造船事業法施行令
法令番号: 勅令第八百號
公布年月日: 昭和14年11月29日
法令の形式: 勅令
朕造船事業法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年十一月二十八日
內閣總理大臣 阿部信行
遞信大臣 永井柳太郞
大藏大臣 靑木一男
司法大臣 宮城長五郞
商工大臣 伍堂卓雄
農林大臣 伯爵 酒井忠正
勅令第八百號
造船事業法施行令
第一條 造船事業法第一條第一項ノ設備ハ長サ五十米以上ノ船舶ノ製造又ハ修繕ヲ爲シ得ル造船臺、船渠又ハ船架トス
第二條 造船事業法第二條ノ許可ハ船舶製造事業又ハ船舶修繕事業ノ事業別ニ之ヲ爲ス
第三條 造船事業法第七條ノ規定ニ依リ造船會社ハ其ノ事業ニ屬スル設備ノ償却ニ充ツル爲積立テアル金額及旣ニ經費ニ計上シタル金額ノ總額ガ當該設備ノ取得價額ノ六割ニ達スル迄每決算期ノ利益金額ノ百分ノ十二以上ヲ積立ツベシ
當該決算期ニ於テ設備ノ償却ニ充ツル爲經費ニ計上シタル金額ハ前項ノ利益金額計算上支出ニ之ヲ算入セズ且前項ノ規定ニ依リ當該決算期ニ於テ積立ツベキ金額ヨリ之ヲ控除ス
第四條 造船會社特別ノ事情ニ基キ前條ノ規定ニ依リ難キ場合ハ遞信大臣ノ許可ヲ受ケ前條ノ積立ツベキ金額ヲ減額スルコトヲ得
第五條 造船事業法第十五條第二項ノ規定ニ依リ補償スベキ損失ハ通常生ズベキ損失ニ限ル
損失ノ補償ヲ請求セントスル會社ハ其ノ損失ガ造船事業法第十五條第一項第一號ノ命令ニ因リ生ジタルモノナルトキハ當該設備ノ使用ヲ廢止シタル後又同條第一項第二號又ハ第三號ノ命令ニ因リ生ジタルモノナルトキハ當該命令事項ノ履行ヲ終リタル後之ヲ請求スベシ但シ遞信大臣ノ定ムル所ニ依リ每事業年度ノ終リタル後又ハ損失ノ生ジタル都度之ヲ請求スルコトヲ得
第六條 造船事業法第十五條第一項第一號ノ命令ニシテ特ニ緊急ヲ要スルモノ又ハ機密保持ノ爲必要アルモノニ付テハ造船事業委員會ノ議ニ付セザルコトヲ得
第七條 造船組合ノ創立總會ニ於ケル議決及役員ノ選任ハ設立同意者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
設立同意者ハ創立總會ニ於テ代理人ヲ以テ其ノ議決權ヲ行フコトヲ得
前項ノ代理人ハ業務ヲ執行スル役員若ハ支配人又ハ設立同意者タルコトヲ要ス
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ提出スベシ
第八條 造船組合ノ理事及監事ハ組合員タル會社ノ業務ヲ執行スル役員ノ中ヨリ之ヲ選任ス但シ組合設立當時ノ理事及監事ハ創立總會ニ於テ設立同意者タル會社ノ業務ヲ執行スル役員ノ中ヨリ之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事及監事ハ前項ニ規定スル者以外ノ者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得
第九條 造船組合ノ理事正當ノ理由ナクシテ造船事業法第三十九條ニ於テ準用スル民法第六十一條第二項ノ規定ニ依ル請求アリタル後二週間以內ニ總會招集ノ手續ヲ爲サザルトキハ請求者ハ遞信大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
第十條 造船組合ノ組合員ハ代理人ヲ以テ其ノ議決權ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席ト看做ス
前項ノ代理人ハ其ノ會社ノ業務ヲ執行スル役員若ハ支配人又ハ組合員タルコトヲ要ス
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ組合ニ提出スベシ
第十一條 造船組合ノ總會ノ招集ノ手續又ハ決議ノ方法ガ法令又ハ定款ノ規定ニ違反スルトキハ組合員ハ決議ノ日ヨリ一月以內ニ其ノ決議ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
