母子保護法
法令番号: 法律第十九號
公布年月日: 昭和12年3月31日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル母子保護法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十日
內閣總理大臣 林銑十郞
內務大臣 河原田稼吉
大藏大臣 結城豊太郞
法律第十九號
母子保護法
第一條 十三歲以下ノ子ヲ擁スル母貧困ノ爲生活スルコト能ハズ又ハ其ノ子ヲ養育スルコト能ハザルトキハ本法ニ依リ之ヲ扶助ス但シ母ニ配偶者(屆出ヲ爲サザルモ事實上婚姻關係ト同樣ノ事情ニ在ル者ヲ含ム以下之ニ同ジ)アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
母ニ配偶者アル場合ト雖モ其ノ者ガ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ母ハ配偶者ナキモノト看做ス
一 精神又ハ身體ノ障碍ニ因リ勞務ヲ行フコト能ハザルトキ
二 行方不明ナルトキ
三 法令ニ因リ拘禁セラレタルトキ
四 母子ヲ遺棄シタルトキ
第二條 本法ノ適用ニ付テハ十三歲以下ノ孫ヲ擁スル祖母ニシテ命令ノ定ムルモノハ十三歲以下ノ子ヲ擁スル母ト看做シ其ノ孫ハ其ノ子ト看做ス
第三條 第一條ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クベキ場合ト雖モ母ガ性行其ノ他ノ事由ニ因リ子ヲ養育スルニ適セザルトキハ之ヲ扶助セズ
第四條 第一條ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クベキ場合ト雖モ母ノ扶養義務者及其ノ子ノ扶養義務者共ニ扶養ヲ爲スコトヲ得ルトキハ之ヲ扶助セズ但シ急迫ノ事情アル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第五條 扶助ハ母ノ居住地ノ市町村長之ヲ行フ
方面委員令ニ依ル方面委員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ扶助事務ニ關シ市町村長ヲ補助ス
第六條 扶助ノ種類ハ生活扶助、養育扶助、生業扶助及醫療トス
扶助ハ母ノ生活及子ノ養育ニ必要ナル限度ニ於テ之ヲ行フ
扶助ハ母ノ居宅ニ於テ之ヲ行フ但シ市町村長必要アリト認ムルトキハ居宅以外ノ場所ニ於テモ之ヲ行フコトヲ得
前三項ニ定ムルモノノ外扶助ノ範圍、程度及方法ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 市町村長ハ扶助ヲ受クル母ニ對シ其ノ子ノ養育上必要ナル注意ヲ與フルコトヲ得
第八條 扶助ヲ受クル母又ハ其ノ子死亡シタル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ埋葬ヲ行フ者ニ對シ埋葬費ヲ給スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ埋葬ヲ行フ者ナキトキハ扶助ヲ爲シタル市町村長ニ於テ埋葬ヲ行フベシ
第九條 扶助ヲ受クル母及其ノ子ヲ保護スル爲必要ナル施設ノ設置、管理、廢止其ノ他施設ニ關シ必要ナル事項ハ本法ニ定ムルモノノ外命令ヲ以テ之ヲ定ム
市町村又ハ私人前項ノ施設ヲ設ケントスルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
第十條 扶助ヲ受クル母左ニ揭グル事由ノ一ニ該當スルトキハ市町村長ハ扶助ヲ爲サザルコトヲ得
一 本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依ル處分ニ從ハザルトキ
二 故ナク扶助ニ關スル調査ヲ拒ミタルトキ
三 第七條ノ規定ニ依ル市町村長ノ注意ニ從ハザルトキ
第十一條 救護法第十八條、第十九條及第二十一條乃至第二十五條ノ規定ハ扶助及埋葬ニ要スル費用、第五條ノ規定ニ依リ方面委員ガ職務ヲ行フ爲必要ナル費用竝ニ第九條ノ施設ノ費用ニ之ヲ準用ス
第十二條 救護法第二十六條乃至第二十七條ノ二ノ規定ハ扶助ニ要スル費用ニ、第二十八條ノ規定ハ扶助及埋葬ニ要スル費用ニ之ヲ準用ス但シ救護ヲ受クル者トアルハ扶助ヲ受クル母又ハ其ノ子トシ救護ヲ受ケタル者トアルハ扶助ヲ受ケタル母又ハ其ノ子トシ其ノ費用トアルハ其ノ者ノ爲ニ要シタル費用トス
第十三條 救護法第三十條及第三十一條ノ規定ハ第九條ノ施設ニ之ヲ準用ス
第十四條 詐僞其ノ他不正ノ手段ニ依リ扶助ヲ受ケ又ハ受ケシメタル者ハ三月以下ノ懲役又ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ本法中町村ニ關スル規定ハ町村ニ準ズベキモノニ、町村長ニ關スル規定ハ町村長ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル母子保護法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十日
内閣総理大臣 林銑十郎
内務大臣 河原田稼吉
大蔵大臣 結城豊太郎
法律第十九号
母子保護法
第一条 十三歳以下ノ子ヲ擁スル母貧困ノ為生活スルコト能ハズ又ハ其ノ子ヲ養育スルコト能ハザルトキハ本法ニ依リ之ヲ扶助ス但シ母ニ配偶者(届出ヲ為サザルモ事実上婚姻関係ト同様ノ事情ニ在ル者ヲ含ム以下之ニ同ジ)アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
母ニ配偶者アル場合ト雖モ其ノ者ガ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ母ハ配偶者ナキモノト看做ス
一 精神又ハ身体ノ障碍ニ因リ労務ヲ行フコト能ハザルトキ
二 行方不明ナルトキ
三 法令ニ因リ拘禁セラレタルトキ
四 母子ヲ遺棄シタルトキ
第二条 本法ノ適用ニ付テハ十三歳以下ノ孫ヲ擁スル祖母ニシテ命令ノ定ムルモノハ十三歳以下ノ子ヲ擁スル母ト看做シ其ノ孫ハ其ノ子ト看做ス
第三条 第一条ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クベキ場合ト雖モ母ガ性行其ノ他ノ事由ニ因リ子ヲ養育スルニ適セザルトキハ之ヲ扶助セズ
第四条 第一条ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クベキ場合ト雖モ母ノ扶養義務者及其ノ子ノ扶養義務者共ニ扶養ヲ為スコトヲ得ルトキハ之ヲ扶助セズ但シ急迫ノ事情アル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第五条 扶助ハ母ノ居住地ノ市町村長之ヲ行フ
方面委員令ニ依ル方面委員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ扶助事務ニ関シ市町村長ヲ補助ス
第六条 扶助ノ種類ハ生活扶助、養育扶助、生業扶助及医療トス
扶助ハ母ノ生活及子ノ養育ニ必要ナル限度ニ於テ之ヲ行フ
扶助ハ母ノ居宅ニ於テ之ヲ行フ但シ市町村長必要アリト認ムルトキハ居宅以外ノ場所ニ於テモ之ヲ行フコトヲ得
前三項ニ定ムルモノノ外扶助ノ範囲、程度及方法ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 市町村長ハ扶助ヲ受クル母ニ対シ其ノ子ノ養育上必要ナル注意ヲ与フルコトヲ得
第八条 扶助ヲ受クル母又ハ其ノ子死亡シタル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ埋葬ヲ行フ者ニ対シ埋葬費ヲ給スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ埋葬ヲ行フ者ナキトキハ扶助ヲ為シタル市町村長ニ於テ埋葬ヲ行フベシ
第九条 扶助ヲ受クル母及其ノ子ヲ保護スル為必要ナル施設ノ設置、管理、廃止其ノ他施設ニ関シ必要ナル事項ハ本法ニ定ムルモノノ外命令ヲ以テ之ヲ定ム
市町村又ハ私人前項ノ施設ヲ設ケントスルトキハ地方長官ノ認可ヲ受クベシ
第十条 扶助ヲ受クル母左ニ掲グル事由ノ一ニ該当スルトキハ市町村長ハ扶助ヲ為サザルコトヲ得
一 本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ依ル処分ニ従ハザルトキ
二 故ナク扶助ニ関スル調査ヲ拒ミタルトキ
三 第七条ノ規定ニ依ル市町村長ノ注意ニ従ハザルトキ
第十一条 救護法第十八条、第十九条及第二十一条乃至第二十五条ノ規定ハ扶助及埋葬ニ要スル費用、第五条ノ規定ニ依リ方面委員ガ職務ヲ行フ為必要ナル費用並ニ第九条ノ施設ノ費用ニ之ヲ準用ス
第十二条 救護法第二十六条乃至第二十七条ノ二ノ規定ハ扶助ニ要スル費用ニ、第二十八条ノ規定ハ扶助及埋葬ニ要スル費用ニ之ヲ準用ス但シ救護ヲ受クル者トアルハ扶助ヲ受クル母又ハ其ノ子トシ救護ヲ受ケタル者トアルハ扶助ヲ受ケタル母又ハ其ノ子トシ其ノ費用トアルハ其ノ者ノ為ニ要シタル費用トス
第十三条 救護法第三十条及第三十一条ノ規定ハ第九条ノ施設ニ之ヲ準用ス
第十四条 詐偽其ノ他不正ノ手段ニ依リ扶助ヲ受ケ又ハ受ケシメタル者ハ三月以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 町村制ヲ施行セザル地ニ於テハ本法中町村ニ関スル規定ハ町村ニ準ズベキモノニ、町村長ニ関スル規定ハ町村長ニ準ズベキモノニ之ヲ適用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム