陸軍志願兵令
法令番号: 勅令第二百九十一號
公布年月日: 昭和15年4月24日
法令の形式: 勅令
朕陸軍志願兵令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年四月二十三日
內閣總理大臣 米內光政
陸軍大臣 畑俊六
勅令第二百九十一號
陸軍志願兵令
第一章 總則
第一條 本令ニ依リ陸軍兵ニ採用セラレタル者ハ之ヲ陸軍志願兵ト稱ス
第二條 志願兵ノ服スベキ兵役ハ現役、豫備役及後備兵役トス
第三條 陸軍志願兵ノ兵種ハ憲兵、飛行兵又ハ軍樂兵トス
第四條 陸軍志願兵タル飛行兵ハ現役中之ヲ少年飛行兵ト稱ス
第二章 服役
第五條 陸軍志願兵ノ服役期間左ノ如シ
一 現役 憲兵ニ在リテハ前服役期間ヲ通算シ四年、飛行兵ニ在リテハ之ニ採用セラレタル月ノ一日ヨリ起算シ三年、軍樂兵ニ在リテハ之ニ採用セラレタル年ノ十二月一日ヨリ起算シ五年トス
二 豫備役 現役ノ期間ヲ通算シ七年四月トス
三 後備兵役 前服役期間ヲ通算シ十七年四月トス
戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前項第一號ニ規定スル起算ノ日ハ之ヲ變更スルコトヲ得
第六條 現役ヲ終リタル者ハ豫備役ニ、豫備役ヲ終リタル者ハ後備兵役ニ服セシム
後備兵役ヲ終リタル者ニシテ年齡四十年未滿ノモノハ之ヲ第一國民兵役ニ服セシム
第七條 陸軍志願兵ノ現役期間ハ本人ノ願ニ依リ年齡三十年迄ヲ限トシ之ヲ延長スルコトヲ得
第八條 憲兵及軍樂兵ハ之ヲ營外ニ居住セシムルヲ例トシ飛行兵ハ之ヲ營內ニ居住セシム
第九條 陸軍志願兵ノ等級ハ當該兵科部ノ上等兵トス
第十條 陸軍志願兵トシテ二年以上現役ニ在ル者成績不良ナルトキハ之ヲ現役滿期ト爲シ又ハ現役ノ延長ヲ解止スルコトヲ得
第十一條 陸軍志願兵ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノハ陸軍志願兵ヲ免ジ之ヲ當該兵科部ノ一等兵ト爲ス但シ當該兵科部ニ一等兵ナキトキハ原兵科ノ一等兵ト爲シ原兵科ナキトキハ步兵科ノ一等兵ト爲ス
一 禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者但シ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未滿ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ヲ除ク
二 陸軍懲罰令ニ依リ降等セラレタル者
第十二條 兵役法第十二條、第十四條第一項第二號、第十六條及第十八條乃至第二十二條竝ニ兵役法施行令第十四條、第十五條、第十八條、第二十一條第一項第二項、第二十二條、第三十二條、第三十四條第一項、第三十五條乃至第三十九條及第四十一條ノ規定ハ陸軍志願兵ノ服役ニ之ヲ準用ス
第三章 採用
第十三條 憲兵ハ槪ネ一年九月以上在營シ陸軍憲兵學校又ハ陸軍大臣ノ指定スル部隊ニ於テ憲兵敎習兵ノ課程ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第十四條 憲兵敎習兵ハ步、騎、砲、工、航空、輜重兵科ノ兵中槪ネ九月以上在營シ品行方正、志操確實ナル者ニシテ憲兵ヲ志願シタルモノノ中ヨリ銓衡ノ上之ヲ採用ス
前項ニ規定スル在營ノ期間ハ戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ短縮スルコトヲ得
第十五條 前條ノ憲兵敎習兵ヲ第十三條ニ規定スル部隊ニ分遣セシムルニ付テハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依ル
第十六條 憲兵敎習兵ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノハ憲兵敎習兵ヲ免ズ
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ見込ナキ者
二 成績不良ニシテ修業ノ見込ナキ者
三 疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ修業ノ見込ナキ者
