小作調停法
法令番号: 法律第十八號
公布年月日: 大正13年7月22日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル小作調停法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十三年七月二十二日
內閣總理大臣 子爵 加藤高明
農商務大臣 高橋是淸
司法大臣 橫田千之助
法律第十八號
小作調停法
第一條 小作料其ノ他小作關係ニ付爭議ヲ生シタルトキハ當事者ハ爭議ノ目的タル土地ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
當事者ハ合意ヲ以テ爭議ノ目的タル土地ノ所在地ヲ管轄スル區裁判所ニ調停ノ申立ヲ爲スコトヲ得
第二條 當事者不當ノ目的ヲ以テ濫ニ調停ノ申立ヲ爲シタリト認ムルトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第三條 調停ノ申立ハ爭議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市町村長又ハ郡長ヲ經テ之ヲ爲スコトヲ得
第四條 前條ノ規定ニ依ル調停ノ申立アリタルトキハ市町村長又ハ郡長ハ遲滯ナク申立ニ關スル書類ヲ裁判所ニ送付シ且町村長ニ在リテハ郡長ニ、郡長ニ在リテハ町村長ニ申立アリタル旨ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
爭議ノ目的タル土地カ數郡市町村ニ亙ル場合ニ於テハ調停ノ申立ヲ受ケタル市町村長又ハ郡長ハ遲滯ナク關係市町村長及郡長ニ前項ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
第五條 裁判所直接ニ調停ノ申立ヲ受ケタルトキハ遲滯ナク之ヲ爭議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市町村長及郡長ニ通知スルコトヲ要ス但シ第八條第一項ノ規定ニ依リ事件ヲ移送スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第六條 調停ノ申立ハ爭議ノ實情ヲ明ニシテ之ヲ爲スヘシ
第七條 調停ノ申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
口頭ヲ以テ申立ヲ爲ス場合ニ於テハ市町村長、郡長又ハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第八條 爭議ノ目的タル土地カ數箇ノ裁判所ノ管轄區域內ニ存スル場合ニ於テ調停ノ申立ヲ受ケタル地方裁判所又ハ區裁判所相當ト認ムルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ他ノ管轄地方裁判所又ハ管轄區裁判所ニ移送スルコトヲ得管轄權ナキ裁判所カ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同シ
前項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第一項ノ場合ニ於テ事件ノ移送ヲ受ケタル裁判所ハ遲滯ナク爭議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市町村長及郡長ニ其ノ旨ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
第九條 調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ付訴訟カ繫屬スルトキハ調停ノ終了ニ至ル迄訴訟手續ヲ中止ス
第十條 裁判所調停ノ申立ヲ受理シタルトキハ調停委員會ヲ開クコトヲ要ス但シ爭議ノ實情ニ鑑ミ之ヲ開カスシテ調停ヲ爲スコトヲ得
當事者ノ申立アルトキハ前項但書ノ規定ニ拘ラス裁判所ハ調停委員會ヲ開クコトヲ要ス
第十一條 裁判所事情ニ依リ適當ナル者アリト認ムルトキハ前條ノ規定ニ拘ラス之ヲシテ勸解ヲ爲サシムルコトヲ得
第十二條 當事者多數ナル場合ニ於テハ其ノ全部又ハ一部ヲ代表シテ調停ニ關スル一切ノ行爲ヲ爲サシムル爲總代ヲ選任スルコトヲ得
裁判所前項ノ規定ニ依ル總代ナキ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ總代ノ選任ヲ命スルコトヲ得
總代ハ當事者中ヨリ之ヲ選任スルコトヲ要ス
第十三條 總代ノ選任ハ書面ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ要ス總代ノ解任ハ之ヲ裁判所ニ屆出ツルニ非サレハ其ノ效ナシ
第十四條 裁判所ハ期日ヲ定メ當事者又ハ總代ヲ呼出スコトヲ要ス
前項ノ呼出ヲ受ケタル當事者又ハ總代ハ正當ノ事由ナクシテ出頭ヲ拒ムコトヲ得ス
第十五條 調停ノ結果ニ付利害關係ヲ有スル者ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ調停ニ參加スルコトヲ得
裁判所ハ調停ノ結果ニ付利害關係ヲ有スル者ノ參加ヲ求ムルコトヲ得
第十六條 當事者、總代及利害關係人ハ自身出頭スルコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テハ裁判所ノ許可ヲ受ケ代理人ヲシテ出頭セシメ又ハ輔佐人ヲ同伴スルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第十七條 爭議ノ目的タル土地ノ所在地又ハ當事者ノ住所地ノ市町村長又ハ郡長ハ裁判所ニ對シ事件ノ經過ニ付陳述ヲ爲スコトヲ得
第十八條 裁判所必要アリト認ムルトキハ小作官、前條ノ市町村長又ハ郡長其ノ他適當ト認ムル者ニ對シ意見ヲ求ムルコトヲ得
第十九條 小作官ハ期日ニ出席シテ又ハ期日外ニ於テ裁判所ニ對シ意見ヲ述フルコトヲ得
第二十條 裁判所必要アリト認ムルトキハ事實ノ調査ヲ小作官ニ囑託スルコトヲ得
第二十一條 裁判所ニ於ケル調停手續ハ之ヲ公開セス但シ裁判所ハ相當ト認ムル者ノ傍聽ヲ許スコトヲ得
第二十二條 裁判所ハ費用ヲ要スル行爲ニ付當事者ノ一方又ハ雙方ヲシテ其ノ費用ヲ豫納セシムルコトヲ得
第二十三條 裁判所ニ對スル申立其ノ他ノ申述ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ爲ス場合ニ於テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第二十四條 裁判所ノ調停ニ付テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第二十五條 裁判所ハ調停前調停ノ爲必要ト認ムル措置ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 裁判所ノ調停條項中ニ費用ノ負擔ニ關スル定ヲ爲ササルトキハ各當事者ハ其ノ支出シタル費用ヲ自ラ負擔ス
第二十七條 調停ハ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス
第二十八條 調停委員會ハ調停主任一人及調停委員二人以上ヲ以テ之ヲ組織ス
第二十九條 調停主任ハ判事ノ中ヨリ每年豫メ地方裁判所長之ヲ指定ス
調停委員ハ調停ニ適當ナル者ニ就キ地方裁判所長ノ選任シタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス但シ當事者カ合意ヲ以テ選定シタル者アルトキ又ハ地方裁判所長ノ選任シタル者ニ就キ當事者雙方カ各別ニ選定シタル者アルトキハ其ノ者ノ中ヨリ先ツ之ヲ指定スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ指定セラレタル者ハ正當ノ事由ナクシテ之ヲ辭スルコトヲ得ス
第三十條 調停主任ハ爭議ノ實情ニ鑑ミ適當ト認ムル場所ニ於テ調停委員會ヲ開クコトヲ要ス
第三十一條 調停委員會ニ於ケル調停手續ハ調停主任之ヲ指揮ス
第三十二條 調停委員會ノ決議ハ調停委員ノ過半數ノ意見ニ依ル可否同數ナルトキハ調停主任ノ決スル所ニ依ル
