畜産組合法
法令番号: 法律第一號
公布年月日: 大正4年1月14日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル畜產組合法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正四年一月十三日
內閣總理大臣 伯爵 大隈重信
陸軍大臣 岡市之助
農商務大臣 河野廣中
法律第一號
畜產組合法
第一條 本法ニ於テ家畜ト稱スルハ牛馬羊豚ヲ謂フ
第二條 牛羊豚ヲ飼養スル者又ハ馬ノ生產ヲ業トスル者ハ本法ニ依リ畜產組合ヲ設置スルコトヲ得
第三條 畜產組合ハ法人トシ畜產上ノ改良發達ヲ圖リ組合員ノ利益ヲ增進スルヲ以テ目的トス
第四條 組合ハ營利事業ヲ爲スコトヲ得ス但シ組合ノ經營上必要アル場合ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受ケ畜產上ノ施設ヲ爲スハ此ノ限ニ在ラス
第五條 組合ハ組合員ニ非サル者ニシテ其ノ區域內ニ於テ家畜ヲ所有シ又ハ保管スル者ノ委託ニ依リ委託者ノ費用ヲ以テ家畜衞生上必要ナル處置ヲ爲スコトヲ得
第六條 組合ヲ設置セムトスルトキハ郡市ノ區域ニ依リ組合員タルヘキ者三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ定款ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ特別ノ事情アルトキハ郡市ノ區域ニ依ラサルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ家畜又ハ組合員タルヘキ者ノ種類二種以上アルトキハ其ノ種類每ニ三分ノ二以上ノ同意ヲ得ヘシ
前項組合員タルヘキ者ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 組合ノ名稱中ニハ畜產組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウヘシ
畜產組合ニ非サルモノハ其ノ名稱中ニ畜產組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
第八條 組合成立シタルトキハ其ノ區域內ニ於テ組合員タル資格ヲ有スル者ハ總テ組合員トス但シ特別ノ事情ニ依リ地方長官ノ認可ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第九條 地方長官必要アリト認ムルトキハ組合ニ對シ種畜ノ供給、種付、家畜ノ系統若ハ能力ノ登錄、家畜衞生ニ關スル施設又ハ家畜市場ノ開設ヲ命スルコトヲ得
第十條 定款ヲ變更セムトスルトキハ總會ニ於テ組合員半數以上出席シ出席者ノ議決權ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決シ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
定款ノ變更カ經費ノ分賦收入ニ關スルトキハ前項ノ出席者及議決權ノ數ハ家畜又ハ組合員ノ種類每ニ之ヲ計算スヘシ
定款ノ變更カ區域ノ擴張又ハ家畜若ハ組合員タルヘキ者ノ種類ノ增加ニ關スルトキハ第一項ノ議決ノ外擴張又ハ增加ニ依リ新ニ組合員タルヘキ者三分ノ二以上ノ同意ヲ得ヘシ此ノ場合ニ於テハ第六條第二項ノ規定ヲ準用ス
第十一條 組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ所有又ハ保管ニ係ル家畜、畜產物又ハ畜產上ノ設備ニ付檢査ヲ爲シ又ハ試驗ノ用ニ供スル爲必要ナル分量ニ限リ無償ニテ物品ヲ收去スルコトヲ得
組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款違反者ニ對シ過怠金ヲ徵收シ、其ノ違反ニ係ル物品ノ沒收其ノ他必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第十二條 組合ノ經費ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員之ヲ負擔ス
第十三條 組合ノ經費又ハ過怠金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ組合長ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テハ組合ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
前項徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村、水利組合其ノ他之ニ準スヘキモノノ徵收金ニ次クモノトス
第十四條 左ニ揭クル事項ハ總會ノ議決ヲ經ヘシ
一 經費ノ收支豫算
二 經費ノ分賦收入方法
三 起債竝其ノ方法、利息ノ定率及償還ノ方法
四 共濟其ノ他ノ基金ノ積立、支出及利用ノ方法
五 事業報吿及收支決算ノ承認
六 訴願、訴訟及和解
七 定款ニ定メタル事項
八 其ノ他組合長ニ於テ重要ナリト認メタル事項
第十五條 前條ノ事項ニ付テハ總會ハ定款ノ定ムル所ニ依リ評議員ヲ以テ組織スル評議員會ニ委任シテ議決セシムルコトヲ得