四 前各號ニ揭グル者ノ外憲兵タルニ適セズト認メタル者
第十七條 少年飛行兵ハ熊谷陸軍飛行學校生徒、水戶陸軍飛行學校生徒又ハ陸軍航空整備學校生徒ノ課程ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第十八條 軍樂兵ハ陸軍戶山學校軍樂生徒ノ課程ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第十九條 陸軍志願兵ノ採用及入營ニ關シ必要ナル事項ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第四章 召集
第二十條 兵役法第五十四條乃至第五十六條、第五十九條乃至第六十三條及第六十五條第二項竝ニ兵役法施行令第四章及第百四十三條ノ規定ハ陸軍志願兵ノ召集及簡閱點呼ニ之ヲ準用ス
附 則
第二十一條 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十二條 本令施行ノ際現ニ熊谷陸軍飛行學校操縱生徒、陸軍航空整備學校技術生徒及水戶陸軍飛行學校通信生徒中第二年次生徒タル者、水戶陸軍飛行學校特種生徒タル者竝ニ陸軍補充令第六十七條ニ規定スル下士官候補者タル者ハ本令ニ依ル少年飛行兵ニ採用セラレタルモノトス
第二十三條 陸軍大臣特ニ必要アリト認ムルトキハ前條ノ規定ニ依リ陸軍志願兵ト爲リタル者ノ現役期間起算ノ日ニ關シ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第二十四條 當分ノ內憲兵ハ步、騎、砲、工、航空、輜重兵科ノ兵中槪ネ一年六月以上在營シ品行方正、志操確實ナル者ニシテ憲兵ヲ志願シ憲兵ノ勤務ニ必要ナル學術ヲ習得シタルモノヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
前項ニ規定スル學術ノ習得ニ關シテハ陸軍大臣之ヲ定ム
第一項ニ規定スル在營ノ期間ハ戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ短縮スルコトヲ得
朕陸軍志願兵令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年四月二十三日
内閣総理大臣 米内光政
陸軍大臣 畑俊六
勅令第二百九十一号
陸軍志願兵令
第一章 総則
第一条 本令ニ依リ陸軍兵ニ採用セラレタル者ハ之ヲ陸軍志願兵ト称ス
第二条 志願兵ノ服スベキ兵役ハ現役、予備役及後備兵役トス
第三条 陸軍志願兵ノ兵種ハ憲兵、飛行兵又ハ軍楽兵トス
第四条 陸軍志願兵タル飛行兵ハ現役中之ヲ少年飛行兵ト称ス
第二章 服役
第五条 陸軍志願兵ノ服役期間左ノ如シ
一 現役 憲兵ニ在リテハ前服役期間ヲ通算シ四年、飛行兵ニ在リテハ之ニ採用セラレタル月ノ一日ヨリ起算シ三年、軍楽兵ニ在リテハ之ニ採用セラレタル年ノ十二月一日ヨリ起算シ五年トス
二 予備役 現役ノ期間ヲ通算シ七年四月トス
三 後備兵役 前服役期間ヲ通算シ十七年四月トス
戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前項第一号ニ規定スル起算ノ日ハ之ヲ変更スルコトヲ得
第六条 現役ヲ終リタル者ハ予備役ニ、予備役ヲ終リタル者ハ後備兵役ニ服セシム
後備兵役ヲ終リタル者ニシテ年齢四十年未満ノモノハ之ヲ第一国民兵役ニ服セシム
第七条 陸軍志願兵ノ現役期間ハ本人ノ願ニ依リ年齢三十年迄ヲ限トシ之ヲ延長スルコトヲ得
第八条 憲兵及軍楽兵ハ之ヲ営外ニ居住セシムルヲ例トシ飛行兵ハ之ヲ営内ニ居住セシム
第九条 陸軍志願兵ノ等級ハ当該兵科部ノ上等兵トス
第十条 陸軍志願兵トシテ二年以上現役ニ在ル者成績不良ナルトキハ之ヲ現役満期ト為シ又ハ現役ノ延長ヲ解止スルコトヲ得
第十一条 陸軍志願兵ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノハ陸軍志願兵ヲ免ジ之ヲ当該兵科部ノ一等兵ト為ス但シ当該兵科部ニ一等兵ナキトキハ原兵科ノ一等兵ト為シ原兵科ナキトキハ歩兵科ノ一等兵ト為ス