商法第百六十三條第二項、第三項及第百六十三條ノ四ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十二條 造船組合ノ組合員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ期間前ニ豫吿ヲ爲シ組合ノ承諾ヲ得タル場合ニハ事業年度ノ終ニ於テ脫退スルコトヲ得
第十三條 第二十七條ニ於テ準用スル產業組合法第四十條第二項(同法第四十二條、第五十八條第三項及第六十四條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)及第六十八條第二項ノ規定ニ依リテ爲スベキ公吿ハ裁判所ガ爲スベキ登記事項ノ公吿ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第十四條 造船組合ノ淸算人ハ民法第七十九條第一項ノ債權申出ノ期間內ハ債權者ニ對シテ辨濟ヲ爲スコトヲ得ズ
第十五條 造船組合聯合會ノ創立委員會ニ於ケル議決及役員ノ選任ハ創立委員總數ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ之ヲ爲ス
第七條第二項乃至第四項ノ規定ハ創立委員ニ付之ヲ準用ス
第十六條 造船組合聯合會ノ理事及監事ハ所屬ノ組合又ハ聯合會ノ役員ノ中ヨリ之ヲ選任ス但シ聯合會設立當時ノ理事及監事ハ創立委員會ニ於テ其ノ聯合會ニ屬スベキ組合又ハ聯合會ノ役員ノ中ヨリ之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事及監事ハ前項ニ規定スル者以外ノ者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得
第十七條 本令ニ依リ登記スベキ事項ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外其ノ事實ノ生ジタル後主タル事務所ノ所在地ニ於テハ二週間、從タル事務所ノ所在地ニ於テハ三週間以內ニ之ヲ登記スルコトヲ要ス
本令ニ依リ登記スベキ事項ニシテ遞信大臣又ハ遞信大臣及商工大臣ノ認可ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第十八條 造船組合ハ組合員ノ出資ノ第一囘ノ拂込アリタルトキハ各事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
設立ノ登記ニハ左ノ事項ヲ揭グルコトヲ要ス
一 造船事業法第二十一條第一號乃至第三號及第十三號ニ揭グル事項
二 事務所
三 出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
四 出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ總額
五 造船事業法第二十七條第二項ノ規定ニ依ル組合ニ在リテハ各組合員ノ名稱及本店竝ニ各組合員ガ其ノ出資ノ外組合ノ債權者ニ對シ責任ヲ負擔スル金額(保證金額)
六 成立ノ年月日
七 理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭グル事項中ニ變更ヲ生ジタルトキハ變更ノ登記ヲ爲スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ前項第四號ニ揭グル事項ニ付テハ每事業年度末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後主タル事務所ノ所在地ニ於テハ四週間、從タル事務所ノ所在地ニ於テハ五週間以內ニ之ヲ爲スコトヲ得
第十九條 造船組合ノ成立後從タル事務所ヲ設ケタルトキハ主タル事務所ノ所在地ニ於テハ從タル事務所ヲ設ケタルコトヲ登記シ其ノ從タル事務所ノ所在地ニ於テハ前條第二項ニ揭グル事項ヲ登記シ他ノ從タル事務所ノ所在地ニ於テハ其ノ從タル事務所ヲ設ケタルコトヲ登記スルコトヲ要ス
主タル事務所又ハ從タル事務所ノ所在地ヲ管轄スル登記所ノ管轄區域內ニ於テ新ニ從タル事務所ヲ設ケタルトキハ其ノ從タル事務所ヲ設ケタルコトヲ登記スルヲ以テ足ル
