朕巡查懲戒令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年二月二十三日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
內務大臣 男爵 山本達雄
勅令第十五號
巡查懲戒令
第一條 巡查ハ本令ニ依ルニ非ザレバ懲戒ヲ受クルコトナシ
第二條 巡查ノ懲戒ヲ受クベキ場合左ノ如シ
一 職務上ノ義務ニ違背シ又ハ職務ヲ怠リタルトキ
二 職務ノ內外ヲ問ハズ警察官吏タルノ威信ヲ失フベキ所爲アリタルトキ
第三條 懲戒ハ左ノ如シ
一 免職
二 減俸
三 譴責
第四條 減俸ハ一月以上十月以下月俸ノ百分ノ十以下ヲ減ズ
第五條 免職及減俸ハ巡查懲戒委員會ノ議決ニ依リ廳府縣長官之ヲ行フ
譴責ハ廳府縣長官之ヲ行フ
第六條 廳府縣長官ハ懲戒ニ當ルベキ所爲アリト思料スル者ニ付テハ情狀ニ因リ六月以上一年以下ノ期間內其ノ懲戒ヲ猶豫スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ懲戒ヲ猶豫セラレタル者改悛ノ狀ナキトキハ廳府縣長官猶豫ヲ取消シ其ノ懲戒ヲ行フコトヲ得
猶豫ヲ取消サルルコトナクシテ猶豫ノ期間ヲ取消シタルトキハ其ノ懲戒ハ之ヲ行ハズ
第七條 懲戒ニ付セラルベキ事件刑事裁判所ニ繁屬スル間ハ同一事件ニ對シ巡查懲戒委員會ヲ開クコトヲ得ズ
巡查懲戒委員會ノ議決前懲戒ニ付スベキ者ニ對シ同一事件ニ付刑事訴追ノ始マリタルトキハ其ノ事件ノ裁判確定ニ至ル迄巡查懲戒委員會ノ開會ヲ停止ス
第八條 巡查懲戒委員會ハ警視廳、北海道廳及府縣ニ之ヲ置ク廳府縣長官ノ監督ニ屬シ第五條第一項ノ議決ヲ爲ス
第九條 委員會ハ委員長一人及委員五人ヲ以テ之ヲ組織ス
第十條 委員長ハ廳府縣長官ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ左ノ各號ニ揭グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 警務部長タル警視廳書記官又ハ警察部長タル北海道廳部長若ハ府縣書記官
二 警視廳警視、北海道廳警視、地方警視又ハ廳府縣警部 二人
三 前各號ニ揭グル者以外ノ廳府縣高等官 二人
前項第二號及第三號ノ委員ハ廳府縣長官之ヲ命ズ
委員會ニ豫備委員四人ヲ置ク第二項第二號及第三號ニ揭グル者ノ中ヨリ廳府縣長官之ヲ命ズ
第十一條 委員會ハ委員長及委員ヲ併セ四人以上出席スルニ非ザレバ會議ヲ開クコトヲ得ズ
委員會ノ議事ハ多數ニ依リ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ委員長ノ決スル所ニ依ル
委員會免職ヲ議決スル場合ニ於テハ委員長及委員ヲ併セ五人以上出席スルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第十二條 委員長事故アルトキハ第十條第二項第一號ノ委員之ヲ代理ス其ノ委員モ亦事故アルトキハ他ノ上席委員之ヲ代理ス
委員中事故アルトキ又ハ闕員アルトキハ委員長ハ豫備委員ノ中ヨリ代理ヲ命ズ
第十三條 委員會ニ書記ヲ置ク廳府縣判任官ノ中ヨリ廳府縣長官之ヲ命ズ
書記ハ委員長ノ命ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第十四條 廳府縣長官ハ巡查懲戒ニ當ルベキ所爲アリト思料スルトキハ證憑ヲ具シ書面ヲ以テ委員會ノ審查ヲ要求スベシ
前項ノ要求アリタルトキハ委員長ハ速ニ委員會ヲ招集スベシ
第十五條 委員會ハ必要ト認ムル場合ニ於テハ本人ノ辯明ヲ徵スルコトヲ得
第十六條 委員會ニ於テ議決ヲ爲シタルトキハ其ノ理由ヲ具シ廳府縣長官ニ覆申スベシ
第十七條 委員長及委員ハ其ノ親族ニ關スル事件ノ會議ニ參與スルコトヲ得ズ
第十八條 委員會ノ審查手續ハ委員會之ヲ定ム
第十九條 本令ニ定ムルモノノ外巡查ノ懲戒ニ關シ必要ナル規定ハ廳府縣長官之ヲ定ム
第二十條 本令ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手ニ之ヲ準用ス但シ本令中巡查懲戒委員會トアルハ消防手懲戒委員會トシ第十條第二項中警務部長タル警視廳書記官又ハ警察部長タル北海道廳部長若ハ府縣書記官トアルハ消防部長タル警視廳書記官又ハ警察部長タル府縣書記官トシ警視廳警視、北海道廳警視、地方警視又ハ廳府縣警部トアルハ警視廳警視、警視廳消防司令、地方警視、廳府縣警部又ハ廳府縣消防士トス
附 則
本令ハ昭和八年三月一日ヨリ之ヲ施行ス
巡查懲罰例ハ之ヲ廢止ス但シ明治二十四年勅令第二百三十九號ノ適用ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
本令ハ本令施行前ノ所爲ニシテ巡查又ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手ノ懲罰ニ關スル從前ノ規定ニ依リ未ダ懲罰ヲ受ケザルモノニモ之ヲ適用ス
朕巡査懲戒令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年二月二十三日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
内務大臣 男爵 山本達雄
勅令第十五号
巡査懲戒令
第一条 巡査ハ本令ニ依ルニ非ザレバ懲戒ヲ受クルコトナシ
第二条 巡査ノ懲戒ヲ受クベキ場合左ノ如シ
一 職務上ノ義務ニ違背シ又ハ職務ヲ怠リタルトキ
二 職務ノ内外ヲ問ハズ警察官吏タルノ威信ヲ失フベキ所為アリタルトキ
第三条 懲戒ハ左ノ如シ
一 免職
二 減俸
三 譴責
第四条 減俸ハ一月以上十月以下月俸ノ百分ノ十以下ヲ減ズ
第五条 免職及減俸ハ巡査懲戒委員会ノ議決ニ依リ庁府県長官之ヲ行フ
譴責ハ庁府県長官之ヲ行フ
第六条 庁府県長官ハ懲戒ニ当ルベキ所為アリト思料スル者ニ付テハ情状ニ因リ六月以上一年以下ノ期間内其ノ懲戒ヲ猶予スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ懲戒ヲ猶予セラレタル者改悛ノ状ナキトキハ庁府県長官猶予ヲ取消シ其ノ懲戒ヲ行フコトヲ得
猶予ヲ取消サルルコトナクシテ猶予ノ期間ヲ取消シタルトキハ其ノ懲戒ハ之ヲ行ハズ
第七条 懲戒ニ付セラルベキ事件刑事裁判所ニ繁属スル間ハ同一事件ニ対シ巡査懲戒委員会ヲ開クコトヲ得ズ
巡査懲戒委員会ノ議決前懲戒ニ付スベキ者ニ対シ同一事件ニ付刑事訴追ノ始マリタルトキハ其ノ事件ノ裁判確定ニ至ル迄巡査懲戒委員会ノ開会ヲ停止ス
第八条 巡査懲戒委員会ハ警視庁、北海道庁及府県ニ之ヲ置ク庁府県長官ノ監督ニ属シ第五条第一項ノ議決ヲ為ス
第九条 委員会ハ委員長一人及委員五人ヲ以テ之ヲ組織ス
第十条 委員長ハ庁府県長官ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ左ノ各号ニ掲グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 警務部長タル警視庁書記官又ハ警察部長タル北海道庁部長若ハ府県書記官
二 警視庁警視、北海道庁警視、地方警視又ハ庁府県警部 二人
三 前各号ニ掲グル者以外ノ庁府県高等官 二人
前項第二号及第三号ノ委員ハ庁府県長官之ヲ命ズ
委員会ニ予備委員四人ヲ置ク第二項第二号及第三号ニ掲グル者ノ中ヨリ庁府県長官之ヲ命ズ
第十一条 委員会ハ委員長及委員ヲ併セ四人以上出席スルニ非ザレバ会議ヲ開クコトヲ得ズ
委員会ノ議事ハ多数ニ依リ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ委員長ノ決スル所ニ依ル
委員会免職ヲ議決スル場合ニ於テハ委員長及委員ヲ併セ五人以上出席スルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
第十二条 委員長事故アルトキハ第十条第二項第一号ノ委員之ヲ代理ス其ノ委員モ亦事故アルトキハ他ノ上席委員之ヲ代理ス
委員中事故アルトキ又ハ闕員アルトキハ委員長ハ予備委員ノ中ヨリ代理ヲ命ズ
第十三条 委員会ニ書記ヲ置ク庁府県判任官ノ中ヨリ庁府県長官之ヲ命ズ
書記ハ委員長ノ命ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第十四条 庁府県長官ハ巡査懲戒ニ当ルベキ所為アリト思料スルトキハ証憑ヲ具シ書面ヲ以テ委員会ノ審査ヲ要求スベシ
前項ノ要求アリタルトキハ委員長ハ速ニ委員会ヲ招集スベシ
第十五条 委員会ハ必要ト認ムル場合ニ於テハ本人ノ弁明ヲ徴スルコトヲ得
第十六条 委員会ニ於テ議決ヲ為シタルトキハ其ノ理由ヲ具シ庁府県長官ニ覆申スベシ
第十七条 委員長及委員ハ其ノ親族ニ関スル事件ノ会議ニ参与スルコトヲ得ズ
第十八条 委員会ノ審査手続ハ委員会之ヲ定ム
第十九条 本令ニ定ムルモノノ外巡査ノ懲戒ニ関シ必要ナル規定ハ庁府県長官之ヲ定ム
第二十条 本令ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手ニ之ヲ準用ス但シ本令中巡査懲戒委員会トアルハ消防手懲戒委員会トシ第十条第二項中警務部長タル警視庁書記官又ハ警察部長タル北海道庁部長若ハ府県書記官トアルハ消防部長タル警視庁書記官又ハ警察部長タル府県書記官トシ警視庁警視、北海道庁警視、地方警視又ハ庁府県警部トアルハ警視庁警視、警視庁消防司令、地方警視、庁府県警部又ハ庁府県消防士トス
附 則
本令ハ昭和八年三月一日ヨリ之ヲ施行ス
巡査懲罰例ハ之ヲ廃止ス但シ明治二十四年勅令第二百三十九号ノ適用ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
本令ハ本令施行前ノ所為ニシテ巡査又ハ判任官ノ待遇ヲ受クル消防手ノ懲罰ニ関スル従前ノ規定ニ依リ未ダ懲罰ヲ受ケザルモノニモ之ヲ適用ス