第三十三條 調停委員會ノ評議ハ之ヲ祕密トス
第三十四條 第十一條乃至第二十六條ノ規定ハ調停委員會ノ調停手續ニ之ヲ準用ス
第三十五條 調停委員會ハ當事者、總代又ハ利害關係人ノ陳述ヲ聽キ且必要ト認ムルトキハ證據調ヲ爲スコトヲ得
調停委員會ハ調停主任ヲシテ證據調ヲ爲サシメ又ハ之ヲ區裁判所ニ囑託スルコトヲ得
證據調ニ付テハ民事訴訟法ヲ準用ス
證人及鑑定人ノ受クヘキ旅費、日當及止宿料ニ付テハ民事訴訟費用法ヲ準用ス
第三十六條 期日ニ於テ調停成ラサルトキハ調停委員會ハ適當ト認ムル調停條項ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ調停條項ヲ定メタル場合ニ於テハ調停委員會ハ其ノ調書ノ正本ヲ當事者、總代アルトキハ總代ニ送付シ且當事者又ハ總代カ其ノ送付ヲ受ケタル後一月內ニ異議ヲ述ヘサルトキハ調停ニ同意シタルモノト看做ス旨ノ通知ヲ爲スコトヲ要ス
當事者又ハ總代カ前項ノ正本ノ送付ヲ受ケタル後一月內ニ調停委員會ニ異議ヲ述ヘサルトキハ調停ニ同意シタルモノト看做ス
調停委員會ハ申立ニ因リ前項ノ期間ヲ伸長スルコトヲ得期間ノ伸長ハ之ヲ相手方、總代アルトキハ總代ニ通知スルコトヲ要ス
當事者又ハ總代カ調停條項ニ對シ異議ヲ述ヘタルトキハ調停委員會ハ其ノ旨ヲ相手方、總代アルトキハ總代ニ通知スルコトヲ要ス
第三十七條 調停委員會第二條ニ規定スル事由アリト認ムルトキハ調停ヲ爲ササルコトヲ得
第三十八條 調停成リタルトキ又ハ第三十六條第三項ノ規定ニ依リ調停ニ同意シタルモノト看做サレタルトキハ裁判所ハ調停主任ノ報告ヲ聽キ調停ノ認否ニ付決定ヲ爲スコトヲ要ス
調停認可ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
調停不認可ノ決定ニ對シテハ當事者又ハ總代ハ民事訴訟法ニ從ヒ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第三十九條 裁判所ハ調停カ著シク公正ナラスト認ムル場合ニ非サレハ調停不認可ノ決定ヲ爲スコトヲ得ス
第四十條 調停委員會ヲ開キタル場合ニ於テハ調停ハ認可決定アリタルトキニ限リ裁判上ノ和解ト同一ノ效力ヲ有ス
第四十一條 裁判所調停認可ノ決定ヲ總代ニ告知シタル場合ニ於テハ調停條項ヲ爭議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市役所又ハ町村役場ノ揭示場ニ揭示スルコトヲ要ス
第四十二條 調停委員會必要アリト認ムルトキハ調停ノ經過ヲ公表スルコトヲ得
第四十三條 調停事件終了シタルトキハ裁判所ハ其ノ結果ヲ爭議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市町村長及郡長ニ通知スルコトヲ要ス
第四十四條 當事者又ハ利害關係人ハ手數料ヲ納付シテ記錄ノ閱覽若ハ謄寫又ハ其ノ正本、謄本、抄本若ハ事件ニ關スル證明書ノ付與ヲ裁判所書記ニ求ムルコトヲ得但シ當事者カ事件ノ繫屬中記錄ノ閱覽又ハ謄寫ヲ爲ス場合ニ於テハ手數料ヲ納付スルコトヲ要セス
第四十五條 調停委員及第十一條又ハ第三十四條ノ規定ニ依リ勸解ヲ爲シタル者ニハ旅費、日當及止宿料ヲ給ス
第四十六條 第四十四條ノ手數料竝前條ノ旅費、日當及止宿料ノ額ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十七條 本法中郡トアルハ北海道ニ於テハ北海道廳支廳管轄區域、郡長トアルハ北海道ニ於テハ北海道廳支廳長、島司ヲ置キタル島嶼ニ於テハ島司トス
本法中町村、町村長又ハ町村役場トアルハ町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ町村、町村長又ハ町村役場ニ準スルモノトス
第四十八條 第三十四條ノ規定ニ依ル呼出ヲ受ケタル者正當ノ事由ナクシテ出頭セサルトキハ調停事件ノ繫屬スル裁判所ハ調停委員會ノ意見ヲ聽キ五拾圓以下ノ過料ニ處スルコトヲ得