第二十條 造船組合ガ主タル事務所ヲ移轉シタルトキハ舊所在地ニ於テハ二週間以內ニ移轉ノ登記ヲ爲シ新所在地ニ於テハ三週間以內ニ第十八條第二項ニ揭グル事項ヲ登記シ從タル事務所ヲ移轉シタルトキハ舊所在地ニ於テハ三週間以內ニ移轉ノ登記ヲ爲シ新所在地ニ於テハ四週間以內ニ第十八條第二項ニ揭グル事項ヲ登記スルコトヲ要ス
同一ノ登記所ノ管轄區域內ニ於テ主タル事務所又ハ從タル事務所ヲ移轉シタルトキハ其ノ移轉ノ登記ヲ爲スヲ以テ足ル
第二十一條 造船組合及造船組合聯合會ノ登記ニ付テハ其ノ事務所所在地ノ區裁判所ヲ以テ管轄登記所トス
各登記所ニ造船組合登記簿及造船組合聯合會登記簿ヲ備フ
第二十二條 造船組合ノ設立ノ登記ハ理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
前項ノ登記ノ申請書ニハ定款、創立總會又ハ總會ノ決議錄、出資ノ總口數ヲ證スル書面、出資ノ第一囘ノ拂込アリタルコトヲ證スル書面及申請人ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
合併ニ因ル設立ノ登記ノ申請書ニハ前項ニ規定スル書面ノ外本令ニ依リ公吿及催吿ヲ爲シタルコト竝ニ異議ヲ述ベタル債權者アル場合ニ於テハ之ニ對シ辨濟ヲ爲シ又ハ擔保ヲ供シタルコトヲ證スル書面ヲ併セテ添附スルコトヲ要ス
第二十三條 造船組合ノ事務所ノ新設又ハ事務所ノ移轉其ノ他登記事項ノ變更ノ登記ハ理事又ハ淸算人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス但シ合併又ハ出資一口ノ金額若ハ保證金額ノ減少ニ因ル變更ノ登記ハ理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
前項ノ登記ノ申請書ニハ事務所ノ新設又ハ登記事項ノ變更ヲ證スル書面及申請人中ニ理事ノ職務ヲ行フ監事又ハ假理事アル場合ニ於テハ其ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
前條第三項ノ規定ハ合併又ハ出資一口ノ金額若ハ保證金額ノ減少ニ因ル變更ノ登記ニ付之ヲ準用ス
第二十四條 造船組合ガ造船事業法第三十三條第一號又ハ第二號ノ事由ニ因リテ解散シタルトキハ解散ノ登記ハ淸算人ノ申請ニ因リ、同條第三號ノ事由ニ因リテ解散シタルトキハ解散ノ登記ハ解散シタルトキノ理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
前項ノ登記ノ申請書ニハ解散ノ事由ヲ證スル書面及前項前段ノ場合ニ於テ理事ガ淸算人タラザルトキハ申請人ノ資格ヲ證スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
第二十二條第三項ノ規定ハ合併ニ因ル解散ノ登記ニ付之ヲ準用ス
造船組合ガ造船事業法第三十三條第五號ノ事由ニ因リテ解散シタルトキハ解散ノ登記ハ遞信大臣ノ囑託ニ因リテ之ヲ爲ス
第二十五條 造船組合ノ淸算結了ノ登記ハ淸算人ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
第二十六條 第九條乃至第十二條、第十四條、第十八條乃至第二十條及第二十二條乃至前條ノ規定ハ造船組合聯合會ニ付之ヲ準用ス
第二十七條 民法第四十三條、第四十四條、第五十條、第六十七條、第七十三條、第七十六條及第七十八條乃至第八十三條竝ニ非訟事件手續法第三十五條第二項、第三十六條乃至第三十七條ノ二及第百二十五條第一項(第百四十一條及第百七十七條ヲ準用スル部分ヲ除ク)ノ規定ハ造船組合及造船組合聯合會ニ付適用アルモノトシ民法第七十條第一項、第七十二條、第七十四條及第七十五條、非訟事件手續法第百五十條ノ二、第百七十八條及第百九十五條ノ二竝ニ產業組合法第十條、第十一條第一項、第十二條、第十八條乃至第二十二條、第二十六條、第二十九條乃至第三十一條ノ二、第四十條乃至第四十二條、第四十四條第一項、第四十五條、第四十六條、第四十八條、第五十一條乃至第五十八條、第六十二條第二項但書、第六十三條第一項、第六十三條ノ二、第六十四條、第六十六條第一項、第六十七條、第六十八條、第七十條乃至第七十三條、第七十四條第一項、第七十四條ノ二第一項、第七十七條第三項及第百四條ノ規定ハ造船組合及造船組合聯合會ニ付之ヲ準用ス