一 禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者但シ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未満ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ヲ除ク
二 陸軍懲罰令ニ依リ降等セラレタル者
第十二条 兵役法第十二条、第十四条第一項第二号、第十六条及第十八条乃至第二十二条並ニ兵役法施行令第十四条、第十五条、第十八条、第二十一条第一項第二項、第二十二条、第三十二条、第三十四条第一項、第三十五条乃至第三十九条及第四十一条ノ規定ハ陸軍志願兵ノ服役ニ之ヲ準用ス
第三章 採用
第十三条 憲兵ハ概ネ一年九月以上在営シ陸軍憲兵学校又ハ陸軍大臣ノ指定スル部隊ニ於テ憲兵教習兵ノ課程ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第十四条 憲兵教習兵ハ歩、騎、砲、工、航空、輜重兵科ノ兵中概ネ九月以上在営シ品行方正、志操確実ナル者ニシテ憲兵ヲ志願シタルモノノ中ヨリ銓衡ノ上之ヲ採用ス
前項ニ規定スル在営ノ期間ハ戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ短縮スルコトヲ得
第十五条 前条ノ憲兵教習兵ヲ第十三条ニ規定スル部隊ニ分遣セシムルニ付テハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依ル
第十六条 憲兵教習兵ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノハ憲兵教習兵ヲ免ズ
一 軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ見込ナキ者
二 成績不良ニシテ修業ノ見込ナキ者
三 疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ修業ノ見込ナキ者
四 前各号ニ掲グル者ノ外憲兵タルニ適セズト認メタル者
第十七条 少年飛行兵ハ熊谷陸軍飛行学校生徒、水戸陸軍飛行学校生徒又ハ陸軍航空整備学校生徒ノ課程ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第十八条 軍楽兵ハ陸軍戸山学校軍楽生徒ノ課程ヲ卒業シタル者ヲ以テ之ニ充ツ
第十九条 陸軍志願兵ノ採用及入営ニ関シ必要ナル事項ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第四章 召集
第二十条 兵役法第五十四条乃至第五十六条、第五十九条乃至第六十三条及第六十五条第二項並ニ兵役法施行令第四章及第百四十三条ノ規定ハ陸軍志願兵ノ召集及簡閲点呼ニ之ヲ準用ス
附 則
第二十一条 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十二条 本令施行ノ際現ニ熊谷陸軍飛行学校操縦生徒、陸軍航空整備学校技術生徒及水戸陸軍飛行学校通信生徒中第二年次生徒タル者、水戸陸軍飛行学校特種生徒タル者並ニ陸軍補充令第六十七条ニ規定スル下士官候補者タル者ハ本令ニ依ル少年飛行兵ニ採用セラレタルモノトス
第二十三条 陸軍大臣特ニ必要アリト認ムルトキハ前条ノ規定ニ依リ陸軍志願兵ト為リタル者ノ現役期間起算ノ日ニ関シ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
第二十四条 当分ノ内憲兵ハ歩、騎、砲、工、航空、輜重兵科ノ兵中概ネ一年六月以上在営シ品行方正、志操確実ナル者ニシテ憲兵ヲ志願シ憲兵ノ勤務ニ必要ナル学術ヲ習得シタルモノヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
前項ニ規定スル学術ノ習得ニ関シテハ陸軍大臣之ヲ定ム
第一項ニ規定スル在営ノ期間ハ戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ陸軍大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ短縮スルコトヲ得