非訟事件手續法第二百七條及第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第四十九條 調停委員又ハ調停委員タリシ者故ナク評議ノ顚末又ハ調停主任、調停委員ノ意見若ハ其ノ多少ノ數ヲ漏泄シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ勅令ヲ以テ指定スル地區ニ之ヲ施行セス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル小作調停法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十三年七月二十二日
内閣総理大臣 子爵 加藤高明
農商務大臣 高橋是清
司法大臣 横田千之助
法律第十八号
小作調停法
第一条 小作料其ノ他小作関係ニ付争議ヲ生シタルトキハ当事者ハ争議ノ目的タル土地ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ニ調停ノ申立ヲ為スコトヲ得
当事者ハ合意ヲ以テ争議ノ目的タル土地ノ所在地ヲ管轄スル区裁判所ニ調停ノ申立ヲ為スコトヲ得
第二条 当事者不当ノ目的ヲ以テ濫ニ調停ノ申立ヲ為シタリト認ムルトキハ裁判所ハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第三条 調停ノ申立ハ争議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市町村長又ハ郡長ヲ経テ之ヲ為スコトヲ得
第四条 前条ノ規定ニ依ル調停ノ申立アリタルトキハ市町村長又ハ郡長ハ遅滞ナク申立ニ関スル書類ヲ裁判所ニ送付シ且町村長ニ在リテハ郡長ニ、郡長ニ在リテハ町村長ニ申立アリタル旨ノ通知ヲ為スコトヲ要ス
争議ノ目的タル土地カ数郡市町村ニ亘ル場合ニ於テハ調停ノ申立ヲ受ケタル市町村長又ハ郡長ハ遅滞ナク関係市町村長及郡長ニ前項ノ通知ヲ為スコトヲ要ス
第五条 裁判所直接ニ調停ノ申立ヲ受ケタルトキハ遅滞ナク之ヲ争議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市町村長及郡長ニ通知スルコトヲ要ス但シ第八条第一項ノ規定ニ依リ事件ヲ移送スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第六条 調停ノ申立ハ争議ノ実情ヲ明ニシテ之ヲ為スヘシ
第七条 調停ノ申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
口頭ヲ以テ申立ヲ為ス場合ニ於テハ市町村長、郡長又ハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第八条 争議ノ目的タル土地カ数箇ノ裁判所ノ管轄区域内ニ存スル場合ニ於テ調停ノ申立ヲ受ケタル地方裁判所又ハ区裁判所相当ト認ムルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ他ノ管轄地方裁判所又ハ管轄区裁判所ニ移送スルコトヲ得管轄権ナキ裁判所カ調停ノ申立ヲ受ケタルトキ亦同シ
前項ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
第一項ノ場合ニ於テ事件ノ移送ヲ受ケタル裁判所ハ遅滞ナク争議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市町村長及郡長ニ其ノ旨ノ通知ヲ為スコトヲ要ス
第九条 調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ付訴訟カ繋属スルトキハ調停ノ終了ニ至ル迄訴訟手続ヲ中止ス
第十条 裁判所調停ノ申立ヲ受理シタルトキハ調停委員会ヲ開クコトヲ要ス但シ争議ノ実情ニ鑑ミ之ヲ開カスシテ調停ヲ為スコトヲ得
当事者ノ申立アルトキハ前項但書ノ規定ニ拘ラス裁判所ハ調停委員会ヲ開クコトヲ要ス
第十一条 裁判所事情ニ依リ適当ナル者アリト認ムルトキハ前条ノ規定ニ拘ラス之ヲシテ勧解ヲ為サシムルコトヲ得
第十二条 当事者多数ナル場合ニ於テハ其ノ全部又ハ一部ヲ代表シテ調停ニ関スル一切ノ行為ヲ為サシムル為総代ヲ選任スルコトヲ得
裁判所前項ノ規定ニ依ル総代ナキ場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ総代ノ選任ヲ命スルコトヲ得
総代ハ当事者中ヨリ之ヲ選任スルコトヲ要ス
第十三条 総代ノ選任ハ書面ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ要ス総代ノ解任ハ之ヲ裁判所ニ届出ツルニ非サレハ其ノ効ナシ
第十四条 裁判所ハ期日ヲ定メ当事者又ハ総代ヲ呼出スコトヲ要ス
前項ノ呼出ヲ受ケタル当事者又ハ総代ハ正当ノ事由ナクシテ出頭ヲ拒ムコトヲ得ス
第十五条 調停ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル者ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ調停ニ参加スルコトヲ得
裁判所ハ調停ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル者ノ参加ヲ求ムルコトヲ得
第十六条 当事者、総代及利害関係人ハ自身出頭スルコトヲ要ス但シ特別ノ事情アル場合ニ於テハ裁判所ノ許可ヲ受ケ代理人ヲシテ出頭セシメ又ハ輔佐人ヲ同伴スルコトヲ得
裁判所ハ何時ニテモ前項ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第十七条 争議ノ目的タル土地ノ所在地又ハ当事者ノ住所地ノ市町村長又ハ郡長ハ裁判所ニ対シ事件ノ経過ニ付陳述ヲ為スコトヲ得
第十八条 裁判所必要アリト認ムルトキハ小作官、前条ノ市町村長又ハ郡長其ノ他適当ト認ムル者ニ対シ意見ヲ求ムルコトヲ得
第十九条 小作官ハ期日ニ出席シテ又ハ期日外ニ於テ裁判所ニ対シ意見ヲ述フルコトヲ得
第二十条 裁判所必要アリト認ムルトキハ事実ノ調査ヲ小作官ニ嘱託スルコトヲ得
第二十一条 裁判所ニ於ケル調停手続ハ之ヲ公開セス但シ裁判所ハ相当ト認ムル者ノ傍聴ヲ許スコトヲ得
第二十二条 裁判所ハ費用ヲ要スル行為ニ付当事者ノ一方又ハ双方ヲシテ其ノ費用ヲ予納セシムルコトヲ得
第二十三条 裁判所ニ対スル申立其ノ他ノ申述ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
口頭ヲ以テ申述ヲ為ス場合ニ於テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第二十四条 裁判所ノ調停ニ付テハ裁判所書記其ノ調書ヲ作ルコトヲ要ス
第二十五条 裁判所ハ調停前調停ノ為必要ト認ムル措置ヲ為スコトヲ得
第二十六条 裁判所ノ調停条項中ニ費用ノ負担ニ関スル定ヲ為ササルトキハ各当事者ハ其ノ支出シタル費用ヲ自ラ負担ス
第二十七条 調停ハ裁判上ノ和解ト同一ノ効力ヲ有ス
第二十八条 調停委員会ハ調停主任一人及調停委員二人以上ヲ以テ之ヲ組織ス
第二十九条 調停主任ハ判事ノ中ヨリ毎年予メ地方裁判所長之ヲ指定ス
調停委員ハ調停ニ適当ナル者ニ就キ地方裁判所長ノ選任シタル者ノ中ヨリ各事件ニ付調停主任之ヲ指定ス但シ当事者カ合意ヲ以テ選定シタル者アルトキ又ハ地方裁判所長ノ選任シタル者ニ就キ当事者双方カ各別ニ選定シタル者アルトキハ其ノ者ノ中ヨリ先ツ之ヲ指定スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ指定セラレタル者ハ正当ノ事由ナクシテ之ヲ辞スルコトヲ得ス
第三十条 調停主任ハ争議ノ実情ニ鑑ミ適当ト認ムル場所ニ於テ調停委員会ヲ開クコトヲ要ス
第三十一条 調停委員会ニ於ケル調停手続ハ調停主任之ヲ指揮ス
第三十二条 調停委員会ノ決議ハ調停委員ノ過半数ノ意見ニ依ル可否同数ナルトキハ調停主任ノ決スル所ニ依ル
第三十三条 調停委員会ノ評議ハ之ヲ秘密トス
第三十四条 第十一条乃至第二十六条ノ規定ハ調停委員会ノ調停手続ニ之ヲ準用ス
第三十五条 調停委員会ハ当事者、総代又ハ利害関係人ノ陳述ヲ聴キ且必要ト認ムルトキハ証拠調ヲ為スコトヲ得
調停委員会ハ調停主任ヲシテ証拠調ヲ為サシメ又ハ之ヲ区裁判所ニ嘱託スルコトヲ得
証拠調ニ付テハ民事訴訟法ヲ準用ス
証人及鑑定人ノ受クヘキ旅費、日当及止宿料ニ付テハ民事訴訟費用法ヲ準用ス
第三十六条 期日ニ於テ調停成ラサルトキハ調停委員会ハ適当ト認ムル調停条項ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ調停条項ヲ定メタル場合ニ於テハ調停委員会ハ其ノ調書ノ正本ヲ当事者、総代アルトキハ総代ニ送付シ且当事者又ハ総代カ其ノ送付ヲ受ケタル後一月内ニ異議ヲ述ヘサルトキハ調停ニ同意シタルモノト看做ス旨ノ通知ヲ為スコトヲ要ス
当事者又ハ総代カ前項ノ正本ノ送付ヲ受ケタル後一月内ニ調停委員会ニ異議ヲ述ヘサルトキハ調停ニ同意シタルモノト看做ス
調停委員会ハ申立ニ因リ前項ノ期間ヲ伸長スルコトヲ得期間ノ伸長ハ之ヲ相手方、総代アルトキハ総代ニ通知スルコトヲ要ス
当事者又ハ総代カ調停条項ニ対シ異議ヲ述ヘタルトキハ調停委員会ハ其ノ旨ヲ相手方、総代アルトキハ総代ニ通知スルコトヲ要ス
第三十七条 調停委員会第二条ニ規定スル事由アリト認ムルトキハ調停ヲ為ササルコトヲ得
第三十八条 調停成リタルトキ又ハ第三十六条第三項ノ規定ニ依リ調停ニ同意シタルモノト看做サレタルトキハ裁判所ハ調停主任ノ報告ヲ聴キ調停ノ認否ニ付決定ヲ為スコトヲ要ス
調停認可ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
調停不認可ノ決定ニ対シテハ当事者又ハ総代ハ民事訴訟法ニ従ヒ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第三十九条 裁判所ハ調停カ著シク公正ナラスト認ムル場合ニ非サレハ調停不認可ノ決定ヲ為スコトヲ得ス
第四十条 調停委員会ヲ開キタル場合ニ於テハ調停ハ認可決定アリタルトキニ限リ裁判上ノ和解ト同一ノ効力ヲ有ス
第四十一条 裁判所調停認可ノ決定ヲ総代ニ告知シタル場合ニ於テハ調停条項ヲ争議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市役所又ハ町村役場ノ掲示場ニ掲示スルコトヲ要ス
第四十二条 調停委員会必要アリト認ムルトキハ調停ノ経過ヲ公表スルコトヲ得
第四十三条 調停事件終了シタルトキハ裁判所ハ其ノ結果ヲ争議ノ目的タル土地ノ所在地ノ市町村長及郡長ニ通知スルコトヲ要ス
第四十四条 当事者又ハ利害関係人ハ手数料ヲ納付シテ記録ノ閲覧若ハ謄写又ハ其ノ正本、謄本、抄本若ハ事件ニ関スル証明書ノ付与ヲ裁判所書記ニ求ムルコトヲ得但シ当事者カ事件ノ繋属中記録ノ閲覧又ハ謄写ヲ為ス場合ニ於テハ手数料ヲ納付スルコトヲ要セス
第四十五条 調停委員及第十一条又ハ第三十四条ノ規定ニ依リ勧解ヲ為シタル者ニハ旅費、日当及止宿料ヲ給ス
第四十六条 第四十四条ノ手数料並前条ノ旅費、日当及止宿料ノ額ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十七条 本法中郡トアルハ北海道ニ於テハ北海道庁支庁管轄区域、郡長トアルハ北海道ニ於テハ北海道庁支庁長、島司ヲ置キタル島嶼ニ於テハ島司トス
本法中町村、町村長又ハ町村役場トアルハ町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ町村、町村長又ハ町村役場ニ準スルモノトス
第四十八条 第三十四条ノ規定ニ依ル呼出ヲ受ケタル者正当ノ事由ナクシテ出頭セサルトキハ調停事件ノ繋属スル裁判所ハ調停委員会ノ意見ヲ聴キ五拾円以下ノ過料ニ処スルコトヲ得
非訟事件手続法第二百七条及第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ付之ヲ準用ス
第四十九条 調停委員又ハ調停委員タリシ者故ナク評議ノ顛末又ハ調停主任、調停委員ノ意見若ハ其ノ多少ノ数ヲ漏泄シタルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ勅令ヲ以テ指定スル地区ニ之ヲ施行セス