第二十八條 造船事業法第九條乃至第四十一條、第四十四條第二號乃至第五號、第四十五條乃至第四十九條及第五十一條乃至第五十三條竝ニ本令第五條乃至第十六條、第十八條乃至第二十條、第二十一條第一項、第二十二條乃至前條、第三十二條及第三十三條ノ規定ハ長サ十五米以上ノ船舶ノ製造又ハ修繕ヲ爲シ得ル造船臺、船渠又ハ船架ヲ備フル者ノ營ム船舶ノ製造又ハ修繕ノ事業及其ノ事業ヲ營ム者ガ其ノ事業ノ從トシテ爲ス船體、船舶用機關若ハ艤裝品又ハ其ノ部分品若ハ附屬品ノ製造又ハ修繕ノ事業ニシテ造船事業法第一條ノ造船事業ニ屬セザルモノニ付之ヲ準用ス
第二十九條 造船事業法第九條、第十條、第十四條乃至第四十條、第四十一條第一項、第四十四條第二號乃至第五號、第四十五條乃至第四十九條及第五十一條乃至第五十三條竝ニ本令第五條乃至第十六條、第十八條乃至第二十條、第二十一條第一項、第二十二條乃至第二十七條、第三十二條及第三十三條ノ規定ハ命令ヲ以テ定ムル船舶用機關又ハ艤裝品ノ製造又ハ修繕ヲ爲ス事業ニシテ造船事業法第一條ノ造船事業及前條ノ事業ニ屬セザル營業ニ付之ヲ準用ス
第三十條 前二條ニ於テ準用スル造船事業法第十七條又ハ第三十四條ノ規定ニ依リ造船事業法第一條ノ造船事業ニ屬セザル船舶、船舶用機關又ハ艤裝品ノ製造又ハ修繕ヲ爲ス事業ヲ營ム者ノ設立スル組合又ハ組合聯合會ノ登記ハ造船組合登記簿又ハ造船組合聯合會登記簿ニ之ヲ爲ス
第三十一條 造船事業法第九條、第十條、第十四條乃至第十六條、第二十條、第二十二條、第二十三條、第二十八條乃至第三十三條、第三十五條、第四十一條及第五十一條中政府トアルハ第二十九條ノ事業ニ付テハ遞信大臣及商工大臣トシ同法第十二條及第十三條(第二十八條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)中政府トアルハ漁船、漁船用機關若ハ艤裝品又ハ其ノ部分品若ハ附屬品ニ付テハ遞信大臣及農林大臣トス
第五條、第九條及第二十四條中遞信大臣トアルハ第二十九條ノ事業ニ付テハ遞信大臣及商工大臣トス
第三十二條 左ノ場合ニ於テハ造船組合又ハ造船組合聯合會ノ理事又ハ監事ヲ五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本令ニ定ムル登記ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
二 本令ニ依リ備置クベキ書類ヲ備置カザルトキ若ハ其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セザルトキ又ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
三 主務官廳ノ爲ス檢査ヲ拒ミタルトキ
四 本令ニ違反シ組合員ノ持分ヲ拂戾シタルトキ
五 本令ニ違反シ組合又ハ聯合會ガ組合員ノ持分ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ之ヲ受ケタルトキ
六 本令ニ違反シ出資一口ノ金額若ハ保證金額ヲ減少シ、第二十七條ニ於テ準用スル產業組合法第五十八條ノ責任期間ノ短縮ヲ爲シ又ハ組合若ハ聯合會ノ合併若ハ組織變更ヲ爲シタルトキ
七 本令ニ違反シ剩餘金ヲ處分シタルトキ
第三十三條 左ノ場合ニ於テハ造船組合又ハ造船組合聯合會ノ淸算人ヲ五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 官廳又ハ總會ニ對シ不實ノ申述ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
二 裁判所又ハ其ノ選任シタル者ノ爲ス檢査ヲ拒ミタルトキ
三 本令ニ違反シ破產宣吿ノ請求ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