評議員會ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條 第十四條第一號又ハ第三號ノ事項ニ關シ臨時急施ヲ要シ總會ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ組合長ハ之ヲ專決處分スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ次ノ總會ニ於テ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第十七條 第十四條第一號乃至第四號ノ事項ニ付テハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第十八條 總會ハ總組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
第十九條 總會ハ組合長之ヲ招集ス
組合員其ノ總數ノ五分ノ一以上ノ同意ヲ得會議ノ目的タル事項及招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ總會ノ招集ヲ請求シタルトキハ組合長ハ十四日以內ニ總會ヲ招集スヘシ
組合長正當ノ事由ナクシテ前項ノ期間內ニ總會ヲ招集セサルトキハ請求者ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
第二十條 總會ヲ招集スルニハ少クトモ七日前ニ會議ノ日時、場所及目的タル事項ヲ記載シテ各組合員ニ其ノ通知ヲ發スヘシ
總會ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ豫メ通知シタル事項ニ付テノミ議決ヲ爲スコトヲ得但シ定款ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十一條 組合員ハ總會ニ於テ各一箇ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ依リ一人ニ付議決權總數ノ十分ノ一ヲ超エサル範圍內ニ於テ二箇以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ得
第二十二條 總會ノ議事ハ別ニ規定アルモノヲ除クノ外出席者ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
第二十三條 組合員ハ總會ニ於テ書面又ハ代理人ヲ以テ議決ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ議決權ヲ行フ者ハ之ヲ出席者ト看做ス
第二十四條 組合ハ命令及定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ選擧シタル議員ヲ以テ組織スル總代會ヲ以テ總會ニ代フルコトヲ得但シ組合ノ解散、合併又ハ分割ノ議決ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
總會ニ關スル規定ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外總代會ニ之ヲ準用ス
第二十五條 組合ニ左ノ役員ヲ置ク
組合長 一人
組合副長 一人又ハ數人
評議員 數人
役員ハ組合員中ヨリ之ヲ選擧ス但シ組合長又ハ組合副長ハ特別ノ事情アル場合ニ限リ組合員ニ非サル者ヨリ之ヲ選擧スルコトヲ得
役員ノ任期ハ定款ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
役員ハ任期中ト雖之ヲ解任スルコトヲ得
役員ノ選任又ハ解任ハ總會ニ於テ組合員半數以上出席シ出席者ノ議決權ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決ス但シ定款ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第二十六條 組合長ハ組合ヲ代表シ組合一切ノ事務ヲ管理ス
組合副長ハ組合長ヲ補佐シ組合長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理ス組合副長數人アル場合ニ於テ其ノ代理ノ順序ハ定款ノ定ムル所ニ依ル
評議員ハ組合長ノ諮問ニ應シ又ハ業務ノ執行及財產ノ狀況ヲ監査ス
第二十七條 組合長ノ權限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第二十八條 組合ハ畜產上ノ檢査ニ從事セシムル爲檢査員ヲ置クコトヲ得
第二十九條 組合長ハ定款、組合員名簿、會議ノ議事錄其ノ他組合ニ關スル書類及帳簿ヲ事務所ニ備ヘ置クヘシ
組合員又ハ組合ノ債權者ハ前項ノ書類又ハ帳簿ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テ組合長ハ正當ノ事由アルニ非サレハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第三十條 組合ハ左ノ事由ニ因リ解散ス
一 定款ニ定メタル事由ノ發生
二 總會ノ議決
三 組合ノ合併
四 組合ノ分割
五 組合員五人以下ト爲リタルトキ
六 監督官廳ノ處分
第三十一條 組合ニシテ解散、合併又ハ分割ヲ爲サムトスルトキハ第二項ノ場合ヲ除クノ外之ニ關スル必要ノ事項ヲ定メ總會ニ於テ組合員半數以上出席シ出席者ノ議決權ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決スヘシ
家畜ノ種類ニ依リ組合ノ分割ヲ爲サムトスルトキハ其ノ種類ノ組合員ノ議決權ノ三分ノ二以上ヲ有スル者ノ同意ヲ以テ之ニ關スル必要ノ事項ヲ定メ組合ニ對シ之ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ組合ハ其ノ權利義務ノ分割ニ付總會ニ關スル規定ニ準シ他ノ種類ノ組合員ノ議決ヲ經テ請求者ト協議スヘシ協議調ハサルトキハ地方長官之ヲ決定ス
第三十二條 組合ノ解散、合併又ハ分割ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第三十三條 組合合併シタルトキハ合併ニ因リテ解散シタル組合ノ權利義務ハ合併後存續スル組合又ハ合併ニ因リテ設置シタル組合之ヲ承繼ス
第三十四條 組合分割シタルトキハ其ノ定ムル所ニ從ヒ分割ニ因リテ設置シタル組合其ノ權利義務ノ一部ヲ承繼ス
第三十五條 組合解散シタルトキハ合併又ハ分割ノ場合ヲ除クノ外淸算ヲ爲スヘシ
民法第七十二條、第七十三條及第七十八條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
民法第七十九條及第八十條ノ規定ハ第三十條第一號、第五號又ハ第六號ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十六條 組合ハ債權者ノ同意ヲ得又ハ異議アル債權者ニ對シ辨濟ヲ爲シ若ハ相當ノ擔保ヲ供スルニ非サレハ組合ノ解散、合併、分割若ハ區域ノ除斥又ハ家畜若ハ組合員ノ種類ノ減少ニ關スル定款ノ變更ヲ爲スコトヲ得ス
第三十七條 組合ノ會議ノ議決又ハ役員ノ行爲カ法令若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ主務大臣又ハ地方長官ハ其ノ議決ヲ取消シ、議員若ハ評議員ノ改選ヲ命シ、組合長若ハ組合副長ヲ解任シ又ハ組合ノ業務停止若ハ解散ヲ命スルコトヲ得
第三十八條 主務大臣又ハ地方長官ハ組合ニ對シ業務ニ關スル報吿ヲ爲サシメ、書類帳簿業務ノ執行又ハ財產ノ狀況ヲ檢査シ、定款又ハ豫算ノ變更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ組合ノ合併又ハ分割ヲ命スルコトヲ得
第三十九條 地方長官左ニ揭クル事項ニ付認可ヲ爲シ又ハ前二條ノ處分ヲ爲シタルトキハ之ヲ吿示スヘシ
一 組合ノ設置
二 組合ノ區域ノ擴張又ハ家畜若ハ組合員タルヘキ者ノ種類ノ增加ニ關スル定款ノ變更
三 組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任
四 組合ノ解散、合併又ハ分割
主務大臣前項ノ事項ニ付前二條ノ處分ヲ爲シタルトキハ關係地方長官ヲシテ之ヲ吿示セシムヘシ
第四十條 組合ハ共同シテ其ノ目的ヲ達スル爲畜產組合聯合會ヲ設置スルコトヲ得
畜產組合聯合會ハ法人トス
第四十一條 聯合會ヲ設置セムトスルトキハ定款ヲ作リ其ノ區域一府縣以內ノモノニ在リテハ地方長官、二以上ノ府縣ニ亙ルモノニ在リテハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十二條 聯合會ニ左ノ役員ヲ置ク
會長 一人
副會長 一人又ハ數人
評議員 數人
第四十三條 畜產組合ニ關スル規定ハ第二條、第三條、第六條、第八條、第十條第三項、第十三條、第二十三條、第二十四條及第二十五條第一項ノ規定ヲ除クノ外之ヲ聯合會ニ準用ス但シ地方長官トアルハ二以上ノ府縣ニ亙ル聯合會ニ在リテハ主務大臣トシ第十一條及第二十五條第二項中組合員トアルハ聯合會ヲ組織スル組合ノ組合員トシ第三十條第五號中五人以下トアルハ一トス
一府縣以內ノ區域ニ依リタル聯合會ニシテ合併又ハ區域ノ擴張ニ依リ二以上ノ府縣ニ亙ルヘキ場合ニ於テハ其ノ認可ハ主務大臣之ヲ行フ
第四十四條 組合又ハ聯合會ノ役員ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ三百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第四十五條 組合又ハ聯合會ノ役員又ハ檢査員其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲ササルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハサルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第四十六條 前條第一項ニ揭クル者ニ對シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第四十七條 本法中府縣、郡、市町村トアルハ府縣制、郡制、市制、町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノニ該當ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
產牛馬組合法ハ之ヲ廢止ス
本法施行前產牛馬組合法ニ依リ設置シタル組合又ハ聯合會ハ本法ニ依リ之ヲ設置シタルモノト看做ス但シ其ノ定款中本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反スルモノアルトキハ命令ノ定ムル期間內ニ之カ變更ヲ爲シ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル畜産組合法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正四年一月十三日
内閣総理大臣 伯爵 大隈重信
陸軍大臣 岡市之助
農商務大臣 河野広中
法律第一号
畜産組合法
第一条 本法ニ於テ家畜ト称スルハ牛馬羊豚ヲ謂フ
第二条 牛羊豚ヲ飼養スル者又ハ馬ノ生産ヲ業トスル者ハ本法ニ依リ畜産組合ヲ設置スルコトヲ得
第三条 畜産組合ハ法人トシ畜産上ノ改良発達ヲ図リ組合員ノ利益ヲ増進スルヲ以テ目的トス
第四条 組合ハ営利事業ヲ為スコトヲ得ス但シ組合ノ経営上必要アル場合ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受ケ畜産上ノ施設ヲ為スハ此ノ限ニ在ラス
第五条 組合ハ組合員ニ非サル者ニシテ其ノ区域内ニ於テ家畜ヲ所有シ又ハ保管スル者ノ委託ニ依リ委託者ノ費用ヲ以テ家畜衛生上必要ナル処置ヲ為スコトヲ得
第六条 組合ヲ設置セムトスルトキハ郡市ノ区域ニ依リ組合員タルヘキ者三分ノ二以上ノ同意ヲ以テ定款ヲ作リ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ但シ特別ノ事情アルトキハ郡市ノ区域ニ依ラサルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ家畜又ハ組合員タルヘキ者ノ種類二種以上アルトキハ其ノ種類毎ニ三分ノ二以上ノ同意ヲ得ヘシ
前項組合員タルヘキ者ノ種類ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 組合ノ名称中ニハ畜産組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウヘシ
畜産組合ニ非サルモノハ其ノ名称中ニ畜産組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
第八条 組合成立シタルトキハ其ノ区域内ニ於テ組合員タル資格ヲ有スル者ハ総テ組合員トス但シ特別ノ事情ニ依リ地方長官ノ認可ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ在ラス
第九条 地方長官必要アリト認ムルトキハ組合ニ対シ種畜ノ供給、種付、家畜ノ系統若ハ能力ノ登録、家畜衛生ニ関スル施設又ハ家畜市場ノ開設ヲ命スルコトヲ得
第十条 定款ヲ変更セムトスルトキハ総会ニ於テ組合員半数以上出席シ出席者ノ議決権ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決シ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
定款ノ変更カ経費ノ分賦収入ニ関スルトキハ前項ノ出席者及議決権ノ数ハ家畜又ハ組合員ノ種類毎ニ之ヲ計算スヘシ
定款ノ変更カ区域ノ拡張又ハ家畜若ハ組合員タルヘキ者ノ種類ノ増加ニ関スルトキハ第一項ノ議決ノ外拡張又ハ増加ニ依リ新ニ組合員タルヘキ者三分ノ二以上ノ同意ヲ得ヘシ此ノ場合ニ於テハ第六条第二項ノ規定ヲ準用ス
第十一条 組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ所有又ハ保管ニ係ル家畜、畜産物又ハ畜産上ノ設備ニ付検査ヲ為シ又ハ試験ノ用ニ供スル為必要ナル分量ニ限リ無償ニテ物品ヲ収去スルコトヲ得
組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ定款違反者ニ対シ過怠金ヲ徴収シ、其ノ違反ニ係ル物品ノ没収其ノ他必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
第十二条 組合ノ経費ハ定款ノ定ムル所ニ依リ組合員之ヲ負担ス
第十三条 組合ノ経費又ハ過怠金ヲ滞納スル者アル場合ニ於テ組合長ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村税ノ例ニ依リ之ヲ処分ス此ノ場合ニ於テハ組合ハ其ノ徴収金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スヘシ
前項徴収金ノ先取特権ノ順位ハ市町村、水利組合其ノ他之ニ準スヘキモノノ徴収金ニ次クモノトス
第十四条 左ニ掲クル事項ハ総会ノ議決ヲ経ヘシ
一 経費ノ収支予算
二 経費ノ分賦収入方法
三 起債並其ノ方法、利息ノ定率及償還ノ方法
四 共済其ノ他ノ基金ノ積立、支出及利用ノ方法
五 事業報告及収支決算ノ承認
六 訴願、訴訟及和解
七 定款ニ定メタル事項
八 其ノ他組合長ニ於テ重要ナリト認メタル事項
第十五条 前条ノ事項ニ付テハ総会ハ定款ノ定ムル所ニ依リ評議員ヲ以テ組織スル評議員会ニ委任シテ議決セシムルコトヲ得
評議員会ニ関スル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六条 第十四条第一号又ハ第三号ノ事項ニ関シ臨時急施ヲ要シ総会ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ組合長ハ之ヲ専決処分スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ次ノ総会ニ於テ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第十七条 第十四条第一号乃至第四号ノ事項ニ付テハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第十八条 総会ハ総組合員ヲ以テ之ヲ組織ス
第十九条 総会ハ組合長之ヲ招集ス
組合員其ノ総数ノ五分ノ一以上ノ同意ヲ得会議ノ目的タル事項及招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ総会ノ招集ヲ請求シタルトキハ組合長ハ十四日以内ニ総会ヲ招集スヘシ
組合長正当ノ事由ナクシテ前項ノ期間内ニ総会ヲ招集セサルトキハ請求者ハ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ招集スルコトヲ得
第二十条 総会ヲ招集スルニハ少クトモ七日前ニ会議ノ日時、場所及目的タル事項ヲ記載シテ各組合員ニ其ノ通知ヲ発スヘシ
総会ニ於テハ前項ノ規定ニ依リ予メ通知シタル事項ニ付テノミ議決ヲ為スコトヲ得但シ定款ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十一条 組合員ハ総会ニ於テ各一箇ノ議決権ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ依リ一人ニ付議決権総数ノ十分ノ一ヲ超エサル範囲内ニ於テ二箇以上ノ議決権ヲ有セシムルコトヲ得
第二十二条 総会ノ議事ハ別ニ規定アルモノヲ除クノ外出席者ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス
第二十三条 組合員ハ総会ニ於テ書面又ハ代理人ヲ以テ議決ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ議決権ヲ行フ者ハ之ヲ出席者ト看做ス
第二十四条 組合ハ命令及定款ノ定ムル所ニ依リ組合員ノ選挙シタル議員ヲ以テ組織スル総代会ヲ以テ総会ニ代フルコトヲ得但シ組合ノ解散、合併又ハ分割ノ議決ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
総会ニ関スル規定ハ命令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外総代会ニ之ヲ準用ス
第二十五条 組合ニ左ノ役員ヲ置ク
組合長 一人
組合副長 一人又ハ数人
評議員 数人
役員ハ組合員中ヨリ之ヲ選挙ス但シ組合長又ハ組合副長ハ特別ノ事情アル場合ニ限リ組合員ニ非サル者ヨリ之ヲ選挙スルコトヲ得
役員ノ任期ハ定款ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
役員ハ任期中ト雖之ヲ解任スルコトヲ得
役員ノ選任又ハ解任ハ総会ニ於テ組合員半数以上出席シ出席者ノ議決権ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決ス但シ定款ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第二十六条 組合長ハ組合ヲ代表シ組合一切ノ事務ヲ管理ス
組合副長ハ組合長ヲ補佐シ組合長事故アルトキ其ノ職務ヲ代理ス組合副長数人アル場合ニ於テ其ノ代理ノ順序ハ定款ノ定ムル所ニ依ル
評議員ハ組合長ノ諮問ニ応シ又ハ業務ノ執行及財産ノ状況ヲ監査ス
第二十七条 組合長ノ権限ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第二十八条 組合ハ畜産上ノ検査ニ従事セシムル為検査員ヲ置クコトヲ得
第二十九条 組合長ハ定款、組合員名簿、会議ノ議事録其ノ他組合ニ関スル書類及帳簿ヲ事務所ニ備ヘ置クヘシ
組合員又ハ組合ノ債権者ハ前項ノ書類又ハ帳簿ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テ組合長ハ正当ノ事由アルニ非サレハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第三十条 組合ハ左ノ事由ニ因リ解散ス
一 定款ニ定メタル事由ノ発生
二 総会ノ議決
三 組合ノ合併
四 組合ノ分割
五 組合員五人以下ト為リタルトキ
六 監督官庁ノ処分
第三十一条 組合ニシテ解散、合併又ハ分割ヲ為サムトスルトキハ第二項ノ場合ヲ除クノ外之ニ関スル必要ノ事項ヲ定メ総会ニ於テ組合員半数以上出席シ出席者ノ議決権ノ三分ノ二以上ヲ以テ之ヲ議決スヘシ
家畜ノ種類ニ依リ組合ノ分割ヲ為サムトスルトキハ其ノ種類ノ組合員ノ議決権ノ三分ノ二以上ヲ有スル者ノ同意ヲ以テ之ニ関スル必要ノ事項ヲ定メ組合ニ対シ之ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ組合ハ其ノ権利義務ノ分割ニ付総会ニ関スル規定ニ準シ他ノ種類ノ組合員ノ議決ヲ経テ請求者ト協議スヘシ協議調ハサルトキハ地方長官之ヲ決定ス
第三十二条 組合ノ解散、合併又ハ分割ハ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第三十三条 組合合併シタルトキハ合併ニ因リテ解散シタル組合ノ権利義務ハ合併後存続スル組合又ハ合併ニ因リテ設置シタル組合之ヲ承継ス
第三十四条 組合分割シタルトキハ其ノ定ムル所ニ従ヒ分割ニ因リテ設置シタル組合其ノ権利義務ノ一部ヲ承継ス
第三十五条 組合解散シタルトキハ合併又ハ分割ノ場合ヲ除クノ外清算ヲ為スヘシ
民法第七十二条、第七十三条及第七十八条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
民法第七十九条及第八十条ノ規定ハ第三十条第一号、第五号又ハ第六号ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十六条 組合ハ債権者ノ同意ヲ得又ハ異議アル債権者ニ対シ弁済ヲ為シ若ハ相当ノ担保ヲ供スルニ非サレハ組合ノ解散、合併、分割若ハ区域ノ除斥又ハ家畜若ハ組合員ノ種類ノ減少ニ関スル定款ノ変更ヲ為スコトヲ得ス
第三十七条 組合ノ会議ノ議決又ハ役員ノ行為カ法令若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ主務大臣又ハ地方長官ハ其ノ議決ヲ取消シ、議員若ハ評議員ノ改選ヲ命シ、組合長若ハ組合副長ヲ解任シ又ハ組合ノ業務停止若ハ解散ヲ命スルコトヲ得
第三十八条 主務大臣又ハ地方長官ハ組合ニ対シ業務ニ関スル報告ヲ為サシメ、書類帳簿業務ノ執行又ハ財産ノ状況ヲ検査シ、定款又ハ予算ノ変更ヲ命シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ組合ノ合併又ハ分割ヲ命スルコトヲ得
第三十九条 地方長官左ニ掲クル事項ニ付認可ヲ為シ又ハ前二条ノ処分ヲ為シタルトキハ之ヲ告示スヘシ
一 組合ノ設置
二 組合ノ区域ノ拡張又ハ家畜若ハ組合員タルヘキ者ノ種類ノ増加ニ関スル定款ノ変更
三 組合長又ハ組合副長ノ選任又ハ解任
四 組合ノ解散、合併又ハ分割
主務大臣前項ノ事項ニ付前二条ノ処分ヲ為シタルトキハ関係地方長官ヲシテ之ヲ告示セシムヘシ
第四十条 組合ハ共同シテ其ノ目的ヲ達スル為畜産組合連合会ヲ設置スルコトヲ得
畜産組合連合会ハ法人トス
第四十一条 連合会ヲ設置セムトスルトキハ定款ヲ作リ其ノ区域一府県以内ノモノニ在リテハ地方長官、二以上ノ府県ニ亘ルモノニ在リテハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十二条 連合会ニ左ノ役員ヲ置ク
会長 一人
副会長 一人又ハ数人
評議員 数人
第四十三条 畜産組合ニ関スル規定ハ第二条、第三条、第六条、第八条、第十条第三項、第十三条、第二十三条、第二十四条及第二十五条第一項ノ規定ヲ除クノ外之ヲ連合会ニ準用ス但シ地方長官トアルハ二以上ノ府県ニ亘ル連合会ニ在リテハ主務大臣トシ第十一条及第二十五条第二項中組合員トアルハ連合会ヲ組織スル組合ノ組合員トシ第三十条第五号中五人以下トアルハ一トス
一府県以内ノ区域ニ依リタル連合会ニシテ合併又ハ区域ノ拡張ニ依リ二以上ノ府県ニ亘ルヘキ場合ニ於テハ其ノ認可ハ主務大臣之ヲ行フ
第四十四条 組合又ハ連合会ノ役員ニシテ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ三百円以下ノ過料ニ処ス
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第四十五条 組合又ハ連合会ノ役員又ハ検査員其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス因テ不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為ササルトキハ五年以下ノ懲役ニ処ス
前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第四十六条 前条第一項ニ掲クル者ニ対シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得
第四十七条 本法中府県、郡、市町村トアルハ府県制、郡制、市制、町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ之ニ準スヘキモノニ該当ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
産牛馬組合法ハ之ヲ廃止ス
本法施行前産牛馬組合法ニ依リ設置シタル組合又ハ連合会ハ本法ニ依リ之ヲ設置シタルモノト看做ス但シ其ノ定款中本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反スルモノアルトキハ命令ノ定ムル期間内ニ之カ変更ヲ為シ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