハ之ヲ農地開発営団ニ通知スベシ
第四十六条 農地開発営団ハ命令ノ定ムル所ニ依リ予メ農地開発事業ノ施行地区及実施計画ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十四条第二号ノ事業ニ付前項ノ認可ノ申請アリタルトキハ主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ告示シ二十日以上ノ相当ノ期間ヲ定メ其ノ期間内実施計画書ノ写ヲ施行地区内ノ土地ノ所有者及利害関係人ノ縦覧ニ供スベシ
前項ノ土地ノ所有者又ハ利害関係人実施計画書ニ記載セラレタル事項ニ関シ異議アルトキハ前項ニ掲グル期間内ニ主務大臣ニ之ヲ申出ヅルコトヲ得
主務大臣異議ヲ正当ト認ムルトキハ当該事項ニ付変更ヲ加ヘテ認可ヲ為スコトヲ得
主務大臣第四十四条第二号ノ事業ニ付認可ヲ為シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨ヲ告示ス
第四十七条 御料地、国有地及官ノ用ニ供スル土地其ノ他勅令ヲ以テ定ムル土地ハ農地開発事業ノ施行地区ニ之ヲ編入スルコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第四十八条 耕地整理施行地又ハ普通水利組合(水利組合法第九条第二項ノ場合ニ於ケル水害予防組合ヲ含ム)若ハ北海道土功組合ノ区域内ノ土地ハ農地開発事業ノ施行地区ニ之ヲ編入スルコトヲ得ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十九条 農地開発事業施行ノ準備ノ為必要アルトキハ農地開発営団ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ職員ヲシテ他人ノ土地ニ立入リ測量又ハ検査ヲ為シ障害物ヲ移転又ハ除却セシムルコトヲ得但シ之ニ因リテ生ジタル損害ハ之ヲ補償スベシ
前項ノ規定ハ主務大臣農地開発事業ニ関スル調査ヲ為ス為必要アル場合ニ之ヲ準用ス
第五十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル土地ハ農地開発営団之ヲ収用スルコトヲ得
一 農地ノ造成ニ供スル未墾地
二 前号ノ未墾地附近ノ土地ニシテ当該未墾地ト併セテ耕地整理ヲ施行スルヲ必要トスル土地
左ノ各号ノ一ニ該当スル土地ハ農地開発営団之ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得
一 前項ニ掲グル土地ノ開発ノ為必要ナル土地
二 前号ニ掲グルモノヲ除クノ外農業水利施設ノ新設、廃止及変更ノ為必要ナル土地
前二項ノ規定ニ依ル収用又ハ使用ニ関シテハ土地収用法ヲ適用ス
第一項第二号ノ規定ニ依リ収用シタル土地ノ管理及処分ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十一条 前条第二項及第三項ノ規定ハ水ノ使用ニ関スル権利、土地ニ定著スル物件又ハ土地ニ属スル土石砂礫ノ収用又ハ使用ニ之ヲ準用ス
第五十二条 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ予算ノ範囲内ニ於テ農地開発営団ニ対シ農地開発事業ノ施行ニ要スル費用ヲ補助スルコトヲ得
第五十三条 主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第四十四条第二号ノ農地開発事業ニ因リ利益ヲ受ケタル者ニ対シ現ニ受クル利益ノ限度ニ於テ其ノ事業ノ施行ニ要シタル費用ノ一部ヲ農地開発営団ニ支払フベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ヲ受ケタル者之ニ異議アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
第五十四条 前条ノ規定ニ依リ費用ノ支払ヲ命ゼラレタル者其ノ支払ノ義務ヲ履行セザルトキハ市町村ハ農地開発営団ノ請求ニ因リ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ処分ス
前項ノ場合ニ於テハ農地開発営団ハ其ノ徴収金額ノ百分ノ四ニ相当スル金額ヲ市町村ニ交付スベシ
第五十五条 農地開発事業ノ施行地区内ノ土地若ハ土地ニ定著スル物件ノ所有者其ノ他之ニ関シ権利ヲ有スル者又ハ漁業権者若ハ入漁権者其ノ他此等ノ権利ニ関シ権利ヲ有スル者ガ農地開発事業ノ施行ニ因リテ受クル損害ハ農地開発営団之ヲ補償スベシ
前項ノ補償金ニ付協議調ハザルトキ又ハ協議ヲ為スコト能ハザルトキハ主務大臣ノ裁定ヲ求ムベシ
前項ノ決定ニ対シ不服アル者ハ其ノ決定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ三月内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ第四十九条ノ規定ニ依ル損害ノ補償ニ之ヲ準用ス
耕地整理法第二十五条、第二十五条ノ二及第二十七条ノ二第二項ノ規定ハ第一項及第四十九条ノ規定ニ依ル損害ノ補償ニ之ヲ準用ス
第五十六条 農地開発事業ノ施行地区ニ付漁業権又ハ入漁権アル場合及第四十四条第二号ノ事業ヲ施行スル場合ニ於テハ農地開発営団ハ前条第一項ノ規定ニ依ル損害ノ補償ヲ為シタル後ニ非ザレバ其ノ工事ニ著手スルコトヲ得ズ但シ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 損害ノ補償ヲ受クベキ権利者ノ同意ヲ得タルトキ
二 前条第二項ノ規定ニ依ル裁定アリタル金額ヲ供託シタルトキ
第五十七条 農地開発営団農地開発事業ノ工事ヲ竣功シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ニ竣功認可ヲ申請スベシ
第五十八条 第五十条第一項第二号ノ規定ニ依リ収用シタル土地ヲ除クノ外第四十四条第一号ノ農地開発事業ニ因リ造成セラレタル農地ニシテ農地開発営団ノ所有ニ係ルモノニ付農地調整法第四条ノ自作農創設維持ノ事業ヲ行フ者ノ申出アルトキハ農地開発営団ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ事業者ニ譲渡スコトヲ要ス