四 本令ニ違反シ辨濟ヲ爲シ又ハ組合財產ノ分配ヲ爲シタルトキ
五 本令ニ定ムル公吿ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公吿ヲ爲シタルトキ
六 前條第一號及第四號乃至第六號ノ一ニ該當スルトキ
附 則
本令ハ造船事業法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕造船事業法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年十一月二十八日
内閣総理大臣 阿部信行
逓信大臣 永井柳太郎
大蔵大臣 青木一男
司法大臣 宮城長五郎
商工大臣 伍堂卓雄
農林大臣 伯爵 酒井忠正
勅令第八百号
造船事業法施行令
第一条 造船事業法第一条第一項ノ設備ハ長サ五十米以上ノ船舶ノ製造又ハ修繕ヲ為シ得ル造船台、船渠又ハ船架トス
第二条 造船事業法第二条ノ許可ハ船舶製造事業又ハ船舶修繕事業ノ事業別ニ之ヲ為ス
第三条 造船事業法第七条ノ規定ニ依リ造船会社ハ其ノ事業ニ属スル設備ノ償却ニ充ツル為積立テアル金額及既ニ経費ニ計上シタル金額ノ総額ガ当該設備ノ取得価額ノ六割ニ達スル迄毎決算期ノ利益金額ノ百分ノ十二以上ヲ積立ツベシ
当該決算期ニ於テ設備ノ償却ニ充ツル為経費ニ計上シタル金額ハ前項ノ利益金額計算上支出ニ之ヲ算入セズ且前項ノ規定ニ依リ当該決算期ニ於テ積立ツベキ金額ヨリ之ヲ控除ス
第四条 造船会社特別ノ事情ニ基キ前条ノ規定ニ依リ難キ場合ハ逓信大臣ノ許可ヲ受ケ前条ノ積立ツベキ金額ヲ減額スルコトヲ得
第五条 造船事業法第十五条第二項ノ規定ニ依リ補償スベキ損失ハ通常生ズベキ損失ニ限ル
損失ノ補償ヲ請求セントスル会社ハ其ノ損失ガ造船事業法第十五条第一項第一号ノ命令ニ因リ生ジタルモノナルトキハ当該設備ノ使用ヲ廃止シタル後又同条第一項第二号又ハ第三号ノ命令ニ因リ生ジタルモノナルトキハ当該命令事項ノ履行ヲ終リタル後之ヲ請求スベシ但シ逓信大臣ノ定ムル所ニ依リ毎事業年度ノ終リタル後又ハ損失ノ生ジタル都度之ヲ請求スルコトヲ得
第六条 造船事業法第十五条第一項第一号ノ命令ニシテ特ニ緊急ヲ要スルモノ又ハ機密保持ノ為必要アルモノニ付テハ造船事業委員会ノ議ニ付セザルコトヲ得
第七条 造船組合ノ創立総会ニ於ケル議決及役員ノ選任ハ設立同意者ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ之ヲ為ス
設立同意者ハ創立総会ニ於テ代理人ヲ以テ其ノ議決権ヲ行フコトヲ得
前項ノ代理人ハ業務ヲ執行スル役員若ハ支配人又ハ設立同意者タルコトヲ要ス
代理人ハ代理権ヲ証スル書面ヲ提出スベシ
第八条 造船組合ノ理事及監事ハ組合員タル会社ノ業務ヲ執行スル役員ノ中ヨリ之ヲ選任ス但シ組合設立当時ノ理事及監事ハ創立総会ニ於テ設立同意者タル会社ノ業務ヲ執行スル役員ノ中ヨリ之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事及監事ハ前項ニ規定スル者以外ノ者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得
第九条 造船組合ノ理事正当ノ理由ナクシテ造船事業法第三十九条ニ於テ準用スル民法第六十一条第二項ノ規定ニ依ル請求アリタル後二週間以内ニ総会招集ノ手続ヲ為サザルトキハ請求者ハ逓信大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
第十条 造船組合ノ組合員ハ代理人ヲ以テ其ノ議決権ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席ト看做ス
前項ノ代理人ハ其ノ会社ノ業務ヲ執行スル役員若ハ支配人又ハ組合員タルコトヲ要ス
代理人ハ代理権ヲ証スル書面ヲ組合ニ提出スベシ
第十一条 造船組合ノ総会ノ招集ノ手続又ハ決議ノ方法ガ法令又ハ定款ノ規定ニ違反スルトキハ組合員ハ決議ノ日ヨリ一月以内ニ其ノ決議ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
商法第百六十三条第二項、第三項及第百六十三条ノ四ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十二条 造船組合ノ組合員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ期間前ニ予告ヲ為シ組合ノ承諾ヲ得タル場合ニハ事業年度ノ終ニ於テ脱退スルコトヲ得
第十三条 第二十七条ニ於テ準用スル産業組合法第四十条第二項(同法第四十二条、第五十八条第三項及第六十四条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)及第六十八条第二項ノ規定ニ依リテ為スベキ公告ハ裁判所ガ為スベキ登記事項ノ公告ト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
第十四条 造船組合ノ清算人ハ民法第七十九条第一項ノ債権申出ノ期間内ハ債権者ニ対シテ弁済ヲ為スコトヲ得ズ
第十五条 造船組合連合会ノ創立委員会ニ於ケル議決及役員ノ選任ハ創立委員総数ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ之ヲ為ス
第七条第二項乃至第四項ノ規定ハ創立委員ニ付之ヲ準用ス
第十六条 造船組合連合会ノ理事及監事ハ所属ノ組合又ハ連合会ノ役員ノ中ヨリ之ヲ選任ス但シ連合会設立当時ノ理事及監事ハ創立委員会ニ於テ其ノ連合会ニ属スベキ組合又ハ連合会ノ役員ノ中ヨリ之ヲ選任スベシ
特別ノ事由アルトキハ理事及監事ハ前項ニ規定スル者以外ノ者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得
第十七条 本令ニ依リ登記スベキ事項ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外其ノ事実ノ生ジタル後主タル事務所ノ所在地ニ於テハ二週間、従タル事務所ノ所在地ニ於テハ三週間以内ニ之ヲ登記スルコトヲ要ス
本令ニ依リ登記スベキ事項ニシテ逓信大臣又ハ逓信大臣及商工大臣ノ認可ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
第十八条 造船組合ハ組合員ノ出資ノ第一回ノ払込アリタルトキハ各事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為スコトヲ要ス
設立ノ登記ニハ左ノ事項ヲ掲グルコトヲ要ス
一 造船事業法第二十一条第一号乃至第三号及第十三号ニ掲グル事項
二 事務所
三 出資一口ノ金額及其ノ払込ノ方法
四 出資ノ総口数及払込ミタル出資ノ総額
五 造船事業法第二十七条第二項ノ規定ニ依ル組合ニ在リテハ各組合員ノ名称及本店並ニ各組合員ガ其ノ出資ノ外組合ノ債権者ニ対シ責任ヲ負担スル金額(保証金額)
六 成立ノ年月日
七 理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ掲グル事項中ニ変更ヲ生ジタルトキハ変更ノ登記ヲ為スコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ前項第四号ニ掲グル事項ニ付テハ毎事業年度末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後主タル事務所ノ所在地ニ於テハ四週間、従タル事務所ノ所在地ニ於テハ五週間以内ニ之ヲ為スコトヲ得
第十九条 造船組合ノ成立後従タル事務所ヲ設ケタルトキハ主タル事務所ノ所在地ニ於テハ従タル事務所ヲ設ケタルコトヲ登記シ其ノ従タル事務所ノ所在地ニ於テハ前条第二項ニ掲グル事項ヲ登記シ他ノ従タル事務所ノ所在地ニ於テハ其ノ従タル事務所ヲ設ケタルコトヲ登記スルコトヲ要ス
主タル事務所又ハ従タル事務所ノ所在地ヲ管轄スル登記所ノ管轄区域内ニ於テ新ニ従タル事務所ヲ設ケタルトキハ其ノ従タル事務所ヲ設ケタルコトヲ登記スルヲ以テ足ル
