第一條 石炭ノ生產業者、輸入業者及移入業者竝ニ石炭ノ取扱ヲ爲ス會社ニシテ主務大臣ノ指定シタルモノ(指定會社)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生產、輸入、移入又ハ取扱ニ係ル石炭ヲ日本石炭株式會社ニ賣渡スベシ但シ左ニ揭グル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 石炭ノ生產業者、輸入業者又ハ移入業者命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外其ノ生產、輸入又ハ移入ニ係ル石炭ヲ自己ノ用ニ供スルトキ
二 指定會社ノ社員又ハ株主タル石炭ノ生產業者其ノ生產ニ係ル石炭ヲ當該指定會社ニ賣渡ストキ
三 特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキ
第二條 主務大臣ハ石炭ノ配給ノ圓滑ヲ確保スル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ石炭ノ生產業者、輸入業者、移入業者又ハ販賣業者ニ對シ石炭ノ配給ニ關スル施設ノ賃貸又ハ讓渡ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ協議ヲ爲スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ協議ヲ命ゼラレタル者協議ヲ爲サズ若ハ爲スコト能ハズ又ハ協議調ハザルトキハ主務大臣ハ當該事項ニ付必要ナル決定ヲ爲スコトヲ得
第三條 前條第二項ノ規定ニ依ル決定アリタル場合ニ於テ賃貸料又ハ讓渡價格ニ付不服アル者ハ其ノ決定ノ通知ヲ受ケタル日(決定ノ通知ヲ受ケザル者ニ付テハ其ノ公示ノ日)ヨリ三十日以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四條 前二條ニ定ムルモノノ外決定竝ニ之ニ依ル石炭ノ配給ニ關スル施設ノ賃貸及讓渡ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 主務大臣ハ石炭ノ生產業者、輸入業者若ハ移入業者又ハ指定會社ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第六條 日本石炭株式會社ハ石炭ノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第七條 日本石炭株式會社ノ資本ハ五千萬圓トシ內二千五百萬圓ハ政府ノ出資トス
日本石炭株式會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第八條 日本石炭株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
勅令ノ定ムル法人ニシテ特ニ主務大臣ノ許可ヲ受ケタルモノハ前項ノ規定ニ拘ラズ日本石炭株式會社ノ株主ト爲ルコトヲ得
第九條 日本石炭株式會社ニ非ザルモノハ日本石炭株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第十條 日本石炭株式會社ニ役員トシテ社長副社長各一人、理事五人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十一條 社長ハ日本石炭株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ補助シ日本石炭株式會社ノ業務ヲ分掌ス
第十二條 社長、副社長及理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
石炭鑛業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間日本石炭株式會社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條 社長、副社長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十四條 日本石炭株式會社ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
五 其ノ他石炭ノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業
日本石炭株式會社前項第四號又ハ第五號ニ揭グル事業ヲ營マントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十五條 日本石炭株式會社ハ販賣ノ目的ヲ以テ買入ルル者ニ石炭ヲ賣渡ストキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ石炭ノ販賣ニ關シ必要ナル事項ヲ指示スルコトヲ得
主務大臣ハ石炭ノ配給ノ圓滑又ハ價格ノ公正ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ日本石炭株式會社ヨリ販賣ノ目的ヲ以テ石炭ヲ買入ルル者ニ對シ前項ノ指示ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十六條 日本石炭株式會社ハ商法第二百九十七條ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ三倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
社債ヲ募集スル場合ニ於テハ商法第三百四十三條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十七條 日本石炭株式會社社債ヲ募集セントスル場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十八條 日本石炭株式會社ノ社債權者ハ同會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第十九條 日本石炭株式會社ハ每營業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
第二十條 主務大臣ハ日本石炭株式會社ノ業務ヲ監督ス
第二十一條 日本石炭株式會社ノ定款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十二條 日本石炭株式會社ハ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第二十三條 日本石炭株式會社ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外主務大臣ノ認可ヲ受ケタル價格ニ依ルニ非ザレバ石炭ノ買入又ハ販賣ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十四條 主務大臣ハ日本石炭株式會社ニ對シ石炭ノ需給調整上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ジ其ノ他業務ニ關シ公益上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十五條 主務大臣ハ日本石炭株式會社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 主務大臣ハ日本石炭株式會社監理官ヲ置キ日本石炭株式會社ノ業務ヲ監視セシム
第二十七條 日本石炭株式會社監理官ハ何時ニテモ日本石炭株式會社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本石炭株式會社監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ日本石炭株式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
日本石炭株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十八條 主務大臣ハ日本石炭株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十九條 日本石炭株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
日本石炭株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト三トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第三十條 第一條ノ規定又ハ第十五條第二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス但シ犯罪ニ係ル石炭ノ價額ノ三倍ガ一萬圓ヲ超ユルトキハ罰金ハ當該價格ノ三倍以下トス
第三十一條 第二十三條ノ規定ニ違反シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 第五條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第三十三條 營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第三十條、第三十一條又ハ前條第一號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十四條 第三十條、第三十一條及第三十二條第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十五條 前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第三十六條 日本石炭株式會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一 本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
三 第十六條第一項ノ規定ニ違反シ社債ヲ募集シタルトキ
四 第二十四條又ハ第二十五條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第三十七條 日本石炭株式會社ノ社長、副社長又ハ理事第十三條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十八條 第九條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス