大学令
法令番号: 勅令第三百八十八號
公布年月日: 大正7年12月6日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ大學令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正七年十二月五日
內閣總理大臣 原敬
文部大臣 中橋德五郞
勅令第三百八十八號
大學令
第一條 大學ハ國家ニ須要ナル學術ノ理論及應用ヲ敎授シ竝其ノ蘊奧ヲ攻究スルヲ以テ目的トシ兼テ人格ノ陶冶及國家思想ノ涵養ニ留意スヘキモノトス
第二條 大學ニハ數個ノ學部ヲ置クヲ常例トス但シ特別ノ必要アル場合ニ於テハ單ニ一個ノ學部ヲ置クモノヲ以テ一大學ト爲スコトヲ得
學部ハ法學、醫學、工學、文學、理學、農學、經濟學及商學ノ各部トス
特別ノ必要アル場合ニ於テ實質及規模一學部ヲ構成スルニ適スルトキハ前項ノ學部ヲ分合シテ學部ヲ設クルコトヲ得
第三條 學部ニハ硏究科ヲ置クヘシ
數個ノ學部ヲ置キタル大學ニ於テハ硏究科間ノ聯絡協調ヲ期スル爲之ヲ綜合シテ大學院ヲ設クルコトヲ得
第四條 大學ハ帝國大學其ノ他官立ノモノノ外本令ノ規定ニ依リ公立又ハ私立ト爲スコトヲ得
第五條 公立大學ハ特別ノ必要アル場合ニ於テ北海道及府縣ニ限リ之ヲ設立スルコトヲ得
第六條 私立大學ハ財團法人タルコトヲ要ス但シ特別ノ必要ニ因リ學校經營ノミヲ目的トスル財團法人カ其ノ事業トシテ之ヲ設立スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七條 前條ノ財團法人ハ大學ニ必要ナル設備又ハ之ニ要スル資金及少クトモ大學ヲ維持スルニ足ルヘキ收入ヲ生スル基本財產ヲ有スルコトヲ要ス
基本財產中前項ニ該當スルモノハ現金又ハ國債證券其ノ他文部大臣ノ定ムル有價證券トシ之ヲ供託スヘシ
第八條 公立及私立ノ大學ノ設立廢止ハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ學部ノ設置廢止亦同シ
前項ノ認可ハ文部大臣ニ於テ勅裁ヲ請フヘシ
第九條 學部ニ入學スルコトヲ得ル者ハ當該大學豫科ヲ修了シタル者、高等學校高等科ヲ卒リタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ學力アリト認メラレタル者トス
入學ノ順位ニ關スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十條 學部ニ三年以上在學シ一定ノ試驗ヲ受ケ之ニ合格シタル者ハ學士ト稱スルコトヲ得
前項ノ在學年限ハ醫學ヲ修ムル者ニ在リテハ四年以上トス
第十一條 硏究科ニ入ルコトヲ得ル者ハ醫學ヲ修ムル者ニ在リテハ四年以上其ノ他ノ者ニ在リテハ三年以上當該學部ニ在學シ其ノ他相當ノ學力ヲ具ヘタル者ニシテ當該學部ニ於テ適當ト認メタルモノトス
第十二條 大學ニハ特別ノ必要アル場合ニ於テ豫科ヲ置クコトヲ得
大學豫科ニ於テハ高等學校高等科ノ程度ニ依リ高等普通敎育ヲ爲スヘシ
第十三條 大學豫科ノ修業年限ハ三年又ハ二年トス
修業年限三年ノ大學豫科ニ入學スルコトヲ得ル者ハ中學校第四學年ヲ修了シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ學力アリト認メラレタル者トス
修業年限二年ノ大學豫科ニ入學スルコトヲ得ル者ハ中學校ヲ卒業シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ學力アリト認メラレタル者トス
第十四條 大學豫科ノ設備、編制、敎員及敎科書ニ付テハ高等學校高等科ニ關スル規定ヲ準用ス
第十五條 大學豫科ノ生徒定數ハ每年ノ豫科修了者ノ員數カ其ノ年當該大學ニ收容シ得ル員數ヲ超過セサル程度ニ於テ之ヲ定ムヘシ
第十六條 大學及大學豫科ノ學則ハ法令ノ範圍內ニ於テ當該大學之ヲ定メ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十七條 公立及私立ノ大學ニハ相當員數ノ專任敎員ヲ置クヘシ
第十八條 私立大學ノ敎員ノ採用ハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ公立大學ノ敎員ニシテ官吏ノ待遇ヲ受ケサル者ニ付亦同シ
第十九條 公立及私立ノ大學ハ文部大臣ノ監督ニ屬ス
第二十條 文部大臣ハ公立及私立ノ大學ニ對シ報吿ヲ徵シ檢閱ヲ行ヒ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十一條 本令ニ依ラサル學校ハ勅定規程ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外大學ト稱シ又ハ其ノ名稱ニ大學タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
附 則
本令ハ大正八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ大學ト稱シ又ハ其ノ名稱ニ大學タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウル學校ニハ當分ノ內第二十一條ノ規定ヲ適用セス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ大学令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正七年十二月五日
