外貨債特別税法
法令番号: 法律第五號
公布年月日: 昭和12年3月30日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル外貨債特別稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十日
內閣總理大臣 林銑十郞
大藏大臣 結城豊太郞
法律第五號
外貨債特別稅法
第一條 本法施行地ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ニシテ外貨債ヲ所有スル者ニハ本法ニ依リ外貨債特別稅ヲ課ス
本法ニ於テ外貨債ト稱スルハ外國通貨ヲ以テ表示スル國債及地方債竝ニ日本法人ノ發行シタル社債ヲ謂フ
第二條 外貨債特別稅ハ外貨債利子ニ付之ヲ賦課ス
所得稅法第三條ノ二第一項(但書ヲ除ク)及第二項ノ規定ハ信託財產タル外貨債ノ利子ニ付之ヲ準用ス
第三條 外貨債利子ハ一月一日ヨリ六月三十日迄及七月一日ヨリ十二月三十一日迄ノ各期間中ニ於テ收入シタル外貨債ノ利子金額ニ依ル被相續人ノ收入シタル外貨債ノ利子金額ハ之ヲ相續人ノ收入シタル外貨債ノ利子金額ハ之ヲ相續人ノ收入シタル外貨債ノ利子金額ト看做ス
外貨債ニ付元本ノ所有者ニ非ザル者ガ利子ノ支拂ヲ受クルトキハ元本ノ所有者ガ支拂ヲ受クルモノト看做ス但シ利子ノ生ズル期間中ニ元本ノ所有者ニ異動アリタルトキハ最後ノ所有者ヲ以テ利子ノ支拂ヲ受クル者ト看做ス
第四條 左ニ揭グル利子ニハ外貨債特別稅ヲ課セズ
一 所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ第二種所得稅ヲ課セラレザル者ノ所有ニ屬スル外貨債ノ利子
二 證券ガ本邦(關東州及南洋群島ヲ含ム)內ニ在ラザル外貨債ノ利子
三 利率年五分以下ノ外貨國債ノ利子
四 利率年五分五厘以下ノ外貨國債以外ノ外貨債ノ利子
五 起債者ガ外貨債利子ニ對スル租稅ヲ負擔スベキ旨ノ約款アル外貨債ノ利子但シ其ノ約款ガ昭和十二年一月一日前定メラレタルモノニ限ル
第五條 外貨債特別稅ハ外貨債利子金額中外貨國債ニ在リテハ利率年五分、外貨國債以外ノ外貨債ニ在リテハ利率年五分五厘ニ相當スル金額ヲ超ユル金額ニ十分ノ七ヲ乘ジタル金額ヲ以テ其ノ稅額トス
第六條 外貨債特別稅ニ付納稅義務アル者ハ外貨債利子金額ヲ政府ニ申吿スベシ
第七條 外貨債利子金額ハ前條ノ申吿ニ依リ、申吿ナキトキ又ハ申吿ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
第八條 前條ノ規定ニ依リ外貨債利子金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務者ニ通知スベシ
第九條 外貨債特別稅ハ左ノ納期ニ於テ之ヲ徵收ス
一月一日ヨリ六月三十日迄ニ收入シタル利子ニ對スル分 其ノ年七月三十一日限
七月一日ヨリ十二月三十一日迄ニ收入シタル利子ニ對スル分 翌年一月三十一日限
納稅義務者納稅管理人ノ申吿ヲ爲サズシテ本法施行地外ニ住所若ハ居所ヲ移ストキ又ハ法人解散シ淸算結了セントスルトキハ前項ノ納期ニ拘ラズ直ニ其ノ外貨債特別稅ヲ徵收スルコトヲ得
第十條 收稅官吏ハ調査上必要アルトキハ外貨債ノ利子ノ支拂ヲ受ケ若ハ支拂ヲ爲スト認ムル者又ハ外貨債ノ利札ノ賣却若ハ買入ヲ爲スト認ムル者ニ質問ヲ爲シ又ハ其ノ帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
第十一條 前條ノ規定ニ依ル帳簿物件ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタル帳簿書類ヲ呈示シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ外貨債特別稅ヲ逋脫シタル者ハ其ノ逋脫シタル稅金ノ三倍ニ相當スル罰金又ハ科料ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ自首シタル者又ハ稅務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
第十三條 外貨債特別稅ノ調査ノ事務ニ從事シ又ハ從事シタル者其ノ調査ニ關シ知得タル祕密ヲ正當ノ事由ナクシテ漏洩シタルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十四條 第十二條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セズ
第十五條 所得稅法第十二條、第七十二條第一項及第七十三條ノ規定ハ外貨債特別稅ニ付之ヲ準用ス
第十六條 大正九年法律第十二號第三條ノ規定ハ外貨債特別稅ニ付之ヲ準用ス
朝鮮、臺灣、關東州又ハ樺太ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ外貨債特別稅ヲ課セズ
第十七條 北海道、府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ外貨債特別稅ノ附加稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第十八條 外貨債特別稅ヲ課セラルル外貨債ノ利子ニ付所得稅(第一種所得稅ヲ除ク)又ハ資本利子稅ヲ課スル場合ニ於テハ其ノ利子金額ヨリ外貨債特別稅相當額ヲ控除シタル殘額ヲ以テ其ノ利子金額ト看做ス
附 則
本法ハ支拂期ガ昭和十二年一月一日以後ニ在ル外貨債ノ利子ニ付之ヲ適用ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル外貨債特別税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十日
内閣総理大臣 林銑十郎
大蔵大臣 結城豊太郎
法律第五号
外貨債特別税法
第一条 本法施行地ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ニシテ外貨債ヲ所有スル者ニハ本法ニ依リ外貨債特別税ヲ課ス
本法ニ於テ外貨債ト称スルハ外国通貨ヲ以テ表示スル国債及地方債並ニ日本法人ノ発行シタル社債ヲ謂フ
第二条 外貨債特別税ハ外貨債利子ニ付之ヲ賦課ス
所得税法第三条ノ二第一項(但書ヲ除ク)及第二項ノ規定ハ信託財産タル外貨債ノ利子ニ付之ヲ準用ス
第三条 外貨債利子ハ一月一日ヨリ六月三十日迄及七月一日ヨリ十二月三十一日迄ノ各期間中ニ於テ収入シタル外貨債ノ利子金額ニ依ル被相続人ノ収入シタル外貨債ノ利子金額ハ之ヲ相続人ノ収入シタル外貨債ノ利子金額ハ之ヲ相続人ノ収入シタル外貨債ノ利子金額ト看做ス
外貨債ニ付元本ノ所有者ニ非ザル者ガ利子ノ支払ヲ受クルトキハ元本ノ所有者ガ支払ヲ受クルモノト看做ス但シ利子ノ生ズル期間中ニ元本ノ所有者ニ異動アリタルトキハ最後ノ所有者ヲ以テ利子ノ支払ヲ受クル者ト看做ス
第四条 左ニ掲グル利子ニハ外貨債特別税ヲ課セズ
一 所得税法其ノ他ノ法律ニ依リ第二種所得税ヲ課セラレザル者ノ所有ニ属スル外貨債ノ利子
二 証券ガ本邦(関東州及南洋群島ヲ含ム)内ニ在ラザル外貨債ノ利子
三 利率年五分以下ノ外貨国債ノ利子
四 利率年五分五厘以下ノ外貨国債以外ノ外貨債ノ利子
五 起債者ガ外貨債利子ニ対スル租税ヲ負担スベキ旨ノ約款アル外貨債ノ利子但シ其ノ約款ガ昭和十二年一月一日前定メラレタルモノニ限ル
第五条 外貨債特別税ハ外貨債利子金額中外貨国債ニ在リテハ利率年五分、外貨国債以外ノ外貨債ニ在リテハ利率年五分五厘ニ相当スル金額ヲ超ユル金額ニ十分ノ七ヲ乗ジタル金額ヲ以テ其ノ税額トス
第六条 外貨債特別税ニ付納税義務アル者ハ外貨債利子金額ヲ政府ニ申告スベシ
第七条 外貨債利子金額ハ前条ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
第八条 前条ノ規定ニ依リ外貨債利子金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納税義務者ニ通知スベシ
第九条 外貨債特別税ハ左ノ納期ニ於テ之ヲ徴収ス
一月一日ヨリ六月三十日迄ニ収入シタル利子ニ対スル分 其ノ年七月三十一日限
七月一日ヨリ十二月三十一日迄ニ収入シタル利子ニ対スル分 翌年一月三十一日限
納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為サズシテ本法施行地外ニ住所若ハ居所ヲ移ストキ又ハ法人解散シ清算結了セントスルトキハ前項ノ納期ニ拘ラズ直ニ其ノ外貨債特別税ヲ徴収スルコトヲ得
第十条 収税官吏ハ調査上必要アルトキハ外貨債ノ利子ノ支払ヲ受ケ若ハ支払ヲ為スト認ムル者又ハ外貨債ノ利札ノ売却若ハ買入ヲ為スト認ムル者ニ質問ヲ為シ又ハ其ノ帳簿物件ヲ検査スルコトヲ得
第十一条 前条ノ規定ニ依ル帳簿物件ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ虚偽ノ記載ヲ為シタル帳簿書類ヲ呈示シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第十二条 詐偽其ノ他不正ノ行為ニ依リ外貨債特別税ヲ逋脱シタル者ハ其ノ逋脱シタル税金ノ三倍ニ相当スル罰金又ハ科料ニ処シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス但シ自首シタル者又ハ税務署長ニ申出デタル者ハ其ノ罪ヲ問ハズ
第十三条 外貨債特別税ノ調査ノ事務ニ従事シ又ハ従事シタル者其ノ調査ニ関シ知得タル秘密ヲ正当ノ事由ナクシテ漏洩シタルトキハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第十四条 第十二条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ規定ヲ適用セズ
第十五条 所得税法第十二条、第七十二条第一項及第七十三条ノ規定ハ外貨債特別税ニ付之ヲ準用ス
第十六条 大正九年法律第十二号第三条ノ規定ハ外貨債特別税ニ付之ヲ準用ス
朝鮮、台湾、関東州又ハ樺太ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ外貨債特別税ヲ課セズ
第十七条 北海道、府県、市町村其ノ他ノ公共団体ハ外貨債特別税ノ附加税ヲ課スルコトヲ得ズ
第十八条 外貨債特別税ヲ課セラルル外貨債ノ利子ニ付所得税(第一種所得税ヲ除ク)又ハ資本利子税ヲ課スル場合ニ於テハ其ノ利子金額ヨリ外貨債特別税相当額ヲ控除シタル残額ヲ以テ其ノ利子金額ト看做ス
附 則
本法ハ支払期ガ昭和十二年一月一日以後ニ在ル外貨債ノ利子ニ付之ヲ適用ス