第二條 本法ニ於テ醫療保護事業ト稱スルハ貧困ノ爲生活困難ニシテ醫療又ハ助產ヲ受クルコト能ハザル者ニ對シ醫療券ヲ發行シテ醫療又ハ助產ヲ受ケシムル事業ヲ謂ヒ事業者ト稱スルハ醫療保護事業ヲ行フ者ヲ謂フ
第四條 道府縣及主務大臣ノ指定スル者ハ事業者ト爲ルコトヲ得
第五條 前二條ニ揭グル者ニ非ザル者事業者タラントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六條 事業者ハ醫療保護事業ヲ行フ爲診療所、產院其ノ他適當ナル施設(以下施設ト稱ス)ヲ經營スルコトヲ得
主務大臣必要アリト認ムルトキハ事業者ニ對シ施設ノ經營ヲ命ズルコトヲ得但シ他ノ法令ニ依リ施設ノ經營ヲ命ズルコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七條 事業者ハ施設ニ於ケル醫療又ハ助產ニ關シ必要ナル附帶事業(以下附帶事業ト稱ス)ヲ行フコトヲ得
主務大臣必要アリト認ムルトキハ施設ヲ經營スル事業者ニ對シ附帶事業ヲ行フコトヲ命ズルコトヲ得
第八條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ事業者ニ對シ施設又ハ附帶事業ノ讓渡ニ付他ノ事業者ト協議ヲ爲スベキコトヲ命ズルコトヲ得
事業者前項ノ協議ヲ爲サズ若ハ爲スコト能ハズ又ハ協議調ハザルトキハ主務大臣ハ當該事項ニ付必要ナル決定ヲ爲スコトヲ得
前項ノ決定中對價ニ付不服アル者ハ其ノ決定ノ通知ヲ受ケタル日(決定ノ通知ヲ受ケザル者ニ付テハ其ノ公示ノ日)ヨリ三十日以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依ル命令及第二項ノ決定ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條 事業者醫療保護事業ヲ廢止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第十條 本法ニ定ムルモノノ外醫療保護事業又ハ施設若ハ附帶事業ノ開始、休止、變更、廢止其ノ他醫療保護事業又ハ施設若ハ附帶事業ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條 事業者ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニシテ他ノ法令ニ依リ醫療又ハ助產ヲ受クルコトヲ得ザルモノニ對シ醫療券ヲ發行シテ其ノ疾病、傷痍又ハ分娩ニ付醫療又ハ助產ヲ受ケシムベシ
一 救護法又ハ母子保護法ニ依リ救護又ハ扶助ヲ受クル者
二 前號ニ揭グル者ノ外貧困ノ爲生活困難ニシテ醫療又ハ助產ヲ受クルコト能ハザル者(扶養義務者ニ於テ醫療又ハ助產ヲ受ケシムルコトヲ得ル者ヲ除ク但シ急迫ノ事情アル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ)
前項ノ規定ニ依リ發行スベキ醫療券ハ市町村ガ事業者タル場合ヲ除クノ外第十七條ノ規定ニ依ル割當ノ限度內トス
第十二條 前條第一項第二號ニ揭グル者ノ認定ハ其ノ者ノ居住地ノ市町村長、其ノ居住地ナキトキ又ハ居住地分明ナラザルトキハ現在地ノ市町村長之ヲ行フ
第十三條 事業者ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對シテハ醫療又ハ助產ヲ受ケシメザルコトヲ得
一 正當ノ理由ナクシテ醫療又ハ助產ニ關シ市町村長又ハ事業者ノ爲ス指示ニ從ハザル者
二 正當ノ理由ナクシテ醫療又ハ助產ニ關スル檢診又ハ調査ヲ拒ミタル者
第十四條 事業者必要アリト認ムルトキハ第十一條ノ規定ニ依リ醫療又ハ助產ヲ受ケシムベキ者ヲ施設ニ收容シ又ハ他ノ事業者ノ施設若ハ適當ナル診療所、產院等ニ收容ヲ委託スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ收容ノ委託ヲ受ケタル事業者ハ正當ノ理由アルニ非ザレバ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第十五條 本法ニ依リ受ケシムベキ醫療及助產ノ範圍、程度及方法ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 第十一條第一項第二號ニ揭グル者ニシテ醫療券ニ依ル醫療又ハ助產ヲ受クルモノ死亡シタル場合ニ於テ市町村長埋葬ヲ行フ者ニ對シ埋葬ニ要スル費用ヲ給スルコト適當ナリト認ムルトキ又ハ埋葬ヲ行フ者ナシト認ムルトキハ死亡シタル者ハ其ノ埋葬ニ付テハ之ヲ救護法又ハ母子保護法ニ依リ死亡ノ際現ニ救護又ハ扶助ヲ受クル者ト看做ス
第十七條 地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業者ニ對シ其ノ者ノ發行スベキ醫療券ニ付其ノ數、地域等ヲ定メ割當ヲ爲スベシ
第十八條 地方長官ハ前條ニ揭グルモノノ外醫療保護事業ノ統制及聯絡ニ關スル事務ヲ行フ
地方長官ハ市町村長ヲシテ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ事務ノ一部ヲ行ハシムルコトヲ得
第十九條 方面委員令ニ依ル方面委員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ醫療保護事業ニ關スル事務ニ付市町村長ヲ補助スベシ
第二十條 事業者ハ第十一條ノ規定ニ依リ發行シタル醫療券ニ依ル醫療又ハ助產ニ要シタル費用ヲ負擔スルモノトス
第二十一條 第十九條ノ規定ニ依リ方面委員ガ職務ヲ行フ爲必要ナル費用ハ市町村ノ負擔トス
第二十二條 國庫ハ事業者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ左ノ諸費ニ付其ノ二分ノ一ヲ補助ス但シ町村及第三條ノ規定ニ依リ勅令ヲ以テ指定スル者ノ負擔ニ係ルモノニ對シテハ其ノ十二分ノ七ヲ補助ス
國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ市町村ガ前條ノ規定ニ依リ負擔スル費用ニ付市ニ對シテハ其ノ二分ノ一、町村ニ對シテハ其ノ十二分ノ七ヲ補助ス
道府縣ハ道府縣以外ノ事業者又ハ市町村ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ前二項ニ揭グル費用ニ付其ノ四分ノ一ヲ補助スベシ
國庫ハ事業者ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ附帶事業ニ要スル費用及第八條ノ規定ニ依リ施設又ハ附帶事業ノ讓渡ヲ受クル爲要スル費用ニ付補助スルコトヲ得
第二十三條 救護法第二十六條乃至第二十七條ノ二ノ規定ハ事業者ガ道府縣又ハ市町村ナルトキハ其ノ負擔シタル醫療又ハ助產ニ要シタル費用ニ之ヲ準用ス
第二十四條 道府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ左ニ揭グル土地又ハ建物ニ對シテハ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラズ
一 主トシテ醫療保護事業又ハ施設若ハ附帶事業ノ用ニ供スル建物
二 前號ニ揭グル建物ノ敷地其ノ他主トシテ醫療保護事業又ハ施設若ハ附帶事業ノ用ニ供スル土地
第二十五條 地方長官ハ監督上必要アリト認ムルトキハ事業者ニ對シ諸般ノ報吿ヲ爲サシメ、書類帳簿ノ提出ヲ命ジ、實地ニ就キ業務若ハ會計ノ狀況ヲ調査シ又ハ醫療保護事業、施設若ハ附帶事業ニ關シ必要ナル指示ヲ爲スコトヲ得但シ主務大臣ノ指定スル事業者ニ對シテハ主務大臣及地方長官之ヲ行フ
第二十六條 第五條ノ規定ニ依ル事業者本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ主務大臣ハ同條ノ規定ニ依ル認可ヲ取消スコトヲ得
第二十七條 事業者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ國庫及道府縣ハ補助ヲ取消シ、旣ニ交付シタル補助金ノ全部若ハ一部ノ返還ヲ命ジ又ハ補助ヲ爲サザルコトヲ得
一 本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ
第二十八條 詐僞其ノ他ノ不正ノ手段ニ依リ醫療券ニ依ル醫療若ハ助產ヲ受ケ又ハ受ケシメタル者ハ三月以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十九條 町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ本法中町村ニ關スル規定ハ之ヲ町村ニ準ズベキモノニ、町村長ニ關スル規定ハ之ヲ町村長ニ準ズベキモノニ適用ス