前項ノ場合ヲ除クノ外前項ニ掲グル農地ノ管理及処分ニ関シテハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第五十九条 農地開発事業ノ施行ニ因リ生ジタル道路、堤塘、溝渠、溜池等ハ農地開発営団勅令ノ定ムル所ニ依リ道府県、市町村、水利組合其ノ他勅令ヲ以テ定ムル者ニ之ヲ引渡スベシ
前項ノ場合ニ於テハ道府県、市町村、水利組合其ノ他勅令ヲ以テ定ムル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項ニ掲グル設備ノ引渡ヲ受ケ之ヲ維持管理スベシ
第六十条 耕地整理法第六条、第十八条乃至第二十一条、第二十二条第二項第三項、第二十三条、第二十四条及第二十七条ノ規定ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第四十四条第二号ノ農地開発事業ニ之ヲ準用ス
第六十一条 本法ニ定ムルモノヲ除クノ外農地開発事業ニ付必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十二条 農地開発営団ノ理事長、副理事長、理事、監事又ハ使用人其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為サザルトキハ五年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハザルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第六十三条 前条第一項ニ掲グル者ニ賄賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽シ又ハ免除スルコトヲ得
第六十四条 農地開発営団本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ理事長又ハ理事長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副理事長ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副理事長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副理事長又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
第六十五条 農地開発営団ノ理事長、副理事長又ハ業務ヲ分掌スル理事第二十一条ノ規定ニ違反シ他ノ職業ニ従事シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第六十六条 第十六条ノ規定ニ違反シ農地開発営団又ハ之ニ類似スル名称ヲ用ヒタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
第六十七条 主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ依ル職権ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
附 則
第六十八条 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十九条 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ農地開発営団ノ設立ニ関スル事務ヲ処理セシム
第七十条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ出資者ヲ募集スベシ
第七十一条 設立委員ハ出資者ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク出資第一回ノ払込ヲ為サシムルコトヲ要ス
第七十二条 出資第一回ノ払込完了シタルトキハ出資者ノ総会ヲ招集スベシ
前項ノ総会終結シタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ農地開発営団理事長ニ引渡スベシ
理事長前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ理事長、副理事長、理事及監事ノ全員ハ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為スベシ
農地関発営団ハ設立ノ登記ヲ為スニ因リテ成立ス
第七十三条 本法ニ規定スルモノノ外農地開発営団ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十四条 開墾助成法ハ昭和十七年三月三十一日限リ之ヲ廃止ス但シ同日以前ニ同法ニ依ル助成金交付ノ指令ヲ受ケタル者ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
第七十五条 
登録税法中第五条ヲ左ノ如ク改ム
第五条 農地開発営団カ農地開発債券ニ付登記ヲ受クルトキハ左ノ区別ニ従ヒ登録税ヲ納ムヘシ
一 農地開発債券又ハ其ノ第二回以後ノ払込
毎回払込金額 千分ノ二
二 登記事項ノ変更、消滅又ハ廃止
毎一件 金十円
従タル事務所ノ所在地ニ於テ前項各号ノ登記ヲ受クルトキハ毎一件金二円ノ登録税ヲ納ムヘシ
第七十六条 
登録税法第十九条第七号中「産業組合」ノ上ニ「農地開発営団、」ヲ、「産業組合法」ノ上ニ「農地開発法、」ヲ加ヘ同条第十六号ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
十六ノ二 農地開発営団カ農地開発事業ノ為ニスル土地ノ権利ノ取得又ハ所有権ノ保存ノ登記
第七十七条 
印紙税法第五条第五号ヲ左ノ如ク改ム
四ノ二 小切手
五 農地開発営団ノ発スル出資証券