第二十条 造船組合ガ主タル事務所ヲ移転シタルトキハ旧所在地ニ於テハ二週間以内ニ移転ノ登記ヲ為シ新所在地ニ於テハ三週間以内ニ第十八条第二項ニ掲グル事項ヲ登記シ従タル事務所ヲ移転シタルトキハ旧所在地ニ於テハ三週間以内ニ移転ノ登記ヲ為シ新所在地ニ於テハ四週間以内ニ第十八条第二項ニ掲グル事項ヲ登記スルコトヲ要ス
同一ノ登記所ノ管轄区域内ニ於テ主タル事務所又ハ従タル事務所ヲ移転シタルトキハ其ノ移転ノ登記ヲ為スヲ以テ足ル
第二十一条 造船組合及造船組合連合会ノ登記ニ付テハ其ノ事務所所在地ノ区裁判所ヲ以テ管轄登記所トス
各登記所ニ造船組合登記簿及造船組合連合会登記簿ヲ備フ
第二十二条 造船組合ノ設立ノ登記ハ理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
前項ノ登記ノ申請書ニハ定款、創立総会又ハ総会ノ決議録、出資ノ総口数ヲ証スル書面、出資ノ第一回ノ払込アリタルコトヲ証スル書面及申請人ノ資格ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
合併ニ因ル設立ノ登記ノ申請書ニハ前項ニ規定スル書面ノ外本令ニ依リ公告及催告ヲ為シタルコト並ニ異議ヲ述ベタル債権者アル場合ニ於テハ之ニ対シ弁済ヲ為シ又ハ担保ヲ供シタルコトヲ証スル書面ヲ併セテ添附スルコトヲ要ス
第二十三条 造船組合ノ事務所ノ新設又ハ事務所ノ移転其ノ他登記事項ノ変更ノ登記ハ理事又ハ清算人ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス但シ合併又ハ出資一口ノ金額若ハ保証金額ノ減少ニ因ル変更ノ登記ハ理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
前項ノ登記ノ申請書ニハ事務所ノ新設又ハ登記事項ノ変更ヲ証スル書面及申請人中ニ理事ノ職務ヲ行フ監事又ハ仮理事アル場合ニ於テハ其ノ資格ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
前条第三項ノ規定ハ合併又ハ出資一口ノ金額若ハ保証金額ノ減少ニ因ル変更ノ登記ニ付之ヲ準用ス
第二十四条 造船組合ガ造船事業法第三十三条第一号又ハ第二号ノ事由ニ因リテ解散シタルトキハ解散ノ登記ハ清算人ノ申請ニ因リ、同条第三号ノ事由ニ因リテ解散シタルトキハ解散ノ登記ハ解散シタルトキノ理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
前項ノ登記ノ申請書ニハ解散ノ事由ヲ証スル書面及前項前段ノ場合ニ於テ理事ガ清算人タラザルトキハ申請人ノ資格ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
第二十二条第三項ノ規定ハ合併ニ因ル解散ノ登記ニ付之ヲ準用ス
造船組合ガ造船事業法第三十三条第五号ノ事由ニ因リテ解散シタルトキハ解散ノ登記ハ逓信大臣ノ嘱託ニ因リテ之ヲ為ス
第二十五条 造船組合ノ清算結了ノ登記ハ清算人ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
第二十六条 第九条乃至第十二条、第十四条、第十八条乃至第二十条及第二十二条乃至前条ノ規定ハ造船組合連合会ニ付之ヲ準用ス
第二十七条 民法第四十三条、第四十四条、第五十条、第六十七条、第七十三条、第七十六条及第七十八条乃至第八十三条並ニ非訟事件手続法第三十五条第二項、第三十六条乃至第三十七条ノ二及第百二十五条第一項(第百四十一条及第百七十七条ヲ準用スル部分ヲ除ク)ノ規定ハ造船組合及造船組合連合会ニ付適用アルモノトシ民法第七十条第一項、第七十二条、第七十四条及第七十五条、非訟事件手続法第百五十条ノ二、第百七十八条及第百九十五条ノ二並ニ産業組合法第十条、第十一条第一項、第十二条、第十八条乃至第二十二条、第二十六条、第二十九条乃至第三十一条ノ二、第四十条乃至第四十二条、第四十四条第一項、第四十五条、第四十六条、第四十八条、第五十一条乃至第五十八条、第六十二条第二項但書、第六十三条第一項、第六十三条ノ二、第六十四条、第六十六条第一項、第六十七条、第六十八条、第七十条乃至第七十三条、第七十四条第一項、第七十四条ノ二第一項、第七十七条第三項及第百四条ノ規定ハ造船組合及造船組合連合会ニ付之ヲ準用ス
