石炭配給統制法
法令番号: 法律第百四號
公布年月日: 昭和15年4月8日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル石炭配給統制法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年四月六日
內閣總理大臣 米內光政
大藏大臣 櫻內幸雄
商工大臣 藤原銀次郞
法律第百四號
石炭配給統制法
第一條 石炭ノ生產業者、輸入業者及移入業者竝ニ石炭ノ取扱ヲ爲ス會社ニシテ主務大臣ノ指定シタルモノ(指定會社)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生產、輸入、移入又ハ取扱ニ係ル石炭ヲ日本石炭株式會社ニ賣渡スベシ但シ左ニ揭グル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 石炭ノ生產業者、輸入業者又ハ移入業者命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外其ノ生產、輸入又ハ移入ニ係ル石炭ヲ自己ノ用ニ供スルトキ
二 指定會社ノ社員又ハ株主タル石炭ノ生產業者其ノ生產ニ係ル石炭ヲ當該指定會社ニ賣渡ストキ
三 特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキ
第二條 主務大臣ハ石炭ノ配給ノ圓滑ヲ確保スル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ石炭ノ生產業者、輸入業者、移入業者又ハ販賣業者ニ對シ石炭ノ配給ニ關スル施設ノ賃貸又ハ讓渡ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ協議ヲ爲スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ協議ヲ命ゼラレタル者協議ヲ爲サズ若ハ爲スコト能ハズ又ハ協議調ハザルトキハ主務大臣ハ當該事項ニ付必要ナル決定ヲ爲スコトヲ得
第三條 前條第二項ノ規定ニ依ル決定アリタル場合ニ於テ賃貸料又ハ讓渡價格ニ付不服アル者ハ其ノ決定ノ通知ヲ受ケタル日(決定ノ通知ヲ受ケザル者ニ付テハ其ノ公示ノ日)ヨリ三十日以內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四條 前二條ニ定ムルモノノ外決定竝ニ之ニ依ル石炭ノ配給ニ關スル施設ノ賃貸及讓渡ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 主務大臣ハ石炭ノ生產業者、輸入業者若ハ移入業者又ハ指定會社ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第六條 日本石炭株式會社ハ石炭ノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第七條 日本石炭株式會社ノ資本ハ五千萬圓トシ內二千五百萬圓ハ政府ノ出資トス
日本石炭株式會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第八條 日本石炭株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
勅令ノ定ムル法人ニシテ特ニ主務大臣ノ許可ヲ受ケタルモノハ前項ノ規定ニ拘ラズ日本石炭株式會社ノ株主ト爲ルコトヲ得
第九條 日本石炭株式會社ニ非ザルモノハ日本石炭株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第十條 日本石炭株式會社ニ役員トシテ社長副社長各一人、理事五人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十一條 社長ハ日本石炭株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ補助シ日本石炭株式會社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ日本石炭株式會社ノ業務ヲ監査ス
第十二條 社長、副社長及理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
石炭鑛業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間日本石炭株式會社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十三條 社長、副社長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十四條 日本石炭株式會社ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一 石炭ノ買入及販賣
二 石炭ノ輸出、輸入、移出及移入
三 石炭鑛業ニ對スル資金ノ融通及投資
四 前各號ノ事業ニ附帶スル事業
五 其ノ他石炭ノ需給ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業
日本石炭株式會社前項第四號又ハ第五號ニ揭グル事業ヲ營マントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十五條 日本石炭株式會社ハ販賣ノ目的ヲ以テ買入ルル者ニ石炭ヲ賣渡ストキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ石炭ノ販賣ニ關シ必要ナル事項ヲ指示スルコトヲ得
主務大臣ハ石炭ノ配給ノ圓滑又ハ價格ノ公正ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ日本石炭株式會社ヨリ販賣ノ目的ヲ以テ石炭ヲ買入ルル者ニ對シ前項ノ指示ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十六條 日本石炭株式會社ハ商法第二百九十七條ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ三倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
社債ヲ募集スル場合ニ於テハ商法第三百四十三條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十七條 日本石炭株式會社社債ヲ募集セントスル場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十八條 日本石炭株式會社ノ社債權者ハ同會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第十九條 日本石炭株式會社ハ每營業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
第二十條 主務大臣ハ日本石炭株式會社ノ業務ヲ監督ス
第二十一條 日本石炭株式會社ノ定款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十二條 日本石炭株式會社ハ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第二十三條 日本石炭株式會社ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外主務大臣ノ認可ヲ受ケタル價格ニ依ルニ非ザレバ石炭ノ買入又ハ販賣ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十四條 主務大臣ハ日本石炭株式會社ニ對シ石炭ノ需給調整上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ジ其ノ他業務ニ關シ公益上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十五條 主務大臣ハ日本石炭株式會社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 主務大臣ハ日本石炭株式會社監理官ヲ置キ日本石炭株式會社ノ業務ヲ監視セシム
第二十七條 日本石炭株式會社監理官ハ何時ニテモ日本石炭株式會社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本石炭株式會社監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ日本石炭株式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
日本石炭株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十八條 主務大臣ハ日本石炭株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十九條 日本石炭株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
日本石炭株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト三トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第三十條 第一條ノ規定又ハ第十五條第二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス但シ犯罪ニ係ル石炭ノ價額ノ三倍ガ一萬圓ヲ超ユルトキハ罰金ハ當該價格ノ三倍以下トス
第三十一條 第二十三條ノ規定ニ違反シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 第五條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第三十三條 營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第三十條、第三十一條又ハ前條第一號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十四條 第三十條、第三十一條及第三十二條第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十五條 前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第三十六條 日本石炭株式會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一 本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第十四條ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ營ミタルトキ
三 第十六條第一項ノ規定ニ違反シ社債ヲ募集シタルトキ
四 第二十四條又ハ第二十五條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第三十七條 日本石炭株式會社ノ社長、副社長又ハ理事第十三條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十八條 第九條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第三十九條 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十條 政府ハ設立委員ヲ命ジ日本石炭株式會社ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セシム
第四十一條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十二條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第四十三條 株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝ニ商法第百七十五條第二項第二號及第四號乃至第七號ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第四十四條 設立委員株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ主務大臣ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第四十五條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第四十六條 創立總會ニ於テハ第十二條ノ規定ニ準ジ社長、副社長、理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十七條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本石炭株式會社社長ニ引渡スベシ
第四十八條 商法第百六十七條、第百八十一條及第百八十五條ノ規定ハ日本石炭株式會社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第四十九條 第九條ノ規定施行ノ際現ニ日本石炭株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ同條ノ規定施行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變更スルコトヲ要ス
第三十八條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前項ニ揭グル者ニ適用セズ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル石炭配給統制法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年四月六日
内閣総理大臣 米内光政
大蔵大臣 桜内幸雄
商工大臣 藤原銀次郎
法律第百四号
石炭配給統制法
第一条 石炭ノ生産業者、輸入業者及移入業者並ニ石炭ノ取扱ヲ為ス会社ニシテ主務大臣ノ指定シタルモノ(指定会社)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産、輸入、移入又ハ取扱ニ係ル石炭ヲ日本石炭株式会社ニ売渡スベシ但シ左ニ掲グル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 石炭ノ生産業者、輸入業者又ハ移入業者命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外其ノ生産、輸入又ハ移入ニ係ル石炭ヲ自己ノ用ニ供スルトキ
二 指定会社ノ社員又ハ株主タル石炭ノ生産業者其ノ生産ニ係ル石炭ヲ当該指定会社ニ売渡ストキ
三 特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ許可ヲ受ケタルトキ
第二条 主務大臣ハ石炭ノ配給ノ円滑ヲ確保スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ石炭ノ生産業者、輸入業者、移入業者又ハ販売業者ニ対シ石炭ノ配給ニ関スル施設ノ賃貸又ハ譲渡ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ協議ヲ為スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ協議ヲ命ゼラレタル者協議ヲ為サズ若ハ為スコト能ハズ又ハ協議調ハザルトキハ主務大臣ハ当該事項ニ付必要ナル決定ヲ為スコトヲ得
第三条 前条第二項ノ規定ニ依ル決定アリタル場合ニ於テ賃貸料又ハ譲渡価格ニ付不服アル者ハ其ノ決定ノ通知ヲ受ケタル日(決定ノ通知ヲ受ケザル者ニ付テハ其ノ公示ノ日)ヨリ三十日以内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四条 前二条ニ定ムルモノノ外決定並ニ之ニ依ル石炭ノ配給ニ関スル施設ノ賃貸及譲渡ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 主務大臣ハ石炭ノ生産業者、輸入業者若ハ移入業者又ハ指定会社ニ対シ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ検査ヲ為スコトヲ得
第六条 日本石炭株式会社ハ石炭ノ需給ノ円滑及価格ノ公正ヲ図ル為必要ナル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トス
第七条 日本石炭株式会社ノ資本ハ五千万円トシ内二千五百万円ハ政府ノ出資トス
日本石炭株式会社ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ資本ヲ増加スルコトヲ得
第八条 日本石炭株式会社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員ノ半数以上、資本ノ半額以上若ハ議決権ノ過半数ガ外国人若ハ外国法人ニ属セザルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
勅令ノ定ムル法人ニシテ特ニ主務大臣ノ許可ヲ受ケタルモノハ前項ノ規定ニ拘ラズ日本石炭株式会社ノ株主ト為ルコトヲ得
第九条 日本石炭株式会社ニ非ザルモノハ日本石炭株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ其ノ商号ト為スコトヲ得ズ
第十条 日本石炭株式会社ニ役員トシテ社長副社長各一人、理事五人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十一条 社長ハ日本石炭株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ補助シ日本石炭株式会社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ日本石炭株式会社ノ業務ヲ監査ス
第十二条 社長、副社長及理事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
石炭鉱業ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間日本石炭株式会社ノ役員ト為ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十三条 社長、副社長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十四条 日本石炭株式会社ハ左ノ事業ヲ営ムモノトス
一 石炭ノ買入及販売
二 石炭ノ輸出、輸入、移出及移入
三 石炭鉱業ニ対スル資金ノ融通及投資
四 前各号ノ事業ニ附帯スル事業
五 其ノ他石炭ノ需給ノ円滑及価格ノ公正ヲ図ル為必要ナル事業
日本石炭株式会社前項第四号又ハ第五号ニ掲グル事業ヲ営マントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十五条 日本石炭株式会社ハ販売ノ目的ヲ以テ買入ルル者ニ石炭ヲ売渡ストキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ石炭ノ販売ニ関シ必要ナル事項ヲ指示スルコトヲ得
主務大臣ハ石炭ノ配給ノ円滑又ハ価格ノ公正ヲ図ル為特ニ必要アリト認ムルトキハ日本石炭株式会社ヨリ販売ノ目的ヲ以テ石炭ヲ買入ルル者ニ対シ前項ノ指示ニ従フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十六条 日本石炭株式会社ハ商法第二百九十七条ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ総額ハ払込ミタル株金額ノ三倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
社債ヲ募集スル場合ニ於テハ商法第三百四十三条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十七条 日本石炭株式会社社債ヲ募集セントスル場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十八条 日本石炭株式会社ノ社債権者ハ同会社ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
第十九条 日本石炭株式会社ハ毎営業年度ニ準備金トシテ資本ノ欠損ヲ補フ為利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
第二十条 主務大臣ハ日本石炭株式会社ノ業務ヲ監督ス
第二十一条 日本石炭株式会社ノ定款ノ変更、利益金ノ処分、合併及解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第二十二条 日本石炭株式会社ハ毎営業年度ノ事業計画ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第二十三条 日本石炭株式会社ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外主務大臣ノ認可ヲ受ケタル価格ニ依ルニ非ザレバ石炭ノ買入又ハ販売ヲ為スコトヲ得ズ
第二十四条 主務大臣ハ日本石炭株式会社ニ対シ石炭ノ需給調整上必要ナル事業ヲ行フベキコトヲ命ジ其ノ他業務ニ関シ公益上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十五条 主務大臣ハ日本石炭株式会社ノ業務ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十六条 主務大臣ハ日本石炭株式会社監理官ヲ置キ日本石炭株式会社ノ業務ヲ監視セシム
第二十七条 日本石炭株式会社監理官ハ何時ニテモ日本石炭株式会社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査スルコトヲ得
日本石炭株式会社監理官ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ日本石炭株式会社ニ命ジ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
日本石炭株式会社監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十八条 主務大臣ハ日本石炭株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十九条 日本石炭株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
日本石炭株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ対シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配当ヲ為サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配当ガ総株式ニ付払込ミタル株金額ニ対シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ一ト三トノ割合ヲ以テ之ヲ配当スベシ
第三十条 第一条ノ規定又ハ第十五条第二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス但シ犯罪ニ係ル石炭ノ価額ノ三倍ガ一万円ヲ超ユルトキハ罰金ハ当該価格ノ三倍以下トス
第三十一条 第二十三条ノ規定ニ違反シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第三十二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第五条ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
二 第五条ノ規定ニ依ル検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第三十三条 営業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ第三十条、第三十一条又ハ前条第一号ノ違反行為ヲ為シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十四条 第三十条、第三十一条及第三十二条第一号ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十五条 前二条ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ処スルコトヲ得ズ
第三十六条 日本石炭株式会社左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
一 本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第十四条ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ営ミタルトキ
三 第十六条第一項ノ規定ニ違反シ社債ヲ募集シタルトキ
四 第二十四条又ハ第二十五条ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第三十七条 日本石炭株式会社ノ社長、副社長又ハ理事第十三条ノ規定ニ違反シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第三十八条 第九条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第三十九条 本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十条 政府ハ設立委員ヲ命ジ日本石炭株式会社ノ設立ニ関スル事務ヲ処理セシム
第四十一条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十二条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式総数ヨリ政府ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第四十三条 株式申込証ニハ定款認可ノ年月日並ニ商法第百七十五条第二項第二号及第四号乃至第七号ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第四十四条 設立委員株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ主務大臣ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
第四十五条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
前項ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
第四十六条 創立総会ニ於テハ第十二条ノ規定ニ準ジ社長、副社長、理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十七条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本石炭株式会社社長ニ引渡スベシ
第四十八条 商法第百六十七条、第百八十一条及第百八十五条ノ規定ハ日本石炭株式会社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第四十九条 第九条ノ規定施行ノ際現ニ日本石炭株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ商号ト為ス会社ハ同条ノ規定施行後六月以内ニ其ノ商号ヲ変更スルコトヲ要ス
第三十八条ノ規定ハ前項ノ期間内之ヲ前項ニ掲グル者ニ適用セズ