内閣総理大臣 原敬
文部大臣 中橋徳五郎
勅令第三百八十八号
大学令
第一条 大学ハ国家ニ須要ナル学術ノ理論及応用ヲ教授シ並其ノ蘊奥ヲ攻究スルヲ以テ目的トシ兼テ人格ノ陶冶及国家思想ノ涵養ニ留意スヘキモノトス
第二条 大学ニハ数個ノ学部ヲ置クヲ常例トス但シ特別ノ必要アル場合ニ於テハ単ニ一個ノ学部ヲ置クモノヲ以テ一大学ト為スコトヲ得
学部ハ法学、医学、工学、文学、理学、農学、経済学及商学ノ各部トス
特別ノ必要アル場合ニ於テ実質及規模一学部ヲ構成スルニ適スルトキハ前項ノ学部ヲ分合シテ学部ヲ設クルコトヲ得
第三条 学部ニハ研究科ヲ置クヘシ
数個ノ学部ヲ置キタル大学ニ於テハ研究科間ノ連絡協調ヲ期スル為之ヲ綜合シテ大学院ヲ設クルコトヲ得
第四条 大学ハ帝国大学其ノ他官立ノモノノ外本令ノ規定ニ依リ公立又ハ私立ト為スコトヲ得
第五条 公立大学ハ特別ノ必要アル場合ニ於テ北海道及府県ニ限リ之ヲ設立スルコトヲ得
第六条 私立大学ハ財団法人タルコトヲ要ス但シ特別ノ必要ニ因リ学校経営ノミヲ目的トスル財団法人カ其ノ事業トシテ之ヲ設立スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七条 前条ノ財団法人ハ大学ニ必要ナル設備又ハ之ニ要スル資金及少クトモ大学ヲ維持スルニ足ルヘキ収入ヲ生スル基本財産ヲ有スルコトヲ要ス
基本財産中前項ニ該当スルモノハ現金又ハ国債証券其ノ他文部大臣ノ定ムル有価証券トシ之ヲ供託スヘシ
第八条 公立及私立ノ大学ノ設立廃止ハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ学部ノ設置廃止亦同シ
前項ノ認可ハ文部大臣ニ於テ勅裁ヲ請フヘシ
第九条 学部ニ入学スルコトヲ得ル者ハ当該大学予科ヲ修了シタル者、高等学校高等科ヲ卒リタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ学力アリト認メラレタル者トス
入学ノ順位ニ関スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十条 学部ニ三年以上在学シ一定ノ試験ヲ受ケ之ニ合格シタル者ハ学士ト称スルコトヲ得
前項ノ在学年限ハ医学ヲ修ムル者ニ在リテハ四年以上トス
第十一条 研究科ニ入ルコトヲ得ル者ハ医学ヲ修ムル者ニ在リテハ四年以上其ノ他ノ者ニ在リテハ三年以上当該学部ニ在学シ其ノ他相当ノ学力ヲ具ヘタル者ニシテ当該学部ニ於テ適当ト認メタルモノトス
第十二条 大学ニハ特別ノ必要アル場合ニ於テ予科ヲ置クコトヲ得
大学予科ニ於テハ高等学校高等科ノ程度ニ依リ高等普通教育ヲ為スヘシ
第十三条 大学予科ノ修業年限ハ三年又ハ二年トス
修業年限三年ノ大学予科ニ入学スルコトヲ得ル者ハ中学校第四学年ヲ修了シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ学力アリト認メラレタル者トス
修業年限二年ノ大学予科ニ入学スルコトヲ得ル者ハ中学校ヲ卒業シタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ学力アリト認メラレタル者トス
第十四条 大学予科ノ設備、編制、教員及教科書ニ付テハ高等学校高等科ニ関スル規定ヲ準用ス
第十五条 大学予科ノ生徒定数ハ毎年ノ予科修了者ノ員数カ其ノ年当該大学ニ収容シ得ル員数ヲ超過セサル程度ニ於テ之ヲ定ムヘシ
第十六条 大学及大学予科ノ学則ハ法令ノ範囲内ニ於テ当該大学之ヲ定メ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十七条 公立及私立ノ大学ニハ相当員数ノ専任教員ヲ置クヘシ
第十八条 私立大学ノ教員ノ採用ハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ公立大学ノ教員ニシテ官吏ノ待遇ヲ受ケサル者ニ付亦同シ
第十九条 公立及私立ノ大学ハ文部大臣ノ監督ニ属ス
第二十条 文部大臣ハ公立及私立ノ大学ニ対シ報告ヲ徴シ検閲ヲ行ヒ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第二十一条 本令ニ依ラサル学校ハ勅定規程ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外大学ト称シ又ハ其ノ名称ニ大学タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
附 則
本令ハ大正八年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際現ニ大学ト称シ又ハ其ノ名称ニ大学タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウル学校ニハ当分ノ内第二十一条ノ規定ヲ適用セス