第二十八条 造船事業法第九条乃至第四十一条、第四十四条第二号乃至第五号、第四十五条乃至第四十九条及第五十一条乃至第五十三条並ニ本令第五条乃至第十六条、第十八条乃至第二十条、第二十一条第一項、第二十二条乃至前条、第三十二条及第三十三条ノ規定ハ長サ十五米以上ノ船舶ノ製造又ハ修繕ヲ為シ得ル造船台、船渠又ハ船架ヲ備フル者ノ営ム船舶ノ製造又ハ修繕ノ事業及其ノ事業ヲ営ム者ガ其ノ事業ノ従トシテ為ス船体、船舶用機関若ハ艤装品又ハ其ノ部分品若ハ附属品ノ製造又ハ修繕ノ事業ニシテ造船事業法第一条ノ造船事業ニ属セザルモノニ付之ヲ準用ス
第二十九条 造船事業法第九条、第十条、第十四条乃至第四十条、第四十一条第一項、第四十四条第二号乃至第五号、第四十五条乃至第四十九条及第五十一条乃至第五十三条並ニ本令第五条乃至第十六条、第十八条乃至第二十条、第二十一条第一項、第二十二条乃至第二十七条、第三十二条及第三十三条ノ規定ハ命令ヲ以テ定ムル船舶用機関又ハ艤装品ノ製造又ハ修繕ヲ為ス事業ニシテ造船事業法第一条ノ造船事業及前条ノ事業ニ属セザル営業ニ付之ヲ準用ス
第三十条 前二条ニ於テ準用スル造船事業法第十七条又ハ第三十四条ノ規定ニ依リ造船事業法第一条ノ造船事業ニ属セザル船舶、船舶用機関又ハ艤装品ノ製造又ハ修繕ヲ為ス事業ヲ営ム者ノ設立スル組合又ハ組合連合会ノ登記ハ造船組合登記簿又ハ造船組合連合会登記簿ニ之ヲ為ス
第三十一条 造船事業法第九条、第十条、第十四条乃至第十六条、第二十条、第二十二条、第二十三条、第二十八条乃至第三十三条、第三十五条、第四十一条及第五十一条中政府トアルハ第二十九条ノ事業ニ付テハ逓信大臣及商工大臣トシ同法第十二条及第十三条(第二十八条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)中政府トアルハ漁船、漁船用機関若ハ艤装品又ハ其ノ部分品若ハ附属品ニ付テハ逓信大臣及農林大臣トス
第五条、第九条及第二十四条中逓信大臣トアルハ第二十九条ノ事業ニ付テハ逓信大臣及商工大臣トス
第三十二条 左ノ場合ニ於テハ造船組合又ハ造船組合連合会ノ理事又ハ監事ヲ五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本令ニ定ムル登記ヲ為スコトヲ怠リタルトキ
二 本令ニ依リ備置クベキ書類ヲ備置カザルトキ若ハ其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セザルトキ又ハ正当ノ理由ナクシテ其ノ閲覧ヲ拒ミタルトキ
三 主務官庁ノ為ス検査ヲ拒ミタルトキ
四 本令ニ違反シ組合員ノ持分ヲ払戻シタルトキ
五 本令ニ違反シ組合又ハ連合会ガ組合員ノ持分ヲ取得シ又ハ質権ノ目的トシテ之ヲ受ケタルトキ
六 本令ニ違反シ出資一口ノ金額若ハ保証金額ヲ減少シ、第二十七条ニ於テ準用スル産業組合法第五十八条ノ責任期間ノ短縮ヲ為シ又ハ組合若ハ連合会ノ合併若ハ組織変更ヲ為シタルトキ
七 本令ニ違反シ剰余金ヲ処分シタルトキ
第三十三条 左ノ場合ニ於テハ造船組合又ハ造船組合連合会ノ清算人ヲ五百円以下ノ過料ニ処ス
一 官庁又ハ総会ニ対シ不実ノ申述ヲ為シ又ハ事実ヲ隠蔽シタルトキ
二 裁判所又ハ其ノ選任シタル者ノ為ス検査ヲ拒ミタルトキ
三 本令ニ違反シ破産宣告ノ請求ヲ為スコトヲ怠リタルトキ
四 本令ニ違反シ弁済ヲ為シ又ハ組合財産ノ分配ヲ為シタルトキ
五 本令ニ定ムル公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公告ヲ為シタルトキ
六 前条第一号及第四号乃至第六号ノ一ニ該当スルトキ
附 則
本令ハ造船事業法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス